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5.1 各章の総括

第1章から第4章から判明したことをまとめると、以下のようになる。

5.1.1 第1章から判明したこと

世界的な都市間競争を意識した再開発に伴う大規模タワー化・タウン化した 都市施設の進展と、高齢化に伴う救急救命を要する事案の増加は、今日の日本 の巨大都市における災害ポテンシャルの質的変化をもたらしている。

大規模タワー化・タウン化した都市施設と連動する大街区化は、国土交通 省、東京都などによって推進されており、それにより実現を目指す公益の例と して、避難路、避難地が不足する密集市街地の解消、改善等による防災機能の 向上とが挙げられており、「防災的視点」が含まれている。

しかしながら、震災対策や震災に伴う延焼拡大火災を回避できる安全な都市 空間が形成される一方で、大規模タワー化・タウン化した都市施設がさらに拍 車をかけることとなり、当該大規模・超高層都市施設内で発生した心肺停止者 への救急救命に対する災害ポテンシャルが増加することが懸念される。

この問題について、本章では、都市空間上の課題、都市計画及び建築計画上 の課題、さらにこれを解決するための都市解析上の課題として整理した。

5.1.2 第2章から判明したこと

第1章を踏まえて、本研究に関連する既往研究の都市数理モデルについて述 べ、三次元の都市数理モデルを構築する必要性を指摘した。また、AED及び その他の救急救命に関する最適配置の既往研究について述べ、本研究の参考に なる知見を抽出し、また本研究の位置づけを明らかにした。さらに、都市空間 における安全性を高めるために様々な装置を用いて最適化を行うときに、それ らの、言わばリスクという衝撃を和らげる「緩衝装置」の役割を果たす装置を 一般的に捉える概念として、「都市装置」という用語を導入した。これによ り、非常用EV、避難階における緊急車両の進入口、AED、防災センターなど を大規模タワー化・タウン化した都市施設における救命救急のための重要な都

5.1 各章の総括

第1章から第4章から判明したことをまとめると、以下のようになる。

5.1.1 第1章から判明したこと

世界的な都市間競争を意識した再開発に伴う大規模タワー化・タウン化した 都市施設の進展と、高齢化に伴う救急救命を要する事案の増加は、今日の日本 の巨大都市における災害ポテンシャルの質的変化をもたらしている。

大規模タワー化・タウン化した都市施設と連動する大街区化は、国土交通 省、東京都などによって推進されており、それにより実現を目指す公益の例と して、避難路、避難地が不足する密集市街地の解消、改善等による防災機能の 向上とが挙げられており、「防災的視点」が含まれている。

しかしながら、震災対策や震災に伴う延焼拡大火災を回避できる安全な都市 空間が形成される一方で、大規模タワー化・タウン化した都市施設がさらに拍 車をかけることとなり、当該大規模・超高層都市施設内で発生した心肺停止者 への救急救命に対する災害ポテンシャルが増加することが懸念される。

この問題について、本章では、都市空間上の課題、都市計画及び建築計画上 の課題、さらにこれを解決するための都市解析上の課題として整理した。

5.1.2 第2章から判明したこと

第1章を踏まえて、本研究に関連する既往研究の都市数理モデルについて述 べ、三次元の都市数理モデルを構築する必要性を指摘した。また、AED及び その他の救急救命に関する最適配置の既往研究について述べ、本研究の参考に なる知見を抽出し、また本研究の位置づけを明らかにした。さらに、都市空間 における安全性を高めるために様々な装置を用いて最適化を行うときに、それ らの、言わばリスクという衝撃を和らげる「緩衝装置」の役割を果たす装置を 一般的に捉える概念として、「都市装置」という用語を導入した。これによ り、非常用EV、避難階における緊急車両の進入口、AED、防災センターなど を大規模タワー化・タウン化した都市施設における救命救急のための重要な都

市装置として捉え、平面コア計画を含むその最適なあり方を都市解析における 都市数理モデルを用いて探求することを本研究の位置づけとした。さらに、大 規模タワー化・タウン化した都市施設における救急救命に対する都市装置の適 正な配置と運用を検討する意義をまとめた。

5.1.3 第3章から判明したこと

延床面積約 40 万㎡、軒高 230m 超の巨大な都市施設を対象としたモデル建築 物において、トラベルタイムの実態を明らかにして、建築計画上のコアタイプ や非常用EVの配置計画、救急隊の進入経路計画について検討した。

このために、マンハッタン距離重み付きボロノイ図によって水平移動時間を 定式化し、エレベーター速度式を適用して垂直移動時間をモデル化することに よって、最小時間経路を導き出した。

この結果として、トラベルタイムの組合せ例によると最小値で約 19 秒、中 間値で約2分、最大値で約4分かかることが判明した。これは、救命救急の観 点からは無視できない値であることを指摘した。すなわち、建築物が大規模タ ワー化・タウン化していくと、現場到着後に上記の建物内部のトラベルタイム が加算されるため、レスポンスタイムの平均である7分 35 秒に対して現場到 達所要時間は中間値で約9分 35 秒、最大値で 11 分 35 秒となる。このことか ら、心肺停止した者に対して、救命曲線が示す時間との関係において、トラベ ルタイムは中間値においてすら影響は小さくないと予想された。

これらより、大規模タワー化・タウン化した建築物内のトラベルタイムの分 析には、必要性があることが示唆された。また、平面コア計画と非常用EVの 配置計画による差異を分析した結果、トラベルタイムのうち5割から7割を垂 直移動時間が占めることから、簡易の短縮方法として非常用EVの運用の工夫 が考えられ、その救急・消防の都市装置としての活用可能性が示唆された。

5.1.4 第4章から判明したこと

第4章では、第3章と同様の巨大な都市施設を対象としたモデル建築物にお

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いて、バイスタンダー(「勤務者・来訪者」以下同じ。)と防災センター勤務者 がAEDを活用することを前提として、床置きAED、防災センター内AED、 さらにEV内設置AEDの最適な配置計画について検討した。そのために、3 種類の救命曲線を用いて、全館平均救命率を算出し、様々な配置計画を比較し た。その結果として、救命曲線ごとの違いは小さいことと、EV内設置AEDに 有効性があること、あるいは、防災センター勤務者のAED活用割合はAED を床置きしていない階で高いことを確認した。全館平均救命率の観点からは、

モデル建築物内にMicrosoft EXCEL VBAのプログラムによって算出された最 適配置に沿ってAEDを 52 階、53 階、54 階に配置した上に、防災センター及 びエレベーター内に各々1個の計5個のAEDを設置する組み合わせは、各階 にAED1個に加えて防災センター内にAED1個の計 55 個のAEDを設置する 組み合わせと比べて、救命率の差は生存成功率救命曲線で 0.0333 ポイント、

カーラー救命曲線で 0.0356 ポイント、ドリンカー救命曲線で 0.0175 ポイント となることが判明した。

5.2 本論文で得られた知見のまとめ

上記の成果について、各章を通じて重要なものをまとめると、次のようにな る。

5.2.1 本研究から導いた都市装置の概念(非常用EV、避難階における緊急車 両の進入口、AED、防災センター等)

(1)非常用 EV

非常用EVについては、実態調査及びヒアリングから見て、救急事案が発生 した場合に、防災センターからの操作によって運用する例が普遍的に見られ た。さらに、第3章における各コアタイプに対するエレベーターの配置計画と スペック向上の可能性に鑑みると、救急・消防の都市装置として、エレベータ ーのスペック向上のみならず、非常用EVの有効活用を意識した防災センター

いて、バイスタンダー(「勤務者・来訪者」以下同じ。)と防災センター勤務者 がAEDを活用することを前提として、床置きAED、防災センター内AED、 さらにEV内設置AEDの最適な配置計画について検討した。そのために、3 種類の救命曲線を用いて、全館平均救命率を算出し、様々な配置計画を比較し た。その結果として、救命曲線ごとの違いは小さいことと、EV内設置AEDに 有効性があること、あるいは、防災センター勤務者のAED活用割合はAED を床置きしていない階で高いことを確認した。全館平均救命率の観点からは、

モデル建築物内にMicrosoft EXCEL VBAのプログラムによって算出された最 適配置に沿ってAEDを 52 階、53 階、54 階に配置した上に、防災センター及 びエレベーター内に各々1個の計5個のAEDを設置する組み合わせは、各階 にAED1個に加えて防災センター内にAED1個の計 55 個のAEDを設置する 組み合わせと比べて、救命率の差は生存成功率救命曲線で 0.0333 ポイント、

カーラー救命曲線で 0.0356 ポイント、ドリンカー救命曲線で 0.0175 ポイント となることが判明した。

5.2 本論文で得られた知見のまとめ

上記の成果について、各章を通じて重要なものをまとめると、次のようにな る。

5.2.1 本研究から導いた都市装置の概念(非常用EV、避難階における緊急車 両の進入口、AED、防災センター等)

(1)非常用EV

非常用EVについては、実態調査及びヒアリングから見て、救急事案が発生 した場合に、防災センターからの操作によって運用する例が普遍的に見られ た。さらに、第3章における各コアタイプに対するエレベーターの配置計画と スペック向上の可能性に鑑みると、救急・消防の都市装置として、エレベータ ーのスペック向上のみならず、非常用EVの有効活用を意識した防災センター

からの適切な操作により、EV待ち時間の削減効果が期待できる。

(2) 避難階における緊急車両の進入口

建築基準法令上の規制に合致し、かつ可能な限り非常用EVまでの距離が近 い箇所に緊急車両の進入口を設置することが重要であることが判明した。

(3)AED

防災センター内設置AED、床置きAED、非常用EV内設置AEDの総合的 評価によるAEDの都市装置としての役割が明確になった。具体的には、防災 センター内設置AEDは、EV内設置AEDがない場合に、非常に大きな役割を 演じることが分かった。また、EV内設置AEDがある場合には、ない場合に比 べて防災センターのAEDが活用される割合が低層階から低下した。この時に は、床置きAEDは最上部に集中的に配置され、かつ床置きAED設置階以外 では床置きAEDよりはEV内設置AEDの方が早く到着することから、EV内 設置AEDの都市装置としての効果が大きいことが分かった。

(4)防災センター

防災センター勤務者によるAED活用は、大きな役割を演じる。また防災セ ンターが適切にエレベーターを操作することを前提とした場合、待ち時間が短 縮されることから垂直移動時間の短縮化に繋がる。このことにより、防災セン ターが垂直移動時間を短縮化するための都市装置の役割を果たしうることが判 明した。

(5)まとめ

非常用EV、緊急車両の進入口、AED、防災センター、という都市装置を最 適配置した結果として、救急救命の安全性が高い平面コア計画が得られた。

第3章において、センターコアタイプの非常用EV両端配置及び非常用EV 中央配置全体の特徴として、基準階の水平移動時間の平均値が、代表的な3種