前節での整理と課題を踏まえ、既往研究注 2-47)の系譜を追う(図 2-1)。
1985 1990
A-1-2三橋
1995 2000 2005 2010 2015
人口 の流 動及 び変 動の 様態 を扱 った 研究
移住 促進 の取 り組 み に関 する 研究 広域 ネッ トワ ーク の実 態及 び 活用 を扱 った 研究
人的 支援 とそ の活 用を 扱っ た研 究 都市 農村 交流 に関 する 研究
D-1-1藤本 D-1-3牧山
D-2-4高橋 B-2-3根岸
C-3-2小山 C-3-6跡部
C-3-3渡邊
C-4-1高田 C-4-3金 C-4-5牧山
C-4-6田中 C-1-7本庄 C-1-14去石
C-4-7北澤 C-4-8北澤 C-4-13星野
C-4-12後藤
C-1-4熊野 C-1-8前田
C-1-10澤田 C-1-11二神
E-1-1古山
E-3-1佐久間 E-1-2西村
E-3-2長谷川 E-3-3横山 E-2-1川見 E-2-2桒原
E-3-4田口 E-2-3浅井 C-1-12田村
C-1-9中島 C-1-15斎尾
C-4-10坂本 C-1-5佐々木 C-1-6井上
C-4-12藤木 C-4-9渡邊
C-4-2田村 C-4-4高橋
C-2-1吉田 C-1-13神吉
C-2-2高橋
C-3-4齋藤 C-2-4全 C-1-2星野
C-1-19坂井 C-1-3石山
B-2-2芦田 B-2-4菅原
B-3-1植田 B-3-2和田 B-3-3津倉
D-1-2住田
D-2-1竹田
A-1-3木本 A-1-7藍澤
A-2-1吉迫 A-2-2湯本
A-2-3栫 A-2-5岡崎
A-3-1塚井 A-3-2森田
A-3-3森
A-2-4林 A-1-4片田
A-1-6湯沢 A-1-5尹
若年層をはじめとした人口流出及び帰還の実態に関する研究【A-1】
A
B
C
D
E
都市農村交流の文脈上に流動を位置づけた研究【A-2】
2-6-1
2-6-2
2-6-3
2-6-4
2-6-5
居住地の集約に向けた流動の潜在的可能性に関する研究【A-3】
全国の移住促進の取り組みを俯瞰的に捉えた研究【D-1】
移住促進の取り組みの個別事例を扱った研究【D-2】
地域外家族による地域活動や産業支援に関する研究【B-2】
地場産業の振興に向けた広域ネットワークの構築に関する研究【B-3】
都市農村交流の実施及び展開のプロセスを扱った研究【C-3】
都市農村交流の成果や実態に着目した研究【C-2】
外部人材の活動実態に関する研究【E-1】
外部人材の任期終了後に着目した研究【E-2】
人的支援の制度設計や外部人材の育成プログラムに関する研究【E-3】
都市農村交流の関係主体による評価や意向に着目した研究【C-1】
都市農村交流の運営体制に着目した研究【C-4】
凡例
:都市計画論文集
:農村計画学会誌
:日本建築学会計画系論文集
:その他
D-2-2中園 B-2-1細田
C-3-1林 C-2-3山下 C-1-1富樫
C-1-16前田 C-1-17前田 C-1-18林
C-3-5山本 C-3-7跡部 C-2-5長谷川 ネットワーク居住の基礎的事項及び実態に関する研究【B-1】
B-1-1近江 B-1-2金 B-1-3赤木 B-1-6近江
B-1-4近江 B-1-7赤木
B-1-5近江 B-1-8室崎
D-2-3山本 D-2-5小林 A-1-1森川
図 2-1 関連研究の一覧
2-6-1 人間の流動及び人口変動の様態を扱った既往研究(A-1 〜 A-3)
人間の流動や人口変動に関する研究については、当該地域への移住誘致や地域の集約化といった観 点から、多くの研究蓄積がなされてきた。これらの研究は、若年層をはじめとした人口流出及び帰還 の実態に関する研究(A-1)、都市農村交流の文脈上に流動を位置づけた研究(A-2)、居住地の集約に 向けた流動の潜在的可能性に関する研究(A-3)の 3 つに大別される。
また、災害等を契機とした受動的な流動は、2004 年 10 月の新潟県中越地震、2007 年 3 月の能登 半島地震、2011 年 3 月の東日本大震災等における防災集落移転事業を中心に一定の研究蓄積がなさ れているが、ここで扱う人間の流動は能動的なものに限定することとし、ここでは参照対象に含めな いものとする。
1)若年層をはじめとした人口流出及び帰還の実態に関する研究(A-1:1982-1995)
過疎問題の発端である、わが国最初の流動は 1950 〜 1970 年代の若年層の流出であることは先に
述べた通りであるが、その実態を追うかたちで、1980 〜 1990 年代にかけて過疎地域における人口 流出の構造化や帰還の可能性に関する議論が蓄積されてきた。およそ 1980 〜 1990 年代中葉までの これらの研究蓄積の殆どで、「若年層の U ターン」を意図した「就業機会ならびに労働環境の整備」の重要性が主張されている。
滋賀県高島郡朽木村の青少年層を対象に、居住環境に対する評価と併せ、転出意向の類型化とその 要因を明らかにした森川らは、生活の利便性及び就労機会が主たる転出要因として存在すること、ま た農山村環境への評価はライフステージによって変わり得るとした上で、帰還志向を有する一定層に 向けた環境整備が必要であることを述べている(A-1-1:都 1982)。また還流する中高齢者を潜在的 な担い手として位置づけ、家からの通勤をやめる「在宅還流」、及び他所から離職転入する「U ター ン還流」の 2 つの還流形態を設定した上で実態把握を行い、地域社会に及ぼす影響を分析した三橋ら は、還流が実質的には「在宅還流」に限定されることと併せて、若齢者層の還流が起こりにくくなっ ていることを明らかにしている(A-1-2:農 1986)。更に新潟県長岡市内の高校出身の若青年層を対 象に、高校卒業時及びその後の移動の実態を、性別や進路、学校との関連性から分析した木本らは、
UJ ターン者が半数近くに及んでいながらも、進学移動は一時的であり就職移動は定住的であること から、高学歴者の就業機会を地域に設けることによる人口の地方分散の必要性を指摘している(A-1-3:都 1987)。愛知県南設楽郡鳳来町を対象に、町内外居住者の居住地の変遷、及び各時点での生活水 準の満足度の把握から、農山村における転出及び帰還行動の行動メカニズムを導いた片田らは、町内 の生活環境への不満意識が転出をもたらし、また農山村特有の「行動制限(家産の継承、親の扶養)」
が、従業地ならびに世帯構成の変化を伴う帰還をもたらしている実態を明らかにしている(A-1-4:
都 1989)。また岡山県津山市を対象に、転出時期別にみた地方都市出身者のふるさと回帰意識の構造 分析を通じ、地方都市における U ターン世帯向け住宅施策の在り方を考察した尹らは、生活安定層の
殆どは帰還意向が無いとしつつも、「住宅があれば帰りたい」とする層が一定数存在し、彼らが定年 後に帰郷しやすい条件を整えることが重要であるとしている(A-1-5:都 1990)。更に新潟県栃尾市 を対象に、高校卒業者の職業選択モデルの作成及び転出入者の実態の把握を通し、生活環境と労働環 境の要因を組み込んだ居住地選択モデルを構築した湯沢らは、高校卒業生の転出行動が人口減少に拍 車を掛けていることを指摘し、当該過疎地域やその周辺における就業多様性及び労働環境の質的向上 を担保することの必要性を述べている(A-1-6:都 1993)。
冒頭で述べた通り、これらの既往研究において指摘されてきた点は若年層の帰還を意図した労働環 境の整備であるが、島根県の過疎指定市町村を対象に、1970 〜 1990 年の人口変動からみた集落類 型とその特徴を明らかにした藍澤らは、集落人口の安定化の為には集落内のアクセス性や便益性の向 上が重要であるとしながらも、農業を中心とした集落内部活力の維持によって立地の不利を補うこと も可能であるとしている(A-1-7:農 1995)。
2)都市農村交流の文脈上に流動を位置づけた研究(A-2:1995-2004)
一方で 1990 年代中葉以降は、転出に至る要因や転入に向けた要件の把握を通し、都市農村交流の 潮流に流動を位置づけた研究がみられるようになる。これまで第一義としてきた「就業機会ならびに 労働環境の整備」だけではなく地域の特性を活かした方策によって、また「若年層の U ターン」だけ ではなく多様な人間層の流入を促すべきであるとした 1990 〜 2000 年代の研究蓄積に共通する知見 は、現在の地域づくりの実践の場においても重要な視点として位置づけられている。
栃木県内の 3 町村を対象に、当該町村に実家を持つ自治体外居住者の帰郷頻度及び帰郷時の活動に 影響を及ぼす要因から類型化を行い、行動指標との関連性を分析した吉迫らは、ライフステージの進
森川稔:農山村青少年の居住環境評価と転出・帰還志向 - 滋賀県朽木村を事例として -、日本都市計画学会 学術研究発表会論文集、第 17 巻、pp.163-168、1982.10
三橋伸夫、岡村純、荒樋豊:農村地域における中高齢還流者の地域社会活動に関する研究 - その 1 中高齢 還流の動向について -、農村計画学会誌、第 5 巻(第 3 号)、pp.34-47、1986.12
木本広光、大西隆、中島尚志:若年層の居住地移動に関する研究 - 長岡市内高校出身者のケーススタディ -、
日本都市計画学会学術研究論文集、第 22 巻、pp.175-180、1987.10
片田敏孝、廣畠康裕、青島縮次郎:農山村住民の転出・帰還行動における意思決定の構造に関する研究、日 本都市計画学会学術研究論文集、第 24 巻、pp.37-42、1989.10
尹孝鎮、三村浩史、リムボン:転出時期別に類型化された地方都市出身者の “ ふるさと回帰意識 ” 構造 - 津 山市地域住宅計画にみる U ターン世帯向け住宅施策の課題 -、日本都市計画学会学術研究論文集、第 25 巻、
pp.745-750、1990.10
湯沢昭、須田熈:過疎地域における社会的人口動態の構造分析 - 新潟県栃尾市を事例として -、日本都市計 画学会学術研究論文集、第 28 巻、pp.649-654、1993.10
藍澤宏、有泉龍之:過疎地域における集落人口変容からみた集落類型に関する研究、農村計画学会誌、第 14 巻(第 3 号)、pp.18-29、1995.12
A-1-1)
A-1-2)
A-1-3)
A-1-4)
A-1-5)
A-1-6)
A-1-7)
行に伴い帰郷の形態が変化すること、また単身世帯や高齢者世帯が多くを占める観光活動と比較して、
帰郷活動はその中間である子育て世帯によるものが多いことを指摘している(A-2-1:都 1995)。また、
とりわけ流入に着目したものとして、自然特性、生活環境、産業形態、アピールポイントという独自 の指標に基づいて離島を類型化し、人口増減との関連性を分析した湯本らは、前述の 4 指標のうち自 然特性が人口増加に大きな影響を及ぼしており、「熱帯型離島」では観光振興及び自立的生活基盤の 整備によって、「温帯型離島」では漁業への新規就業によって、それぞれ人口増加を遂げていると結 論付けている(A-2-2:都 2002)ほか、栫らは地域の魅力やコミュニティを賦活する人的資源として の視点から芸術家を対象とし、居住地選択及び転入理由、定住・転出意向の把握から、芸術家は主と して自然環境の良さや静かさ、原材料入手のしやすさを理由に居住地を選定しており、概ね居住継続 意向は高いことを明らかにしている(A-2-3:都 2003)。また京都府内の農村地域 44 市町村を対象に、
若年層男性の人口移動と産業構造との関係を分析した林らは、転出防止の対策と転入促進の対策とを 個別に扱う必要があるとした上で、とりわけ後者に対し、都市農村交流の活性化に伴う第 3 次産業の 就業機会を創出していくべきであるとしている(A-2-4:農 2003)。更に宮崎県西米良村における U ター ン者を対象に、転入理由及び転入に影響を与えた地域資源の把握を通し、当該地域における U ターン 者増加の要因と変遷を明らかにした岡崎らは、U ターン者誘致の推進に際しては、「就職口」の創出 のみならず「村民の交流・活動」や「伝統文化」といった地域に根差した資源を見直し、地域内外で 共有を図っていくべきであるとしている(A-2-5:都 2004)。
3)居住地の集約に向けた流動の潜在的可能性に関する研究(A-3:2010-2014)
しかしながら近年では、縮減社会の進展に応じるかたちで、住民合意に基づき居住地を集約してい くべきとの見方から流動の潜在的可能性を探る試みもなされつつある。生活基盤の弱体化や、地場産 業・地域社会の衰退によって、今後住まい続けることが困難となる集落は確実に存在するものの、以 下で言及する既往研究の知見によると、実際に居住地を集約していく上では、集落の実情を十分に整
吉迫武、永井護:農山村への帰郷行動に関する実証的研究、日本都市計画学会学術研究論文集、第 30 巻、
pp.373-378、1995.10
湯本能章、十代田朗、津々見崇:離島の類型と人口増減要因に関する基礎的分析、日本都市計画学会都市計 画論文集、第 37 巻(3)、pp.793-798、2002.10
[離島 / 主成分分析 / 数量化理論Ⅲ類]
栫恵利香、吉武哲信、出口近士:芸術家の居住地選択および居住環境評価に関する基礎調査、日本都市計画 学会都市計画論文集、第 38 巻(3)、pp.79-84、2003.10
[芸術家 / 居住地選択 / 居住環境評価 / アンケート調査]
林直樹、齋藤晋、高橋強:農村地域における若年層男性の人口移動と産業構造、農村計画学会誌、第 22 巻(論 文特集号)、pp.31-36、2003.11
岡崎京子、後藤春彦、山崎義人:U ターン者増加の過程における転入要因の変遷 - 宮崎県西米良村を事例と して -、日本都市計画学会都市計画論文集、第 39 巻(3)、pp.25-30、2004.10
[U ターン者 / 転入要因 / 家族・親戚 / 村民の交流・活動 / 就職口 / 伝統文化]