2. 8. 1 津波浸水の予測
今回、被害想定を行った想定地震は、大きな津波が発生する地震ではないため、こ こでは、千葉県および国が行った津波浸水予測結果を示す。
(1)千葉県の津波浸水予測
平成23年度に千葉県が行った津波浸水予測のうち、習志野市における最大津波高や 津波到達時間が予測されるのは、元禄地震と東京湾内の最大クラス津波(東京湾口10m)
の2ケースである。
習志野市における最大津波高と津波到達時間を表- 2. 8.1に示す。また、市内の最大 津波高が最も高い東京湾内の最大クラス津波(東京湾口10m)による想定浸水範囲と、
標高分布を重ね合わせたものを図- 2. 8.1に示す。
津波による河川への遡上は、計算最小メッシュである 12.5m 以上の川幅を有してい るものが対象とされ、習志野市では菊田川が対象となった。県による津波浸水予測結 果によると、いずれのケースにおいても、菊田川への遡上が認められるものの、市内 の陸上への浸水は認められなかった。なお、谷津川、高瀬川は県の津波想定の検討対 象外とされたことから、これらの河川と、これらの河川が接続する谷津干潟への遡上 は検討されなかった。しかし、予測される津波高や周辺の地盤高等から、これらの河 川等においても、菊田川と同様の状況となることが想定される。
表- 2. 8.1 最大津波高および津波到達時間
(防潮施設が機能しない場合、水位抽出点:習志野)
ケース名 最大津波高 T.P(m)
津波到達時間(分)
第一波 最大津波高 元禄地震による浸水範囲予測 1.5 79.9 155.6 東京湾内で想定される最大クラ
ス津波(東京湾口10m)での 津波浸水予測
2.3 46.8 59.4
図- 2. 8.1 東京湾内で想定される最大クラス津波(東京湾口10m)による浸水範囲
(2)国の津波浸水予測
中央防災会議は、平成24年(2012年)3 月31日に公表した第一次報告において、
最新の科学的知見に基づき、南海トラフで発生しうる最大クラスの地震・津波(南海 トラフ巨大地震)の検討を進め、50m メッシュの地形データ等を用いて海岸における 津波高等の予測結果を取りまとめた。また、平成24年(2012年)8月29日に公表し た第二次報告において、津波断層モデルの点検・修正等を行い、10m メッシュの地形 データ等を用いて、津波による浸水域・浸水深等の予測結果を取りまとめた。
南海トラフ巨大地震の断層モデルは合計11ケース検討された。これらの検討ケース における習志野市の最大津波高は3mと予測されているが、陸上への10ヘクタールを 超える浸水は認められないという結果となった。
千葉県における11ケースの最大値の最大津波高を図- 2. 8.2に示す。
図- 2. 8.2 最大クラスの津波高(11ケースの最大値、満潮位)
2. 8. 2 護岸被害の予測
護岸の被害予測は、以下の手法によって検討した。
① Ishihara & Yoshimine(1992)1)による液状化による体積圧縮ひずみとFL値の関係
を使用し、さらに1964年(昭和39年)新潟地震での新潟市川岸町付近の6地 点の沈下量検討結果から、PL値を算定した。
② 液状化による体積圧縮ひずみから算定した地盤の沈下量と、このPL値の関係を 求めた。
③ 一般に地震による堤防の沈下は、液状化による浮力が働くため、最大0.75H(H は堤防の高さ)といわれている。
④ この 0.75H を最大沈下量として、②の関係を基に、PL値と堤防沈下量の関係を 表- 2. 8.2のようにとりまとめた。
⑤ 護岸の被害予測では、表- 2. 8.2の関係をもとに、堤防の高さだけを使用して、
地震後の堤防沈下量の定性的検討を行った。
護岸の位置と東京湾北部地震による液状化危険度のPL値分布を図- 2. 8.3、護岸の位 置と習志野市直下の地震による液状化危険度のPL値分布を図- 2. 8.4にそれぞれ示す。
護岸が、両想定地震ともに、PL値が20を超えるところに位置するため、被害程度の 目安は「詳細検討が必要であると考えられる」となった。沈下量の目安は、堤防の高 さの0.75倍になると予測される。
表- 2. 8.2 PL値と堤防沈下量の目安
PL値 沈下量の目安
(Hは堤防の高さ) 被害程度の目安
0 ≦ PL ≦ 5 0.0H 堤防沈下は生じないと考えられる
5 < PL ≦ 15 0.25H 小規模な堤防沈下が生じると考えられる
15 < PL ≦ 20 0.50H 中規模な堤防沈下が生じると考えられる
20 < PL 0.75H 詳細検討が必要であると考えられる
図- 2. 8.3 護岸の位置と東京湾北部地震(M7.3)の液状化危険度のPL値分布