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§ 4.1 孤立断熱系とエントロピー最大の原理

ドキュメント内 0 (Preliminary) T S pv (ページ 91-98)

§ 4.1.1

問題

外界として, 断熱材で作られた剛体壁で囲まれた系

C

を考える

419.

このとき, 系

C

は外界から孤立しており

(

孤立系

),

外界からの熱や仕事の授受はない

.

C

,

熱平衡状態にある部分系

A

,

別の熱平衡状態にある部分系

B

から構成される

. A

B

の境界は可動の透熱壁であるとする

.

要点をまとめる

: (i) “

可動

としたのは

, A

B

の間の体積変化すなわち仕事の授受を議論したいからである

. (ii) “

透熱

と したのは

, A

B

の間の熱の移動を議論したいからである

. (iii) “

としたのは

, A

B

の境界をとおしての質量の流入出を考慮したくなかったからである

420.

さて, A と

B

を, 境界を介して接触させる. 接触時には, A と

B

から作られる 全体系

C

は熱平衡ではない

421422.

接触と同時に

, A

B

の間で熱と仕事の授受

(

すなわち過程

)

が生じ

,

やがて全体系

C

,

ある熱平衡状態に至る

.

そのときが

,

変 化の終了に対応する

.

この接触は

,

不可逆過程に他ならない

†423†424.

417熱力学第1法則および第2法則を多用した結果,これまでに,多くの知見を手に入れたが,実は, これらは,熱平衡の条件に矛盾しない. これは,自明ではなく,確かめねばならないことである.

418変化がストップするための条件や,変化の方向の議論をも含む.

419概念図を板書で補う.

420[発展]厳密には,壁をとおしての物質の輸送すなわち質量の変化も考慮すべきであるが,前半の 講義の守備範囲外であるため無視する.

421[重要]部分系それぞれの内部では熱平衡にあっても,部分系同士が熱平衡にないならば,全体 としてみると熱平衡ではない.

422Aと系Bを部分系, 系Cを全体系とよぶ. さて,“なぜ部分系を設定するのか”, “なぜ2つ の系の問題を考えるのか などの疑問を持つはずである. 注意を与えておこう: 系が1つだけ であっても,変化は生じる. なぜならば,系を囲む外界からの熱と仕事の授受があるからである. ここで,外界とは変化を受けない熱浴(heat bath)であることが重要である. 外界は,十分大き く,無限の熱容量をもつがゆえに, 系と熱のやりとりをしても,温度が一定に保たれる理想的な 熱源である. それゆえ, 変化が進むにつれて, 系の温度が, 外界の温度と等しくなることは, 自 明である. それでいて,変化を受けるのは系だけであって,外界は影響をうけない. したがって, 熱平衡の条件を議論するためには,少なくとも2つの系を用意すべきなのである.

423[基礎]すでに, ある熱平衡状態に達した全体系Cを構成する部分系ABのそれぞれを,元々 の熱平衡状態ABに戻すことは不可能だからである.

424不可逆過程に関する復習を交えながら議論を進めるが, §0や熱力学Iの講義内容を復習せよ.

§ 4.1.2

示したいこと

全体系

C

が熱平衡状態に至る条件とは

,

どのように表されるのかを

,

天下りに 述べておく

.

熱平衡という言い回しから推測されるように

,

温度に対して

TA =TB (4.1)

が要請される

.

しかし

,

これだけでは不十分で

,

圧力に対する

pA =pB (4.2)

も必要である

425426.

なぜならば, たとえ, A と

B

の温度が等しくとも, 圧力が異 なるのならば, その差異がやがて温度の差異を生むからである

427.

熱平衡状態

428429

に至るとき

, (4.1)(4.2)

が成立することは

,

経験則として「当 たり前」のことと直感的に理解できる

.

そうではなくて

,

これらを

,

熱力学の法則 を用いて証明することが本節の目的である

.

§ 4.1.3

そのための道具

道具は熱力学である

.

すなわち

,

熱力学第

1

法則と第

2

法則を駆使すると

,

エ ントロピー最大の原理

,

自由エネルギー最小の原理

,

自由エンタルピー最小の原理 の形に帰着する

430.

実は

, (4.1)(4.2)

,

これらの原理から導かれるものである

.

既知な

(使ってよい)

ことは, 部分系

A

B

がそれぞれ熱平衡状態にあるこ

とである. 未知な

(示したい)

ことは, 全体系

C

が熱平衡状態に至ったならば, 式

425[発展]物質の出入りを考えるならば, “化学ポテンシャル”も等しい(後半の講義の守備範囲).

426すなわち,2つの系の強度変数の全てが等しいならば,熱平衡状態といえる.

427[基礎]状態変数が2変数関数であることを思い返そう. ある状態変数の値の差異は,他の状態変 数の値の差異を招く.

428[基礎]熱平衡状態とは,それ以上変化しない状態であった. 熱平衡を表現する尺度として,温度 が定義された(熱力学第0法則もこれに関連). それゆえ,熱平衡の条件として,温度が等しいこ とを要請するのは自然といえる.

429[用語]温度が等しいことを熱平衡(温度平衡)という. 圧力が等しいことを力学平衡という. この ほかに,化学ポテンシャルが等しいことを化学平衡という(未習). 熱平衡と力学的平衡と化学平 衡の全てが満たされるとき,系は熱力学的平衡にあるという. 熱平衡(thermal equilibrium) とは,熱力学的平衡(thermodynamic equilibrium)の一部である. この意味で,本節で論じてい るのは, 厳密には,熱平衡ではなく,熱力学的平衡である.

430これらを記述する3本の不等式(熱力学恒等式に不可逆性も取り入れたもの)が重要となる.

(4.1)(4.2)

が導かれることである

431.

§ 4.1.4

第一法則と内部エネルギーの変化

全体系

C (

孤立系

)

,

熱力学第一法則を適用すると

,

次式をうる

432:

dUC = dQ−dW = 0 (4.3)

以上より

,

全体系の内部エネルギー

UC

の変化はゼロである

.

これを積分すると

, UC

は定数であることがわかる

433:

dUC = 0 = UC = const. (4.4)

§ 4.1.5

示量変数を調べる

3

つの示量変数として

,

体積

V,

内部エネルギー

U,

エントロピー

S

を考え る

†434.

全体系

C

,

部分系

A

B

の間に

,

次式が成立する

†435:

VC =VA+VB = const. (4.5)

UC =UA+UB = const. (4.6)

SC =SA+SB (4.7)

431熱平衡の条件の数式表現において,なぜ,温度と圧力を用いるのか,疑問を感じるかもしれない.

答えは,強度変数(intensive variable)だからである. 状態変数の選択肢は無限にあるが,示量変

(extensive variable)に頼ることは得策ではない. 系の量に比例して,縦横無尽に値を変えて

しまうからである. 温度と圧力がわかれば,他の状態変数も計算できる.

432いま,孤立断熱系(isolated adiabatic sysytem)を考えているのだから,系が外界へする仕事dW,系が外界から受ける熱dQ,ゼロである: dQ= dW = 0.

433孤立系だから,内部エネルギーが不変であることは自明であるとか,直観だけで判断すべきでは ない. 第一法則に基礎をおき,数式を書き下して,丁寧に確かめるべきである.

434[重要・考え方]“なぜV,U,S だけ導入するのか”と疑問を持つはずである. 式(4.1)(4.2)こそ が,われわれが示すべき未知事項なのだから,この段階において, 圧力p と温度T を表に出し ても意味がないではないか. [補足] 準静的可逆過程の第一法則(1.1)に現れる状態変数のうち, 強度変数以外の示量変数を抽出すると,V,U,S3つであることからも理解できる.

435部分系ABの接触にともなう過程を考えるとき,熱平衡にないのは全体系Cであって,部分 系ABは過程の最中でもそれぞれ熱平衡にある. 部分系ABのそれぞれが, 熱平衡状態 にあるのだから, AとBそれぞれにエントロピーの値が対応する. このとき,全体系のエントロ ピーを,部分系のエントロピーの和で表すことができる. これを示量変数の相加性という. 示量 変数だから和で表される.

可動壁の移動に伴って

,

部分系

A

B

の体積はそれぞれ変化するが

,

剛体壁

(

外界

)

で囲まれた全体系

C

の体積は一定である

436.

また

, (4.4)

より

, UC

も一定である

. (4.5)–(4.7)

を眺めると

,

一見

,

変数が

9

個もあるように見えるが

, UC

VC

が一定 であるがゆえに, 実際の変数の個数は

4

個にすぎない

437.

§3

までと同様に, 状態の変化

(状態変数の変化)

を論ずるためには, 従属変数 に何を選ぶかを判断して

,

その独立変数依存性をも決めねばならない

. (4.5)–(4.7)

を参考に

,

エントロピーを従属変数に

,

体積と内部エネルギーの

2

変数を独立変数 に選ぶこととして

438,

まず

,

SA(VA, UA), SB(VB, UB) (4.8)

とかこう

.

一見

,

独立変数が

4

個もあるように見えるが

, (4.5)(4.6)

を思い返すと

,

SA(VA, UA), SB(VC −VA, UC −UA) (4.9)

と書き直せる.

VC

UC

が定数であることを踏まえると, 独立変数は

(VA, UA)

2

個である

.

そして

,

全体系

C

のエントロピー

SC

, (4.7)

より

,

SC =SA+SB =SA(VA, UA) +SB(VC−VA, UC−UA) = SC(VA, UA) (4.10)

となる

439.

したがって, これまで通り,

2

変数関数の取り扱いで閉じる.

§ 4.1.6 [一般論]

エントロピーの変化方向:

dS 0

解析のための道具を揃えるべく

,

一旦

,

一般論に移行する

.

436[基礎]剛体壁とは何か. 弾性壁との違いは何か.

437すなわち,VA, UA,SA,SB4つである(VA のかわりにVB を選んでもよいし,SA のかわり に SC を選んでもよい).

438天下りに述べたが,この独立変数依存性の決定が適切であることは, §4.1.7で明らかとなる.

439[重要]全体系の体積と内部エネルギーは定数であったが,エントロピーは定数ではない.

不可逆性も

(

熱力学第二法則も

)

含めて考える

440441.

すなわち

,

準静的不可 逆過程に対する熱力学第一法則を立てよう

:

dQ= dU + dW = dU +pdV ≤TdS (4.14) 1

つ目の等号は第一法則そのもの

, 2

つ目の等号は準静的過程の仮定によるもの

,

最 右辺の不等号は第二法則

(4.13)

にしたがった

.

少し移項すると

,

dU ≤TdS−pdV (4.15)

である

†442.

等号成立

(

可逆

)

のときに

,

不可逆性

(

不等号

)

を含めた第一法則

(4.15)

,

内部エネルギーに対する恒等式

(1.1)

に帰着する

.

孤立断熱系においては

,

(4.5)(4.6)

すなわち

V

U

が定数であることを思 い返すと

,

次式が成立する

:

dS 0 (4.16)

等号成立が可逆過程に相当し

,

不可逆過程はエントロピーが増大する方向に進行す る

(

エントロピー最大の原理

).

常に

dS >0

を満たしながら変化は進行するが

,

変 化はやがて終わる. 変化の終了とは, その名のとおり, 系が熱平衡に至ったことに 他ならない. このとき, エントロピーの変化も終わり, 系は常にこの熱平衡状態で あり続ける

. dS = 0

が成立し

,

エントロピーは最大値

(

定数

)S =Smax

をとる

.

440[復習]不可逆性を論ずる法則が熱力学第二法則である.

441[復習]可逆過程のエントロピー変化は dSdQ

T = dQ=TdS (4.11)

と定義された. いっぽう,不可逆過程の場合は, dS >dQ

T = dQ < TdS (4.12)

となる. 絶対温度は負値をとらないから, 不等号の向きは変化しない(基礎であるが, 重要であ る. だからこそ,絶対温度の定義に意味がある). 等式(4.11)すなわち可逆過程と,不等式(4.12) すなわち不可逆過程を,まとめて表現しよう:

dQTdS (4.13)

[復習](4.13), Clausius積分まで立ち戻って,一度は導いておくべきである. しかし,毎回

立ち戻ることは得策とはいえない. 熱力学Iの範囲において,覚える価値のある式ともいえる.

442不等号の向きに注意されたい. 間違えやすいので暗記しない方がよい(以後の不等式も同様).

れが

,

熱平衡状態のエントロピーによる表現である

.

グラフを

2

つ書いておく

443.

§ 4.1.7 [

一般論

]

5

の熱力学ポテンシャルとしてのエントロピー 孤立断熱系が熱平衡状態に至るならば

,

等式

dS = 0

が成立した

.

そこで

,

一般の系に対しても

,

不等式

(4.15)

の等号成立の場合を考えておく

444: dS = 1

TdU+ p

TdV (4.17)

右辺を眺めて

, S=S(U, V)

とみなす

445.

全微分

dS(U, V)

を考えると

(∂S

∂U )

V

= 1 T,

(∂S

∂V )

U

= p

T (4.18)

をうる

446.

このとき, エントロピー

S(U, V)

は, (第

5

の) 熱力学ポテンシャルと して

,

強度変数の温度

T(U, V)

と圧力

p(U, V)

を導く働きをなす

447.

(4.17)

, S(U, V)

に対する

(

5

)

熱力学恒等式に位置づけられる

448.

§ 4.1.8

計算実行

準備が整ったところで

,

本題の孤立断熱系

C

の問題に戻ろう

.

着目したいのは

,

熱平衡に至ったときであった

.

全体系

C

,

孤立断熱系であ るがゆえに

,

エントロピー最大の原理

(4.16)

が適用できる

449. C

のエントロピー

443板書する. 縦軸にはS をとり,横軸には次の2通りをとる: (i)過程の進行度(仮想的な時間や, 状態変化の方向といえる); (ii)状態変数[たとえば体積(膨張や圧縮が議論可能)]. いずれも,極 大値をとる1点でdS = 0 すなわちS =Smax を満たすが, それ以外の全ての点(すなわち曲 線)においてはdS >0を満たす. とくに(ii)は,普通の(他の力学に現れる)グラフとは異なる こと,すなわち極大値への近づき方に注意を要する.

444[重要]等号は可逆過程に対応する. さて, “全体系Cの不可逆過程を考えていたのではなかった のかなどと疑問を持つはずである. 不可逆過程が終了し, Cが熱平衡状態に至ったときに, 不 可逆性は消滅する. その議論の準備として,予め,等号成立時を議論しているのである.

445今回の(4.10)を振り返っても, この選び方が有力といえるだろう.

446[基礎・重要]これを確かめよ. また, このときの圧力と温度の独立変数依存性は, それぞれ,

p(U, V)T(U, V)以外にありえないことも確かめよ.

447[基礎]そのための独立変数の選び方は (U, V)以外にありえない(確かめよ).

448熱力学ポテンシャルとしてのエントロピーS(U, V) [J/K], 4つの熱力学ポテンシャルU(S, V), F(V, T),H(S, p),G(p, T)とは異なり,エネルギー(そのもの)[J]ではないことに注意を要する.

449遡れば, 熱力学の適用,すなわち,熱力学第1法則および第2法則を適用することを意味する.

ドキュメント内 0 (Preliminary) T S pv (ページ 91-98)