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年間の 回想と今後の展望

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若手医師の育成

甲状腺診療と研究 34 年間の 回想と今後の展望

[略歴]

1971 年9月 京都大学医学部卒業

1971 年12月 天理よろづ相談所病院内分泌内科医員 1976 年1月 京都大学核医学科入局

1981 年1月 アメリカ合衆国ハーバード大学医学部留学(3年間)

1991 年6月 京都大学医学部助教授(核医学講座)

2000 年9月 高松赤十字病院赴任 2005 年5月 高松赤十字病院副院長

笠木 寛治 高松赤十字病院副院長

ベルで利用可能にはなっていない。現在バセドウ病治療に用いられているチア マゾール(MMI)やプロピルチオウラシル(PTU)は時に重篤な副作用を起 こすことから、TSH 受容体抗体研究の進歩が、これらに代わる治療薬の開発 につながることも期待されたが、現在成功するには至っていない。最近の進歩 といえば、TSH 結合阻害抗体(TRAb)アッセイが第一世代液相法から第二世 代固相法を経て、さらに TSH でなく、TSH 受容体モノクローナル抗体を標識 して用いる第3世代アッセイが、利用可能となったことである。確かに特異性 を保ちながら、感度が上昇することはよいことであり、今後は第3世代に移行 する可能性は十分考えられるが、果たしてこれ以上感度がよくなることが望ま れるかどうか? 抗甲状腺剤中止後の再発、寛解指標としての有用性には限界 があり、陰性例における寛解率が増加することも考えられるが、その分陰性化 する症例も減ってくるだろうし、その時点では治癒していても休薬後に活動化 して再発に至る症例もある。最近バセドウ病で維持量の抗甲状腺剤治療中や寛 解中の症例で無痛性甲状腺による中毒症を発症する症例をしばしば経験する。

このような症例で TSH 受容体抗体の測定が役立つかどうか、期待される。つ まり、陰性例に対しては、抗甲状腺剤の再投与や増量をせずに様子を見ること ができるかどうかである。いずれにせよ今後は TSH 受容体抗体の迅速(TRAb)

測定の普及が望まれる。

バセドウ病の診療で気がつくことは、抗甲状腺剤に対する反応性にかなりの 個人差があることである。TSH 受容体抗体の活性が低く、かつ甲状腺腫の小 さい症例は、一般に予後は良好だと考えられている。しかし、このような症例 の中にも、抗甲状腺剤を減量しにくい難治例に出くわすことがある。おそらく 薬に抵抗するような遺伝的背景があるように思われる。抗甲状腺剤に対して副 作用を生じる症例など、あらかじめ遺伝子検査で判明すれば、はじめから手術 やアイソトープ治療を選択するなどの、いわゆるテーラーメイド治療がバセド ウ病においても将来行われる可能性がある。

超音波技術の進歩も甲状腺疾患の診断に大きく貢献してきた。甲状腺乳頭癌

とんどすべての甲状腺疾患は甲状腺専門医により、ほぼ正確に診断されるよう になった。いいかえれば、この四半世紀における臨床甲状腺学の診断・検査部 門の進歩は著しく、現在もっとも誤診の少ない分野の一つといえる。

近年は医師の専門家志向が目立ち、したがって甲状腺非専門医が診察した場 合の誤診をしばしば経験する。たとえば無痛性甲状腺炎患者に対する抗甲状腺 剤の投薬、TSH 正常で、free  T4や free  T3低値例を容易に甲状腺機能低下症と 診断し、甲状腺ホルモン剤を投与したり、遠隔転移がはっきりしている分化型 甲状腺癌症例に対して甲状腺部分切除を行ったりなどは、筆者が個人的に経験 したことである。我々甲状腺専門医は、このような間違った診療が行われない ようにもっと啓蒙に努めなければならない。

現在市販されているアッセイでは、free  T4や free  T3測定値が真の遊離ホル モン濃度を示さないことが、しばしば起こりうる。これらのホルモンをラジオ アッセイにて測定していた頃に比べて、non-RI アッセイが自動化された頃から、

測定法に対する評価があまくなり、例えば血清蛋白や抗体の測定値に及ぼす影 響などを詳しく調べた論文が減ったのは残念なことである。そこで TSH 値を もっとも頼りにすることになるが、脳下垂体や視床下部の疾患や TSH 値に影 響を及ぼす病態となると、やはり真の甲状腺機能を反映する信頼すべき指標が 必要となってくる。

乳頭癌に比べて濾胞癌の診断は難しいといわれている。濾胞性腫瘍の場合に は細胞診による良性・悪性の鑑別には限界があり、そのため大きな充実性腫瘍 では手術を薦めることが多い。Tl-201 シンチグラムが有用であると報告された ことがあったが、否定的な報告もあり、臨床的に有用なマーカーの開発が望ま れる。高野らの核酸診断の研究成果が期待される。

最近、人間ドックなどで、頚動脈エコーの検査の際に、ついでに甲状腺を調 べて、結節性病変が見つかったということで、甲状腺外来に紹介されてくる患 者が増加している。超音波検査で見つかる甲状腺の異常は非常に頻度が高く

(約3分の1)、小さな結節は吸引細胞診でも失敗することもあり、また微小癌 は手術を行わずに、経過観察を行っている施設もある。一方、原発巣の非常に 小さな転移性甲状腺癌の症例もしばしば経験する。米国ではほとんどすべての

分化型甲状腺癌に対して、全摘出術とそれに引き続いて I-131 治療を行ってい るが、我が国では部分切除だけで十分な悪性度の低い分化癌がほとんどである。

今後は転移しやすいような悪性度の高い癌をいかに見つけて、早めに全摘出と I-131 治療を行うかが重要な課題である。

一昨年アルゼンチンで国際甲状腺学会に出席して驚いたことは、会員の興味 は甲状腺癌に集中し、免疫関係の発表の聴衆が非常に少なかったことである。

確かに甲状腺癌で死ぬことはあっても、甲状腺自己免疫異常で命を落とすこと は極めて稀である。昔、長瀧重信先生が言われたことを思い出す。「確かに自 己免疫性甲状腺疾患の予後は良好だが、予後の悪い自己免疫疾患は他にもいっ ぱいある。幸い甲状腺組織は手術などで容易に入手可能であり、甲状腺自己免 疫の研究が他の疾患における自己免疫異常の解明につながれば幸いである」。

現在はバセドウ病実験モデルを用いた研究も可能となっている。自己免疫甲状 腺疾患の遺伝子探索を含めて、さらなる発展が期待される。

今年の札幌は雨のために、アッという間に雪が溶け路面が露出し、春到来か と思うと、翌日には大雪に見舞われ、ハラハラした冬でしたが、結局 ending は例年通りになりそうで、ホッとしているところです。ちょうど 13 年前の雪 の降る同じ時期に、当時「甲状腺だけでは生計がたたない」との風評?を

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