• 検索結果がありません。

118 16.日本食研株式会社

ドキュメント内 untitled (ページ 126-129)

118

119

(5)事業承継の成功のポイント

  先代が業績軸で大成功させた事業を引き継ぎ、幸せ軸の経営に舵を切り、結果を出している。

大沢社長は就任にあたって、今後は幸せ軸の人本経営を実践していこうということを全社員に向 けて意思表示した。その時に作られたのが、「ENJOY!BUSINESS 〜こころざし読本〜」と銘 打たれた冊子である。ここに大沢社長の思いを熱く反映していった。

①社員こそが主役となり、

②社会に貢献し、その中で社員が自己実現と成長を果たし、

③そして心から仕事をエンジョイする

このような仕事と企業のあり方、つまり『エンジョイ・ビジネス』こそが、私たちの目指すも のであろうと確信している。

1

ページ目からこのように強く人本主義を志向していくということが伝わってくる内容となっ ている。それは、きれいごとのオンパレードといって差し支えない。当時は出来ていないことだ らけだったそうだが、つくった以上は有言実行だと愚直に実践し、現在では、見本となるような 人を大切にする人本経営が花開いてきている。

  人本経営への舵をきった大沢社長は、早速、経営革新に取り組んだ。育児休業取得の積極推進 や有給休暇の消化率の向上を図っていくような指示をしていった。

同社のホームページにその取り組み結果について以下の掲示がされている。

<2013年度実績>

・ノー残業デー(18時退社)実施率

【愛媛本社】26.5%(27.0%)、【千葉本社】40.6%(29.9%)、【営業拠点】36.8%(13.6%)

※営業拠点は、ノー残業開始から平均退室時間が

41

分改善(カッコ内は

2011

年実績)

・有給休暇取得率→52.1%(36.2%)

※リフレッシュ休暇導入後取得率が大幅アップ(カッコ内は

2010

年実績)

・育児休業取得者

【女性営業員】4人(2011年

2

人、2012年

2

人)、【男性社員】6人(2011年

3

人、2012年

1

人)

※男性社員の最長取得日数は

10

日間。女性社員は子が

1

歳に達するまでがほとんど。

確かに労働環境が改善されてきていることが確認できる。このような取り組みが実現してきて いることについて大沢社長は、休日が増え、残業時間が少なくなっても生産性が落ちていないと いう事実があれば、だれも反対できないし、その方向で行くことの正しさが証明できると自信を 深めている。会社がよくなるという事実を出し続けていくことが、後継者が人本経営を軌道に乗 せる肝であると感じさせる。年間離職率もかつては

10%を超えていたが、ここ最近は 3%台にま

で改善がみられている。これまた「ぐう」の音が出ない事実となっていた。

(6)苦心談

業績軸をひた走ってきた先代が高齢となって会長職に退き、30 歳代、40 歳代の後継者が後を 継ぐという企業は決して少なくないと思われる。次世代は幸せ軸の人本経営に成功するように会

120

社をリードしていくことがこれからの後継者の最大使命であり任務といえよう。

しかし、特に団塊の世代に育ち生きてきた先代に業績軸の価値観は強烈に根付いています。猛 烈、厳しい、ハードワーク厭わず、社業優先、お客様は神様、株主優遇といったことが当たり前 であるから、社員第一主義、思いやり、ワークライフバランス、モチベーション向上を掲げてい く幸せ軸経営のあり方は、いかにも甘く感じられ、つい一言が多くなってしまい、後継者の人本 経営にブレーキをかけてしまうことがままある。

日本食研ではどうだったのか。

大沢社長は、全社員に配布したいと考えていた、人本経営を目指すと宣言した冊子「ENJOY!

BUSINESS」の原稿案を会長に持っていったという。甘いといわれる覚悟をしていたが、意外に

も何の口出しもなく

OK

が出たという。

この時のことについて現在社長室長を務める宇野氏が語る。「会長には『やってみなはれ』の精 神があるので後継者に対してもそう接したのではないか」と推測されていた。それまでの

10

数 年間の仕事をみてきたうえでの新社長への信頼も相当に厚くなっていたことで後継者に任せると いうことが実現的できたである。また、食品業界ということもあり、現会長は、取引先でもあっ た伊那食品工業の塚越寛会長と交流があり、塚越経営哲学に触れていたことが大きかったのでは ないかと大沢社長は語られていた。積極的に賛同するところまではいっていないものの、現会長 は塚越経営哲学に一目置いていたそうである。

(7)後継者

  大沢社長はすでに子宝に恵まれ、ご子息がおられる。事業承継をしていく所存であるが、人本 経営を引き継ぐのに他社にいったん就職することがいいのか思案しているとのことであった。普 通の会社で社会人経験をさせることが、当社の企業文化の伝承に果たして役立つのか思案してい るとのことだ。もっとも伊那食品工業や未来工業なら喜んで働いてもらいたいということであっ た。

(8)要望・意見

  株式に関する税制を改革してほしい。せっかく人本経営を実施して、あえて未上場を選択して いるのに、現行では上場を選択しなくてはならない方向へ誘導される。それが不満である。

以上

(小林  秀司)

121

ドキュメント内 untitled (ページ 126-129)