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第Ⅲ章  雌ずいの分化発育速度と奇形果発生の品種間差異

第3節  総 合 考 察

イチゴの果実重は果実当たりの種子数と高い相関があり,果実重は総種子数と果実表面樟当たりの種子数の関   数として表すことができる(3,4)い ただし,果実当たりの総種子数と果実表面積当たりの種子数ほ品種間の差が   大きく,栽培環境によっても大きく変動することが知られている(142,143)   

宝交早生,等の品種では,筒齢の進んだ大きな苗を多肥栽培すると頂花が帯化しやすい(56)この現象ほ,  

北方系品種の低温への適応であると考えられているが(71),1花当たりの雌ずい数の増加であると捉えること   もでき,草勢が強いと花房当たりの雌ずい数,すなわち形成される種子数が多くなると考えることができるイ   チゴの1花当たりの雌ずい数を決定する要因についてほ明らかではないが,イチゴでは高窒素栄養条件などに   よって,いわゆる軍勢が強い状態になると花房当たりの花数が増加することが知られている(28,42,56,71,  

121).また,多くの植物で栄養生長の旺盛な個体は,着花(果)数や株当たりの種子数が多くなることが知られ   ており,草勢が強いと花房当たりの花数だけでなく,1花当たりの雌ずい数も増加すると考えることができる  実際に, ファ1−スト,等のトマトでは高窒素栄養条件下で子室数が増加する(107)また,低窒素栄養条件下  

では頂花房であってもイチゴの花は貧弱で雌ずい数が少ないこともこのことを表付けている   

愛ベリー では帯化による花床の形態異常ほぼとんど発生しないことから,草勢が強く1花当たりの雌ずい   数が増加する条件下では,花床上に形成される雌ずい列数が増加するのであろう。 既紅 , 女峰 等の品種   でも鶏冠状果はほとんど形成されないが, 愛ペリー のように雌ずい列数が上位花で特に多いという傾向ほ認   められなかったことから,雌ずい列数が多くなるのは 愛ベリー 特有の形質であると考えられる すなわち,  

草勢が強く花房当たりの雌ずい数が増加する条件下では, 麗紅 , 女峰 のように頂花が帯化することが少   なく,雌ずい列数があまり増加しない品種は花数だけが増加する.また, 宝交早生 , とよのか のように   帯化を起こしやすい品種は,花数の増加と共に頂花が帯化するのに対して, 愛ペリー では花数の増加と花床   上の雌ずい列数が増加することによって花房当たりの総雌ずい数が増加するのであろうニ   

イチゴの雌ずいは原則として,花床の基部すなわち外側から頂部へと順次分化するそのため,花床基部と頂   部の雌ずいの間にほ分化,発育の時間差が存在す−る第2節で示したように, 愛ペリー では花床基部と頂部   の雌ずいの分化時期の差が特に大きい.また,花床頂部の雌ずいは分化後の発育速度が基部の雌ずいの発育速度   と比較して遅く,他の品種と比較しても遅い‖ さらに,花床頂部の雌ずいが分化してから開花までの期間が短   い. 愛ベリー,はこれらの3つの檜性を合わせ持っているため,開花時における花床頂部と基部の雌ずいの発   育差が特に大きくなり,花床頂部の雌ずいが未熟なまま開花すると考えられる.その結果,花床頂部の雌ずいは   不受精となるか,受精しても基部の雌ずいとの競合のために発育不良となるのであろう.   

宝交早生,は雌ずい分化開始から終了までの日数が150白と5品種中最も短く,雌ずい分化終了から開花ま   での期間は5品種の中間の値であったしかし,T/B比は 愛ベリー についで小さかった.すなわち,花床   頂部と基部の雌ずいの分化時期の差は最も小さかったが,その発育差が比較的大きかったことになる花床基部   の子房幅の増加速度が5品種中最も早かったことから(第19表), 宝交早生,でほ花床基部の雌ずいの発育が   

ー47一   

早いために頂部と基部の雌ずいの発育差が縮小されないのであろう,   

また, 宝交早生,は雌ずい分化開始から開花までの日数が最も短かった花芽形成開始期ほ とよのか ,   女峰,と比較して明らかに.遅かったにもかかわらず,開花期の差がわずかであったこ・とから, 宝交早生 ほ   花芽発育速度の早い品種といえよう..   

一露紅,, とよのか,, 女蜂 の3品種は雌ずい分化開始から終了までの期間が 愛ペリ鵬   より短かっ   たい また,子房幅の増加速度は花床基部より頂部の雌ずいが大きく,開花時における頂部と基部の雌ずいの発育   差は小さかった.特に, 深紅,については,雌ずい分化終了から開花までの期間が長く,このことが,雌ずい   間の発育差が小さくなる大きな要因であろう.   

近年,促成栽培用品種として急速に普及した とよのか , 女峰 は,花芽分化期が早い上に,果形の揃い   がよく,優れた形質を持っている(5,38)しかし, 女峰 については,厳寒期に開花する腋花房での奇形果発   生が−・部の産地で問題となっている小 この原因として,花粉稔性の低下が指摘されているが(5),奇形果の形態  

から 愛ペソ・−,に類似した要因が関与している可能性がある本実験の結果, 女峰 は 贋紅 と比較して   雌ずい分化開始から終了までの期間が長く,雌ずい分化終了から開花までの期間は短いことが明らかになった  

麗紅,ではこのような奇形果発生は問題とされていないことから, 女峰 についても 愛ペリー   と同様の   原因によって奇形果が発生している可能性がある.  

第4節 摘   要  

愛ペソ、−,の奇形果発生要因をより明確にするため,特徴的な雌ずいの発育様相を示す 愛ペソ・ノ とわが   国において多く栽培されている数品種を用い,花器,特に雌ずいの形質と果実発育との関係について調査した   さらに,花芽の発育,特に雌ずいの分化発育と開花時における雌ずいの形質との関連について品種間の比較を行   なったい  

1… 6品種のイチゴ(愛ペリー,宝交早生∴琵紅,とよのか,女峰,盛岡16号)を用いて,花器,特に雌ずいの    発育様相と奇形果発生との関係について調査した  

1)雌ずい列数は 愛ペソ・ノ が最も多く,他の5品種間にぼ大きな差が認められなかった花床頂部の雌ず    いの子房幅も 愛ペリー,の上位花が小さく, 宝交早生 が次に小さかったが,他の4品種でほ比較的大    きかった.花床頂部と基部の雌ずいの子房幅の比(T/B比)は 愛ペリー が特に小さかった   

2)果実先端部の種子不稔による奇形果の発生と雌ずい列数∴頂都子房幅,T/B比との間に高い相関があっ    た. 愛ペリー,と 宝交早生 では雌ずい列数と頂部子房幅との間に負の相関があり,雌ずい列数の増加   に伴って,花床頂部の雌ずいの発育が遅れる傾向が認められた  

2… 5品種のイチゴ(愛ベリー,宝交早生,贋紅,とよのか,女峰)を用いて,花床上での雌ずいの分化発育と    開花時の雌ずい形質との関連について品種間の比較を行なった.  

1)花床上の雌ずい列数が多い 愛ペリt− は花床基部の雌ずいと頂部の雌ずいの分化時期の差が205日と他    の4品種より大きかったい しかし,1日当りに分化する雌ずい列の数は 宝交早生 以外の3品種より多    かったことから, 愛ペリー,は雌ずい列数が多いために,花床基部と頂部の雌ずいの分化時期の差が大き  

くなると考えられる.   

2) 愛ペソ・ノ では花床基部の雌ずい発育速度が∴頂部の雌ずいより速いため,開花時の花床基部と頂部の    雌ずいの発育差が大きくなる.さらに,他の品種と比較して,花床頂部の雌ずいは,分化から開花までの日   

ー48一  

数が短いため,未発育のまま開花し,花床頂部に不稔種子を伴う奇形果が形成されると考えられる    3) 愛ペリー,の花粉訝である 宝交早生,は,花床基部の雌ずいと頂部の雌ずいの分化時期の差は15日と   

5品種中最も小さかったが,基部の雌ずいの発育速度が5品種中最も速く,花床頂部と基部の雌ずいの発育    差が 愛ペリー についで大きかった 

4) 麓紅∴ とよのか,, 女峰,の3品種は花床基部の雌ずいと頂部の雌ずいの分化時期の差が約19日で挙っ    た..しかし,花床頂部の雌ずいの発育速度が基部の雌ずいより速く,開花時の雌ずいの発育差は小さかっ   た爪  

3.以上のことから, 愛ペソ・ノほ開花時における花床頂部の雌ずいと基部の雌ずいの発育差が大きくなりやす   い特性を特異的に合わせ持っているため,奇形果が多発することが明らかになったまた, 愛ペソ・− でみら   れる花床基部と頂部の雌ずいの間の大きな発育差ほ,花粉親である 宝交早生 に由来すると考えられる   

−49一  

第Ⅳ章 愛ペソ、ノ の生長並びに花器の発育と  

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