組織
11.01 2013年5月1日に閲覧した米中央情報局(CIA)の「CIA ワールドファクトブック(CIA World Factbook)(20013年4月16日更新)」によると、パキスタンの法制度は、イスラム法 の影響を取り入れながらも、コモンローをその基盤にしている。[4a] (政府: 法制度) 11.02 2010年10月6日に更新された米国務省(US Department of State)(USSD)の国別概要・パキス
タン によれば、
『パキスタンの司法制度は、最高裁判所、州高等裁判所 及び連邦イスラム(若しくはシ ャリア)裁判所から構成される。最高裁判所は、同国の司法制度において最上位に位置 する裁判所である。現在施行されている第18次改正に基づき、大統領が最高裁長官を 任命する。裁判所及び議会の影響力は、裁判官の任命を監督する意図で新設された司 法委員会を通じて高まっている。首都イスラマバードと同様、各州にそれぞれ 1つの 高等裁判所が置かれており、高等裁判所の判事については、パキスタン大統領が最高 裁長官及び当該高裁長官との協議を経た後、これを任命する。司法当局の役割は、大 統領の決定に反する一切の法令の発布を禁ずることにある。連邦シャリア裁判所 (Federal Sharia Court)は、主にシャリア若しくはイスラム法にかかわる事件を扱う。
1991 年制定の法律により、シャリアが法律として位置づけられるに至った。シャリア
は、土地をめぐる取り決めにつき規定していたものの、現行の法律に取って代わるも のではなかった。』[3a] (政府及び政治組織)
11.03 2013年4月19日に公表された米国務省(US Department of State)のパキスタンに関する国別 人権報告書 2012 (USSD Report 2012)によれば、『最高裁判所及び、高等裁判所の管轄権 は、個別の司法制度の下に営まれている複数地域に及ぶことはない。例えば、アザド・
カシミール(Azad Kashmir)は、独自の選挙による大統領、首相、議会及び国の司法制度 から独立した司法制度を備えている。ギルギット・バルティスタン(Gilgit- Baltistan)も 個別の司法制度を有している。』[3n] (1e節)
11.04 子どもの権利擁護団体(Society for the Protection of the Rights of the Child)(SPARC)が2012年 7月に公表したパキスタン国内の子どもを取り巻く状況2011(SPARC Report 2011)の中で 述べたところによれば、『最高裁判所の管轄権をFATA[連邦直轄部族地域(Federally
Administered Tribal Areas)]に拡張することが長い間求められてきたが、今回も却下され
た。大統領命令によるFATAへ拡大は、現在も法の義務付けるところであるが、この地 域で自動的に適用可能な法令はない。 』[71b] (p.v)
11.05 パキスタン政府のウェブサイト(2013年5月20日閲覧)によると、最高裁判所は、同国の
司法制度において「最上位(apex)」に位置する裁判所である、との記述があった。そし て、
『…パキスタン国内の他の一切の裁判所とは異なり、最高裁判所は、連邦政府と州政 府の間、或いは 2 若しくはそれ以上の州政府間による一切の法的問題につき、確認判
決(declaratory judgements)を宣言する裁判上の管轄権を有する…最高裁判所は、当該訴 訟事件が、パキスタン憲法上保障されている基本的権利の行使に関して、公的な面に おいて重要な点が含まれると判断した場合、当該権利の実施に向けて適切とされる一 切の命令を下す権限を有する…最高裁判所は、高等裁判所、連邦シャリア裁判所 (Federal ShariaCourt)及び行政控訴審判所(Services Appellate Tribunals)が下した判断、決 定、最終的な命令若しくは判決につき、これを不服とする上訴請求について、審理を 行い、判断を下す裁判管轄権を有する。』[29c] (最高裁判所)
11.06 また同上の公式サイトによると、最高裁判所が下した判決には、原則として、他の全
ての裁判所に対して法的拘束力がある。県レベルでは、『県裁判所(Courts of District Judges)』及び『民事裁判所(Courts of Civiludges)』が設置されており、ともに民事事件 を 扱 う 。 こ れ に 対 し て 、 刑 事 事 件 に つ い て は 『 セ ッ シ ョ ン ズ 裁 判 所(Courts of Sessions)』及び『治安判事裁判所(Courts of Magistrates)』にて審理が行われる。セッシ ョンズ裁判所(Courts of Sessions)は、死刑をもって罰すべき事件やフドゥード令(Hudood Ordinances)に基づく事件に関して裁判管轄権を有する。さらに、パキスタン政府の公式 サイトによると『セッションズ判事(SessionsJudge)によって下された判決を不服とする 上訴請求は、高等裁判所において受理され、一方、治安判事(Magistrate)によって下され た判決に対する上訴請求については、 適用され得る刑期が 4 年以下のものである場合 は[原文のまま]セッションズ判事(Sessions Judge)、それを超えるものについては高等裁 判所においてそれぞれ受理される」との記載があった』[29c] (高等裁判所)
11.07 同上の公式サイトによると、特定種類の事件を扱う特別裁判所(Special Courts)や審判所
(Tribunal)も設置されているということである。これには、
『銀行業での違反審理を対象とした特別裁判所(Special Courts for Trial ofOffences in Banks)、銀行融資の回収を目的とする特別裁判所(Special Courtsfor Recovery of Bank Loans)、慣習法にかかわる特別裁判所(Special courtsunder the Customs Act)、交通特別裁 判 所(Special Traffic Courts)、 反 汚 職 特 別 裁 判 所(Courts of Special Juges [sic] Anti-Corruption)、 商 事 裁 判 所(Commercial Courts)、 薬 物 法 廷(Drug Courts)、 労 働 裁 判 所 (Labour Courts)、社会保障控訴審判所(Insurance Appellate Tribunal)、所得税控訴審判所 (Income Tax Appellate Tribunal)、行政審判所(Services Tribunals)などがある。各特別裁判 所が下した判決を不服とする上訴請求については、労働裁判所(Labour Courts)及び交通 特別裁判所(Special Traffic Courts)において扱われる訴訟事件を除いて、高等裁判所にて 受理される。各審判所(Tribunal)において下された判決を不服とする上訴請求について は、最高裁判所において受理される…こうした裁判所(Courts)や審判所(Tribunal)が設置 された背景には、長年の懸案である - 法の執行の大幅な遅れを改善し、さらには訴訟 にかかる莫大な費用を削減することにあった…』[29c] (高等裁判所)
11.08 保釈及び裁判上の遅延に関して、同上の政府の公式サイトは、以下のように付言して
いる。
「1898 年刑事訴訟法は、死刑をもって罰すべき罪にはあたらない行為を働いたことで
拘留された者が、その拘留期間が継続して 1 年を超える場合、さらに、死刑をもって 罰すべき罪を犯したことで拘留された者が、その拘留期間が 2 年を超える場合、公判 中の拘留者に限って、その者の釈放請求に関して自動的に歩み寄りを示す方向に改正 が行われてきた。さらに当該刑事訴訟法の改正を受けて、刑事裁判所が公判中の被告 人につき、その者がすでに服した拘留期間を考慮することが義務付けられた。刑事訴 訟及び連邦シャリア裁判所(Federal Sharia Court)に提訴する事件については、手数料を
納付する必要はない。民事訴訟の際に納付する 25,000Rs(パキスタン・ルピー)を限度 とする裁判費用についてはこの負担が廃止された。」[29c] (高等裁判所)
11.09 政府の情報によると、同国内には司法当局を監視するオンブズマンが存在するとして
いる。Wafaqi Mohtasib (オンブズマン)は、
『…パキスタン大統領によって任命され、任期は 4 年である。任期は延長されず[原文 のまま]、いかなる事情があっても再任されることはない。任期中の委員としての地位 は保障されており、職務違反又は身体的若しくは精神的に職務を遂行することが困難 になった場合を除き、解任されることはない。こうした解任の事由が発覚した場合で あっても、当該委員の要請により、その解任の可否についての決定が、最高司法評議
会(Supreme Judicial Council)に委ねられる。さらに加えて、同オンブズマンは、超党派
で構成され、政治的な影響を排したものとなっている…Wafaqi Mohtasib の活動の趣旨 は、各連邦機関若しくは連邦政府職員による公務上の不手際によって、ある個人が不 当な処分・利益を被った際に、その問題の原因や性質を調査、分析して突き止め、必 要な補償を行い、さらにはこうした誤りを正すことにある。同オンブズマンの第一義 的な目的は、行政側に対して説明責任を果たすよう強制的に求めていく仕組みを作り 上げることにある。』[29c] (Wafaqi Mohtasib (オンブズマン))
11.10 USSD Report 2009によれば、
『民事訴訟における判決の遅延は、旧式の手続き上の規則、脆弱な訴訟管理制度、高額 な訴訟費用及び、法学教育の低さが原因であった。上記の問題は実効可能な司法救済を 受ける権利及び、公平な裁判を受ける権利を低下させた。
『裁判管轄権をめぐって重複するか、或いは時として競合し合う関係にある、刑事、
民事、人事、テロリズム、商事、家族、軍事及びシャリアの複数の異なる裁判所制度 が存在する。憲法第 203 条によると、連邦シャリア裁判所(Federal ShariatCourt)は、イ スラムの教えに矛盾するかどうかを審理及び決定することができる上訴裁判所であ る。女性保護法(Women's Protection Act)が可決したことは、ある一定の訴訟事案につき 連邦シャリア裁判所(Federal Shariat Court)による審理の可能性を否定するものとはなら ない。連邦シャリア裁判所(Federal Shariat Court)は、賭け事、酒類の所持及び飲酒、な らびに虚偽の婚約関係の下での姦淫行為といった、世俗的な法律の規定には移行され ない、フドゥード令(Hudood Ordinance)に一部関係する上訴審を審理することが許され る。』[3b] (1e節)
憲法も参照のこと。
シャリア裁判所 (イスラム法)
11.11 USSD Report 2012によれば、
『連邦シャリア裁判所(FederalShariat Court)は、フドゥード令(Hudood)(支配者ジア・ウ ル・ハクが、婚外性交渉、婚外性交渉の冤罪、窃盗及び飲酒に対し処罰を執行する方 法でイスラム法の厳格な解釈を実行するために1979年に制定した法律)に基づく事案 は、連邦シャリア裁判所(FederalShariat Court)に上訴することができる。最高裁判所の これまでの裁定では、各州の高等裁判所が フドゥード(Hudood)に関わる事案の上訴を 誤って審理する決定を下した場合には、連邦シャリア裁判所(Federal Shariat Court)は、
各州の高等裁判所 が下した決定にを再審理する権限を与えられなかった。最高裁判所
はかかる上訴事案では、シャリア上訴裁判部(Shariat Appellate Bench)を経ずに、裁判管 轄権を引き受けることもできる。シャリア裁判所は、イスラムの教義に反すると判断 した一切の法律を覆すことができるが、かかる事案では、最高裁判所シャリア上訴裁 判部(Shariat Appellate Bench)へ上訴され、最終的には、最高裁判所(the full Supreme Court)において審理されることがある。』[3n] (1e節)
11.12 2013年5月20日に公表された、米国務省の世界各国の信教の自由に関する年次報告書
2012年度版(USSD IRF Report 2009)」によれば、
『司法制度は、民事、刑事及びイスラムという相異なる法体系が並存することを反映 して、裁判管轄権をめぐって重複するか、或いは時として競合し合う関係にある、複 数の異なる裁判所制度で成る。連邦シャリア裁判所(Federal Shariat Court)及び最高裁判 所シャリア裁判部(the Shari'a bench) は、強姦、婚外性交渉、飲酒及び賭け事等の、フ ドゥード令(Hudood Ordinance)(1979年にイスラム法の実行を意図して制定された条例) の下に、刑事裁判所で下された有罪判決について審理を行う上訴裁判所の役割を果た している。連邦シャリア裁判所(Federal Shariat Court)は、フドゥード法に関わる事案で は、ムスリムにも非ムスリムにも適用される「再審権」(下級裁判所の事案を自発的 に再審理する権限)を行使する。非ムスリムは、その方法を選択すると自身に影響を 与える又は自身の権利を侵害する他の問題では、連邦シャリア裁判所(Federal Shariat Court)に助言を求めることができる。[3k] (第II節)
11.13 USSD Report 2010によれば、
『 PATA [州直轄部族地域(Provincially Administered Tribal Areas)]の司法行政はその年を 通じて著しく変化した。PATA、旧藩王国のスワトー(Swat)の一部を含むハイバル・パ フトゥンハー州(Khyber Pakhtunkhwa)、ディル及びチトラルはシャリア法を準拠法とす る。パキスタン軍がスワトー(Swat)に介入したことにより、宗教過激主義者及び過激派 は(スワトー(Swat)を含む)マラカンド(Malakand)管区の司法行政プロセスを管理できな くなった。2009年には、連邦議会及び大統領が正式にニザム・イ・アドル法 (Nizam-e-Adl Regulation) 2009を制定した。同法の解釈及び執行は極めて柔軟であるため、スワト
ー(Swat)に居住していたタリバンに批判された。タリバンの希望と異なり、裁判官は
「宗教学者」ではなく、司法機関の上層部から任命される。
『刑事訴訟及び民事訴訟の開始期限を厳しく規定する新たな司法政策を最高裁判所が策 定したこと及び、弁護士及び裁判官が新たに設定された期限を遵守する努力を行った結 果、マラカンド管区(Malakand Division)の未処理事案は著しく減少した。90%減少した 地域もある。これによって、裁判所の有効な審理を受けずに被告が刑務所で費やす時 間も短縮された』[3g] (1e節)
11.14 USSD IRF Report 2011は、ニザム・イ・アドル法(Nizam-e-Adl Regulation) (NAR – イスラ ム法)について報告し、『NARの施行は過激派に対する軍事作戦により遅れた... と述べ た。2011年1月、アミール・ハイダー・ホティ(Ameer Haider Hoti) KP首相は、NARの全 面的施行に向けた第1歩として、スワトー州(Swat)にDarul Qaza (上訴又は再審理裁判所) を設立した。ホティ首相(Hoti)によると、2009-10期に、同法の下に、民事訴訟27,000件 及び刑事訴訟39,811件が裁決された。』[3p] (第II節)
11.15 USCIRF Report 2013によれば、 NAR法は依然として有効であり、これを撤廃する努力は 行われなかった。[53d] (p119)
11.16 国連子どもの権利委員会(UN Committee on the Rights of the Child)が国連子どもの権利条 約 (UN Convention on the Rights of the Child)(UNCRC)についてパキスタンが提出した報告 書に対する2009年10月19日付けの最終評価で述べたところによれば、
『...法律、条約、習慣又はNWFPの広範囲での利用が撤廃され、2009年のシャリア法の ニザム・イ・アドル法(Nizam-e-Adl Regulation)に明記されたとおりにシャリア法が義務 化されたことで、同条約の実施が十分に保障されないのではないかと懸念する。ま た、現行法規則の一部が同条約の特に以下の原則及び規定と矛盾する点も懸念する。
『(a) 連邦直轄部族地域(Federally Administered Tribal Areas)で効力が存続する1901年 の辺境地域刑事法規
『(b) 反女性的行為防止法(Prevention of Anti-Women Practices)2006(刑法改正)による 改定と関係ない、姦通(Zina)及びハドゥード令 』[79c] (第10項))
フドゥード令、キサース及びディヤー令、辺境地域刑事法規 (FCR) 及び、部族内での 司法制度並びに、第24節: 子どもも参照のこと。
反テロリズム法及び法廷
11.17 USSD Report 2012によれば、
『テロリズム法が施行されたことで、政府が、暴力的な犯罪行為、テロ行為、宗派間 の憎悪[対立]を煽ることを意図した言動、及び国家に対する犯罪行為については、例外 的に裁判上の手続きを簡略化することが可能となった。容疑者は逮捕後7営業日以内に 反テロ法廷に出廷しなければならないことになっているが、裁判官がこの期間を延長 することも可能であった。人権活動家は、政治的操作の影響を以前よりも受けやすく なるおそれがあるとして、こうした迅速化を図った制度が並行して行われることを非 難した。』[3n] (1e節)
11.18 2013年5月30日に公表されたUSSDのテロリズムに関する国別報告書2012 – パキスタンに
よれば、
『パキスタンの反テロ法廷は無罪判決率が高い。証人は、本人及びその家族に対する 脅迫行為を理由に、証言を撤回するか出廷しないことが日常的であった。反テロ法廷 は2012年6月に、ニューヨークシティのタイムズスクエアで車に仕掛けた爆弾の爆発未 遂で逮捕されたTTP過激派ファイサル・ファザード(Faisal Shahzad)を支援したとして告 訴された男性4人を、証拠不十分で無罪にした。裁判所は電子捜査で収集した証拠を受 け入れようとしなかった。2012年12月に議会で承認された公正裁判法(Fair Trial Act) の 場合は、電子傍受及び捜査で入手した証拠を、裁判制度の証拠として認めるようになっ ている。』[3r] (第2章。国別報告書: 南アジア及び中央アジアの概観)
11.19 USSD Report 2012によれば、
『反テロ法廷は、当該被告人が有罪であると確信する合理的な根拠を裁判所が有する 場 合 は 、 保 釈 を 認 め な い こ と が で き た… FATA及 び 州 直 轄 部 族 地 域(Provincially Administered Tribal Areas)(PATA)のFCRの下に、治安部隊はテロ行為被疑者の活動を制 限し、その資産を最大48時間差し押さえ、さらには、告訴なしに1年間当該者を拘留す ることができる。人権擁護組織及び国際機関の報告によれば、テロ組織の所属容疑を かけられ、無期限に予防的拘留、拷問及び虐待を受けた被疑者の数は、計り知れな
い。こうした収監者は多くの場合、周囲との接触を断たれ、選任した弁護士との接触 を禁じられた。家族が早い段階で被拘留者に接触することもほぼかなわなかった。』
[3n] (1d節)
11.20 2013年6月10日に公表された、フリーダムハウス(Freedom House)の世界自由度報告書 2013年度版・パキスタンによれば、『同国の一般的な司法制度の範疇外にある、反テ ロ法廷等の裁判所は、正当な法の手続きが一部遵守されないまま、運営されてい る。』[5a]
11.21 2013年6月24日にアジア・テロリズム・ポータル(SATP)を介して閲覧したパキスタン反 テロ(改正)令、1999は、テロ行為及びそれに対する規定処罰を定めている[61j]
軍事法廷及び軍事法
11.22 2007 年12月19日に公表された、ヒューマン・ライツ・ウォッチの(Human Rights Watch) 報告書:適法性の崩壊: パキスタン当局、弁護士及び裁判官の取り締まりに動く、によ れば、
『民政移管後も軍の権限を制度上存続させるべく、そうした取り組みの一環として、
2007 年 11 月 10 日、ムシャラフ大統領は、1952 年軍事法 (1952Army Act)を修正した。
これを受けて、以前は、同国の通常の裁判所が管轄権を有していた多岐にわたる犯罪 につき、軍が民間人を審理することが可能になった。こうしたものには、下記の諸法 令に規定のある犯罪行為が含まれる。
1908 年爆発物取締法(the Explosive Substances Act, 1908)
1952 年パキスタン治安維持法(the Security of Pakistan Act, 1952)に基づく公序に悪影 響を及ぼすとされる行為
1965 年パキスタン軍事令(the Pakistan Arms Ordinance, 1965)、 1974 年国家 反逆行為取締法(the Prevention of Anti-National Activities Act, 1974)
1997 年反テロリズム法(the Anti-terrorism Act, 1997)
パキスタン刑法上の各項
『軍事法(Army Act)が修正されたことを受けて、今では、一般市民についても、反逆行
為や扇動を働いた者から、「公に悪影響を及ぼすような発言をする」といった比較的 軽微とされる犯罪行為を行った者にいたるまで、軍事法廷において裁かれることにな る。』[7b]
11.23 同報告書によれば、
『…修正された当該法律に則り、特別軍事法廷(special military courts)にて民間人を当事 者として行われる裁判については公開されず、取調べは軍の将校(military officers)によ って行われる。通常の裁判において憲法や法律上規定のある直接証拠の原則(rules of evidence)及び裁判上の手続き等は、適用されない。これまでにもパキスタンの治安部 隊は、重大な虐待事例に関して長きにわたり刑事上の責任を免れてきたのに、今回の 軍事法(Army Act)の修正を受けて、こうした問題の深刻化にますます拍車がかかるもの と思われる。第一に、民間人を当事者とした審理を軍事法廷が管轄することにより、
軍による虐待を受けた被害者の家族の者は、以前に比べて、訴えを提起することをた めらうようになるものと思われる。さらには今回の軍事法(Army Act)の修正を受けて、
その効力が 2003 年にまで遡ることで、近年になってその責任を問われている数多くの