米国では大手企業を中心に、自然エネルギーの利用を拡大する取り組みが進んでいる。持続可能な社会を 目指す活動を推進できることに加えて、風力・太陽光の電力がコスト競争力を持つようになったことも大きな 要因だ。
米国の電力会社が新しい商品やサービスを開発して自然エネルギーの電力を供給するように なった背景には、利用者からのニーズの高まりがある。特に大手の企業が意欲的な目標を掲げ て取り組んでいる。象徴的なプロジェクトが「RE100」だ。
RE100
は影響力の大きな企業が集結した国際的なプロジェクトで、2018年6
月19
日の時点 で130
社以上が参加している。自然エネルギーの電力を100%利用することを宣言して、自然
エネルギーを全世界に広めていくことが目的である。米国からはApple
やBank of America
を はじめ、さまざまな業種の大手企業がRE100
のメンバーに名を連ねている(表7)。
表 7:自然エネルギーの電力利用率100%を宣言した米国企業の例
企業名 業種 目標年
Apple テクノロジー(情報技術) 2018(達成)
Bank of America 金融 2020
Bloomberg 金融ソフトウエア、データサービス、メディア 2025
eBay 小売 2025
Facebook オンラインソーシャルメディア 不明
General Motors 自動車 2050
Goldman Sachs 金融 2020
Google テクノロジー(情報技術) 2017(達成)
Johnson & Johnson 医療機器、医薬品、日用品 2050
JPMorgan Chase 金融 2020
Kellogg’s 食品 2050
Microsoft テクノロジー(情報技術) 2014(達成)
Morgan Stanley 金融 2022
Nike スポーツ用品 2025
Starbucks コーヒー 2016(達成)
Walmart 小売 不明
Wells Fargo 金融 2017(達成)
出典:RE100「Companies」(2018年6月19日時点)
このほかにも
2014
年には、自然エネルギーの拡大を目指す大手企業が「Buyer’s Principle(購買者の原則)」を提唱した。この原則の中で、利用者が自然エネルギーに求めることを理 解する方法や、規制当局が重視すること、電力会社が利用者の要求に効果的に対応する方法を まとめた。
当初は
12
社が署名し、現在は73
社に拡大した。その中にはファストフードのMcDonald’s
や飲料大手のPepsiCo、航空宇宙・軍事産業の Lockheed Martin
が含まれている。署名した73
社が目標とする自然エネルギーの導入量を合計すると、2020年までに670
億kWh
を超える。こうした動きを加速させる大きな要因になっているのは、持続可能性と経済性の
2
つであ る。事業活動による環境への影響を抑制するためには、コスト効率の良い方法で対策を実行し ていく必要がある。風力・太陽光がコスト競争力を持つようになったことで、持続可能性と経 済性の両立が可能になった。企業は自然エネルギーの導入目標を達成するために、いくつかの方法を選択できる。自然エ ネルギーの電力を購入する以外に、2つの方法で自然エネルギーの電力を増やすことが可能 だ。1つは証書の
REC
を購入する方法、もう1
つは発電事業者とPPA(Power Purchase Agreement、電力購入契約)を締結する方法がある
REC
は電力と切り離して購入することができる。この形態を「Unbundled REC(電力から 分離した自然エネルギー証書)」と呼び、多くの企業が自然エネルギーの調達を始める時の選 択肢として利用している。コストが低くて、長期の契約を必要としない点がメリットだ。PPA やグリーン電力契約よりも簡単に利用できる。これに対して
PPA
は自然エネルギーの新規プロジェクトを長期に契約する必要がある。企業 が自社の施設や土地に発電設備を導入する場合もあれば、別の場所に設置するケースもある。さらに
PPA
の契約形態には、発電した電力の供給を受ける「Physical PPA」と、電力の供給を 伴わずに財務的な取引を実行する「Financial PPA(あるいはVirtual PPA
と呼ぶ)」の2
通り がある。Physical PPA
では電力を利用する企業が発電事業者と交渉して購入料金を決めることができる。購入した電力を企業が消費するか、他者に売電するかは自由である。
一方の
Financial PPA
では電力を利用する企業が発電事業者と購入料金を決めて契約を結ぶ 点は同じだが、発電した電力は地域の送配電網を通じて卸電力市場に売却する。卸電力の価格 がPPA
の購入料金よりも低い場合には、企業から発電事業者に差額を補てんする。逆に高い場 合には発電事業者が企業に差額を支払う。企業も発電事業者も一定の価格で電力を売買できる 仕組みだ。ただし
Financial PPA
では発電した電力を企業が利用することはできない。卸電力市場から購入する必要がある。その代わりに証書の
REC
を発電事業者から受け取ることができるた め、自然エネルギーの電力を利用したのと同じ効果を得られる。PPA
による契約量は大手の企業を中心に急速に拡大している。2010年には合計で13
億kWh
の規模に過ぎなかったが、2016年には79
億kWh
まで増加した(図29)。契約を結んだ
企業の数も200
社を超えている。図 29:企業による自然エネルギーの電力購入契約
出典:NREL「Status and Trends in the U.S. Voluntary Green Power Market (2016 Data)」
NGO
のRocky Mountain Institute
が企業向けに運営している自然エネルギーの調達支援サー ビス「Business Renewables Center」の集計によると、自然エネルギーの電力購入契約は2013
年以降だけで1100
万kW
を超えた。Google、Amazon、Microsoft、Apple、Facebookといった
IT(情報技術)の大手企業がリードして、風力と太陽光の大型契約が相次いでいる(図
30)。
図 30:自然エネルギーの電力購入契約(2013年-2018年5月、公表分)
GW:100万キロワット
注:カッコ内の数値は各企業による当該年の契約数。
出典:RMI BRC「BRC Deal Tracker」(2018年5月16日時点)