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非流動性、ポートフォリオ収益率と情報の非対称性

ドキュメント内 博士論文 (ページ 98-105)

第 3 章 中国株式市場における非流動性と収益率の自己相関に関する実証分析  ∙∙∙∙∙∙∙∙  73

3.4 非流動性、ポートフォリオ収益率と情報の非対称性

本節では、非流通株改革前後に両ポートフォリオ(ルーザーポートフォリオとウイナー ポートフォリオ)の収益率の自己相関と非流動性との関連について、情報の非対称性を考 慮したモデルに基づき、これまで得られた結果が生じた理由を検討する。それに加え、両 ポートフォリオのなかで、高い非流動性と低い非流動性のポートフォリオに分けて上述の

1 2

3 4 0.000

0.010 0.020 0.030 0.040

1 2 3

4

Turnover

Return

Illiq_zero Loser portfolio

1 2

3 4 0.000

0.010 0.020 0.030

1 2

3 4 Turnover

Return

Illiq_zero Winner portfolio

90 結果の頑健性を考察する。

LMSW モデルの命題 3 より、投資家間で情報が非対称である場合、情報トレーダーはヘッ ジと投機の二つの動機で取引する。情報トレーダーはポートフォリオの再構築を目的とし て取引するときに高い非流動性を伴う株式はリバーサルを経験する一方、投機的な取引を 目的とする場合は、高い非流動性を伴う株式はモメンタムを経験する34。LMSW モデルは高 い取引ボリュームを伴う収益率の自己相関と、情報の非対称性と関連することを示唆して いる。さらに、彼らは株式の市場価値を情報の非対称性の代理変数としている。すなわち、

大企業の株式は情報の非対称性の程度が低いので、ポートフォリオの再構築を目的として 取引される一方、小企業の株式は情報の非対称性の程度が高いので、投機を目的として取 引される。従って、彼らは以下の式を用いて命題 3 を検証している。

0 1 2 (3.3)

2 (3.4)

上式では、R R は株式 i の月t 1 t における収益率を表し、V は株式iの月次 取引ボリュームを表し、そして ORDCAP は株式 iの市場価値を表している。 LMSW モデル に従うと、株式が私的情報によってもたらされた利益に動機づけられて取引するなら正の C2 が得られる一方、ポートフォリオの再構築に動機づけられて取引が発生するであれば 負の C2 が得られることになる。そして ORDCAP の値が大きい場合は、低い情報の非対称 性と対応するため、 b は負の符号を持つはずである。

LMSW モデルに基づき、前節で構築された 16 個の回転率−非流動性−j winner or loser ポ ートフォリオに対して、今月の収益率、非流動性と来月の収益率との関係を(3.5)式より 考察する。そして、(3.6)式に示されるように、ポートフォリオの市場価値を情報の非対 称性の程度を表す代理変数とし、(3.5)式で推定された C2 との関連を回帰分析する。

, ,

0 1

, ,

2 ∗

, , , , ,

(3.5)

2 (3.6)

∶ ;

上式では、R, , R, , は 16 個の回転率−非流動性− j ポートフォリオに属する株式iの

34本章で提案する非流動性指標は Amihud (2002) に基づいたものであり、取引ボリュームによって生じた 株価の変化で評価される。また Kyle (1985) は情報非対称性が存在すると、高い取引ボリュームは高い 価格のインパクトと大きく関連すると示している。

91

月 t 1 t)における収益率を表し、Illiq_zero, , は 16 個の回転率−非流動性− j ポートフォリ

オに属する株式iが月 t における非流動性を表している。lnmv は 16 個の回転率−非流動性

− j ポートフォリオの市場価値に対数をとったものである。非流通株改革前は、ウイナーポ ートフォリオの C2 は私的情報による取引と関連するため負である一方、ルーザーポート フォリオの場合はポートフォリオの再構築と関連するため正の値を持つ。またウイナーポ ートフォリオの b は正の符号を持つのに対してルーザーポートフォリオの符号は負であ ることが予測される。同様に、非流通株改革後は、ウイナーポートフォリオの C2 は正で ある一方、ルーザーポートフォリオの C2 は負となる。そして b の符号はウイナーポート フォリオの場合に負であり、ルーザーポートフォリオの場合は正である。

表3.6 情報の非対称性と非流動性−ポートフォリオ収益率の自己相関(非流通株改革前)

パネル A: ポートフォリオ分析

C0 C1 C2 tC0 tC1 tC2 adj.R2

ウイナー –0.2248*** 0.0809 –0.1052 –3.99 1.42 –0.90 0.001 ルーザー –0.0370*** –0.2892*** 0.1737** –6.63 –5.20 2.33 0.036 パネル B: 回帰分析

非説明変数 a b ta tb サンプル数

C2ウイナー –0.0413* 0.0030** –1.87 2.08 828

C2ルーザー 0.0605 –0.0045 1.38 –1.50 812

この表は情報の非対称性の代理変数(市場価値)、非流動性とポートフォリオ収益率の自己相関との関係 を示す。2001 年 01 月−2005 年 04 月の間に、ウイナーポートフォリオとルーザーポートフォリオに対して、

毎月さらにそれぞれ回転率(Turnover)と非流動性指標(Illiq_zero)によって 4 つのポートフォリオを 構築する。合計 16 個の回転率−非流動性−ウイナー(ルーザー)ポートフォリオが得られる。各ポートフ ォリオについて、以下の式より推定が行われる。

, , 0 1 , , 2 ∗ , , _ , , , (3.5)

2 (3.6)

;

上式では、R, , R, , は 16 個の回転率−非流動性− j ポートフォリオに属する株式 i の月t 1 t)にお ける収益率を表し、Illiq_zero, , は 16 個の回転率−非流動性− j ポートフォリオに属する株式 i の月t にお ける非流動性を表す。 lnmv は 16 個の回転率−非流動性− j ポートフォリオの市場価値に対数をとったも のである。

表 3.6 は、非流通株改革前のウイナーポートフォリオとルーザーポートフォリオの結果 を示している。パネル A はウイナーポートフォリオとルーザーポートフォリオに対して、

(3.5)式のよる推定結果を示している。ウイナーポートフォリオの C2 は負の値(−0.1052)

92

であり、ルーザーポートフォリオの C2 は正の値(0.1737)を持つ。これは、前節で示し たウイナーポートフォリオのリバーサルとルーザーポートフォリオのモメンタムが高い非 流動性と関連することと一致している。

パネル B は(3.6)式の推定結果、すなわち(3.5)式により推定された C2 と情報の非 対称性の代理変数との関係を分析したものを示している。予測される通り、b の推定値は ウイナーポートフォリオに関して正(0.0030)であり、ルーザーポートフォリオに関して 負(−0.0045)である。言い換えると、ウイナーポートフォリオの非流動性−収益率のリバ ーサルは大企業の株式(低い情報の非対称性)と関連するのに対して、ルーザーポートフ ォリオの非流動性−収益率のモメンタムは小企業の株式(高い情報の非対称性)と関連する。

ただし、これらの結果はほぼ有意ではない。この結果の一つの解釈として、非流通株改革 前は多数の株式は非流通株であり、流通市場で株式の市場価値が非常に小さいため、非流 動性−収益率の自己相関と市場価値の間に弱い関係しか存在しない可能性が考えられる。

表3.7 情報の非対称性と非流動性−ポートフォリオ収益率の自己相関(非流通株改革後)

パネル A: ポートフォリオ分析

C0 C1 C2 tC0 tC1 tC2 adj.R2

ウイナー 0.0020 -0.5170*** 0.2470*** 0.25 -4.26 5.56 0.040 ルーザー 0.0090 0.7720*** -0.3600*** 1.30 4.32 -6.32 0.078 パネル B: 回帰分析

非説明変数 a b ta tb サンプル数

C2ウイナー 2.0400*** -0.1080*** 6.61 -5.31 812

C2ルーザー -1.7620*** 0.0960*** -5.43 4.53 775

この表は情報の非対称性の代理変数(市場価値)、非流動性とポートフォリオ収益率の自己相関との関係 を示す。2008 年 10 月−2012 年 12 月の間に、ウイナーポートフォリオとルーザーポートフォリオに対して、

毎月さらにそれぞれ回転率(Turnover)と非流動性指標(Illiq_zero)によって 4 つのポートフォリオを 構築する。合計 16 個の回転率−非流動性−ウイナー(ルーザー)ポートフォリオが得られる。各ポートフ ォリオについて、以下の式より推定が行われる。

, , 0 1 , , 2 ∗ , , _ , , , (3.5)

2 (3.6)

;

上式では、R, , R, , は 16 個の回転率−非流動性− j ポートフォリオに属する株式 i の月t 1 t) にお ける収益率を表し、Illiq_zero, , は 16 個の回転率−非流動性− j ポートフォリオに属する株式 i の月t にお ける非流動性を表す。 lnmv は 16 個の回転率−非流動性− j ポートフォリオの市場価値にログをとったも のである。

93

表3.8 低非流動性ポートフォリオと高非流動性ポートフォリオの結果(非流通株改革前)

パネル A: ポートフォリオ分析

C0 C1 C2 tC0 tC1 tC2 adj.R2

ウイナー 低非流動性 –0.0118 –0.0177 –0.0721 –1.18 –0.18 –0.39 0.001 高非流動性 –0.0277** 0.0963 –0.1154 –2.31 0.83 –0.51 0.005 ルーザー 低非流動性 –0.0296*** –0.2379** 0.2771 –2.82 –2.20 1.28 0.022 高非流動性 –0.0312*** –0.2344** 0.1600 –2.58 –2.04 1.43 0.020 パネル B: 回帰分析

非説明変数 a b ta tb サンプル数

C2ウイナー

低非流動性 –0.0230 0.0017 –0.55 0.65 208 高非流動性 –0.0565 0.0042 –1.24 1.36 204 C2ルーザー

低非流動性 0.0082 –0.0008 0.18 –0.29 208 高非流動性 0.2250 –0.1613* 1.65 –1.71 196 2001 年 01 月−2005 年 04 月の間に、16 個の回転率−非流動性−ウイナーポートフォリオ(ルーザーポート フォリオ)の中で、最も非流動性の低いポートフォリオを 4 つ選んで低非流動性ポートフォリオとし、最 も非流動性の高いポートフォリオを 4 つ選んで高非流動性ポートフォリオとする。この表は低流動性ポー トフォリオと高流動性ポートフォリオにおいて、情報の非対称性の代理変数(市場価値)、非流動性とポ ートフォリオ収益率の自己相関との関係を示す。各ポートフォリオについて、以下の式より推定される。

, , 0 1 , , 2 ∗ , , _ , , , (3.5)

2 (3.6)

;

上式では、R, , R, ,16個の回転率非流動性− j ポートフォリオに属する株式iの月t 1 t) におけ る収益率を表し、Illiq_zero, ,16個の回転率非流動性− j ポートフォリオに属する株式iの月 t におけ る非流動性を表す。 lnmv 16個の回転率非流動性− j ポートフォリオの市場価値に対数をとったもの である。

非流通株改革後の結果は表 3.7 に示されていて、改革前の結果と逆転している。パネル A をみると、非流動性−収益率の係数 C2 の推定値は、ウイナーポートフォリオに関して 0.2472 であり、ルーザーポートフォリオに関して−0.3600 であり、すべての結果は 1%の もとで有意である。そして パネル B では、情報の非対称性の代理変数である市場価値の係

数 b はウイナーポートフォリオの場合に負の値(−0.1080)をとるが、ルーザーポートフ

ォリオの場合は正(0.0959)である。

この結果は、ウイナーポートフォリオの非流動性−収益率のモメンタムが小企業の株式

(高い情報非対称性)と関連するのに対して、ルーザーポートフォリオの非流動性−収益率 のリバーサルが大企業の株式(低い情報非対称性)と関連することと整合的である。また、

ドキュメント内 博士論文 (ページ 98-105)