が、09年2月から義務付けられた「特定加工 業者」の認定である。
バイオディーゼルの製造は基本的には簡単 なため、時折り、粗悪な廃食油燃料が出回る ことがあり、各地でエンジントラブル等が引 き起こされてきた。副産物であるグリセリン の不法投棄が摘発されたこともある。そこ で、経済産業省は、京都市における暫定規格 等 を 参 考 に し な が ら、08年2月、JIS規 格
「自動車燃料―混合用脂肪酸メチルエステル
(FAME)」 を 制 定 し、 さ ら に09年2月、「揮 発油等の品質の確保に関する法律(品質確保 法 )」 の 改 正 施 行 に よ り、 軽 油 の 強 制 規 格
(法的に遵守する必要がある規格)として、
軽油へのFAMEの混合上限を5質量%以下と 定めるとともに、「特定加工業者」の事前登 録と品質確認を義務付けた(注)37。
「特定加工業者」とは、軽油についていえ ば、「軽油に脂肪酸メチルエステルを混和し て軽油(バイオディーゼル混合軽油)を生産 する事業者」を言い、同事業者に対し、「販 売又は使用する際に軽油規格に適合すること を確認する」義務を課したものである(注)38。 特定加工業者は、基準に適合した混合設備の 使用が義務づけられる「特定加工品質確認計 画」の認定を受けた場合であっても、3か月 以内に1回の頻度で品質確認を行わなければ ならない。同法は、B5の自家消費であって も対象となる。
従来からの簡易型設備では、この認定を受
けることは困難であり、ほとんどの小規模事 業者や市民活動としてバイオディーゼル生産 を行ってきたNPO等では、現状では特定加 工業者の認定を得られていないという。
た だ し、 同 改 正 で は、B100に つ い て は、
国土交通省が定める「高濃度バイオディーゼ ル燃料等の使用による車両不具合等防止のた めのガイドライン」の遵守を求めるにとど まっており、事実上、自家使用を中心に当事 者間で合意の上でB100を使用することは、
依然として認められている。
このため、バイオディーゼルは、もともと ほとんどの場合、軽油取引税が免除される B100として消費されてきたので影響は少な いとの見方もあるが、不適切な燃料使用によ る不具合により、他者に危害を与える事例が 見られることが問題なのであるから、B100 においても、適切な品質確認が求められてい るといえよう。
一方、EU等ではB20が認められている国 も少なくない。京都市で続けられている実証 実験に基づき、B20の安全性や排ガス性状に 関する品質基準も早急に確立すべきだろう。
おわりに
第1章で述べたように、わが国では、依然
に比べ、より多くの白金などを触媒に使うた め割高にはなるものの、技術的な困難点はな いとされている。軽油はガソリンより安い上 に、燃費は通常、同等のガソリン車より25〜
30%良く、したがって、CO2排出量も少ない。
軽油は原油精製の過程で必ず一定割合が抽 出されるが、わが国ではガソリンの消費量に 比べ、軽油消費量が不釣合いに少ない。した がって、この点からも、ディーゼル乗用車の 普及を図り、まずは軽油のガソリンに比べた 消費量を増やすべきだろう(注)39。そうすれ ば、ガソリンの消費量が減り、CO2排出量の 削減に貢献することになる。
その上で、軽油を代替できるバイオディー ゼルの使用を増やせば、今度は軽油の使用量 も減り、さらにCO2排出量の削減が進むこと になる。
しかし、価格面で軽油より有利でなけれ ば、バイオディーゼルの普及は困難である。
したがって、安定した需要確保、普及拡大の ためには、廃食油回収のシステムづくりや、
燃料化施設整備への補助など、いっそうの促 進策が求められる。
また、B5はあくまで軽油として認識され るため、5%のバイオディーゼル分について も軽油取引税(32.1円/ℓ)が課税されてし まう。少なくともバイオディーゼル分につい ては、免税とすべきだろう。
確かに、廃食油回収によるバイオディーゼ
ル生産は、仮に全量回収に成功したとしても 40万トン程度の軽油を代替できるに過ぎず、
それ自体としては、地球温暖化対策に果たす 役割はわずかなものに留まらざるを得ないの も事実である。
しかし、廃食油をキッチン・ペーパーなど に吸い込ませて一般ごみとして廃棄処分して しまったり、ましてやそのまま下水道に流し てしまうのでは、多大な処理負担が生じてし まう。京都市の先進的な取組みは、行政と市 民、民間事業者が一体になって取り組めば廃 食油回収が可能なことを示してきた。それで も、現状では同様な取組みをしている自治体 および民間企業、NPO等諸団体が、合わせ ても200程度というのはあまりにも少ないと 言えないだろうか。環境に負荷を与えない循 環型社会形成への取組みとして、廃食油回収 はもっと推進されて然るべきだろう。
欧州では急拡大した菜種栽培も、わが国で は耕作放棄地が増大しているにもかかわら ず、充分な収入が得られないため、まだまだ 普及し始めたとは言い難い。しかし、菜種は 裏作として栽培でき、稲作や路地野菜の収穫 後の環境保全にも役立つ。冬季に裸地のまま では、残存肥料中の硝酸などが地下水汚染を 起こしたり、春一番で風食が起きたりするか らである。耕作放棄地の有効活用策として は、飼料米や大豆、麦などいくつもの選択肢 があるが、低温期に生育するため病虫害や雑
(注)39 .日本自動車研究所の試算によれば、乗用車の10%がディーゼルエンジンを採用した場合、ディーゼル車の高い燃費性能に より、運輸部門におけるCO2排出量は、200万トン/年削減される。さらに、日本石油連盟も、年400万㎘の燃料生産がガソ リンから軽油にシフトすれば、製油所におけるCO2排出削減量は170万トン/年に達すると試算している。これは、ガソリン のほうが、軽油よりも製造工程がより長くなるため、CO2排出量も増えるためである。松村[2006]p.25参照
草害もほとんどない菜種栽培も見直されてよ いのではないだろうか。
このほか、温室効果ガス削減の見地から、
より本格的にバイオディーゼルによる軽油代 替の普及を目指すのであれば、東南アジアや 中国など海外からの開発輸入も考えられよ う。これは廃食油循環を広げるにあたって も、バイオディーゼルの認知度を高め、使用 者を増やすという点から好影響を与えよう。
すでに、東南アジアでパーム油やひまわり油 からバイオディーゼルを生産し輸入すること
が目指されているほか、中国等で、ジャトロ ファ(ヤトロファとも呼ぶ。)や砂桃といっ た非食用油糧作物を原料としたバイオディー ゼルを生産し輸入しようという動きもある。
これらの開発輸入に当たっては、EUにお ける持続可能性基準の導入に見られるような 認証制度の導入も求められてこようが、いず れにせよ、バイオディーゼルの普及、ひいて は、化石燃料の削減に向けては、幅広い選択 肢が提供されて然るべきだろう。
〈参考文献〉
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石田正彦ほか「無エルシン酸・低グルコシノレートナタネ品種『キラリボシ』の特性」東北農研研報No.107(2007)
石丸美奈「欧州連合(EU)におけるバイオ燃料と農業政策の今後」共済総研レポート2008.10(2008)
経済産業省「特定加工業の手引き 平成21年揮発油等品質確保法改正関係」(2008)
経済産業省・バイオ燃料持続可能性研究会「日本版バイオ燃料持続可能性基準の策定に向けて」(2009年4月)
神戸税関「菜種の輸入」について(平成21年5月27日付)(2009)
澤山弘「わが国のバイオ燃料政策の動向−2015年を目途にセルロース系バイオエタノールの国産開始を目指す−」『信 金中金月報』(2009年7月号)(2009)
スロービジネススクール「国産菜種油が稀少なワケ」2007年11月1日付(2007)
田中信世「EUのバイオ燃料政策」㈶国際貿易投資研究所「国際貿易と投資」Winter2007(2007)
日本植物油協会「植物油ニュース」(02年10月2日付)(http://www.oil.or.jp/topNews/bn20021002.html)(2002)
NEDO海外レポート「欧米のバイオ燃料に関する新しい局面」No.1026 08.7.23(2008)
野中章久「燃料利用を視野に入れたナタネ生産振興と有機農業運動の連携の可能性」東北農業研究センター研究報告 110,pp.187−198(2009a)
野中章久「油かすの有機農家への販売は産地搾油ナタネの採算性を大きく改善する」平成20年度東北農業研究成果情報
(2009b)(http://tohoku.naro.affrc.go.jp/seika/jyouhou/H20/keiei/H20keiei013.html)
藤井絢子・菜の花プロジェクトネットワーク編『菜の花エコ革命』創森社(2004)
松 村 正 利「バ イ オ デ ィ ー ゼ ル 最 前 線 − 現 状 と 課 題 − 」 サ ン ケ ア ヒ ュ ー エ ル ス ㈱ 講 演 資 料(2004)(http://www.
kaichurinn.com/ronbun-matsumura.pdf)
松村正利『図解 バイオディーゼル最前線』工業調査会(2006)
ルーラル電子図書館「国内でのナタネ栽培とバイオディーゼル生産の環境保全的意義は?」2009.6.25(2009)(http://
lib.ruralnet.or.jp/libnews/nishio/nishio129.htm)