4.6 非対称度の導出
4.6.3 非対称度
4.6 非対称度の導出 55 パルス関数を畳み込んだ断面積σ(E˜ n)は以下のように表される。
˜
σ(En) =
∫
dvψ(v, t)σ(v) =
∫
dEn′ψ(En′, t)σ(En′)
=
∫
dEψ(E˜ n+ ˜E, t)σ(En+ ˜E) ( ˜E >0) (4.22) ここで、En′ は速度vの中性子が持つエネルギーである。中性子が本来持つエネルギーEn′ は 測定で得られるエネルギーEnよりも高いため、En′ =En+ ˜E と書くことが出来る。式(4.22) の正誤を確かめるため、断面積がデルタ関数に従うモデルを考える。
σ(En) =
{10000 [barn] (En= 1.327eV)
0 [barn] (En̸= 1.327eV) (4.23)
式(4.23)の断面積を式(4.22)に従って計算した結果を図4.23に示す。
Neutron Energy [eV]
1.2 1.22 1.24 1.26 1.28 1.3 1.32 1.34
Flux [A.U.]
0 1 2 3 4 5 6 7 8 9
図4.23 パルス関数の畳み込み計算結果:断面積が本来のエネルギーよりも低エネルギー 方向にのみ分布しているのが確認できる。
図4.23より、断面積が本来のエネルギーよりも低エネルギー方向にのみ分布しているのが 確認できる。
ここでパルス関数の畳み込みにより、ドップラー幅∆は以下のようになる。
∆ =
√
4(En+ ˜E)kBT
M/mn (4.25)
図4.24に単純なBreit-Wignerの断面積σ(En)とσ′(En)を比較している(温度 T は300 K で 固 定 し て い る)。パ ル ス 関 数 の 影 響 で 共 鳴 エ ネ ル ギ ー が 低 エ ネ ル ギ ー 側 へ 移 動 し 、ド ッ プ ラー効果の影響で共鳴幅が拡がっていることが確認出来る。
Neutron Energy [eV]
0.8 0.9 1 1.1 1.2 1.3 1.4 1.5 1.6 1.7 1.8
Cross Section [barn]
0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 1.2 1.4 1.6
1.8 Breit-Wigner(BW)
BW+Doppler+Pulse
図4.24 ドップラー効果とパルス関数を畳み込んだ関数:破線はBreit-Wignerの断面積 σ(En)、実線はBreit-Wignerにドップラー効果とパルス関数を畳み込んだ断面積σ′(En) を表している。
図4.19に示したガンマ線放出角度毎の117Snのp波共鳴を全て足しあげたスペクトルに対
して式(4.24)を用いてドップラー効果とパルス関数を畳み込んだ関数でフィッティングした。
このとき、式(4.24)におけるσ(E′)は以下の関数である。
σ(E′) = (
A (Γp/2)2
(E′−Ep)2+ (Γp/2)2 +B
) √ 1
E′ (4.26)
ここで、Ep及びΓpはそれぞれp波共鳴の共鳴エネルギー、共鳴幅であり、AとBは定数で ある。そのフィッティング結果を図4.25に示す。フィッティング結果より、本測定で得られ た117Snのp波共鳴の共鳴エネルギーはEpは1.322 eV、共鳴幅Γpは127.8 meVとなった。
ガンマ線放出角度毎における非対称度を導出するにあたって、NL とNHを以下のように定 義する。
NL ≡
∫ Ep
Ep−2Γp
dEnN(En) (4.27a)
NH≡
∫ Ep+2Γp
Ep
dEnN(En) (4.27b)
4.6 非対称度の導出 57 ここでN(En)は実験で得られた中性子エネルギースペクトルにおけるエネルギーEnでのカ ウント数である。図4.26にNL、NHの積分範囲を示す。NL、NHを用いて、非対称度ALH を以下のように定義する。
ALH ≡ NL−NH NL+NH
(4.28) 表4.3に各角度θγにおけるNL、NH、非対称度ALH とその誤差を示す。
Neutron Energy [eV]
0.4 0.6 0.8 1 1.2 1.4 1.6 1.8 2 2.2
Counts [A.U.]
2 4 6 8 10 12 14
/ ndf
χ2 49.58 / 46
A 11.17 ± 0.73 Ep 1.322 ± 0.004 Γp 0.1277 ± 0.0129 B 5.443 ± 0.144
図 4.25 117Sn の p 波 共 鳴 の フ ィ ッ テ ィ ン グ 結 果:p 波 共 鳴 の 共 鳴 エ ネ ル ギ ー Ep = 1.322 eV、共鳴幅Γp= 127.8 meVという結果を得た。
Neutron Energy [eV]
0.6 0.8 1 1.2 1.4 1.6 1.8 2 2.2
Counts [A.U.]
0 2 4 6 8 10 12 14 16
図4.26 非対称度を導出する際の積分範囲:ばつ印の網掛け領域はNLの積分範囲、斜線 で塗りつぶされた領域NHの積分範囲をそれぞれ表している。
表4.3 ガンマ線放出角度θγ 毎における非対称度
θγ NL NH ALH ALH の誤差 36◦ 20.8 7.29 0.480 0.0523 71◦ 26.0 19.6 0.140 0.0357 72◦ 5.87 4.33 0.152 0.0774 90◦ 32.4 28.5 0.0632 0.0319 108◦ 0.423 0.556 -0.136 0.121 109◦ 19.9 22.7 -0.0663 0.0368 144◦ 4.85 13.5 -0.470 0.0693
表4.3について横軸をcosθγ、縦軸を非対称度としてグラフを作成し、以下の式でフィッ ティングした。
f(cosθγ) =Acosθγ+B (4.29)
その結果を図4.27に示す。
θ cos
−0.8 −0.6 −0.4 −0.2 0 0.2 0.4 0.6 0.8
Asymmetry
−0.6
−0.4
−0.2 0 0.2 0.4
0.6 χ2 / ndf 9.254 / 5
p0 0.03957 ± 0.01751 p1 0.4935 ± 0.04253
/ ndf
χ2 9.254 / 5
p0 0.03957 ± 0.01751 p1 0.4935 ± 0.04253
図4.27 非対称度の角度依存性
フ ィ ッ テ ィ ン グ の 結 果 、A = 0.494±0.043、B = 0.0396±0.0175と な っ た 。こ れ よ り
117Snのp波共鳴の非対称度においてガンマ線放出角度依存性が有意に存在することが確認で きた。次章でこの非対称度のガンマ線放出角度依存性について、Flambaum理論と比較する。
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