• 検索結果がありません。

 本章では研究1と研究2の結果をふまえ、養護教諭のコーディネーション機 能とSC活用との関連について総合考察をする。また最後に本研究の課題を述べ

る。

 研究1の抽出された因子名と、研究2のインタビュー調査から抽出されたカ テゴリーにはいくつかの共通する要因が存在する。それは、「保護者」・「役割」・

「組織」・「説明」・「連携」・「組織」・「情報」・「専門的組織」の8要因である。

さらに研究2のインタビュー調査のカテゴリーの下位グループには、担任、研 修、教育相談や意味の共通するチーム援助、話し合い等の要因が抽出された。

これらの要因はコーディネーションを考察するキーワードとなる。

 キーワードに着目して養護教諭がどのようなコーディネーション機能を持て ば円滑な連携が図れるのか、実際に機能する教育システムを整備する為の対応 を優先順に提案する。

 ①養護教諭や学校側がSCと連携ができる時間の設定をし、SCと養護教諭、

   教育相談の担当者、担任、生徒・保護者に関わる職員が定期的また必要    時に連携の会議を開き、意思疎通と情報共有をする。

 ②生徒・保護者・教職員が自ら抱える問題を解決できるようにSCのコン    サルテーションを利用する。

 ③養護教諭以外のコーディネーターを学校組織内におき、チームで援助で    きるシステムづくりをする。

 ④研修においては、経験による専門的知識がコーディネーション行動には    結びつかないため、年代別(例えば、経験15年未満の者、15年以上の    者)のカウンセリングに対する研修会を持つ。

 前述のように学校システムの中に養護教諭の健康相談活動を支援するような 組織や制度も整備されることで、自ら満足のいく健康相談活動が生まれ、自己 評価を高める。ともすれば個人技に陥っているのではないかという不安を客観 的に評価し自信に繋がる一要因となると考える。同様の個人技はSCにも共通す

るのではないかと考えられる。教科指導、評価を担わない立場にあり、生徒や

保護者の受容共感的立場に立つという共通性がある。その支援は保健室、相談 室で行われ、守秘義務という観点が一方ではその支援活動を見えにくくし、他 の教職員には理解し難くさせる。また問題の理解や指導上の役割が不明確であ ることは、養護教諭と学級担任やその他職員との間で意思疎通が困難な状況を 招くことに繋がる。この解決策としてはSCと養護教諭、教職員の役割が重なる 部分を競合せず、役割分担し支援体制をとるかが重要になる。

 インタビュー調査の中で、職務遂行上の困難を感じながらも、専門的立場か ら生徒や教職員の抱える問題に取り組んでいる養護教諭の責任感の強さが印象 に残った。研究1では養護教諭のSC連携に関するやりにくさや不全感をたずね たSCの有用感に関する7項目には結果が見られなかったが、インタビュー調査 では、SC活用に関して養護教諭が抱えているやりにくさや不全感はTable23か らTable29に数多く語られている。研究1の結果からSC制度導入以前の養護 教諭(経験15年以上の者)においては、過去に習得した専門知識はあるもののSC とのコーディネーション行動に結びついていないことがわかった。保健室内で 問題解決を図ろうとしていると推察される。したがって経験年数15年以上の養 護教諭は学校内外のサポート資源を活用するチーム援助に関しての実践や研修 を重ねることで、コーディネーターとしての役割を果たすことができると考察 する。また、研究1の質問紙調査からは、SCとの意見や方針の相違、不信感は 抽出されず、コーディネーションに関しての尺度からは、一般教職員とほぼ共 通する因子が抽出された。その一方で、研究2のインタビュー調査からは、S

Cとの連携が円滑に取れ、万全な組織のもと生徒支援を行っている高校もある が、養護教諭や学校側の抱える問題や、円滑な連携がとれずSC活用が低調であ る実態と様々な苦労も語られた。

 調査者が感じていた養護教諭の教育相談活動の不全感は、質問紙調査研究の 結果からのコーディネーター役割を果たしている養護教諭像とインタビュー研 究のコーディネーター役割を果たせていない部分を持ち困っている養護教諭像 のギャップに由来しているように感じている。

 対人援助職である養護教諭の特性として、岡東・鈴木(1997)は、次のような指 摘をしているので引用する。「教育者としてのモラールが高く、やりがいや生き がいあるいは職務満足感を強く持ち、教職適性感もある。児童・生徒の指導に

ついて自己達成感や自信を持っており、児童・生徒に対する教育的責任が強く、

彼らの行為を肯定的に捉える反面、疲れているなど彼らの心身の状態を深刻な ものとして受け止めている。保健事務活動や健康診断関係書類の作成と整理等 の養護教諭の本来的な職務に対して負担を感じ、職務遂行上の困難を強く感じ ている。自らの職務の目標の明確さや責任を明確に確認しつつも、職務上の役 割をめぐる精神的な負担を感じている。自らの教育実践に対して、同僚教員、

管理職、児童・生徒、保護者等の周囲からの指示を強く感じている。」

 養護教諭は、状況判断や養護の見立てを統合して、合理的な決断へ導く方法 やシステムを経験によるものだけでなく、専門職として根拠に基づく結果とし て積み重ねる必要がある。そして、抱え込む事無く、判断に迷いが生じる問題 に対して、管理職、学校医、専門家等との連携をはかり、最善の支援に導かな くてはならない。曖昧な状況判断は、誤った保健指導に繋がり、連携を遮断し 学校システムの中で孤立化に繋がる。

 養護教諭の状況判断については、鎌田(2008)は医学に基づく確実な判断の説明 責任や医療の選択や優先順位を決める為の決断が、養護教諭の専門性として、

問題解決の責務の根拠として問われる時代となってきたと述べている。また保 健室の養護教諭にとっては、様々な異なる健康状態についての価値観は、当然 の事実であり、この事実に発育発達の過程にある児童生徒の発達差、学習の知 識理解の差、個人の生育経験の差を踏まえて、将来の個々に約束された人生を いかに予測して、目前の子どもの健康状態をアセスメントし、臨床決断、教育 決断、発育決断をどのように組み立てていくかは、社会の変化や価値観の多様 化と共に、実践的研究の必要性が急務とされていると考察している。

 小学校、中学校と違い、継続的には困難な高校独自のスクールカウンセリン グ活動には、スーパービジョンを中心とした生徒・保護者・教師のサポートと

してSCの活用を提案する。

 藤岡(1999)は、学校内外の資源が組み込まれた体制を構築し学校システム全体 を支え、それを支えにして教師(特に担任)が安心感と責任感と主体性を持って一 人ひとりの子どもに臨むことが求められる。学校内外から学校を支える専門家 の役割の明確化と養成と研修にむけてのプログラム、カリキュラムづくり、及 び学校内でそれらを受け入れるだけの教師の教育相談や心理臨床に関する理解

と意識変革が求められる、と述べている。また実際に学校心理の専門家が学校 現場となんらかの形でつながり、できれば学校の中に入り込みその専門性の行 使における課題を模索することの意義を述べている。研究1の結果からはSC制 度導入以前の養護教諭(経験15年以上の者)においては、過去に習得した専門知 識はあるもののSCとのコーディネーション行動に結びつかず、保健室内で問題 解決を図ろうとしていると推察される。そのため今後チーム援助に関しての基 礎的な研修や実践を重ねることで、コーディネーターとしての役割を果たす必 要があると考察する。

 学校心理臨床におけるSCの活用においては、 SCと養護教諭、双方がお互い の専門的立場を理解することが重要である。筆者は自身の養護教諭の経験と、

臨床心理を学ぶ者として、繋がりとなればと考えているが、SC活用の減速要因 となる課題も多く残されている。しかし、一部改善の手立ての連携促進要因も 明らかとなった。これらの問題を考え続けることが、改善に繋がる方策に導き、

養護教諭のコーディネート機能がSCの活用によって、さらに有効となり生徒・

保護者・教職員の抱える問題の改善に繋がると考える。

本研究の課題

 この調査研究の測定している尺度は養護教諭の自己評価である。解釈には限 界がある。調査対象はA県の高等学校に限られているので、今後、他地域の調 査も必要である。

 また養護教諭とSCと限定されたコーディネーションでなく学校内外のスク ールソーシャルワーカー、医療機関、巡回相談員、ボランティアヘルパー(大学 生ピアサポーター)等資源をコーディネーションとしても捉える必要がある。本 研究ではSC活用に焦点を当てたが、複数資源を総合した上での養護教諭のコー ディネーション機能の検討が残された課題である。

関連したドキュメント