F
は形式的に容積
Vの
1変数関数となる
†476†477:FC =FA(VA) +FB(VB) =FA(VA) +FB(VC−VA) =FC(VA) (4.37) (4.35)
より
, Fが極値をとるとき
(すなわち
dF = 0を満たすとき
),熱平衡状 態に至り
,変化は止まる
.いま
, FCの
VAに関する導関数を考えると
,dFC(VA)
dVA = dFA(VA)
dVA +dFB(VC −VA)
dVA =−pA+pB = 0 (4.38)
がいえるので
†478,圧力の熱平衡条件をうる
:pA =pB (4.39)
等温定容系の変化が止まる
(熱平衡に至る)とき, 部分系
Aと
Bの圧力と温度
はそれぞれ等しいことが, 熱力学を用いて証明された.
の最右辺第
1項と第
2項に
, Fに対する不等式
(4.34)を適用すると
†480dG≤Vdp−SdT (4.41)
をうる
.したがって
,定圧かつ等温条件において
,dG≤0 (4.42)
となり
, Gは極小値をとる
†481.過程の進行に伴い
, Gは必ず減少する
.あるときに
,Gが極小値をとったなら ば
,そのときが
,それ以上変化の起こらない熱平衡状態への到達を意味する
.§ 4.3.2
定圧等温系の熱平衡条件
§4.1.1
の問題を
,§4.2.3の問題よりも拡張し
,守備範囲を広げる
.すなわち
,系 と外界は
,熱のみならず仕事のやりとりをも行う
.壁の一部を可動壁とし
†482,外 界の圧力と系の圧力が等しく保たれる
†483.それ以外の壁は剛体である
.系と外界は
,等しい温度
,等しい圧力にあるので
,TA=TB = const.≡TC (4.45)
†480だからこそ,S, F,Gの順に論じたのである. 確信はないが,必然性を感じさせる.
†481[発展]熱平衡条件の表現において,変分法(variational method)の表記を用いることも多い:
δS= 0, δF = 0, δG= 0 (4.43)
微分記号dが傾き(勾配)を表すのに対して,変分記号δは傾きの移行方向(過程の終着点から わずかにずれたときの変化)を意味する. (4.43)は,終着点において変化しないことを意味する.
厳密には, 2次の変分も用いる必要がある. すなわち, 変化が, どのように変化するかを記述す るつぎの表現である:
δ2S <0, δ2F >0, δ2G >0 (4.44) たとえば,S が最大値という終着点に至った後に,仮にどこかに動くのならば,減少以外の選択 肢はないことを,不等号が教えてくれている. すなわち, 1次の変分δだけでは不十分で, 2次の 変分δ2を使って初めてS の概形が描ける. 本資料では,変分法の表現に深入りすることは控え
る(重要でないという意味ではない).
†482系の膨張や圧縮による仕事を考慮したいからである.
†483外界が可動壁に課す力の大きさと系が可動壁に課す力の大きさが等しいことを意味する.
および
pA =pB = const.≡pC (4.46)
の両者は自明である
.これが熱平衡条件であるので
,定圧等温系の場合は
, Gの不 等式
(恒等式
)を持ち出す必要はない
.すなわち
,熱平衡の状態
“だけ
”を議論する 目的においては
,熱力学の法則を用いる必要すらない
.しかしながら
,変化の方向 の議論のためには
,熱力学すなわち
Gの不等式
(4.42)に頼らねばならない
†484.定圧等温系は
,固体と液体で有用な定容等温系に対して
,常温常圧下での空気 の膨張といった気体の熱力学においてよく現れる. この意味で, 自由エンタルピー は気体で有用といえる
†485.しかしながら, 熱力学を主に道具として用いる立場に あるわれわれにとっては
,応用上の用途
,すなわち
,自由エンタルピーが化学反応 において多用される事実のほうが
,むしろ
,重要といえるだろう
†486.§ 4.4 まとめ
熱力学によれば
,過程の進行に伴って
,次の条件が満足される
: 1.孤立断熱系では, エントロピー
Sは増加する.
2.
温度が外界と等しく
,体積が不変の系
†487においては
,自由エネルギー
Fは 減少する
.3.
温度と圧力が外界と等しい系においては
,自由エンタルピー
Gは減少する
.過程とは
,自発的かつ不可逆的に起こるものであり
,やがて
, Sが最大
(ある いは
Fや
Gが最小
)の状態に至る
.これらが極値に達することは
,最も安定な熱 平衡状態にあることを意味する. 過程の進行の度合いを評価する状態変数として,
†484安易に, 熱力学が不要と勘違いしてはならない. 要不要は,目的に応じて変化する.
†485エンタルピーとは, “動く”エネルギーに例えられたことを思い返そう.
†486[応用]化学反応(chemical reaction)は,ふつう定圧等温下で行われるため,自由エンタルピーが
威力を発揮する. 燃焼(combustion)や,燃料電池(fuel cell)内の化学反応計算などは,自由エン タルピーに支配される(燃焼は等温ではないが). 事実,その足掛かりとして,自由エンタルピー
(Gibbsの自由エネルギー)と密接な関係にある重要な状態変数“化学ポテンシャル(chemical
potential)”を後半の講義で学ぶ.
†487系の体積は一定値を保つが,系の体積は外界と等しくない. そもそも, 外界に体積という概念は ない. この勘違いを防ぐ意味で,項目2の体積と, 項目3の圧力について,意図的に表現の差異 を与えた.