金融機関は、資金提供者、モニタリングの 実行者としてPFI事業の重要なプレーヤーであ ることから、地元企業主体によるPFI事業への 信用金庫の支援は本業そのものと言える。ま た地元企業の他、発注者側の行政としても地 域内の資金循環、税収の増加、地元での雇用 増加等が見込め、住民サイドも地域ニーズを より多く取り入れた公共サービスの提供が期 待できるため、信用金庫による事業の支援は 地域貢献としてもとらえられる。
よって積極的な役割の発揮が期待されるが、
その内容は地元企業に対するものと行政に対 するものとに分けられる。ちなみに「リレー ションシップバンキングの機能強化計画」に おいてPFIへの積極的な取り組みをあげている 信用金庫も少なくない。貸付ベースでみれば、
実際に取り組みを実施済みのところもいくつ
か存在する(図表18)。
(1)地元企業に対する役割
イ.地元企業の知識・ノウハウの蓄積等を目 的とした研究会・勉強会の開催
信用金庫が中心となってPFIに関する研究 会・勉強会を開催することも考えられる。前 述したように研究会・勉強会の目的は、地元 企業のPFIに関する知識の習得のほか、研究会 メンバー同士の情報共有、企業間のネットワ ーク形成を図ることである。
三重県を地盤とする地方銀行の百五銀行で は、2002年10月〜2003年9月までの一年間にわ たり三重PFI研究会を主催した。参考までに内 容等を紹介しよう。
百五銀行がインターネット等で研究会開催 の告知をした結果、地元の建設会社、維持管 理会社、運営会社等の計30社程度の他、大手 ゼネコンも会員となった。地元企業は、他業 種の地元企業と接点を持てたことに加え、大 手企業とのパイプを太くすることができた。な お、研究会の運営は、会員からの参加費6万円 によって行われている。
図表18 信用金庫のPFIへの取組み状況
(備考)(社)全国信用金庫協会「信用金庫(全314金庫)における、平成15年度上半期の『リレーシ ョンシップバンキングの機能強化計画の進捗状況』の概要」より信金中金総合研究所作成 実
施済 み 実 施 予 定
うち2003年3月末以前から(貸付を)実施しているが2003年度上半期未実施 1 うち2003年3月末以前から(貸付を)実施し2003年度上半期も実施 1
2003年度上半期から(貸付を)実施 3
計 5
2003年度中に(貸付を)実施予定 2
2004年4月以降(貸付を)実施予定 1
すでに諸準備が整い案件発生時に(貸付を)実施予定 1
未定 10
計 14
2003年度上半期貸付実施件数 4
(貸付実行額) (40億円)
(単位:件)
研究会の具体的な内容は、研究会に参加し た企業同士でコンソーシアムを組み、PFI事業 に応募することを最終的な目標としているた め、PFIの概要の説明からはじまり、事例紹介 を経て契約や事業性評価等の実践的なものに までおよんでいる(図表19)。また、PFI事業 の経験がある一流のコンサルタントや公認会 計士、弁護士等が講師を務め、生の情報を伝 えることにより地元企業の意欲向上を図った。
実際、この研究会に参加した地元企業のう ち何社かが大手ゼネコンと組んでPFI事業に応 募し、百五銀行は、当該コンソーシアムに対 し関心表明書を出した。
ロ.競争力のあるコンソーシアム形成に向け たコーディネーター機能の発揮
信用金庫は、地域において多くの 取引先を持ち、経営内容や経営状況 なども把握しているため、コーディ ネーター機能の発揮によって信頼の 置けるコンソーシアム形成に貢献で きる。具体的には異業種交流会、既 存の会員組織等を通じた地元企業同 士のマッチングの促進などである。
また究極的には、自らの主導のも と地元企業を集めてコンソーシアム を形成することも考えられるが、こ れには相応のマネジメント能力と技 術面・価格面等での専門知識が必要 となることから、長期的にとらえる 必要があるだろう。
ハ.ビジネスプランに妥当性を持たせるため の審査能力の発揮
地元企業からの要請があれば、PFI事業の事 業計画策定において事業リスク・事業採算を 見極め、ビジネスプランに妥当性を持たせる などの支援を行うこともできるであろう。ア ドバイスを通じてファイナンスまで実行でき れば、信用金庫にとって大きなメリットにな る。
ただし、PFIのようなプロジェクトファイナ ンスは特定の企業の信用力ではなく、当該プ ロジェクトからのキャッシュフローが重要と なるため、当該事業自体の評価やキャッシュ フローの試算等が特に重要となるが、信用金 庫のプロジェクトファイナンスにかかるノウ
回 数
(開催日)
1回
(2002.10.22)
2回
(2002.11.21)
3回
(2002.12.19)
4回
(2003.1.22)
5回
(2003.2.20)
6回
(2003.3.19)
7回
(2003.4.17)
8回
(2003.5.22)
9回
(2003.6.19)
10回
(2003.7.23)
11回
(2003.9.19〜9.20)
まちづくりとPFI
三重県におけるPFI事業の動向 PFIとプロジェクトファイナンス
―PFI事業に携わっていくための基礎知識―
PFI事業参画のためになすべきこと PFIの現状と課題
(手続きの流れ、評価のポイント等)
調布市立調和小学校PFI事業の概要 行政がPFIの導入を決めるまで
―PFIで求められる民間のノウハウとは―
桑名市図書館等複合公共施設特定事業の概要 四日市市におけるPFIの取り組み
国内PFI案件に関するプロジェクトファイナンスにつ いて
桑名市図書館等複合公共施設特定事業の概要 PFI事業契約の意義
VFMについて
PFI事業のVFM評価と事業キャッシュフロー分析①
PFI事業のVFM評価と事業キャッシュフロー分析②
『地方におけるPFIに向けての提言』(講演、交流会、
パネルディスカッション)
演 題
図表19 三重PFI研究会の演題
(備考)百五銀行資料より信金中金総合研究所作成
ハウの蓄積は未だ十分ではないという指摘も ある。この点で事業評価を行う専担者の配置・
育成など組織的対応が一層必要となろう。
(2)行政に対する役割
イ.PFI導入に向けた行政の意識改革・体制づ くりの促進
PFI事業では、行政、民間事業者および金融 機関の三者のPFI事業に対する認識一致のレベ ルが事業の成否を左右する重要なポイントに なる。地元企業、金融機関がPFI事業に積極的 であっても行政の認識が低ければ、PFI事業は 行われない。よって、普段から地元行政との 深いつながりを持つ信用金庫は、PFI事業の受 注を目指す地元企業と共同しPFI導入に向けて 行政の意識改革を促すことも考えられる。
具体的な方法の一つとしては、研究会、勉 強会への参加機会の提供が挙げられる。実際、
先ほど紹介した三重PFI研究会では、地元行政 がオブザーバーとして参加していた。また、
PFI導入で先行している行政の情報を還元する などによって、PFI事業への認識を高め、実際 にPFIに取り組むための専担者の配置、研究チ ームの組成等を後押しすることもできる。ちな みに、岡山市役所では、PFI法の施行後間もな い2000年4月に総合政策部内にPFI推進班が設 置され、専担者がついてPFI事業を進めている。
ロ.情報提供等による事業の企画立案のサポート 信用金庫は地域の事情を良く知っている者 の一人として、相談役的立場から事業の企画 立案をサポートすることもありえる。特に、地
元企業のPFI事業参画を促進するという意味で は、行政側が①地域ならではの提案など非価 格面にウェイトを置いた提案書の評価方法の 導入、②実際のサービス利用者の審査員へ招 聘、③投資負担の軽減のための応募者への一 定金額の支払などを検討できるよう先進事例 の情報提供をすることなどが考えられる。た とえば四日市市では二次提案で次点以下とな った企業に対し200万円を支払っており、こう した情報を提供することなどが考えられる。
さらに行政の意識改革の促進と並行して、新 たな施設整備へのPFI導入を行政に対し積極的 に提案することも考えられる。
これらの役割発揮を通じて、一定地域内で 年間一案件以上のPFI導入が行われれば、地元 企業にとってもPFI事業参画のインセンティブ となりえるだろう。
おわりに
最近、PPP(Public Private Partnerships)と いう言葉がよく使われている。PPPとは、行 政と民間事業者・NPO・住民とのパートナー シップに基づく行政サービスの民間開放を表 す概念であり、民間事業者の創意工夫による 財政負担の軽減と行政サービスの質的向上の 実現を目的としている。今回取り上げたPFIは PPPの一手法として位置づけられるが、PPPに はその他、公共施設の管理運営において清掃・
警備など一部の業務のみを民間事業者に委託 する「業務委託」や公共施設等を行政が建設 した後、その管理運営を民間事業者に委ねる
「管理運営委託」等が含まれる。