第 2 章 株式市場の流動性が株価に与える影響:展望 ∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙ 27
2.3 流動性と資産価格に関する理論
2.3.3 タイムシリーズの取引コストと株式収益率
流動性は時間の経過に伴い変動する。したがって、投資家は将来ある資産を売却すると きに、取引コストに関する不確実性に直面している。また、流動性は資産価格に影響を与 えるし、さらに流動性の変動は資産価格にも影響を与える。Acharya and Pedersen (2005) は投資家がリスク回避的という仮定の下で、流動性が資産価格に与える影響を分析するた めの OLG モデルを提唱した。彼らは、OLG モデルによって導出された 3 つの流動性ベータ で流動性リスクをとらえ、流動性と現在の資産価格あるいは将来資産の期待収益率との関 連を分析した。
世代tはN人の投資家からなり、2 期間tとt+1生きると仮定する。世代tのすべての
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投資家は、期間 1 に一定の資産をもらえ、他に一切の収入がない。期間 1 と 2 の間で取引 が行われ、すべての投資家は期間 2 に消費を行い、効用を得られる。世代tのある任意の 投資家 n の絶対的危険回避度 A で表すとすると、期待効用関数は E exp A x で表 されると仮定する。ただし、x は、期間 2 の消費である。
d と C が以下の自己回帰プロセス(autoregressive process)に従うと仮定すると、
(2.30)
が成立する。(2.30)式において、d、C は正かつ真のベクトルであり、ρ とρ は[0,1]
に従属し、 ε , η は独立に同一の確率分布に従う。
任意の資産iの期待総収益率は以下の(2.31)式に示すことができる。
1 (2.31)
非流動性コストがゼロである完全経済の均衡価格を考えよう。この経済では、資産の均 衡 価 格 の 標 準 的 な 結 果 は CAPM モ デ ル で あ る ( Markowitz,1952 ; Sharpe,1964;
Lintner,1965)。式で表すと、(2.32)式になる。
E
,(2.32)
しかしながら、非流動性コストが存在する場合、資産の期待総収益率は市場収益率と相 関するだけではなく、資産の非流動性コストと市場非流動性コストとも相関する。以下の
(2.32)式は、それぞれ時点t における市場の期待総収益率、資産i の非流動性コストと 市場の非流動性コストを示している。
∑
∑
1 , ,
∑∑
(2.33)
以上のような非流動性コストを考慮すると、(2.32)式は以下のような(2.34)式のよう に書き換えることができる。
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E
,(2.34)
ただし、(2.34)式の中で λ E r c r はリスクプレミアムを表す。上式を書 き換えると、Acharya and Pedersen (2005) が導出した 4 ベータモデルが得られる。
E E (2.35)
,
,
,
,
(2.35)式は、資産iの期待超過収益率が期待非流動性コスト E c と、4 つのベータと リスクプレミアムの積と等しいことを示している。4 つのベータは資産の利得と流動性リ スクに依存する。市場ベータ β は資産の収益率と市場収益率の共分散で表される。
流動性ベータ β は、ある資産 i と市場ポートフォリオ全体の非流動性コストの共通的 な部分を表し、常に正である。これは市場の流動性が低下するとき、資産i の流動性も低 下して、投資家は流動性の低い資産に対価を要求するからである。その結果、リスクプレ
ミアムλ が上昇すると、資産iの期待収益率も上昇している。
流動性ベータβ は市場非流動性コストが資産に影響する部分を反映し、常に負である。
これは市場の非流動性コストが高くなると資産の価値が下落するからである。このベータ が資産収益率に影響を与える原因は、市場の流動性が急に停滞するときに、予想通りの高 い収益率が生まれなくなることにある。
流動性ベータ β は市場収益率が資産の非流動性コストに影響する部分を反映し、一般 的に負である。このベータは資産の非流動性が市場に対する敏感度が高いほど、資産の収 益率が高くなることを示している。市場が下落するとき、投資家が現金を得るため、保有 する資産を売却しなければならない。従って、市場全体の収益率が低くなるとき、投資家
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は低い非流動性コストを持つ株式に対して、より低い収益率でも利益が出るからこれらの 株式を受けやすい。