4.4 中性子エネルギースペクトル補正
4.4.4 相対検出効率補正
Ge検出器はクラスタ型とコアキシャル型で検出器の設置位置が異なっており、コリメータ 等の周辺物質が異なる。また各Ge結晶の寸法は設計値は同じであっても、実際に出来上がっ た結晶は結晶毎にわずかに寸法が異なることが考えられる。さらには仮に実際の寸法が同じで あるGe結晶であっても、不感領域の大きさが異なる可能性がある。以上のような理由により 各Ge検出器毎にガンマ線の検出効率が異なってくる。非対称度を導出する際に、同じ角度に 設置してある検出器についてはそれらのデータを足しあげることになる。しかし、検出効率が 異なると同等なデータとして取り扱うことができないため、各検出器間の検出効率を補正して データを足しあげる必要がある。
検出効率を補正するためにはガンマ線を等方的に放出することが保証されているものを用い る必要があり、等方的にガンマ線を放出させるものとして、一般に放射線同位体の線源(22Na 線源や60Co線源など)が挙げられる。これらの線源はそれぞれ1275 keV、1250 keVのエネ ルギーを持ったガンマ線を放出する。しかし、検出効率はガンマ線のエネルギーに依存するの で、これらの放射線同位体の線源では信号領域である9327.5 keVの検出効率を求めることは できない。
そこで今回は窒素(N)の(n, γ)反応によって放出されるガンマ線を用いて検出効率補正を行 うことにする。14N(n, γ)反応で放出されるガンマ線は等方的に放出され、かつ最大で10829 keVのエネルギーを持つ。従って、信号領域である9327.5 keVの検出効率を求めることがで きる。
標的原子核としてメラミン(C3H6N6)を使用する。d8検出器におけるメラミンの即発ガン
マ線のエネルギースペクトルを図4.16に示す。
Gamma-ray Energy [keV]
0 2000 4000 6000 8000 10000 12000
Counts
1 10 102
103
104
105
図4.16 メラミンの即発ガンマ線スペクトル
図4.16のスペクトルには14N(n, γ)反応以外に窒素の同位体や水素、炭素の(n, γ)反応起 因のガンマ線スペクトルも含まれる。核種毎にメラミン試料中に含まれる物質量が異なるの
で、14N(n, γ)反応起因ガンマ線の全吸収ピークのみ使用して各検出器における検出効率のガ
ンマ線エネルギー依存性を求める。
検出効率ϵ(Eγ)は以下のように定義する。
ϵ(Eγ) = Npeak(Eγ)
N4π(Eγ) (4.12)
こ こ で N4π(Eγ) は エ ネ ル ギ ー Eγ の ガ ン マ 線 が 4π に 放 出 さ れ た 数 、Npeak(Eγ) は エ ネ ル ギーEγ のガンマ線による全吸収ピークのイベント数である。Npeak(Eγ)はピークの高さに 対して1/10になる値を持つ点における幅、すなわちFWTM(Full Width Tenth Maximum) を積分範囲としたときのピークの積分値とする。図4.17に14N(n, γ)反応起因の5269.2 keV と5297.8 keVのピークにおけるFWTMの範囲を示す。N4π(Eγ)はホウ素で測定した中性 子 ビ ー ム 強 度 を も と に 、メ ラ ミ ン 標 的 に 衝 突 し た 中 性 子 数 を 計 算 し 、そ の 衝 突 中 性 子 数 と
14N(n, γ)反応の断面積をもとに計算した値である。
14N(n, γ) 反応では9327.5 keVと近いエネルギー領域にピークを持たないため、他のエネ
ルギー領域における検出効率をもとに9327.5 keV の検出効率を導出する。各ピークにおける 検出効率のグラフを作成し、以下の式でフィッティングした。
f(Eγ) =p0exp(−p1Eγ) (4.13) 図4.18に検出効率のエネルギー依存性のフィッティング結果を示す。
4.4 中性子エネルギースペクトル補正 49
Gamma-ray Energy [keV]
5220 5240 5260 5280 5300 5320
Counts
0 100 200 300 400 500
図4.17 メラミンのガンマ線ピークの積分範囲:5269.2 keVと5297.8 keVのピークにつ いてFWTMで定義した積分範囲を示す。
Gamma-ray Energy [keV]
2000 3000 4000 5000 6000 7000 8000 9000 10000 11000
Efficiency
0.0002 0.0004 0.0006 0.0008 0.001 0.0012
0.0014 χ2 / ndf 7.958 / 7
p0 0.002263 ± 0.0001092 p1 0.0002194 ± 8.245e−06
/ ndf
χ2 7.958 / 7
p0 0.002263 ± 0.0001092 p1 0.0002194 ± 8.245e−06
図4.18 検出効率のエネルギー依存性
図4.18のフィッテングで得られた関数から9327.5 keVの検出効率を求めた。これと同様 にして、他の検出器においても9327.5 keVの検出効率を求めた。各検出器における 9327.5 keVの検出効率、及びd8検出器の検出効率を1としたときの相対検出効率を表4.2と表 4.1 に示す。各検出器毎の中性子エネルギースペクトルをこの相対検出効率の値で除算することで 相対検出効率を補正する。
表4.1 クラスタ型検出器の検出効率 検出器番号 検出効率 相対検出効率
d1 2.55×10−4 0.800 d2 2.58×10−4 0.810 d3 2.23×10−4 0.700 d4 2.61×10−4 0.819 d5 2.86×10−4 0.897 d6 2.78×10−4 0.874 d7 2.53×10−4 0.794 d8 3.18×10−4 1.000 d9 2.86×10−4 0.898 d10 2.75×10−4 0.865 d11 2.92×10−4 0.918 d12 2.85×10−4 0.896 d13 2.51×10−4 0.789 d14 2.60×10−4 0.817
表4.2 コアキシャル型検出器の検出効率 検出器番号 検出効率 相対検出効率
d15 1.70×10−4 0.534 d16 0.635×10−4 0.200
d17 − −
d18 3.20×10−4 1.006 d19 2.60×10−4 0.816 d20 2.76×10−4 0.868
d21 − −
d22 3.28×10−4 1.030