4.1 目的
食品系廃棄物の有効利用を図ることを目的に,平成 13 年 5 月に「食品循環資源の 再生利用等の促進に関する法律」(以下,「食品リサイクル法」と呼ぶ.)が施行された.
同法は,食品系廃棄物に含まれる再生利用可能資源は食品関連事業所の責任にお いて循環利用を進めなければならないことを定めている.こうした取り組みによって,
食品系廃棄物の発生量は増加傾向にあるものの,食品産業全体の再生利用等実施 率は着実に向上し,一定の成果が得られている.
その一方で, 食品リサイクル法施行時点では,肥料,飼料,油脂・油脂製品および メタン発酵の 4 手法が再生利用方法として規定されていたが,再生利用を促進する上 でこの 4 手法に優先順位は決められていなかった.しかし,平成 19 年 12 月に改正さ れた「食品循環資源の再生利用等の促進に関する法律の一部を改正する法律」(以 下,「改正食品リサイクル法」と呼ぶ)によって,成分やカロリーの有効利用および飼料 自給率にも寄与できるという観点から,飼料化が最優先に位置づけられた.
さらに,飼料化のなかで主流となっているのが乾燥飼料化である.内田らの調査結 果において,大半の食品事業所から排出される食品系廃棄物は乾燥飼料化されてい ることが述べられているが,乾燥飼料化は遠方への輸送や保存には適している一方,
乾燥の際に多大なエネルギーを消費している.現在は,補助金によって,化石燃料が 高騰するなかも乾燥飼料化による再生利用率の向上が図られているが,エネルギー 消費量や CO2 排出量の削減が求められる情勢のなかで,食品系廃棄物の再生利用 時の環境負荷低減への取り組みは今後,重要性が増すと考える.
本研究では,鹿児島県における焼酎粕の飼料化を評価対象として取り上げ,CO2 排出量の観点から環境負荷評価を行うことと,そのような地域におけるビジネスエコシ ステムによる循環システムを構築することのメリットを整理し,その有効性を示すことを 目的とする.
4.2 鹿児島県の地域特性
鹿児島県は地理状況的に南北の距離が 600km に及ぶことから伊佐市などの積雪 地域もあれば,奄美群島のような亜熱帯地域も存在する.このように様々な気候を持 ち合わせるとともに,世界遺産の屋久島や,種子島宇宙センター,霧島山などがあり,
自然・文化・観光・産業などの面において,豊富な資源を有している,活気ある地域で ある.
特に農林畜産地域として特色の鹿児島県は図 4.1 示すように,芋(甘藷)の収穫量 が日本全体の 40%を占め,そのうちの 24.5%はアルコール用として用いられていること が図 4.2 から分かる.そのような環境が影響し,芋を焼酎に加工する酒造メーカーも多 く立地している.それに加えて図 4.3 より,鹿児島県は豚の出荷頭数も全国で最も多く,
これら二つの産業を連 携させることで地域の特色を活かした産業 間連 携が考えられ
第4章 食品系廃棄物と畜産事業との連携によるビジネスエコシステムの構築と評価
4-2 る.
また,焼酎の製造工程からは多くの焼酒粕が発生し,その排出量は,県内だけでも 年間約 40 万 t におよぶ.従来は,海洋投棄による処理が行われていたが,ロンドン条 約によって全面禁止となり,乾燥飼料化が行われるようになった.
しかし,焼酒粕は含水率が約 95%もあるため,乾燥処理工程において膨大なエネ ルギーを消費しており,酒造メーカーに対しては処理費の負担が重くのしかかるという 問題が発生している.
図 4.1 イモの収穫割合
図 4.2 芋の利用用途割合
鹿児島 茨城 千葉 宮崎 熊本 徳島 静岡 愛知 長野 その他
0 20 40 60 80 100
全国
割合%
その他 加工食品用 でん粉用 アルコール用 生食用 H22 年収穫量
83万 3600tB
第4章 食品系廃棄物と畜産事業との連携によるビジネスエコシステムの構築と評価
4-3
図 4.3 豚の出荷割合
4.3 焼酎粕を畜産系に適応させたビジネスエコシステムのフレームワーク
本研究においては,焼酎粕を畜産系に適用させた場合のビジネスエコシステムの構 築やその有効性を環境面・経済面から評価することを重点的に解説する.
その際に,環境負荷や経済性評価を行うにあたって,それぞれの評価指標となる原 単位に関して,改めて本章でも述べた上で,各施設やシステム全体の評価を行う.
(1) 環境負荷算出の評価指標
環境負荷評価は,評価範囲内におけるエネルギー起源と原材料の CO2 排出量 を比較することによって行った.
評価に用いた CO2 排出係数を表 4.1 に示す.基本的には,「温室効果ガス算 定・報告・公表制度」で定められたデータ(12)を用いた.配合飼料の CO2 排出係数 は,社団法人産業環境管理協会が公開しているカーボンフットプリントのデータ(13) を用いた.
表 4.1 環境性の評価指標の一覧
項 目 単 位 CO2 排出係数(t-CO2)
電力 kWh 5.55E-04
灯油 L 2.49E-03
重油 L 2.71E-03
LPG Kg 3.00E-03
ガソリン L 2.32E-03
軽油 L 2.62E-03
米 t 1.35E+00
芋 t 5.23E-02
配合飼料 t 3.12E-01
鹿児島 宮崎 茨城 群馬 千葉 北海道 岩手 青森 愛知 その他
H21 年出荷頭数 1696 万頭
第4章 食品系廃棄物と畜産事業との連携によるビジネスエコシステムの構築と評価
4-4 (2) コスト算出の評価指標
経済性評価は,評価範囲内におけるエネルギー起源と原材料のコストを比較す ることによって行った.
評価に用いたコストを表 4.2 に示す.エネルギー資源に関しては資源エネルギー 庁で公 開されている統 計 情 報を参 考にした.電 力に関しては電 力 会 社の大 口需 要家への販売価格を参考にしている.さらに,芋や米,配合飼料に関しては,農林 水産省の統計局が作成したデータを参考にしている.
表 4.2 経済性の評価指標の一覧 項 目 単 位 コスト 円
電力 kWh 10
灯油 L 90.9
重油 L 84.5
LPG Kg 134
ガソリン L 147
軽油 L 127
米 t 3599000
芋 t 373000
配合飼料 t 61300
4.3.1 全国における食品系廃棄物の養豚場への適用事例
エネルギー資源の高騰 が重要な社会問題として取り上げられており,この影響を受 けている分野の 1 つが畜産業界である.その主な原因として,我が国のように穀物の 大半を輸入に頼っている現状 下では飼料の高値が進み,養豚業などの経営を圧迫し ている.その一方で,図 4.4 に示すように,穀物の消費量の見通しは年々増加傾向の あり,図 4.5 からわかるが,生産量も増加傾向にあるものの,在庫率は減少傾向にあ る.
そこで食品系廃棄物の飼料化の需要が今後高まると想定できるため,飼料化に関 しても現状の調査を行い,調査結果を表 4.3 に示す.その結果,原料となる食品系廃 棄物の供給が難しいことや,飼料の均質化が図りにくく,また養豚の肉質や臭気が,
通常の飼料で飼育した豚よりも劣るといった理由から需要が少ないなどの問題が生じ ていた.しかし,食品製造業が年間操業を行い連携することで,均質かつ年間を通し て安定した量の原材料を供給することができ,育成した豚の需要の問題も解決できる と考えられる.これらの問題を解決できる手段として,本研究ではリキッドフィーディン グシステムに着目した.
また,日本全国において食品系廃棄物を餌として給餌する事例がいくつかある.表 4.4 には,適用事例の調査結果となっており,循環型社会が各地で構築されつつある 現状であるが,食品系廃棄物の性状が安定しないため問題ともなっている.
第4章 食品系廃棄物と畜産事業との連携によるビジネスエコシステムの構築と評価
4-5
図 4.4 穀物消費量の見通し
図 4.5 穀物生産量と期末在庫率の見通し 表 4.3 飼料化の問題点と解決策
項 目 問題点 解決策
① 原材料の供給難 食品製造業の年間操業化
② 異物混入の問題
食品製造業から発生する均質な食品系廃棄 物の活用
③ 飼料の均質化が困難
④ 養豚の肉質・臭気の問題
⑤ 育成した豚の需要の問題 上記項目を確実に満たすことで解決 0
500 1000 1500 2000 2500 3000
1995年 2007年 2019年
穀物消費量百万t
飼料用 食用等
バイオエタノール 原料用
0 5 10 15 20 25 30
0 500 1000 1500 2000 2500 3000
1995年 2007年 2019年
穀物生産量百万t
生産量 期末在庫率
第4章 食品系廃棄物と畜産事業との連携によるビジネスエコシステムの構築と評価
4-6
表 4.4 食品系廃棄物の養豚場の適用事例
企業名 都道府県 対象廃棄物
ウム・ヴェルト(養豚場) 埼玉県 乾麺,ドーナッツ
中部有機リサイクル 愛知県 コンビニ弁当
小田急フードエコロジーセ
ンター 神奈川県 パン,麺,果物など
ファミリーマート 千葉県 コンビニ弁当
4.3.2 焼酎造りに関する概要
本研究の対象地域は,おいしい焼酎づくりに欠かせない良質の水と米 ,そして薩摩 イモである.また,焼酎の名産地として名高い伊佐地方は,美味で知られる伊佐米の 産地であり,清 流,寒冷な気候 などの恵まれた自然環境がおいしい焼酎「伊佐錦」を 育んできました.
また,焼酎造りの工程に関しては図 4.6 に示す.これより,日本酒と異なる点として蒸 留工程が存在し,エネルギー使用量が非常に多くなっている点である.
図 4.6 焼酎の製造過程 4.3.3 養豚業に関する概要
悪臭問題や衛生問題の面から環境問題 で立ち退きを余儀なくされただけではなく,
国内養豚家そのものが減少しつつあり,その最大の要因は後継者難である.1991 年 度の 4 万戸から 2010 年度には 6 千戸にまで減少した.一方,飼育されている豚の頭 数は 2 割減にとどまっており,大規模な養豚業がメインになってきていることがわかる.
製 麹 主原料
二次もろみ
蒸 留
検 定
貯 蔵
貯 蔵
ブレンド
割り水
詰 め
出 荷 一次もろみ