これは、まず、EU内におけるバイオ燃料 生産が、LCA(注)16ベースで見ると、生産過程 で多くのCO2を排出しているとの批判に応え ようとするものである。
さらに、地球環境への影響を考慮し、原則 として生物多様性や炭素貯蓄の高い土地では 原料生産をしないことも定めた。これは、イ ンドネシアやマレーシアにおいて原生熱帯雨 林や泥炭地を乱開発し、新たにパーム油から バイオディーゼルを生産して輸入しようとす る動きをけん制するものである。
3 .わが国における廃食油からのバイ
手飲食チェーンなどを主要顧客として、2.5 トン〜3.5トン/日(1,200トン以上/年)もの 廃食油回収を専門的に行い、㈲染谷商店に供 給している。
ロ .「TOKYO油田2017」―回収ステーション ネットワークの構築
㈱ユーズは、会社設立から10年たった07 年、10年後の2017年までに東京中の廃食油 を 回 収 す る シ ス テ ム を 作 り 上 げ よ う と、
「TOKYO油田2017」プロジェクトを開始し た。全国の廃食油40万トン(うち業務用20 万トン)の少なくとも1割は東京都に集中し ていると思われるので、この「東京油田」の 本格的な開発に乗り出そうというのである。
これを機に始めたのが、「回収ステーショ ン」ネットワークの構築であった。これは、
各地域の飲食店などに家庭からの廃食油の回 収拠点になることを依頼し、上述の事業者か らの回収ルートに合わせて、年間6〜12回、
廃食油を回収して回るというもので(注)19、現 在、拠点数は約100か所に達している。
回 収 ス テ ー シ ョ ン の 運 営 者(当 社 で は、
「TOKYO油田パートナーズ」と呼んでいる。) は、年会費1万円を支払って当社に回収を委 託することになる。運営者の顔ぶれは多彩で ある。居酒屋やレストラン、弁当・惣菜・パ ン・せんべいなどの食品販売店が多いが、薬 局やフィットネスクラブ、ヘアサロン、花屋、
牛乳配達所、高島平などの団地のマンション 組合、公共施設、寺院、NPO、さらには個 人宅もある。
各ステーションには、当社制作のポスター やステッカー、チラシなどを置き、PRに努 めてもらっている。店頭に大型の容器(ペー ル缶)を置き、顧客などが持参したペットボ ト ル か ら 詰 め 替 え て も ら う こ と が 多 い が、
ペットボトルのまま預かったものを、そのま ま回収するケースもある。運営者は、廃食油 を持ち込んだ人にポイントカードや10%オ フ券を贈呈したり、花一輪やせんべい一枚を プレゼントしたり、「アースデイマネー」と いったエコマネーを配ったりしている。
「廃食油回収します」とポスターを掲げたと ころ、新たな顧客が来店するなど、運営者と しては、「環境に貢献しているお店」としての イメージ向上につながり、新規顧客の開拓に かなりの効果が現れているとのことである。
(注)19 .その発端は、「アースデイ東京」を始めとする各種の環境イベントで、主催者たちの「当日の野外発電機の燃料を自分た ちが集めた廃食油で賄いたい」との想いに協力したことだった。しかし、野外イベントでは1トン/日ものバイオディーゼ ルが必要になるので、主催者たちは1か月くらい前から回収を始めなければ間に合わない。そこで、「常設の回収所を作る から、引き取りに来て欲しい」と要望されて、今日の「回収ステーション」づくりのアイデアにつながったという。
図表3 エステルボーイ
(備考)㈱ユーズ提供
ハ.油と森の交換キャンペーンを実施 家庭からの回収は、回収ステーションの協 力により徐々に増えてきてはいるものの、定 着させるのは必ずしも容易ではないようだ。
初めは「環境によいから」と持ってきてくれ る人は増えるものの、それだけでは次第に飽 きられて、頭打ちになりがちであるという。
そこで、継続して廃食油を持ち込んでもら うために、現在、同社は、「TOKYO油田eco マネー」という独自の地域通貨との交換事業 に 力 を 入 れ て い る。 単 位 は、1yuden=1円。
廃食油回収10回につき1,670yudenをプレゼン トする。同社では、04年、福島県の只見森 林組合に協力し、森林保全事業として600坪 の森林を購入しているが、これを「TOKYO 油田の森」」と名付け、1,670yudenでその1坪 分 の 土 地 を 贈 与 し て い る。 こ の ほ かYuden は、㈲染谷商店の給油所でバイオディーゼル と交換できる(注)20。
(2 )バイオディーゼルを製造・販売するガ ソリンスタンド:油藤商事㈱(滋賀県)
地域の中で資源循環させるのが「本当のゼ ロエミッション」であるとして、ガソリンス タンドを経営しながら、廃食油を回収しバイ オディーゼルを製造・販売してきたのが、滋 賀県の油藤商事㈱である(注)21。
同社は、97年から、週2〜3回(6〜7㎘/月)、 100か所余りからてんぷら油を回収しバイオ デ ィ ー ゼ ル を 自 社 生 産 し て い る(図 表4)。
事業所からの回収が多いが、一般家庭からも 回収している。ただし、冬場に白く固まって しまう動物油はバイオディーゼルには適さな いので受け入れていない。
なお、事業系廃食油は、以前から産業廃棄 物として回収され、潤滑油や塗料の原料、飼 料、肥料など、様々に処理されてきている。そ の意味で、絶対量に限りがあるとも言え、同一 地域内での新規参入は容易ではないという。
現在の製造装置は、次章で述べる滋賀県環 境 生 協 が 開 発 し た「エ ル フA‑3型 」 を 改 良 し、最大500ℓ/日の処理まで可能にした設 備で、ほぼフル稼働の状態にある。半手動型 であり、手が空いたときにスイッチを入れて おけば、あとはタイマーで止まるようになっ ている。
短時間で精製できると謳っている製品も出 回っているが、当社は、それでは充分な品質 はなかなか確保できないと考えている。そこ で、当社は、まず大きな水槽に廃食油を貯蔵 し、不純物を沈殿させたうえで3層に区分け し、およそ8割の上澄み部分だけをA級とし
(注)20 .09年8月現在、約100yuden/ℓ。なお、以前は「ユーズマネー」と呼んでいた。
21.同社青山裕史専務取締役に取材した。
図表4 バイオディーゼル計量機
(備考)油藤商事㈱提供
てバイオディーゼル製造に回している。メチ ルエステル化した後も、遠心分離機でさらに 不純物を分離するなど、6日かけて精製して いるので、極めて高品質の製品を提供するこ とができる。
当社製品は、こうした製法による高い品質 が 認 め ら れ て、 第5章 で 述 べ る「品 質 確 保 法」にも適合した。同法に適合するには、相 応の設備投資と製造ノウハウが必要になるの で、一般の中小企業やNPOでは対応が難し いと言われていた。しかし、当社のような規 模の中小企業でも、きちんとした対応をすれ ば「特定加工業者」になれることを実証した のである。
バイオディーゼルの販売先は地元が9割だ が、当社ホームページを通じて、全国からも 販売依頼が届いている。四輪駆動車などの ユーザーや、各地の研究機関からの依頼もあ る。バイオディーゼルは揮発性がなく危険物 扱いにはならないので、こうした依頼に対し ては、エンジンオイルなどと同様の仕様の缶 に詰めて、宅配便で送付している。
当 社 で は、B5を 製 造・ 販 売 す る こ と に よって、一般のガソリンスタンドとの差別化 を図り、新規顧客を獲得することに成功して いる。バイオディーゼル自体の総売上げに占 める比率はごくわずかであり、製造コストを 考えれば持出しであるが、「環境にやさしい バイオ燃料」を求めてわざわざ遠方から立ち 寄 る 顧 客 が 増 え、 結 果 と し て、B5燃 料 の 95%を占める軽油の販売量を増やすことが
できている。これが、当社のビジネスモデル だと考えているとのことである。
(3 )行政が先頭に立って普及を進めてきた京 都市―㈱レボインターナショナル(京都府)
イ.最大規模の製造設備を有する京都市 今日、全国約50の自治体で取り組まれて いる廃食油回収の先鞭をつけたのは京都市で
ある(注)22。同市は、自治体施設としては国内
最大のバイオディーゼル製造設備を有し、わ が国におけるバイオディーゼルの利用促進を 先導してきた。
そのきっかけは、97年12月に開催された
「気候変動枠組条約京都会議(COP3)」だっ た。同会議を迎え入れるに当たり、京都市で は、96年10月からバイオディーゼルの長期 走行試験を開始し、97年8月には家庭系廃食 油の回収実験も開始した。そして、同年11 月から、約220台の全ゴミ収集車に廃食油を 原料としたバイオディーゼル(B100)を導 入したのである。さらに2000年4月には、市 バス約80台(全体の2割)にもB20(バイオ ディーゼル20%混合)を試験導入した。
バイオディーゼルの車両に与える影響につ い て、 京 都 市 は、98年 か ら「技 術 検 討 会 」 を設けて綿密に調査してきた。01年に「京 都市バイオディーゼル燃料化事業技術検討 会 」 を 組 織 し、02年3月 に は、EUや 米 国 の 規格なども参考にしながら、新型車両にも適 応可能なB100の暫定品質規格として「京都 スタンダード」を策定している。
(注)22 .京都市環境政策局循環型社会推進部循環企画課堀寛明担当課長、および京都市廃食用油燃料化施設山田達也係長に取材した。