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結果と考察

ドキュメント内 守 蛤 (ページ 131-142)

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5.2 結果と考察

5.2.1DMDCNQI銅塩

電荷移動量の見積もり

常温常圧におけるDMDCNQI中性分子DMDCNQIリチウム塩、

およびDMDCNQI銅塩の赤外吸収スペクトル(図2-3,図.3-3,図5-2)

を示す。一般に、TTF-chlorailなどの錯体の逆対称伸縮振動に対し

ては、電子-分子振動(e-mの相互作用の効果は無視できる。このこ とから波数シフトの大きい逆対称C=O伸縮振動について、その波数 シフトの大きさが電荷移動量qに比例することが理論的に証明され

ている('9).

最近、小林等によってDCNQIの逆対称C=N伸縮振動および逆 対称C=C伸縮振動の波数がDCNQIの電荷に直線的に依存すること が確かめられた(20)。

のi=の?-△i・q

のZ;j番目の振動モードの実測のj番目の振動数

の!;中性分子の播目の振動数

△j;イオン化に伴う振動数差 q ; 電 荷 移 動 量

本研究においても、中性分子とリチウム塩のC=N伸縮振動数から 文献の関係式を確認した。

上式から、常温常圧下のCu①MDCNQI)2の電荷移動量は、C=N

伸縮振動の波数(測定結果からq=Oである中性分子:vc=N=1535

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cmFl、q=0.5であるリチウム塩:vc=N=1505cm-1)から求められる

直線関係にvc=N=1490cm・’を代入することによりq=0.67と見積

もられる。得られた直線関係を図3-5に示す。このことは、この銅 錯体が混合原子価状態Cuや1.33にあることの証明となっている。

高圧下での赤外吸収スペクトル測定

DMDCNQIの中性分子のCゴV伸縮振動、C=C伸縮振動のピーク

波数の圧力依存性をプロットしたものを図5-3に示す。C=C伸縮振 動のバンドは加圧に伴う非調和項の寄与の増大により最高測定圧力 6GPaまで連続的な高波数シフトを示した。また、C=N伸縮振動の バンドについては加圧による波数シフトはほとんど見られなかった。

(わずかに低波数シフト)次にCu①MDCNQI)2の1000~4600cm~’

の領域の赤外吸収スペクトルの圧力変化(0~2.8GPa)を図5-4に示 す。常圧における錯体のC=C伸縮振動(1545cm~')と、C=N伸縮 振動(1490cm~')、C三N伸縮振動(2150cm~')に帰属されるピー

クは確認できるが、C-H伸縮振動に帰属されるピークは電子吸収帯 に隠れたためか確認することは出来なかった。常圧において、バン ド内遷移による幅の広い電子吸収帯が高波数側から低波数側へと続 いているが約lGPa以上の圧力領域のスペクトルでは、電子吸収帯 は2000cm-1付近までで終わりそのあとはほとんどフラットなベー スラインになっている。また、電子吸収帯のピークは赤外領域には 見られず、後に述べる可視・紫外領域の電子スペクトルの低波数部 に観測されている。このことから、以前に報告されている金属一絶縁 体転移(M-I転移)の転移圧力1GPa以上ではバンドギャップが開

いてバンド間遷移が近赤外領域へ高波数シフトしていることが判る。

図5-5に1450~1650cm~'領域と2000~2250cm~'領域の赤外吸収

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スペクトルの圧力依存性を、図5-6に各振動モードのピーク波数の 圧力依存性を示す。電荷に強く依存している(電荷移動塁の見積もり に用いた)C=N伸縮振動のピークは圧力を印加しても波数シフトは ほとんど見られなかった。このことから圧力の印加による電荷移動 量の変化はほとんどないことがわかる。C=C伸縮振動とC三N伸縮 振動に帰属されるピークも中性分子の圧力変化と同程度の高波数シ フトしか示さず、これらのピークからも電荷移動量の変化はほとん どないことが分かる。また、図5-7(600~1700cm~うから以下のよう

な変化が観測される。転移圧力と思われる圧力(約1GPa)以上で は、1600,1300,1200cm-'付近に幅広い吸収帯が成長している。

これは温度変化からも観測されており、e-mUカップリングにより赤 外活性化したαgモードの吸収であり、それぞれC=C伸縮、C=N伸 縮、C-C-H変角と帰属されている(21)。

高圧下での電子スペクトル測定

常圧下での紫外・可視・近赤外領域の吸収スペクトルを図5-8に 示す.破線はカーブ分離した吸収帯である.30200,27500,25600

cm~'の吸収帯は、DMDCNQI分子の7Z-フず遷移のバンドである。また、

14000cm~'付近のブロードな吸収帯はDMDCNQIのラジカルアニ

オンの吸収帯である.また、近赤外領域には前に述べた赤外領域から シフトした電子吸収帯が現れている。図5-9にスペクトルの圧力変

化を示す。30000cm~'付近のDMDCNQI分子の7Z-7fA『遷移のバン

ドは圧力の印加によって変化していないが、14000cm-1付近のラジ

カルアニオンの吸収帯の吸収強度は圧力の印加とともに減少してい るように見える。吸収強度をプロットしたものを図5.10に示す。

この変化は可逆的であり減圧していくともとのスペクトルにもどる。

これはラジカルアニオンのバンドが消えたのではなく、モノマーの

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14000cm~'付近のバンドが消えて、トリマーのバンドが22000cm~’

付近に現われていると解釈すべきである。なぜなら、赤外吸収スペ クトルから、電荷移動量は変化していない。すなわち、DCNQIの 数は変化していないことが分かっているからである。したがって、

レギュラースタック(1分子周期)の金属相から、多分子周期の半 導体相に移行したためのスペクトル変化である。DMDCNQI分子の 形式電荷は約-2/3なので、3分子が単位となってトリマーを作れば、

ちょうど2eのペアができて電子状態は安定する。一般にラジカルイ

オンの7z-蒜遷移のバンドはポリマー化に伴って高エネルギー側へシ

フトするので、おそらくこれが22000cm-1付近のバンドに相当す るのであろう。また、M-I転移によって、DCNQIのαg振動のIR バンドも変化する。これらは電子一分子振動(e-mU)カップリング によって赤外活性化したもので、金属相伽相)では1300~1500cm‐

’にブロードな吸収となって現われているが、絶縁体相(I相)では (1GPa以上)シャープになっている。このような変化は、以前に TrF-TCNQ等で見られている。実際に見た目には常圧では黒青色で

あるが、圧力の印加とともに黄色に変わっていく。赤外領域から続 い て い る 電 子 吸 収 帯 は 圧 力 の 印 加 と と も に 高 波 数 シ フ ト し て お り M-I転移圧力(1GPa)では約800cm~'シフトしている。プロットし

た図を図5-11に示す。転移圧力をすぎてからも、2GPa付近までは 直線的な高波数シフトをしているが、それ以上の圧力の印加では(~

3GPa)頭打ちをしている(1500cm-1シフト).

高圧下での電気伝導度測定

測定はCu(DMDCNQI)2について行なった。測定方法は第2章の

実験で述べている。抵抗測定に用いた結晶は、定電流(30mA)で 約1カ月間通電することによって良質の単結晶(,0×0.,×0.,mm3程

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度)に成長させたものを用いた。測定に用いた結晶は、ガスケットの 穴の中に入るように0.3mm(長さ)×0.1mm(幅)×0.08mm(厚さ)に長

さをカットしたものを用いた。また、実験は2端子法による抵抗測 定を行ない、比抵抗の圧力依存性を調べた。抵抗値から比抵抗pを

求める式は以下の式である。

p=R×A/Z

β;比抵抗(Q・c、)

R;抵抗(Q)

A;結晶の断面積(cm2)

I;結晶の長さ(c、)

電気伝導度◎はpの逆数から求められる。

◎=1/p

本来、測定に用いたCu①MDCNQI)2の常温常圧下での電気伝導 度◎は、4端子法による測定では約500s.cm~'(すなわちβ=

2.0×10-lQ.c、)であった。この値は以前に報告されている値(o=

約103S、cm-1)と同程度である。しかしながら、今回の高圧下での 測定は2端子法で行なったため、接触抵抗の影響が大きく、グー1.6

S・cm-l(β=0.6Q・c、)とかなり低い値となっている。

比抵抗値の圧力依存性を図5-12に示す。圧力は0~約2.5GPaの

間で変化させた。常圧での比抵抗を即とし、log(p/ノ00)の値を縦軸

にとった。

比抵抗は昇圧過程においては約1GPaまで減少していき約1GPa

付近で最小となっている。そして金属一絶縁体伽-1)転移の転移圧力

(Pb)である約lGPa程度の加圧で比抵抗は急激に大きくなっている。

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これはこの圧力(Pb)で金属相から絶縁体(非金属)相に転移してい

るからであると思われる。

以前に報告されている結果(22)では、電気伝導度は約0.5GPaで最

大になり徐々に小さくなっている。ほとんどの擬-次元有機CT錯 体 結 晶 は 圧 力 の 印 加 で 直 線 的 な 変 化 を 示 す が 、 こ の Cu(DMDCNQD2はかなりユニークな挙動を示している。

したがって、今回行なった実験でも同様の結果が得られると思わ れたが、接触抵抗の影響が大きく、そのために金属相(~1GPa)で の結晶本来の比抵抗の変化が隠された結果、文献と異なる圧力依存 性になったものと思われる。

このCu(DMDCNQI)2結晶は◎=1000s.cm~'という非常に高い電

気伝導度を持った電導体であるため、本来は4端子法によって測定 しなければならなかったのであるが、測定中に金線が結晶から外れ てしまい、結局、2端子法でしか測定することが出来なかった。この 実験についてはまだ改良する点がある。

強結合近似バンドを用いたM-I転移の説明

図1-3にDCNQIのP汀バンドと3.(Cu)レベルの関係を模式的

に表した。Cuの周囲の四つのNは四面体をC軸方向に縮めた配位 構造をもつ。M-I転移温度でこの縮みが不連続的に増大し、同時に 三倍周期格子変調波が発生することが判っている。('9)歪み(縮み)の 大きさを表わすパラメーターとして結晶場分裂の大きさDを導入し、

DCNQI分子の2P汀原子軌道からできたLUMOとCuのエネルギー

の高い3つの3.軌道からフェルミ・レベル近傍のバンド構造の概 略が決定されると考え、拡張ヒュッケル近似を採用すると図1-3の

ようなフェルミ面が得られる。DCNQIの2p汀バンドの縮退がPかd

相互作用によって解けることによって三対の歪んだ平面的フェルミ

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