(%)
0 20 40 60 80
薬物の末端乱用者,薬物犯罪組織に対する 取締りのいずれも困難になっている
薬物犯罪組織に対する取締りは問題ないが,
薬物の末端乱用者の取締りが困難になっている 薬物の末端乱用者に対する取締りは問題ないが,
薬物犯罪組織に対する取締りが困難になっている
薬物の末端乱用者,薬物犯罪組織に 対する取締りのいずれも問題ない わからない
69.4
28.3
1.7
0
0.6 図1-58 薬物犯罪取締りの現状
(注)アンケート調査は,平成15年3月,都道府県警察の薬物捜査部門に所属する警部補以下の階級の警察官180人に対し,犯罪捜査活動,情報収集活動 等における経験等に基づき回答するよう依頼したものである。
イラン人薬物密売グループに対する集中取締りで検挙したイラン人薬物密売人は,「密売グループのボスか ら密売車両や住居の提供を受け,給料制で薬物の密売を行っていた」,「密売する薬物はグループの運搬役から定期的に供 給を受け,その売上金は,自分の給料分を差し引いた金額をグループに渡していた」などと供述していたが,その捜査の 過程で,イラン人密売人(22)が売上金を本国に不正送金していた事実が明らかとなり,14年12月,雑貨店を経営する イラン人(38)らを麻薬特例法,銀行法違反等で検挙した。本件は,イラン人密売人が密売で得た約700万円を雑貨店 を装う地下銀行の送金システムを利用して,イランに送金し,薬物犯罪収益の取得事実を仮装・隠匿した事案であるが,
地下銀行は11年から検挙されるまでの間,正規の貿易を装い,アラブ首長国連邦(UAE)等23か国を経由して,約15 億円をイランに送金していたことが明らかとなった(愛知)。
事例
薬物犯罪組織の取締りが困難な点(複数回答)については,「薬物の不正取引の形態が巧妙化し,犯罪の発 見,立証が困難となった」と回答する警察官が67.3%と最も高い(図1-59)。巧妙化する薬物の不正取引の形 態については,図1-60のとおりであり,携帯電話,インターネット等の通信手段を用いたり,警察官の職務 質問等を警戒して,「薬物を所持せず,道路,公園等に隠匿して,取引を行うようになった」ことを挙げるな ど,警察の取締りを逃れるため,薬物の取引方法や隠匿場所を巧妙化させていることが明らかとなっている。
また,42.4%の警察官が「情報収集が困難になった」と回答しているが,その理由として,「捜査員が不足 しているため,情報収集活動が十分に行えない」,「経験豊富なベテラン捜査員が減少している」ことなどから
「核心情報を取れる捜査員が少なくなった」が挙げられている。「犯罪組織からの報復を恐れ,自分以外のこと は話さない者が多い」,「捜査に対する警戒が強くなり,不要なことは話さなくなった」,「自供しても量刑が科 され,被疑者にとって得がない」を理由に挙げる警察官も多い。
組 織 犯 罪 と の 闘 い
(%)
0 20 40 60 80
その他 視察内偵が困難になった 取調べをしても供述が得られず,
突き上げ捜査が困難になった 情報収集が困難になった 薬物の不正取引の形態が巧妙化し,犯罪の発見,
立証が困難になった 67.3
42.4
35.8
21.8
6.7 図1-59 薬物犯罪の取締りが困難な点(複数回答)
(%)
0 20 40 60 80
その他 取引の場所を度々変えるようになった 薬物を直接所持せず,道路,公園等に隠匿して,
取引を行うようになった インターネットを用いて取引を行うようになった 宅配便や郵便を用いて,取引を行うようになった
携帯電話等の通信手段を用いるようになった 65.5
40.9 36.4 36.4 32.7 3.6
図1-60 巧妙化する薬物の不正取引の形態(複数回答)
ウ イラン人等の薬物犯罪組織の実態
このほか,薬物犯罪組織の実態について,多数,警察官の実感が寄せられている。
イラン人等の薬物犯罪組織については,「所在を転々と変え,名前を変え,携帯電話の番号を変えるなど,
組織の実態がなかなかつかめない」,「検挙しても,組織のことについて全く供述しない」,「外国人であるため,
犯行後すぐに国外に逃亡され,追跡捜査が困難だ」,「本国に強制送還されても,偽造パスポートを使い,すぐ 再入国されてしまう」などがあり,これらに対しては,「通信事業者や他の行政機関との協力関係を構築すべ きだ」や「入国管理局に対する照会業務に時間がかかる。迅速化,簡素化すべきだ」との意見が挙がっている。
エ 薬物犯罪組織壊滅のために強化すべき点
薬物犯罪の取締りが困難ななか,薬物犯罪組織の壊滅のため,今後,最も強化すべき点については,「新た な捜査手法を整備する」ことを挙げた警察官が34.5%と最も多い(図1-61)。具体的には,「通信傍受を効果 的に実施できるようにしてほしい」,「警察官による薬物の譲受け捜査(注)を積極的に実施すべきだ」,「犯罪組 織に対抗するためには,全く新しい捜査手法も検討すべきだ」などの声が聞かれた。
次いで,強化すべき点として,「捜査員を増やす」を挙げる警察官が25.3%に上っている。その理由として は,「発生した事件に対処することに業務が忙殺され,犯罪組織に対し継続的な視察内偵活動が行えない」こ とや「来日外国人による犯行が増加し,裏付捜査に手間暇がかかり,十分な組織犯罪対策が行えていない」こ とを挙げている。
また,「情報分析を強化する」べきと回答した警察官も20.7%おり,「入管,税関等の関係機関との連携がま だ十分とは言えない。人事交流等を活発に行い,情報を共有するなど,更なる連携強化をすべきだ」とする意 見が挙がっている。
第
1 章
組 織 犯 罪 と の 闘 い
(注)譲受け捜査とは,薬物に関する犯罪捜査に当たり,警察官等が薬物の密売人等に接触し,薬物を譲り受けるなどする捜査手法をいう。
0 10 20 30 40(%)
その他 情報収集のための装備資機材を整備する 情報分析を強化する 捜査員を増やす
新たな捜査手法を整備する 34.5
25.3
20.7
16.1
3.4 図1-61 薬物犯罪組織壊滅のために強化すべき点
に検挙された事件で,警察庁に報告のあったもののなかから,35件を抽出して,その実態に関する詳細な調 査(以下「共犯事件に関する調査」という。)(注)を行った。
その結果,暴力団員等と来日外国人との関係は,多種多様であるものの,次のような傾向が認められた。
暴力団員と来日外国人の接点は,我が国の国際化の進展の影響で,あらゆる日常的な場面において認められ る。共犯事件に関する調査においては,暴力団員等と来日外国人が共犯関係を構築した経緯として,以下のよ うなものが見受けられた。
○テキ屋を資金源の一つとしている暴力団員が,日当稼ぎのためにテキ屋の手伝いをしていた中国人と親交 を持ち,当該中国人又はその者から紹介された中国人と共犯関係を構築するに至った。
○暴力団員及びロシア人の双方が,暴力団員の所属する暴力団の縄張内にあるロシア人が多く集まる飲食店 に客として来店した際に知り合いとなり,何度か飲食を共にする過程で相互に共犯関係を構築するに至っ た。
○日本に永住した中国残留孤児の子息である暴力団員が,他の暴力団員と不良中国人グループとを結びつけ,
双方が共犯関係を構築するに至った。
○暴力団幹部が,韓国からの留学生を配下の暴力団員とし,その者に指示して韓国人の友人数人を集めて,
共犯関係を構築するに至った。
○日本人の不動産ブローカーが,取引先の中国人から犯行を持ちかけられ,知人の暴力団員を紹介したとこ ろ,当該暴力団員と中国人が共犯関係を構築するに至った。
○暴力団員が商用で中国に渡航した際,常習的に集団密航を行っているとみられる中国人と面識を持ち,帰 国後,当該中国人から紹介を受けたと自称する在日中国人から,集団密航の手伝いをするように依頼され,
共犯関係を構築するに至った。
ア 集団密航事件における役割分担と収益の分配
集団密航事件は,特に中国人と暴力団員が共謀して敢行されることが多い犯罪である。
大半の集団密航事件は,中国人が首謀者であるため,密航者の募集,密航計画の立案,密航代金の設定と徴 収,密航用船舶の手配,日本における船舶の接岸場所の選定等は,すべて,中国人が行っている。暴力団員は,
日本に在住する中国人から,接岸場所での密航者の受入れと輸送,密航者の一時的な滞在場所の確保とそこで の監視等の役割を分担するよう依頼されるが,集団密航計画の全体を把握していない場合が多い。
組 織 犯 罪 と の 闘 い
(注)共犯事件に関する調査では,10年から14年までの間に全国の都道府県警察が検挙し,その概要が警察庁に報告された事件で,暴力団員等と来日外国 人が共犯関係等何らかの関係を構築して敢行したと思われるもののうち,約百数十件の報告内容を精査し,それぞれの事件の捜査過程で,暴力団員 と来日外国人の関係が比較的解明されているものを35件抽出した。さらに,その35件の事件について,警察庁職員が当該事件の捜査を担当した都道 府県に赴き,捜査記録を閲覧するなどして,
①暴力団員等と来日外国人が接点を持ち,共犯関係を構築するに至った経緯
②暴力団員等と来日外国人の犯行時における役割分担
③犯罪収益の分配状況