第 7 章 HPT への電子線照射
7.3 電子線照射の HPT への影響
図7.3(b) 暗状態での電子線照射の前後のGaAs太陽電池の順方向I-V特性
GaAs 太陽電池の短絡電流やコレクタ光電流が電子線照射の影響をあまり受けないため、
InGaP/GaAs 2T-HPTの動作点の光電流成分は減少しないが、光電圧は逆方向飽和電流の増加に
より減少する。2T-HPT のコレクタ光電流の電圧依存性より、GaAs 太陽電池駆動 InGaP/GaAs
2T-HPT の光電流は耐放射線の良い特性があり、宇宙における電池なしの光センサーの応用が期
待される。
図7.4 電子線照射の前後で暗状態でのN-HPTの電気特性
図7.5 電子線照射の前後で暗状態でのL-HPTの電気特性
図7.6、図7.7は、それぞれ電子線照射の前後で光照射状態のHPTのエミッタ接地電流-電圧
特性(IB= 5 μA)を示す。
図7.6 電子線照射の前後で光照射状態でのN-HPTの電気特性
図7.7 電子線照射の前後で光照射状態でのL-HPTの電気特性
電子線照射後、暗状態も光照射状態も N-HPT、L-HPT ともに電気特性は劣化したことが分か った。1.0 × 1016 cm-2のフルエンスの電子線照射による劣化は1.0 × 1015 cm-2のフルエンスによ る劣化より激しい。図7.8、図7.9、図7.10、図7.11は電子線照射の前後でHPTの電流利得β及 びΔI のベース電流I の依存性を示す。
図7.8 電子線照射の前後でN-HPTの電流利得βのベース電流IBの依存性
図7.9 電子線照射の前後でL-HPTの電流利得βのベース電流IBの依存性
図7.10 電子線照射の前後でN-HPTのΔICのベース電流IBの依存性
図7.11 電子線照射の前後でL-HPTのΔIC及びSのベース電流IBの依存性
1.0 × 1016 cm-2フルエンスの電子線照射の後、N-HPT、L-HPTともに電流利得βはほとんど0 に近いが、ΔICはある程度見られた。しかしながら、1.0 × 1016 cm-2フルエンスの電子線照射は HPTを激しく劣化させ、また1.0 × 1016 cm-2フルエンスの電子線照射に対してエミッタレッジパ ッシベーションの効果もなくなっているようである。1.0 × 1015 cm-2フルエンスの電子線照射の後 は、L-HPTのΔICはN-HPTのΔICより高いが、L-HPTの電流利得βはN-HPTの電流利得βと ほとんど同じである。このことは、図7.12に示すように高エネルギー電子線照射によって生成さ れた欠陥による再結合による。高エネルギー電子線照射は、エミッタ周辺での欠陥生成だけでは なく、HPTのバルク欠陥生成も引き起こす。高エネルギー電子線照射によるバルク欠陥生成はエ ミッタ周辺での欠陥生成より支配的となる。この欠陥において、エミッタからベースに注入され る電子とベース中の多数キャリアである正孔が再結合することで、ベース電流 I の成分になり、
図7.12 高エネルギー電子線照射によって欠陥生成図
これまでに、AlGaAs/GaAs HBTs、InGaP/GaAs HBTsの高エネルギー電子線照射の場合には、
再結合センターはエミッタ周辺長よりバルク欠陥によると多く調べられ、報告されている[7.1]-
[7.5]。電子線照射の後、L-HPTのΔICはN-HPTのΔICより僅かに高い。電子線照射によりバル
ク欠陥が生じ、図7.8、図7.9に両HPTの電流利得βはほぼ同じ値に低下したが、生成される光 電流により第5章式(5.2)における内部ベース電流が増加し、わずかの光電流の違いでもコレクタ 光電流に差異が現れ、L-HPTの光電流がN-HPTより高くなると予想される。そのため、電子線 照射に対してエミッタレッジパッシベーションの効果があることが考えられるが、周辺長を変化 させ、高エネルギー電子線照射によるHPTの劣化メカニズムを詳細に調べる必要がある。
7.4 電子線照射のHPTへの影響の詳細な解析