スペクトル分解
固有値と固有ベクトルの考え方が本質にあるので,このことについて簡単にまとめ ておく.
行列A = (
a b c d
)
に対して
A~p=λ~p · · ·1
を満たすベクトル~p(~p6=~0),スカラーλが存在するとき,~pをAの固有ベクトル,λ をAの固有値という.
1 より(A−λE)~p=~0となり,~p6=~0であるから A−λE =
(
a−λ b c d−λ
)
は逆行列をもたないので
(a−λ)(d−λ)−bc= 0
すなわち λ2 −(a+d)λ+ (ad−bc) = 0 · · ·2
が成り立つ.2 をAの固有方程式という.2 の解をα,βとし,λ =αに対する固 有ベクトルを~u,λ=βに対する固有ベクトルを~vとすると
A~u=α~u · · ·3 A~v =β~v · · ·4 このとき,次が成り立つ.
α6=β =⇒ u //~ \ ~v · · ·(∗)
証明 ~u//~vと仮定すると,零でないスカラーkを用いて~v =k~uと表すことがきるの で,これを4 に代入すると
A(k~u) =β(k~u) k 6= 0より A~u=β~u · · ·5
3,5 から,(α−β)~u=~0を得る.これは,α6=β,~u6=~0に反するので,(∗)
が成り立つ. 証終
行列Aが異なる2つの固有値α,βをもつとき,固有値αに対する固有ベクト ルを~u (~u6=~0),固有値βに対する固有ベクトルを~v (~v 6=~0)とする.
このとき,2つの1次変換を表す行列F,Gを F ~u=~u, F ~v =~0, G~u=~0, G~v =~v で定義すると,次が成り立つ.
F2 =F, G2 =G, F G=GF =O, F +G=E, A =αF +βG
証明 P = (
~ u ~v
) とおくと,~u //\~vであるから,行列P は正則である.
F P = (
~u ~0
),F2P =F(F P) = F (
~u ~0 )
= (
~ u ~0
)
よって,F2P =F P であり,P は正則であるから F2 =F F GP =F(GP) = F
( ~0 ~v )
=
(~0 ~0 )
よって,F GP =Oであり,P は正則であるから F G=O 同様にして G2 =G,GF =O
(F +G)P =F P +GP = (
~ u ~0
) +
(~0 ~v )
= (
~u ~v )
よって,(F +G)P =P であり,P は正則であるから F +G=E AP =
(
α~u β~v )
=α (
~ u ~0
) +β
( ~0 ~v )
=αF P +βGP
= (αF +βG)P
上式から,P は正則であるから,A=αF +βG 証終 A =αF +βGをAのスペクトル分解といい,この式の両辺をn乗すると
An =αnF +βnG
なお,F,Gは,αF +βG=A,F +G=Eにより F = A−βE
α−β , G= A−αE β−α
となり,A=αF +βG (α, βはAの固有値)をみたすF,Gは一意的に定まる.
3
数学III:微分法(関数の増減),積分法(面積)(1) 05t <2πにおいて,x(t) = 0,y(t) = 0を解くと,t= π 4, 5π
4 である.
(2) π4 ごとに動点Pの座標をとると,x軸およ びy軸に関する対称な点の座標がわかる.
右の図のように,t=t1 (05t1 < π)に対 する点をP1とし,x軸およびy軸に関し てP1と対称な点をそれぞれQ,Rとする.
このとき,Q,Rはそれぞれt= 3π2 −t1, t=t1+πに対応する点である.
π 5 t1 < 2πにおいても,変域に注意し てに求めることができる.
O y
x
√1
−√12 2
1
−1
−1 1
t=0
t=π4
t=π2 t=3π4
t=π
t=5π4
t=3π2 t=7π4
P1
Q R
(3) yをxの関数として表し,増減を調べグラフの概形を描く.
(4) (2)で示したでグラフの対称性に注意して,第1象限にある曲線とx軸で 囲まれた部分の面積を求め,それを4倍するとよい.
4
数学B:空間のベクトル(四面体の体積) (1) −→OAおよび−→
OCに垂直なベクトルを求める計算法に外積(ベクトル積)があ る.なお,外積は高校数学の範囲外であるが,空間ベクトルで登場する図 形の面積および体積の計算にも利用することができる.外積について次の ページに掲載した.
(2) 外積を知っていれば,(1)を利用して本題を解かせる問題構成も理解できる.
(3) 05b5a51,05c51,05d51であるから,aとbの間の関係式に 注意しながら,計算する必要がある.
V = bc+ (a−b)d 6
において,b =0,a−b=であることに注意して場合分けを行う.
i) b >0,a−b >0のとき V 5 b·1 + (a−b)·1
6 = a
6 5 1 6 ゆえに V 5 1
6 (等号はa= 1, 0< b <1, c= 1, d= 1のとき) ii) b= 0のとき V = ad
6 5 1 6 ゆえに V 5 1
6 (等号はa= 1, 05c51, d= 1のとき) iii) a−b= 0のとき V = bc
6 5 1 6 ゆえに V 5 1
6 (等号はb =c= 1, 05d51のとき)
外積 ( ベクトル積 )
2つのベクトル~a= (a1, a2, a3),~b= (b1, b2, b3)が平行でないとき,ベクトル (
a2 a3 b2 b3
,
a3 a1 b3 b1
,
a1 a2 b1 b2
)
は,~aおよび~bに直交する.このベクトルを,~aと~bの外積(ベクトル積)と言い,~a×~b
で表し(内積をスカラー積とも言う),その成分は
~a×~b = (a2b3 −a3b2, a3b1 −a1b3, a1b2 −a2b1) であるから,~b×~a=−~a×~bが成り立つ.また,その大きさについて
|~a×~b|2 = (a2b3−a3b2)2+ (a3b1−a1b3)2+ (a1b2−a2b1)2
= (a12
+a22
+a32
)(b12
+b22
+b32
)−(a1b1+a2b2+a3b3)2
=|~a|2|~b|2−(~a·~b)2
であるから,~a×~bの大きさは,~a,~bの張る平行四辺形の面積に等しい.
~a×~bと~cのなす角をθ (05θ 5π)とすると (~a×~b)·~c=|~a×~b||~c|cosθ
絶対値をとると
|(~a×~b)·~c|=|~a×~b||~c||cosθ|
~a
~b
~c
~a×~b
h θ
|~a×~b|
~a,~b,~cの張る平行六面体について,~a,~bの張る平面を底面とすると,|~c||cosθ|は,
その高さhであるから,この平行六面体の体積V1は V1 = |(~a×~b)·~c|
−→OA =~a,−→
OB =~b,−→
OC =~cとすると 四面体OABCの体積V は V = 1
6|(~a×~b)·~c|
また,対称性により,|(~a×~b)·~c|=|(~b×~c)·~a|=|(~c×~a)·~b|が成り立つ.
補足 本題(2)で,~a= (a, b, 0),~b= (c, 0, d),~c= (1,1,1)とすると
~a×~c= (b,−a, a−b),(~a×~c)·~b=bc+ (a−b)d よって,四面体の体積V は V = 1
6|bc+ (a−b)d|
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数学A:確率(余事象の確率),数学C:確率分布(2項分布)(1) まず個別の事例について考え,全体的な場合の数を求めればよい.
(2) 色の変化が1回も起きない場合,および色の変化が1回だけ起きる場合の 確率を考える.求める確率は,これらの余事象の確率である.
(3) 色の変化する場所を選ぶ組合せとして考えるとよい.
(4) (3)の結果に次式を適用するだけである.
∑n k=0
k·nCk =n·2n−1