(1) 会社の概要
(2)会社の沿革
1944 年(昭和 19 年)2 月、現社長の祖父(故)鈴木幸太郎氏が豊島区千早町に鈴木印刷所を開設 し個人営業を始めた。6 年後の 1950 年(昭和 25 年)組織を株式会社に改め資本金 30 万円で診療 印刷株式会社を設立した。
幸太郎氏は、教育者の家庭に生まれ、戦後混乱期の中で社員に手に職をつけさせたいと願い創 業したという。そのために社員教育にはとても熱心であった。会社が軌道にのってからも自らの 生活は質素であり、会社の 2 階に家族全員で住んでいた。二代目になる息子の(故)鈴木幸一氏(現 社長の父)に、「自分は沢庵たべても社員には豪華な料理を食べさせろ」と指示する徹底ぶりであ った。
二代目の幸一氏の社長就任は 1979 年(昭和 54 年)。「現在のシンリョウの礎を築いたのは二代 目です」と現社長・鈴木栄氏が言うように営業所展開、経営理念の制定など手腕を発揮し事業は 拡大していった。
2003 年(平成 15 年)自らの 60 歳を機に、社長を息子の栄氏に譲り会長職となるも、亡くなる 2011 年まで現場に立ち続け意欲的に経営幹部の指導にあたっていた。会社を大きくしたのは二代 目であったが、創業者である父の精神を守り、社員を大切にし、生活はとても質素であった。
「利益を生まない社長室は小さい方が良い」と社長室もプレハブで冷暖房も簡易なものであっ たという。現社長の栄氏も、祖父、父の精神を守り、社員を大切にする会社として創業 71 年目を 迎えている。
(3)主事業の特徴
医療用印刷製品の製造・販売からスタートした当社は、その後、商品管理代行サービスや通信 販売サービスなどメーカー企業の枠を超えた積極的な事業展開を行い、医療ビジネス総合サービ ス企業として成長を遂げている。現在では関東地区において、60%のシェアを獲得し、業界一位 の実績を築きあげた。
医療分野に特化しているからこそ可能になる様々なニーズの実現。「直販」だからこそ行える製 品開発。そしてスピーディーかつ低コストの商品提案。これらはすべて「顧客第一主義」の基本 方針によるお客様の立場にたったサービスである。
・会社名:株式会社シンリョウ、 ・代表取締役:鈴木 栄
・所在地:東京都豊島区
・創業年:1944年、 ・設立年:1950年
・業種(主製品):卸売業(医療用印刷製品を中心にOA機器の販売)、 ・売上高:53億円
・従業員数:正規社員128名、計128名(男93名、女35名)
・正規社員の平均年齢:32歳、 ・経営形態:同族経営
・社是または経営理念:無限善循環
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主な顧客は病院や診療所、薬局等約7万軒。医療用印刷物(カルテ・お薬の袋など)・プラスチ ック製品(投薬瓶・軟膏容器等)や関連製品(トナー・白衣・スリッパ)を販売する。営業マン が提案・販売・納品するルートセールスが中心であり、顧客との関係性が強い。当社のアイテム を使えば集患・経費削減・業務効率アップに繋がることが顧客に提供している価値となる。
(4)現経営者のキャリア
鈴木栄氏は大学を卒業するとすぐに当社に入社した。当時新卒採用の 3 期目であり、バブル(後 期)でもあって採用に苦労していたことが理由といえる。
入社後、営業一般職を 5 年経験し、課長職を 2 年、部長、取締役を経験し 35 歳で社長となった。
先代は会長として残り会長が亡くなるまでの 7 年間、会長・社長の二人体制で役割分担をしてい た。会長は経営・財務、社長は事業の担当であった。
(5)事業承継の成功のポイント
栄社長は小さな頃から先代より後継者指名を感じていた。子どもの頃から自宅と会社が密接し ていたために、先代の仕事ぶりを見て育ったことで会社を継ぐことに抵抗や迷いなどはなかった。
他社での勤務経験がないのは先代の考えが大きい。「他社で働いて変な癖をつけて欲しくない」こ んな言葉を先代は残している。
この考えは、先代の経験が大きいと推測される。先代が会社を受継いだ時は、創業者・幸太郎 氏が亡くなった時だった。つまり、亡くなるまで社長であり、先代には譲ろうとしなかった。本 心であったのかどうかは今となれば不明だが「息子には渡さない」と、ずっと言われていたくら いである。先代はこの辛かった経験により、栄社長には早い段階から後継者指導をしていたので ある。
(6)苦心談
現在、社長になって 10 年経過しているが、前述の通り 7 年間は会長・社長の二人体制であった。
3 年前の 68 歳の時に病気で亡くなるまでは、本当に元気で「グループ内の 3 人の社長を指導して いく」と意欲を示していた。あまりにも急に亡くなったので完全に引き継いでいない部分がある。
もう少し色々と聞きたかったと言う。
栄社長は、先代が亡くなった後に会社の歴史や方針発表会や朝礼等で先代が話をしていたこと を忘れないために、亡くなって 1 年間で 6 冊の本を作成し幹部社員に配布した。
(7)後継者
「後継者を見つけることが社長の最大の仕事」と常に考えている。今後 10 年以内に後継者を指 名して指導役に徹したいと思っているが、現在は人選中。後継者像とすれば、経営理念を承継し、
社員を大切にしてくれる人、人格的・人間力のある人であれば基本的には誰でも(身内以外)良 いと考えている。更に期待することをあげれば「10 年後を考える先見性」が欲しい。事業環境は 常に変化しているので目先に捕われず「常に先を見て行く目」を求める。
社員育成のポイントは、部下に任せることができるかである。放置ではない。どれだけ我慢で きるか、成長を見守れるかと考えている。成長するまで面倒をみる覚悟が必要である。
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(8)要望・意見
事業承継時の税制は経営者の悩みの種。創業者一代で終わったら大きな損失ではないか。会社 の継続的発展が雇用を生み経済を下支えするので、経営者が会社の継続的発展を望む場合、事業 承継時の税の優遇制度があっても良いと考える。
以上
(岡田 保)