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図523付着試験結果との比較

以上より、第三章で検討したシートの付着性状は、せん断補強したはりを用いた実験 における付着強度算定により、その妥当性が確認された。今後さらなる解析・検討によ

り、CFシート補強はりの付着を考慮した強度特性の解明が期待できると言えよう。

5.4.5まとめ

逆対称載荷における鉄筋コンクリートはりのCFシートによるせん断補強効果について 6体の試験体を用いて実験的に検討した。その結果、以下に示すような知見が得られた。

1)CFシートのせん断補強により、終局せん断耐力が無補強のものに比べ1.3~1.8倍程度上

昇し、その補強効果が実験的に確認された。ただし、せん断ひび割れ耐力の増加には、

CFシートはあまり寄与しない。

2)せん断破壊及びせん断ひび割れを生じたものにCFシートを貼付した場合も、無傷のも のにシートを貼付した場合と同等以上のせん断補強効果が認められた。シート貼付前 の損傷程度にはCFシートのせん断補強効果はあまり影響を受けず、逆に前者の方がせ ん断補強効果が大きくなった。

3)せん断スパン長さが大きいほどCFシート補強後の終局せん断耐力の上昇率が平均的に 高くなり、せん断補強効果が大きくなることが分かった。

4)トラスモデルを用いた解析によって得られたCFシートの付着強度は、第三章で示した 付着試験結果とおおむね一致し、付着試験及び付着を考慮した解析の妥当性が確認さ れた。

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参考文献(第五章)

1)古市憲司他/炭素繊維シートによるRCはりのせん断補強に関する実験的研究、日本 建築学会中国・九州支部研究報告、第10号、1996年3月

2)武田浩二他/炭素繊維シートによる連続繊維補強コンクリートはりのせん断補強、

第50回セメント技術大会講演要旨、1996年4月

3)炭素繊維シートによる鉄筋コンクリートはりのせん断補強効果、第50回セメント技術 大会講演要旨、1996年4月

4)三井宜之他/炭素繊維シートを用いた鉄筋コンクリートはりのせん断補強効果、第5 回複合材料界面シンポジウム要旨集、1996年5月

5)古市憲司他/炭素繊維シートによるRCはりのせん断補強に関する実験的研究、日本 建築学会大会学術講演梗概集、A-1,1996年7月

6)YoshiyukiMitsuietal./ShearReinfbrcementofReinfbrcedConcreteBeamsUsingEpomqノー

BondedCarbonFiberReinfbrcedPlasticsSheets,Proc・ofThe3rdlntLSymposiumon TextileCompositesinBuildingConstruction,1996.11

7)武田浩二他/炭素繊維シートによる連続繊維補強コンクリートはりのせん断補強、

セメント・コンクリート論文集、No.50,1996年12月

8)古市憲司他/炭素繊維シートによる鉄筋コンクリートはりのせん断補強効果、セメ ント・コンクリート論文集、No.50,1996年12月

9)武田浩二他/逆対称裁荷における鉄筋コンクリートはりの炭素繊維シートによるせ ん断補強効果、日本建築学会九州支部研究報告、第36号.1,1997年3月

10)日本建築学会/鉄筋コンクリート構造計算規準・同解説、1998年

11)木村耕三/炭素繊維によるコンクリートの補強に関する実験的研究、大阪市立大学 学位論文、1994年11月

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本論文は、新素材繊維である炭素繊維をシート状に加工した「炭素繊維シート(CFシー ト)」を鉄筋コンクリート(RC)に貼付補強したときの補強効果に関する実験的研究を取り まとめたものである。以下に各章ごとのまとめを要約して述べる。

第二章では、炭素繊維及びCFシートの素材特性を明らかにし、CFシートをコンクリー トに貼付する際の接着剤等の仕様及び施工手順を紹介した。併せてひび割れによる損傷 を受けたRC部材への樹脂注入による補修工法についてもまとめた。

CFシートは軽量・高強度・高弾性・高耐久性といった優れた素材特性を有する。また 樹脂接着剤により簡単に補強できるため施工の省力化・工期の短縮につながるといった

メリットがあり、今後用途が大きく広がっていくと期待できる。

第三章では、コンクリートに貼付補強されたCFシートの付着性状について述べた。

2つのコンクリート角柱を中央で突き合わせ、その面をまたぐようにシートを貼付した はりの曲げ試験によりシートの付着性状を検討したところ、シート付着応力はシート断 面積が大きくなるほど面圧の増加による摩擦作用により大きくなり、またコンクリート 圧縮強度が大きくなるほど大きくなった。また、シートを接着するコンクリート表面に プライマー塗布による適切な下地処理を施すことの重要性が確認された。

第四章では、RCはりの曲げ引張縁にCFシートを貼付補強した場合の曲げ補強効果につ いて述べた。

CFシートはひび割れ発生に対する補強効果は小さいが、ひび割れ発生後の剛性低下を 抑え、降伏耐力、終局耐力ともに大きく上昇させる効果があった。ただ、降伏耐力はシー ト補強層数に比例して上昇するが、終局耐力はシート剥離が先行するため補強層数の増 加に対して頭打ちの傾向を示した。計算値においても、ひび割れ発生荷重と降伏荷重は 実験値とよく一致したが、終局荷重はシート剥離先行のため完全付着を仮定した計算値 を下回った。シート剥離開始時の付着耐力を試算してみたところ、第三章でのシート付 着試験結果と妥当な対応を示した。

また、実大スケールの試験体を用いた実施工シミュレーションにおいても、シートの 曲げ補強効果が十分であることが確認された。

第五章では、RCはりの側面にCFシートを貼付補強した場合のせん断補強効果について 述べた。

まず、側面補強の有効なシート貼付方法を小型試験体を用いて検討したところ、シー トを縦と横に直交させて2層に貼付する方法が有効であることが分かった。

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つづいて中型はり試験体による4点曲げ載荷試験によりせん断補強効果について検討し たところ、シートによるせん断補強により終局耐力・剛性の上昇がみられ、かなりの補 強効果が確認された。

この実験では曲げ破壊が先行し、せん断終局状態に至らなかったため、逆対称載荷に よる試験によって検討したところ、終局時にはシートの剥離によりせん断補強が失われ、

試験体はせん断破壊した。終局耐力は大きく上昇し、シートのせん断補強効果が確認さ れたが、せん断ひび割れ耐力の増加にはシートはあまり寄与しないことが分かった。

また、トラスモデルを用いた解析によりシートの付着強度を算定したところ、第三章 でのシート付着試験結果とおおむね一致した。

本研究は、これから必要性が高まるであろう既存建築物の補修・補強工法に対し、優 れた特徴を有する新素材を用いた技術を導入した画期的なアプローチである。この成果 は、今後炭素繊維シートを用いた設計法や現場での工法の確立に大いに貢献できると確 信している。

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本論文は、著者が熊本大学大学院自然科学研究科環境科学専攻において行なった研究 をまとめたものであります。

本研究の遂行にあたっては、直接に御指導を戴いた熊本大学教授三井宜之博士なら びに熊本大学助教授村上聖博士より、終始変わらぬ暖かい御鞭捷と御理解を賜りまし た。ここに心から感謝の意を表します。

論文作成にあたっては、熊本大学教授最相元雄博士、同教授大津政康博士、同教 授山尾敏孝博士、同教授秋吉卓博士からの有益な御教示、御助言を賜りました。以 上の先生方に心よりお礼を申し上げます。

本論文は多くの実験より成り立っており、実験において惜しみない御協力を頂いた熊 本大学技術官甲斐定夫氏、八代工業高等専門学校助教授浦野登志雄博士に深謝いた します。また、ともに研究の労苦を分かち合った熊本大学大学院生松尾隆一郎氏(現旭 化成工業)、同柳淳也氏(現山九)、同市村信氏(現清水建設)、同大津貴之氏(現三 井建設)、同林田純一氏、同古市憲司氏、同大谷俊浩氏をはじめとする熊本大学工 学部建築学科三井・村上研究室の皆様に深くお礼申し上げます。

著者が本研究に着手したのは、炭素繊維シート補強工法を建築分野に応用する試みが 始まった頃であり、企業との共同研究という形で著者がタイミングよく参画できたのは 非常に幸運なことでした。研究当初は試行錯誤の連続でしたが、三菱化学黒崎事業所 坂井麿道博士、同中村守康氏、同太田黒博文氏、小山洋一郎氏、同久部修弘氏、

同青柳久志氏には、炭素繊維シート等の材料を御提供頂いたことはもちろん、実験に おいて懇切丁寧な技術指導をして頂きました。また、ダイヤリフォーム中野正一氏に は、樹脂注入補修の御指導を賜りました。ここに記して深く感謝申し上げます。

また、研究室の先輩として、建設省建築研究所鹿毛忠継博士には常々貴重なアドバ イスと示唆に富んだ御意見を頂きました。心より感謝の意を表します。

本論文は、かくもたくさんの方々の御厚意と御支援によりまとめることができたもの であり、ここに重ねて心より厚くお礼申し上げます。

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