座長(有賀) マグネットホスピタルについて,ま たはマグネットホスピタルを目指してということで,
それぞれの立場からの講演をいただきました。あと でフロアからもお聞きしようと思いますが,せっか くの機会ですので,座長の立場で全体の背骨のよう なところを少し確認しておきたいと思います。
シンポジストの方々は,病院を軸にしてその周辺 を見ながらお話しされていたり,看護部という職責 の視点で病院を眺めたりと,それぞれのお立場から 話されていましたが,病院のなかでたくさんの職種 の人がいたり,または, 町は大きなホスピタル と いっても,町にはたくさんの人が住んでいるし,別 の病院もあったりするわけです。ですから,それぞ れの立場の相互関係,相対的な位置づけについて少 し確認しておきたいと思います。
「マグネットホスピタルの構造」における医師の 立つ位置は座長(有賀) 最初に,浦田先生の「マグネットホ スピタルの構造」の私案(下の図;vol. 55,2月号 44ページ参照)の丸の中に書き込んでいくと,どん
なふうな景色になるのかということを教えていただ けないでしょうか。私たち医師はどこに入るのでし ょうか。
浦田 はい。この図は看護師だけの図ではなくて,
病院全体を表したものです。全職種の,病院全体の 組織管理を含めたかたちで考えた構造です。ここに 書かれている「適切なスタッフィング」というのも 全職種が入っていますので,看護職のスタッフィン グだけではなくて,例えば産科のドクターが非常に 少ないという状況であれば,産科部門を助産師の人 数なり役割でどうカバーできるか,外来で非常にス タッフが少ないのであれば,ほかの職種でどれだけ カバーできるかといった,全体を含めた,非常に効 果的な,効率的なスタッフィングという思いで,こ れは定めています。
座長(有賀) そうすると,その「協働」というの は,職種間の協働というような,そういった意味合 いですか。
浦田 そうです。それでこの「自律」というのは,
それぞれ個人の自律もあるでしょうし,専門職とし ての自律もある。そういったなかで全職種,全個人 がお互い協働体制をとっていこうという考えです。
座長(有賀) そういうことでいきますと,どちら かというと,病棟間を飛び回ったり,手術場から ICUへ,また救急センターへとピョンピョン跳んで いるドクターたちのことを,協働としてこの図で表 せるようなかたちでドクターを律することができて いるものになっているのですか。つまり私が言って いるのは,何となく奇麗にまとまり過ぎ ていて,そんなにうまくいくのかなと,
平たい質問なのです。私は,ふだん安藤 先生とよく議論しますが,医師の働きは もっとこう,ウダウダとしているんじゃ ないかなと思ったものですから。教育シ ステムのなかで協働というのは,ドクタ ーにはどういうふうなメッセージが伝わ るのですか。
浦田 専門的な教育をしていけば,そ の専門性が高まっていきますので,そこ は自律につながっていくと思うのです ね。自律のなかでお互いに,どういうと ころが協働できるかというところも含め た教育内容といいましょうか,抽象的 な図ですので,具体的にご説明するのも
医 療 の 質 を 考 え る セ ミ ナ ー シ ン ポ ジ ウ ム
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︱ マ グ ネ ッ ト ホ ス ピ タ ル を 目 指 し て
なかなか難しいところもあるのですが,そういった 協働の精神も当然含めて,基本的なところを教育し ていく。それぞれ専門のところを深めていけば,ど こがお互いに協働していく部分なのかが,実践のな かで見えてくるのではないでしょうか。例えば看護 師の認定,専門教育,そういったものを進めていま す。その方たちが実践することによって,ドクター たちからは,看護師に何の仕事を頼めるのか,どう いったところで協働できるのかということが,かな り見えてきたというお声も聞いています。そのよう なところから見えてくる部分もあるのではないかと 思います。
座長(有賀) 私は,例えば安全管理などを,病院 組織の一員としての医師という立場で,ビシビシ言 うようなことで浸透させていくのかなと思ったので すが,そうではなかったのですね。どちらもあって いいと思うのですが。
浦田 安全のところは,ここの図には入れており ませんが,それは当然,組織運営をするという意味 のなかで入っていると考えておりました。安全は十 分必要だと思います。
座長(有賀) 片岡先生。いまの僕と浦田先生の 質疑をお聞きになっていて,名古屋第二赤十字病院 のなかの様子というのはどんなふうになるのですか。
片岡 そうですね。私は,チーム医療を一緒にし ていくというなかで,協働という感じがでてきたな ということは,最近感じています。それまでは,や はり医師も自分の医療というものを進めていくし,
看護師やその他のコメディカルそのものも自分たち の領域を専門職として確立したいという部分もあっ たと思うのですが,例えば緩和ケア,NST,医療安 全も含めて,みんなでやっていこうという点では,
逆に言えばそのなかで教育体制が育ってきているの かなという感じは受けています。
地域のなかでのマグネットホスピタルのイメー ジは?座長(有賀) ありがとうございます。先ほどと 同じような視点なのですが,稲垣先生が言われた,
「町は大きなホスピタル」というのはよくわかりま すし,救急に取り組もうが,何に取り組もうが,患 者さんたちは包括的にその地域全体で生きているわ けですから,ぐるぐる回るわけで,よくわかります。
それが豊田市全体に広まっていくと先生はおっしゃ
いましたが,詰まるところ,このマグネットホスピ タルということでいきますと,取りあえず看護師さ んがどんどん先生の病院に集まっていって,周辺の 病院は場合によっては看護師さんがいなくなる,逆 に,どちらかの病院に救急患者さんが殺到するとも う1つの病院が潰れるなどのことも考えられます。
どこかがリーダーシップをとるにしても,農耕社会 ではありませんが,みんなが生きていかなければい けないということがあります。病院と病院とが調和 の取れたかたちでの豊田市全体への広がりのなかで、
どのようであるかというところを説明いただきたい。
つまり,もう少し具体的に,病院が潰れないことも 含めて,どのように先生はイメージしていらっしゃ いますか。
稲垣 例えば,私が病院の位置づけを急性期高度 医療に限ると言ったのは,周辺の中小の民間病院に 対して,我々が療養型とか回復期リハビリに手を出 せば,そういう病院の経営権を圧迫するという観点 からですし,やはり周辺の病院に配慮は必ずしてい ます。それと500床そこそこですので,大病院とい っていいかどうかわかりませんが,大病院,それも 大企業の病院として地域の医療に貢献するという点 で,いちばんの貢献の眼目は,やはり人材育成とそ の拡散だと思っています。ですから全国から研修医 を集めて,養成して,それは愛知県内,場合によっ ては名古屋市にまで将来的には就職していくし,看 護師さんにしても,教育した人が数年経つと結婚な どいろいろなことを契機にやめていかれて,中小の 病院に就職される方がかなりいます。周辺の民間病 院の事務長さんはたぶんとても喜んでいます。うち の病院は看護師の離職率が,私が院長になった時点 で15%,現在で12%,昨年は10%です。
離職していく方は看護師をもうずっとやめるとい うことではなくて,高度医療をやっている急性期病 院では子育てをしながらは勤められないが,地域の 病院だったらやれるという方もいるものですから,
そういう意味で,我々は調和を壊すとは思っていま せんし,逆に言えば,愚痴はあまり言いたくないの ですが,公的病院優位という日本の考え方のなかで 押し潰されないように努力をするというレベルでさ せていただいているということが現状です。
座長(有賀) 今日,タクシーの運転手さんが,先 生の病院を絶賛していまして,公立病院を引き合い に出してこんなに違うんだとずっと私に言い続けて 医
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