• 検索結果がありません。

 生徒の活動状況及び希望と学校適応感の関連 プログラム実施時の生徒の活動 状況と希望及び学校適応感との関連を捉えるために,プログラムで使用したワー クシートと振り返りシートをそれぞれ得点化し,希望及び学校適応感との関連を 検討した。

 ワークシートと振り返りシートを得点化するにあたり,Table3−9の得点化評 価基準を作成し,それに基づき得点化:をした。ワークシートを得点化したものと 振り返り用紙を得点化したものをそれぞれ,「サブ目標得点(Table3−9のa〜dの 合計点)」,r振り返り得点(Table3−9のe〜gの合計点)」とした。ただ,ワーク

シートについては,プログラムの第3〜5回のサブ目標で使用したワークシートを 得点化の対象とした。その理由の一つは,第3〜5回で使用したサブ目標に関する ワークシートはそれ以前の内容(プログラム第1〜2回の内容)を包含しており,

サブ目標に用いたワークシートで十分だと考えたためである。二っ目の理由は,

第6回以降のプログラムはスキルの練習や共通課題を取り扱ったものが多く,ワ ークシートから活動状況を判断することは難しいと考えたためである。

 得点の評定については,2名の大学院生がそれぞれ測定を行い,測定者間の得

点の相関係数を算出した。その結果,■=。88となり,高い信頼性を得た。

Table3−9ワークシー  の一

1プログラム第3〜5回で使用したサブ目標のワークシート

 aサブ目標の個数(サブ目標の個数により,ほぽ25%ずつとなるように生徒を4   群に分け,1〜4点に得点化した。個数が1〜4個を1点,5佃を2点,6〜7個を3点,

  8〜17個を4点とした。)

 bサブ目標が明確であるか(「ぼんやり(1点)』,rどちらかといえばぽんやり    (2点)」,rどちらかといえばはっきり(3点)」,rはっきり(4点)」)

 cサブ目標が段階的になっているか(r段階的になっていない(1点)」,r段階   的になっている部分もある(2点)」,r段階的にはなっている(3点)j,r段階的に   なっていて,短期目標と長期目標がある(4点)」)

 dサブ目標の内容が適当か(1適当でない(1点)」,rどちらかといえば適当で   ない(2点)」,rどちらかといえば適当である(3点)」,r適当である(4点)」)

2振り返りシート

 eこれから役に立つか(rとても思う(3点)」,rまあまあ思う(2点)』,1どちら   とも言えない,あまりそう思わない,まったくそう思わない(1点)」)

 fもっとやりたいと思うか(rとても思う(3点)』,rまあまあ思う(2点)」,「ど   ちらとも言えない,あまりそう思わない,まったくそう思わない(1点)」)

 g楽しく活動できたか(rとて童)よくできた(3点)j,「まあまあできた(2点)L

  「どちらとも言えない,あまりできなかった,まった一L__

まず,サブ目標得点の高得点者と低得点者との問に,希望及び学校適応感の違 いがあるかを検討するために,サブ目標得点により,得点の高い方から1/3の生 徒を高サブ目標群(男子10名,女子19名),得点の低い方から1/3の生徒を低サブ 目標群(男子12名,女子4名),残りの1/3の生徒を中サブ目標群(男子18名,女 子13名)とする3群に分けた(ちょうど1/3ずつの人数に分けることができなかっ たので,高サブ目標群と低サブ目標群は少ない人数の方で設定した)。各群の平 均値をTable3−10に示した。

Table3−10 の  、 オ と 4 、の

希望得点

4月 5月 7月 4月 5月 7月

低サブ目標群躍       (5切

中サブ目標群M

      (鋤 商サブ目標群ルf       (鋤

43。8  44.9  42.3

(8.8)(12.3)(1L9)

46.7   47.4   48.3

(5.2) (8.7) (8.4)

48.0   47.4   48.7

(7.9)(9.6)(7.8)、

20.0

(7.7)

23.3

(6.3)

24.5

(5。4)

20.9

(7、7)

24.1

(6.9)

24.7

(5.4)

20.8

(7、2)

23.8

(7.3)

24.3

(6.7)

 これらのデータに基づき,群と時期を独立変数,希望及び学校適応感を従属変 数とする2要因分散分析(群(3)×時期(3〉)を行った(Table3−11参照)。

Table 3−11 についての

学校生活適応感 希望

自己 教師 友人 進路 学習  合計 ANOVAのF値

 群         1.16    .56   1.74   3.24*  7.77** 3。41*   2.56

 時期    3.21* 1.69  .24  。47  .07  .00  、51

 群×時期  .53 1.18 L27 .70 .33 .64  .18

(注)自己=自己肯定感,教師二教師との関係,友人算友人関係,進路=進路意識,

 学習=学習への意欲,全体二学校生活適応感得点の合計

 ANOVAの自由度は学校生活適応感:4倉2/56,希望:雌2/70,**ρく.01,*ρ<.05

 その結果,学校適応感の合計,下位尺度の「学習意欲jと「進路意識」におい て,群の主効果が有意であった。また,下位尺度の「自己肯定感」において,時 期の主効果が有意であった。そこで,多重比較を行ったところ,学校適応感の合 計では,高サブ目標群が低サブ目標群より得点が有意に高かった。下位尺度の「学 習意欲」と「進路意識」では,低サブ目標群が他の2っの群よりも得点が有意に 低かった。また,下位尺度の「自己肯牢感」は,5月から7月にかけて得点が上昇

していた。

 次に,振り返り得点に関して高得点者と低得点者との間に,希望及び学校適応 感の違いがあるかを検討するために,振り返り得点により,得点の高い方から

1/3の生徒を振り返り高群(男子8名,女子18名),得点の低い方から1/3の生徒を 振り返り低群(男子9名,女子9名),残りの1/3の生徒を振り返り中群(男子22名,

女子8名)とする3群に分けた(ちょうど1/3ずつの人数に分けることができなか ったので,振り返り高群と振り返り低群は少ない人数の方で設定した)。各群の 平均値をTable3−12に示した。

 それらのデ〜タに基づき,群と時期を独立変数,希望及び学校適応感を従属変 数とする2要因分散分析(群(3)×時期(3))を行った(Table3−13参照)。

Table3一一12 の  論 と  霧 の・

適応感得点 希望得点

4月   5月   7月   4月   5月   7月

振り返り低群ルf      (5勿 振り返り中群〃P      (鋤 振り返り高群〃r      (鋤

42.5

(6.8)

46.2

(6.9)

49.5

(6.7)

37.9

(9.0)

47.3

(7.5)

52.2

(7.9)

41.6

(8.6)

46.2

(6.8)

52.2

(9.2)

21.9

(7.8)

22.6

(5.9)

24。1

(5.8)

20.0

(6.7)

23.4

(6.4)

26.1

(6.0)

18.5

(6.5)

23.1

(7.0)

26.5

(5.8)

Table 3−13

。 び  についての

学校生活適応感 希望

自己 教師  友人  進路 .一

ANOVAのF値

 群      .59  10.87** 4.53*  7.70** 5.56** 10.40**  4.94*

 時期    4.06* .91 .13  .80  .06  .22  .38

−1.37 1.22 。61 1.94 5.11**

(注)自己瓢自己肯定感,教師#教師との関係,友人=友人関係,進路罧進路意識,

 学習寓学習への意欲,全体=学校生活適応感得点の合計

 ANOVAの自由度は学校生活適応感;ゴ奔2/56,希望:雌2/70,**ρ<.01,*ρ〈.05

 その結果,学校適応感の合計,下位尺度の「教師との関係」,「進路意識」,「学 習意欲」,「友人関係」において,群の主効果が有意であった。また,下位尺度の

「自己肯定感」において時期の主効果が有意であった。多重比較の結果,学校適 応感の合計と下位尺度の「教師との関係」,「友人関係」では,振り返り高群が他

の2つの群よりも有意に得点が高く,「進路意識」では,振り返り低群が他の2

つの群よりも有意に得点が低かった。また,「学習意欲」では,振り返り高群が 振り返り低群よりも得点が有意に高かった。「自己肯定感」では,5月から7月に かけて得点が上昇していた。

 希望については,群の主効果と群×時期の交互作用が有意であった(Figure 3−6参照)。単純効果の検定の結果,5月と7月において群問に有意差がみられた

(4月:F(2,6g)=.71,η.乱;5月:F(2,6g)=5.27,、ρ〈.O玉;7月:F(2,6g)#8.84,ρ<.01)。

時期については,振り返り低群と振り返り高群に有意差が検出された(振り返り

低群:Fく2,138)=6.50,P<.011振り返り高群:F〈2,138)=3.57,ρ<.05)。5月の各群に

ついて多重比較を行ったところ,振り返り高群が,振り返り低群より得点が高か った。7月の各群については,振り返り高群と振り返り中群が,振り返り低群よ

りも得点が高かった。また,振り返り高群と振り返り低群について時期の多重比 較を行ったところ,振り返り低群は,5月以降得点が低下しており(4月>5月≒7 月),振り返り高群は,5月以降希望が上昇していた(4月<5月≒7月)。

30

鼠︾      02       n∠希望得点

_一

    4月      5月      7月

      時期

Figure3−6 各群の希望得点の平均値の変化

15

「二臼二振り返り低翻 i        I l一◆一振り返り中群

』重二型辱堕麹

 次に,プログラム実施時の生徒の活動と希望との関連をより詳しく検討するた めに,プログラムの実施前(4月)と実施後(5月)の希望得点の差の平均値から1SD 以上得点が変化した生徒を抽出して,個別にプログラムの効果を検討した。プロ グラム実施時に使用したワークシートと振り返りシート,希望得点の変化,適応

感得点の変化をもとに個別考察を行った(Appendix29とAppendix30参照)。

ここでは,1SD以上得点が上昇した生徒11名を「上昇群」,1SD以上得点が下降し

た生徒14名をr下降群」とした。

 その結果,適応感得点が全体平均と比べて上昇した生徒の割合は,上昇群で 9/11,下降群で4/14であった。そこで,直接確率計算を行ったところ,人数の偏

りに有意差がみられた(両側検定:p=.0154)。

 プログラム実施時に使用したワークシートについては,「プログラムを通して 目標の一貫性があるか,サブ目標や長期目標が明確か,目標とサブ目標及び目標 と長期日標の関係が段階的か,プログラムの活動内容を理解しているか」の4項 目について検討したが,上昇群と下降群で大きな差はみられなかった。

 振り返り用紙については,「とても楽しく活動できた」と答えた生徒の割合は,

上昇群で6/11,下降群で3/14となり,上昇群の割合の方が高かった。そこで,直 接確率計算を行ったところ,人数の偏りに有意な差はみられなかった(両側検定

:ρ=.1153)。次に,rとても役に立つと思う」と答えた生徒の割合については,

上昇群で5/11,下降群で2/14となり,ここでも上昇群の割合が高かった。そこで,

直接確率計算を行ったところ,ここでも人数の偏りは有意ではなかった(両側検

定:ρ=.1774)。

(3)目標及び不安の内容

 中学入学後の生徒の目標及び不安の内容を捉えるために,目標と不安の自由記 述をK J法的手法により分類し,その人数を比較検討した。目標及び不安のカテ

ゴリー分類とその人数を,Table3−14とTable3−15に示した(3回の調査にお

いて,すべて10名未満であった項目はrその他」の項目として扱った)。

 目標内容のカテゴリーごとの人数を比較するために,それぞれの人数について

■2検定を行った。その結果,有意差が検出され,4月は,部活>学習≒友達>生 活≒進路≒自分(−2(5)=387.57,ρ<.01),5月は,学習>部活〉友達≒生活

(■2(5);274.78,ρ<.01),7月は,学習>部活>生活〉友達≒進路≒自分(■2(5)

=321・33,ρ<.01) となった。

 不安内容についても,目標内容と同様に,各カテゴリーの人数についてx2検

定を行った。その結果,有意差が検出され,4月は,友達≒学習>先輩≒いじめ

≒生活≒ない#部活(−2(8)=465。03,ρ〈.01),5月は,学習>ない≒友達〉部活

≒先輩≒生活需いじめ蔀教師(■2(8)=333.69,ρ<.01),7月は,学習〉ない≒友 達〉部活≒生活≒いじめ≒先輩(■2(8)=352.71,ρ〈.01)となった。