(2)調査対象
A県公立高等学校の養護教諭32名(全員女性)
A県県立学校養護教諭研究会理事会の協力呼びかけ、また会員の紹介により、
A県内全域から協力者を探した。対象者の年代はTable・21に示したとおりであり、
32名の養護教諭平均経験年数は17.8年であった。
Table 21インタビュー調査対象者
年代 20代 30代 40代 50代 合計
インタビュー人数 4人 12人 11人 5人 32人 連携がうまくいった事例
i成功事例) 4例 12例 10例 5例 31例
回 答
連携がうまくいかなかった事例
i失敗事例) 4例 12例 9例 5例 30例
計61例
(3)インタビューの構成
過去に関わった生徒事例で、SCに繋ぐ必要があると判断し、スクールカウン セリングを勧めた生徒と、SCの属性、来校回数・契約時間をまず思い出しても った。その事例の中から生徒のSCに繋ぐ以前の学校内での対応、生徒や保護者 に勧めた方法と受け入れ状況、SCと養護教諭の連携状況、生徒の問題状況の改 善の程度を考えた時、一番うまくいったと思われる事例(成功事例)と、逆にうま
くいかなかったと思われる事例(失敗事例)を思い出してもらい、この二つの事例 について、rTable 22インタビュー調査内容の質問項目」の質問に答えてもらった。イ ンタビューの内容は回答者の同意を得て録音し逐語記録とした。インタビュー は50分を目安に時間と場所(保健室、応接室、会議室、相談室など)を調整し 調査を行った。32名の調査協力者のうち1画面面接日程の調整が合わず、電話 でのインタビュー調査となった。
Table 22インタビュー一一調査内容の質問項目 1 当該生徒についてお答え下さい。
①生徒の問題状況を家庭状況も含めて簡単にお話下さい。
2 スクールカウンセラーに繋ぐ以前の学校内での当該生徒への対応の様子についてお答 え下さい。
①先生はどのようなお立場で当該生徒に関わっておられましたか。
② 先生が当該生徒及び保護者になさっていた対応を具体的にお話し下さい。
③学校の組織的な関わりはどうだったでしょうか。
3 スクールカウンセラーヘカウンセリングを勧めることにした事情についてお話下さ い。
① スクールカウンセラーのカウンセリングが必要であると判断された理由は どういつだことでしょうか。
② ①の判断は誰(あるいは複数のどのような集団)によってなされたでしょう か。
4 スクールカウンセラーのカウンセリングを勧めた場面についてお話下さい。
①先生の説明はどのようなものだったでしょうか。
・場面(場所・個人面談形式か、呼び出しか偶然か、本人のみか、保護者同席 か、学校側の出席者は誰だったかなど。)
・時期(学校のサイクルの中で考えるとどういう時期だったか。例えば、出席 日数が足りなくなりそうな時期、行事前など)
②具体的な説明内容
・上記①のような対応をなさった結果、生徒もしくは保護者はどのような言葉 を返してきましたか。
5 当時を振り返ってお答え下さい。
③スクールカウンセラーとの連携がうまくいった事例について
生徒や保護者がカウンセリング等を受ける気持ちになった要因・背景は何 だとお考えになりますか。
④スクールカウンセラーとの連携がうまくいかなかった事例について
生徒や保護者がカウンセリング等を受ける気持ちにならなかった要因・背 景は何だとお考えになりますか。
⑤うまくいかなかった事例について
円滑に繋ぐときには、その時どのような関わりが必要だったと思いますか。
6 二つの事例を比較検討してお答え下さい。二つの事例ではどこが違っていたのでしょ うか。特に連携がうまくいった例でプラスに働いた要因はなんでしょうか。養護教諭 の対応の違いに焦点を当ててお答え下さい。
7 先生のお考えを聞かせて下さい
①養護教諭の教育相談への関わり方
②養護教諭が求めるスクールカウンセラーの役割
③その他スクールカウンセラーとの連携に関することなどで日頃感じられ ていること等ご自由にご意見下さい。
(4)結果の整理
連携がうまくいった事例31例と、連携がうまくいかなかった事例30例、計 61例が得られた。
これらインタビュー調査で得られた事例は録音記録をもとに、全逐語文書化 を行った。さらに質問に対する回答文を質問項目順に並べ替え、そこから回答 カードを作成した。回答カードは、質問に対しての回答を筆者が会話の中でま とめ、言い換えた回答も含む。この61例について筆者を含む臨床心理学を専攻 する大学院生8名(内3名は現職教員)が、KJ法(川喜田、1967)に準ずる手続き で、結果を整理した。
検討の材料は、質問5〜7に対する回答とした。すなわち、【Aカウンセリン グを受ける気持ちになった要因・背景】、【Bカウンセリングを受ける気持ちに ならなかった要因・背景】、【C連携がうまくいかなかった(以降失敗事例)につい て円滑に繋ぐときどのような関わりが必要であったか】、【D連携がうまくいっ た事例(以降成功事例)でプラスに働いた要因】、【E養護教諭の教育相談への関わ
り方】、【F養i護教諭が求めるSCの役割】、【G連i携に関する要望・意見等】の7 項目である。
これら質問に対する回答カードに表札をつけ、その表札を手がかりに近いも のをグループ化し、グループ間の関係性を図式化した。
第3節結果と考察
1. 「Aカウンセリングを受ける気持ちになった(成功事例)要因・背景」の構 造
カウンセリングを受ける気持ち(成功事例)になった要因・背景の回答にそれぞ れ表札を付け分類したところ、5つのカテゴリーに分類された。すなわち、「A・1 カウンセリングの連携成功」、rA−3カウンセリングへの抵抗感の低さ」、 rA・2教
師のサポート」、「A−4家族のサポート」、「A−5本人の気持ち」である。カテゴリ ーにはその下位にいくつかの項目が含まれる。カテゴリー及び下位の表札の構 造はTable 23のように整理されFigure 6のように図式化された。
Figure 6の図の流れの概要を説明する。「Aカウンセリングを受ける気持ちに なった背景・要因」には「A−3カウンセリングへの抵抗感の低さ」、「A−2教師の サポート」、「A−4家族のサポート」、「A・5本人の気持ち」から構成されていた。
以上の4要因は「A−1カウンセリングの連携成功」に繋がると分類できた。「A・3 カウンセリングへの抵抗感の低さ」には、相性という言葉がしばしば用いられ、
SCの雰囲気など感覚的な要素もカウンセリングを受ける気持ちになる重要な 要素であると推察できる。SCの自助努力や、対応の工夫がカウンセリングの抵 抗感を低くすると考えられる。「A・2教師のサポート」には、生徒を支える教師
の信頼感、担任の働き、養護教諭の信頼感があり、同様に「A・4家族のサポート」
も重要である。問題を解決しようという、本人の自覚や問題への気付きが「A・5 本人の気持ち」として生まれてきた時に、SC制度の存在やカウンセリング日の タイミングが、カウンセリングの連携成功と繋がることがわかった。援助は、
一対一という直線的な関係ではない。生徒、教職員、保護者といった顔ぶれと、
相互作用のある関わりがあり、円環的・生態学的「関係」が生じてくる。学校 という場を共有する生徒、保護者、教職員、またそこから生じた関係も含めそ れぞれが援助対象となり、生徒、保護者、教職員という三つの面は、学校アセ スメントの視点として重要と述べている倉光(2004)の学校臨床の視点とも重な
る。
Table 23カウンセリングを受ける気持ちになった(成功)要因・背景
カテゴリー 表札 人物 Q Index 回答
カウンセラー制度の存在
︷ 13 加。 カウンセラーという制度があってそこで救われたという形に ネったんですね。
11 13 ク19 やっぱり自分の、今の状況を誰かに聞いてほしかったという気 持ちがあったんだと思います。それが何回か来室する中で、
本当に今、今日は、精神.的なもので話しを聞いてほしい状況 なのか、具体的に疲労で疲れたからかというのは、来室が多く なってきたらわかる状態だったんですが、ただ当時は複数で 生徒の話を聞く人が増えた はなくて、私ひとりでしたし、何人か来室が多い時だったらその
qひとサにかまうて.やられない。それはその子も理解している ときがあったので、なんか聞いてほしいなという顔をしながらで もほかの子の対応で忙しい忙しくしているのを見ていたという のをがあるので、カウンセラーが来たときに聞いてくださる人
A−1カウンセIJングの .が秒とりでもいるんだったらという形で、多分うけてみょうがな
ニいうのがあった。
連携成功
カウンセリングのタイミング 12 13 ク15 タイミングが合いまして、カウンセラーがかなりの支えになりま オて、子離れができました。
↑8≡ †3クf7 寸時間どころかこんでなかったら、2時間ぐらい話しをしてもらっ 相談できる安心感 て。やっぱり親以外に、友達いないし、学校に来てゆっくり話し
ェできるということがあってよかったと思う。
31. 13ク35 あのうちの学校は、だれにしてもそうなんですが、勉強という のが大きくて、勉強するからにはすべてしない、すべて出来な いといけない、また自分に対する目標がすごく高い。そこを、
心の休まる場 すべてしなくていいんだよと、目標もそんなに高くなくても、自 分とみあったものでいいんだよ、ということを外部から的確にア ドバイスしてくださるので、ちょっと気が休まるというか、そんな に頑張らなくていいんだと思えるような場になっているのでは
1
教師との信頼 6 13 ク25 教師との信頼関係。
8 雪3ク32 生徒との信繍縮みたいな感じ。
7 13 ク9 生徒とコミュニケーションとか信頼、そういうことじゃないかなと 思います。
14 13 ク20 そうですね、本当にひとりぼっちと思っていたんだと思います。
』人っ子ですし、食べることも全部して選択も何もかもしていま したので。でも勉強も学校も休まず来ていたのがありましたか ら、ただその独りぼっちと思っていたところが、担任の先生も本 当にまめに声をかけてくださったり、ドアがしまってるのも、こ
.んこんとドアを開けて、家の冷.蔵庫を開けた.ら.何もないと何か 担任の働き 買って、これも食べなさいともっていてくださったり。まず担任
A−2教師のサポート からのコミュニケーションで、僕一人じゃないんだなというよう
ネ、その気持ちがちょっと外の人にも、目を向けてみて、話しを
.することによって、ちょr)と楽になったなというようなそういった.
体験ができたんじゃないかなと思います。
22 13 ク33 やっぱり、担任の先生とのかかわりじゃないでしょうか。すごく 働き掛けをよくしてくださったので、担任の先生の働きなしには つなげなかった事例だと思うので。
17 13 ク27 たぶん私との信頼関係です。私が勧めたならということで。後 カウンセラーがこんな人ということを先に私が言っていた。男 養護教諭との信頼関係 .性で若くて、1回目は話しにくいかもわからないけど、2回目3回
目話していたら、だんだん話しができるかもようということで、
最初にカウンセラーの情報を入れていたということがありま 3 13 ク7 一その時に私ではどうにもならないし、専門家につなぐといって
.もお母さんが抵抗を示されるので、それなら学校の中で来てく カウンセリングの抵抗感の但 れるのでそういう専門家に話しをしてもらいませんがということ
でお母さんが受け入れてくれたのが良かった。
10 13.ク25 それは本人とカウンセラーとの相性とか信頼関係が一番かな.
と思います。
A−3カウンセリングへ
の抵抗の低さ 16 13 ク28 カウンセリングを受ける気持になったこと。そうですねやっぱり рェ働きかけたというよりは本人とカウンセラーの先生が相性 SCとの相性 が合ったというほうが、私.の申では強いかなというのがあっ
ト、うまくいった方の例は担任の先生はそれなりに若い方だっ たので熱心にやって下さったというのがあって。自分の力では なくほかの先生のカの方が大きかった。うまくいった方は本人 とカウンセラーの先生があってくれたかなと。