されていた(9)。しかしながら、ほとんどのCT系では、無視できない大
きさのtが中性状態でqを増加させ、イオン性状態でqを減少させる。
そのため、擬中性状態から擬イオン性状態への、比較的小さい電荷移動 墨のジャンプしか起こらない。;例えば、TTRp-chloranilの系ではq
は、0.34から0.64へ変化する(q→0.3のジャンプ)。新しいCT錯体 であるTTF-DMDCNQI系で観測された0.1から0.9ヘのより大きな電
荷移動量のジャンプ(0.8)はこの系における小さい移動積分tに起因し
ている。
この章では、二量体モデルを用い、ドナーとアクセプターの移動積分 とSmα"弓poZaro凡束縛エネルギーに対する錯体の電荷分布の変化の理
論的研究を行ない、電子一分子振動相互作用が、混合スタック構造を持 つCT分子結晶におけるN-I転移の特徴を理解する上で決定的になるこ とを示す。
|r〉………イオン性状態の基底関数
’0〉………真空状態の基底関数
とすると、中性状態は、D+に電子を-つ加えた状態だからドナー(D)の
電子生成演算子cらを'0>に作用させて、
に>雲|±’0>雲cBl0>,(')
また、イオン性状態はAに電子を加えた状態だから、アクセプター(A)
の電子生成演算子cXを'0>に作用させて
|r>=|+,->雲c力'0>,(,)′
となる。
電荷移動と電子一分子振動カップリングを含んでいるCT錯体の全ハ ミルトニアンは以下の式で与えられる('0)。
H=H:+H.+zgα(1-"D)Qα+Zgβ"AQβ
α β
( 2)
"i=c?c‘,(j=A,D)は電子の個数演算子であり、ciは電子消滅演
算子である。(2)式はCT錯体の全ハミルトニアンで、
第1項……電子ハミルトニアン→(3)式 第2項……振動ハミルトニアン→(4)式
第3項……それぞれDとAに対する振電相互作用ハミルトニアン
H :
= g l c X c A +
’ 魚 + c D ( C C B C 4 )
,
H o
-琴 等 亭 脚 + ( ) 等 : 啄 ( 十 ) ; Q
( 3)
( 4)
これらはそれぞれ、振電相互作用がない時の、電子ハミルトニアンおよ
97
jD刀
一●
aβ u恥
aβ のの
9922 -一
一一一一
QQ
2a2β
のの
函&》$
++
( 5)
である。(5)式は振電相互作用がある場合の調和振動子の運動方程式で あり、右辺=0の時は通常の調和振動子の方程式となる。
(5)式を基底状態の波動関数で挟んで積分すると(6)式となる。振動モ
ードの平衡値(Q)は、相当する分子上に存在する電荷の平衡値と比例
している。:
Qα=-2生(1-元、),Qβ=-2生勉,(6)
の a の β
ここで、元ボー<'|"‘|'>は電子の個数演算子の平均値で、基底状態|'〉
に対して計算されている。電子ハミルトニアンは式(2)の第1項、第3 項、第4項で、記述され、
9し
びドナー(振動数のαの基準座標Qα)とアクセプター(振動数のβの基準座 標Qβ)の全対称の分子振動のハミルトニアンを記述している。電子-分
子振動カップリングはそれぞれ、ドナー分子とアクセプター分子に対す
る、式(2)中の第3、4項の線形電子一分子振動カップリング定数gα,gβ によって表わされる。8,=ID-EA-(e2/硯)である弓は距離R
だけ離れたアクセプター上の電子とドナー上のホールのペアを作るた めに必要なエネルギーである。ここで、IDはドナーのイオン化ポテンシ
ャル、EAはアクセプターの電子親和力である。
式(2)から、モードQα,Qβに対する運動方程式は、
H
・ = H 9 + Z g α ) Q α ( ' - 7 0 , + Z g β n A Q β ,
α β
( 7)
式(3)、(6)を使って、式(6)によって定義された平衡位置に原子があ る場合の、電子ハミルトニアン(7)を次のように表わす。
F ー
H・=~eD+eD"D+eAnA+t(cjIcD+cBcA),
eD=2EpD(1一元D),eA=gi-2EpA元A
( 8)
であり,E,、=Zag:/のα,E,A=Zβg;/のβは、それぞれ、ド
ナーとアクセプター分子に対するSmα"和oJam凡束縛エネルギーであ
る。
D、A上の電子数が変化すると、平衡核配置が変化して、それに応じて 電子エネルギーの安定化が起こる。したがって核が動かない場合よりも 余分の束縛エネルギーを発生する。これをSmα"弓poJam刀束縛エネルギ
ーと呼ぶ。
基底関数(1)式の