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4.1 本章の研究の背景・目標及び目的 4.1.1 本章の研究の背景・目標
本研究、および筆者によるこれまでの発表1),2),3),4),5),6)において繰り返 し述べてきたように、我が国の大都市では超高層建築物を中心として大規模タ ワー化・タウン化した都市施設(以下、本章では「大規模・超高層都市施設」と いう。)の建設が進み、様々な都市問題が発生している。特に、都市計画法・建 築基準法上は建物内部での救命率改善に対する救急に要する時間短縮のための 技術的な法規制がなく、救急設備の最適配置計画上の技術的指針がないことは 重大である。これに対して、第3章では、大規模・超高層都市施設内の救急の現 場到達所要時間のうち 5割から 7 割を垂直移動時間が占めることを示した。こ れにより、現場到達所要時間の簡易な短縮方法として非常用エレベーター(以下
「非常用 EV」という。)の運用の工夫やスペック向上が考えられ、その救急・
消防における「都市装置」としての活用可能性が示唆された。このことから、近 年急速に普及している自動体外式除細動器(automated external defibrillator;
以下「AED」という。)も、適切に配置・運用されれば都市装置としての活用可 能性が期待できる。例えば、防災センターを経由して消防機関に通報が行われた 場合を考える。上記のように、非常用EVが都市装置として活用されていれば、
救急隊到着時の待ち時間がなく待機している最善な状態となる。これに加えて、
AEDが適切に配置されていれば、救急隊到着までの間のその場に居合わせた者
(以下「バイスタンダー」という。)が AED を有効に使うことで、迅速に対応 できる可能性がある。併せて、防災センターから勤務者がAED を搬送すること により、心肺停止者に対して迅速な救命活動を行うことも有効であると予想さ れる。以上から、大規模・超高層都市施設内のAEDの適正配置を論じるために、
救命率の算定モデルを構築することにより、三次元的現場到達所要時間(水平移 動時間と垂直移動時間)と救命曲線の関係から見た総合的な分析・評価を進める ことは、社会的重要性が高まっていると考えられる。そこで本章は、これを目標 とする。
4.1 本章の研究の背景・目標及び目的 4.1.1 本章の研究の背景・目標
本研究、および筆者によるこれまでの発表1),2),3),4),5),6)において繰り返 し述べてきたように、我が国の大都市では超高層建築物を中心として大規模タ ワー化・タウン化した都市施設(以下、本章では「大規模・超高層都市施設」と いう。)の建設が進み、様々な都市問題が発生している。特に、都市計画法・建 築基準法上は建物内部での救命率改善に対する救急に要する時間短縮のための 技術的な法規制がなく、救急設備の最適配置計画上の技術的指針がないことは 重大である。これに対して、第3章では、大規模・超高層都市施設内の救急の現 場到達所要時間のうち 5割から 7 割を垂直移動時間が占めることを示した。こ れにより、現場到達所要時間の簡易な短縮方法として非常用エレベーター(以下
「非常用 EV」という。)の運用の工夫やスペック向上が考えられ、その救急・
消防における「都市装置」としての活用可能性が示唆された。このことから、近 年急速に普及している自動体外式除細動器(automated external defibrillator;
以下「AED」という。)も、適切に配置・運用されれば都市装置としての活用可 能性が期待できる。例えば、防災センターを経由して消防機関に通報が行われた 場合を考える。上記のように、非常用EVが都市装置として活用されていれば、
救急隊到着時の待ち時間がなく待機している最善な状態となる。これに加えて、
AEDが適切に配置されていれば、救急隊到着までの間のその場に居合わせた者
(以下「バイスタンダー」という。)が AED を有効に使うことで、迅速に対応 できる可能性がある。併せて、防災センターから勤務者がAED を搬送すること により、心肺停止者に対して迅速な救命活動を行うことも有効であると予想さ れる。以上から、大規模・超高層都市施設内のAEDの適正配置を論じるために、
救命率の算定モデルを構築することにより、三次元的現場到達所要時間(水平移 動時間と垂直移動時間)と救命曲線の関係から見た総合的な分析・評価を進める ことは、社会的重要性が高まっていると考えられる。そこで本章は、これを目標 とする。
4.1.2 本章の目的
以上を踏まえて、本研究では、大規模・超高層都市施設のモデル建築物におけ る三次元的なAEDの最短到達時間の計算により、全館での救命率の平均値(以 下「全館平均救命率」という。)を求める。これに基づき、全館平均救命率を最 も高めるAEDの最適配置を検討する。特に本章では、3 種類の救命曲線(生存 成功率、カーラー、ドリンカー)に基づいてAEDの最適配置について具体的な 結果を示すことで、心臓突然死の減少に向けた目安を得る。
4.2 適正配置に向けた既往研究の概観
上記の目標に関連する既往研究は、下記の二観点からのものが挙げられる。第 一は、数理的な最適配置である。AED の最適配置の研究は多数存在する中で、
本章の空間スケールに近い代表例としては、下記の2件が挙げられる。片岡ら7)
は、バイスタンダーがAEDを取りに行くことを前提として往復距離・時間を計 算した。また、「救助者は必ずしも現場から最も近くにある装置を常に把握して いるわけではなく、ある地点において装置が心停止にもたらす効果は、心停止発 生地点から最も近くにある装置との関係性のみに影響するとは限らない」と指 摘した。さらに、今井ら8)は平均距離の最小化を目指した。第二に、施設内の AED の配置について建築計画学、公衆衛生学から留意点を述べた研究 9),10),1
1),12)が挙げられる。これらは、「AED が施設内に何台設置され、それらがどの 場所に設置され、その場所が周囲に周知されているかどうかが重要」、「高層ビル では階段や EV の周囲に配置すること」と指摘している。しかし、大規模・超 高層都市施設内での AED の最適配置を救命率の観点から定量的に論じた研究 は見当たらない。本章は、このリサーチギャップを埋めることを目指している。
4.3 研究全体の流れ
上記の目的を踏まえて、本章では下記の流れで研究を進める。まず、実態調査 をもとに、傷病者の専用注1)・共用部分注2)での発生状況を踏まえたバイスタン ダー及び防災センター勤務者の AED 活用のシナリオの構築を行う。その上で、
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第3章と同様の、各階が一辺80mの正方形で54階建、軒高230m超の大規模・
超高層都市施設としてのモデル建築物において、AEDの個数、配置場所を変化 させたケースを想定し、ケースごとに最適配置を求める。ケース間の比較を通じ て、大規模・超高層都市施設におけるAEDの適正配置について知見を整理する。
ケースごとの最適配置は、下記の方法により計算する。水平移動はマンハッタ ン距離、垂直移動はエレベーター(以下「EV」という。)の速度式を用いた計算 により、AEDの最短到達時間を各階平面に多数配置した格子点に関して求める。
それに3種類の救命曲線を適用して、各格子点の救命率を求める。これを全館に 渡って平均することによって全館平均救命率が得られる。これを、ケース内のあ らゆる可能な配置について網羅的に計算して、その最大値を与える配置を最適 配置として確定する。したがって、3種類の救命曲線ごとに最適配置が得られる ので、救命曲線間の比較も行う。なお、留意すべき事項として、下記が挙げられ る。3種類の救命曲線のうち、生存成功率は後述のように本研究の範囲内では時 間の線形関数である。このため、最短到達時間を求めてから救命曲線に適用すれ ば全館平均救命率が算出できるために、計算の単純化が可能である。しかし、残 りの2種類は線形関数ではないので、格子点ごとに最短到達時間から救命率を 求める必要がある。このため本研究では、Microsoft EXCEL 上で VBAによっ て最適配置を算出するプログラムを用いた。
4.4 AED設置の実態調査
この実態調査は、AED活用のシナリオの構築に向けて、大規模・超高層都市 施設が、安全のための都市装置としてのAEDを分散配置している先進事例を発 掘することを主眼とした。
4.4.1 AED設置の実態調査
このためにまず、AEDの分散配置について、特に考慮、工夫あるいは苦労し た点について施設関係者からのヒアリングを行った。その上で、建築物内のAED 設置数、傷病者発生時のAEDの使用経験の有無、AED設置箇所、AED設置の