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21 世紀の甲状腺疾患診療・研究 への展望

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[略歴]

1978 年 3 月 久留米大学医学部卒業

1982 年 3 月 久留米大学大学院医学研究科修了

2006 年12月 久留米大学医学部内科学講座内分泌代謝内科部門 教授 日本内科学会認定医、日本内分泌学会内分泌代謝科専 門医、指導医、日本甲状腺学会専門医、日本糖尿病学 会専門医、研修指導医

廣松 雄治 久留米大学医学部 内科学講座内分泌代謝

内科部門教授

バセドウ病眼症

眼症は、今日、バセドウ病診療の最も重要な課題である。患者の後眼窩組織、

外眼筋、涙腺に、リンパ球浸潤と脂肪の増生、グルコサミノグリカン(GAG)

の沈着がみられる。その結果、上眼瞼、結膜、外眼筋、後眼窩組織、角膜、視 神経などに障害をきたし、多彩な症状を呈する。後眼窩組織では sFRP-1 や PPAR γなど adipogenesis 関連分子の発現と共に TSH 受容体の発現も増強し、

TSH 受容体に対する自己免疫反応がおこる。そして TNF-αや IL-6 などのサイ トカインの発現も増強し、後眼窩組織の線維芽細胞は活性化して GAG の産生 が高まり、間質の浮腫をきたす。さらに炎症が強い場合は2次的に外眼筋が障 害されて重症化すると考えられている。しかしながら、まだ詳細なメカニズム は不明であり、これらに基づく創薬は今後の課題である。

現在、治療としては、ステロイドパルス療法、球後照射、眼科手術(眼瞼手 術、外眼筋手術、眼窩減圧手術)が行われているが、個々の患者の病態、特に 活動性と重症度を正確に捉え、治療法を選択することが大切である。内分泌医、

眼科医、放射線科医、コメディカルスタッフの協力が必要である。したがって 専門の治療センターの設立が急務である。

橋本病

九州大学の橋本 策博士によって病理組織像が記載されたことに因んで、慢 性甲状腺炎は橋本病と呼ばれている。橋本病は初めて報告された臓器特異的自 己免疫疾患である。女性に多く、20 人に1人発症する。疾患感受性遺伝子の検 索や発症、増悪の誘因(出産、ストレス、花粉症、gonadotropin  releasing hormone 誘導体、IFN など)や増悪の分子機構の解明が進むにつれて、その予 防薬の登場が期待される。

甲状腺腫瘍

剖検例での 3mm 以上の甲状腺癌の頻度は3%以上であり、今後、頸部超音 波検査の普及や PET 検診などで甲状腺癌の発見頻度の増加が予想される。癌 の診療には内科、外科、放射線科の密な連携とチーム医療が必要である。また 日本では術後の RI 治療を行える施設が極端に少なく、大きな問題である。現 在、髄様癌に対する遺伝子診断、血行性転移に対する血中サイログロブリン

mRNA 定量、マイクロアレイやプロテオミクス法による濾胞癌のマーカーの 開発などが進んでおり、近い将来、診断や治療への応用が期待される。

おわりに

甲状腺の臨床家にとって最も大切なことは、個々の診療を大切にすることで ある。そしてよりよい診療を提供するには、早急にバセドウ病眼センターや甲 状腺癌センターの整備、EBM に基づいた診療のガイドラインの作成、疾患感 受性遺伝子の研究の成果を応用したテーラーメイド医療と発症予防、診断キッ トの開発、発症や病態の分子機構に基づく創薬(新しい抗甲状腺薬の開発)な ども必要である。これらに真摯に取り組むのが私どもの使命である。

日本甲状腺学会が創立されてからの 50 年間に成し遂げられた甲状腺学・甲 状腺診療、とくに診断学の進歩は著しく、ほとんど行き着くところまで来てお り、もはやできることは何もないかの感がある。振り返ってみると、過去のど の時点においても、もはやできることはあまりないかのように見えていた。し かし、実際にはいろいろと進歩が成し遂げられてきている。

私自身を振り返ってみると、甲状腺外科・内分泌外科の勉強を始めたのは大 阪大学病院での 1 年間の研修、関連病院での 2 年間の実地修練を終えて阪大に 帰った 1974 年の夏であった。以来、多少とも甲状腺診療に貢献できたことを 振り返ってみると、①急性化膿性甲状腺炎に関し、下咽頭梨状窩瘻を発見し、

本症の大部分はこれを通じての感染であること(1979 年 Takai と)、瘻孔の摘 出によって再発がなくなること(1990 年)、この瘻孔が C 細胞の遊走に関連し た遺残物であること(1992 年)、破壊性甲状腺中毒症をきたしうること(2002 年 Fukata と)などを明らかにした。②扁平上皮癌様の組織像を呈するが比較 的予後が良好な腫瘍を甲状腺内胸腺腫として独立疾患であることを提唱(1985 年)。これは Rosai らによって追認され CASTLE と名称を変更され、2004 年に は WHO の甲状腺腫瘍病理組織分類に正式に採用された。この腫瘍が提唱した とおり胸腺関連腫瘍であることを CD5 が陽性であることで示し(1998 年 Dorfman と)、我が国の症例 25 例を集め、その生物学的特徴を確認した(2007 年 Ito と)。③甲状腺髄様癌に関し、術後カルシトニン値が高値であり、腫瘍が 遺残していると思われる患者においては、カルシトニン値のダブリングタイム が強い予後因子であること(1984 年)、この値と手術前後のカルシトニン値、

摘出腫瘍重量から個々の患者における予後を数量的に予測する方法を報告した

甲状腺診療に貢献できたこと

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