第 5 章 InGaP/GaAs HPT の特性及び信頼性評価
5.3 InGaP/GaAs HPT 特性への電気的ストレスの影響
5.3.2 高温の 420K での電気的ストレスの影響
一方、高温になるとエミッタ・ベース接合での価電子帯オフセットを超えてエミッタに注入さ れる正孔が増え、両HPTにおいてエミッタ注入効率が低くなる [5.4], [5.13], [5.14]。エミッタ周 辺 で の欠 陥生 成 によ る劣 化は エ ミッ タレ ッジ パッ シ ベー ショ ン によ って 抑制 で きる が、
InGaP/GaAs ヘテロ界面での欠陥生成に対してエミッタレッジパッシベーションの効果がない。
そのため、長時間電気的ストレスを印加した後は、420 Kで測定した両HPTの性能は劣化してし まう。しかしながら、L-HPTは全てのベース電流でN-HPTよりも電流利得β及びΔICが高いこ とが分かった。これは周辺での欠陥生成による劣化がL-HPTでは抑制されていることによる。
図5.20 420 Kでの電気的ストレス印加前後、室温で測定したHPTのΔIC及びS
室温での電気的ストレス印加前後のHPTの電流利得β及びΔICを示す図5.13と図5.14と比べ ると、高温の420 Kでの電気的ストレスの影響が明らかに見えられる。N-HPTの特性は420 K での電気的ストレスによって激しく劣化されたことに対して、L-HPTの特性の劣化は少ないこと が分かる。このことは、図5.21に示すようにHPTにおいて高温でのストレス時間はInGaP/GaAs ヘテロ界面での欠陥生成を引き起こすのに短すぎたことによる。一方、エミッタレッジパッシベ ーションは短時間の急激なストレスによる HPT の劣化を抑制するのにも有効であることが分か った。
次に、420 Kでの電気的ストレス印加前後の300から420 Kの温度範囲で、両HPTの電流利 得βとΔICの測定結果をそれぞれ図5.22、図5.23に示す。
図5.22 420 Kでの電気的ストレス印加前後、N-HPTとL-HPTの電流利得βの温度特性
図5.23 420 Kでの電気的ストレス印加前後、N-HPTとL-HPTのΔIC及びSの温度特性
図5.22、図5.23より、どの温度でも高温の電気的ストレスにおいてもL-HPTの温度特性の劣
化は少ないことが分かる。低温側において電流利得β とΔICの温度依存性を見られるように、高 温での電気的ストレスによる N-HPT の劣化はストレス温度の増加によりエミッタ周辺長での欠 陥が発生しやすくなったと考えられる。したがって、全ての温度範囲でL-HPTはN-HPTより電 流利得 β 及び ΔIC が高いという結果が得られた。黒川らは室温での電気的ストレスによる
InGaP/GaAs HBTの特性劣化について調べ、報告した[5.2]。室温でN-HBTに電気的ストレスを
印加すると、ベース電流が増加し、電流利得が低下した。室温での電気的ストレスにより HBT の特性の劣化はストレス時の欠陥生成によるからである。欠陥生成のメカニズムとしては、エミ ッタ周辺での欠陥が生成され、欠陥における再結合が増加することである。また、エミッタレッ
ジパッシベーションを行うことで電気的ストレスによる InGaP/GaAs HBTの利得の減少を抑制 できた。楊らは高温での電気的ストレスはInGaP/GaAs HBTの劣化を促進させたと報告した[5.1]。
レッジパッシベーションは信頼性向上には効果的であるが、高温での電気的ストレスにはまだ充 分ではない。