−49一
第Ⅳ章 愛ペソ、ノ の生長並びに花器の発育と
−50一
閃花時に花床上の雌ずい間に存在する発育段階の差が 愛ペリー の奇形果発生の直接的な原因であることか ら,花芽の発育,特に花床上での雌ずいの分化発育に対する窒素栄養の影響を明らかにするこ・とが必要である しかし,通常の圃場条件下で栽培した場合には,地力窒素等の影響が現れやすく,株の窒素栄養状態を厳密に制 御することは難しい
そこで, 愛ペリー・,をポット植えとして,生長と花芽,特に雌ずいの分化発育に対する窒素施与盈と窒素肥 効発現時期の影響について明らかにするため,以下の実験を行なった
1 材料および方法
愛ペリー・,の本葉4〜5枚の苗を1988年8月5日に9cm黒ポリポットに鉢上げし,8月29日まで0Ⅹ十F
−1(N−P205−K20=15−8−17)500倍液を5日た一度50mlずつ施与↓た用土ほマサ土2:ピートモス 1(Ⅴ:Ⅴ)として,苦土石灰と過燐酸石灰を用土1ゼ当たり0.5gずつ混和した8月20日から9月10日まで日 長延長によって16時間日長とし,9月11日より自然日長条件下に移して花芽分化の斉一化を図った10月1日に 青首時と同様の用土を詰めた15cm黒ポリポッ†に定植し,無加温ガラス室内で栽培した・11月1日から保温を開 始し,電照は行わなかった.栽培期間中の最高,最低気温の推移ほ第49図に示した
窒素施与盈の影響を明らかにするため,NH4NO3の施与盈によって,ON,1/2N,1N,2N,3Nの5処 理区せ設けた.1/2N区はNH4NO35mM液を1週間に1回150mlずつ,1N,2N,3N区はNⅡ4NO310
mM液を1週間にそれぞれ1,2,3臥それぞれ150mlずつ10月1日から施与した・すなわち,1週間の窒素施与成分盈はノ1ポット当り1/2N区で21mg,1N,2N,3N区でそれぞれ42,84,126mgとなる
窒素肥効発現時期の影響を明らかにするため,窒素施与開始時期を10月1,11,21,31,11月10,20日とする 6処理区を設けたそれぞれの日から前述の2N区と同様にNH4NO310mM液を150miずつ1週間に2回ずつ
施与した
窒素以外の肥料成分ほ,10月1日から1週間に1回ずつⅨH2PO410mM液150mlを全ての処理区に施与し
た小なお,ON区はきわめて生育が遅く,実験期間中に開花しなかったため,後に述べるような花器および果実の 語形質の調査は行わなかった.また,2N区と10月1日区は同じ処理であるため,同一個体のデー・タを用いた
10月11日から11月20日まで5日毎に各処理区3個体ずつ採取し,茎頂または花芽を2%グルタルアルデヒドで 固定したい固定したサンプルは4℃で貯蔵し,適宜水洗後,実体顕微鏡下で花芽の大きさを測定し,分化発育段 階について調査したその後,第1図の方法で試料を調整し,走査型電子顕微鏡(日立,S−800)によって雌ず いの分化発育様相を観察した‖花芽の分化発育段階
は,第1表の基準に基づいて分別判定した 花器の諸形質は,頂花房の1,3,5香花と第2 花房の1香花について調査した開花当日に採取し た花を2%グルクルアルデヒドで固定し,4℃で貯 蔵した.固定したサンプルについて,適宜水洗後,
実体顔徴鏡下で花床上の雌ずい列数,頂部および基 部の雌ずいの子房幅,花床の長径および短径,花床 の高さについて,第Ⅲ章第1節と同様に測定した
頂花房の5〜10花が開花した時点で,着生してい
0 5 0 3 2
︵P︶巴n︶d︼監Eり↑
Oct Nov Dec Jan Feb Mar Month
Fig48 Maximum and minimum air temperatures
during the experiment
−51−
る花と菅の数を計測し,頂花房花数とした.同時に,株当りの着果数を揃えるために1〜5番果を残して摘果し た、.果実の調査は頂花房1〜5番果について,いわゆる成熟段階で採取し,果実重を測定し,花床頂部の種子不 稔の程度を第2表の基準に従って,0:正常〜4:桂皮の不稔の5段階で判定した
根物体の生育状況については,10月11日から10日毎に花芽観察のために採取した個体について調査した.薬面 掛ま,新生第3薬の中心小薬の菓身長×菓身幅で表し,葉柄長も同じく新生第3薬について測定した・薬中の全 窒素濃度はり同様の個体から,新生第3菓の菜身を採取し,100℃で48時間乾燥後,ガンニング変法(57)によっ
て定慶した.また,同時に葉柄を採取し,同様に乾燥後,水田・位田(77)の方法に準じてα−naphthylamine法 に.よって,葉柄中の硝酸態窒素濃度を比色定盈した
データは分散分析し,Duncan smutiplerangetestによって有意性を検定した
2. 結果および考察
1)栄養生長と嚢中窒素濃度
窒素施与畳が新生簸3葉菜身中の全窒素濃度,葉柄中の硝酸態窒素濃度と植物体の生長に及ぼす影響について 第49〜52図に示した小
乗身中全窒素濃度は,1/2N区では11月20日までゆるやかに上昇したのに対して,1N,2N,3N区では,処 理開始20日後の10月21日までに急速に上昇し,その後は約3.5%で安定した.処理開始10日後の10月11日にほ,2 N,3N区では全窒素濃度がそれぞれ28,3.1%と急速に上昇したのに対して,1/2N区∴でほ2、1%と上昇はゆる やかであった小 しかし,処理開始50日後の11月20日では葉柄中硝酸態窒素濃度が0…1%以下であった1/2N区でも 3..2%となり多望索施与区との差ほ小さくなった(第49図)
葉柄中硝酸態窒素濃度は,2N,3N区では急速に上月し,処理開始20日後の10月21日以降0.25〜0.30%で推 移した‖1N区でほ,10月11日には0巾06%と低かったが,10月21日以降ほ0.15〜020%であった.それに対し て,1/2Ⅳ区でほ低く推移し,莫身中全窒素濃度が約3%に達した11月20日でも0‖10%以下であった(第50図)
1 3 2
0 0 0
︵芸叫石≧=ごpま︶Z−COZ
2一l
3︵︶竜州むきむp邑Zl曇0↑
1 11 21 31 10 20
0ct N。V
Date 20
1 11 21 31 10
0ct Nov
Date
Figh49 Effect of nitrogen application rate on total Fig150EffectofnitrogenapplicationrateonNO3 ̄
N contentin the petiole of the3rd newly expandedleafin Ai−Berry strawberry SymboIs Are asshownin Fig49
nitrogen contentin theleaflets of the 3rd
newlyexpandedleafin Ai−Berry strawberry−:Omg,□:21mg,■:42mg,○:84mg,●:126 mg−N/plant・Weekasammoniumnitrate
一52−
一九地上部生体重には,処理開始20日後の10月21日から差が現れ,窒素施与急が多いほど大きくなったが′
2N区と3N区の間には差が認められなかったまた,地下部生体蚤にも同様の傾向が認められたが,地上部よ りやや遅れて増加し始め,10月21日以降急速な増加が認められた(第51図)・新生第3葉の葉面街も10月21日から 差が現れ,2N区が最も大きかった。Jしかし,葉柄長に・は大きな差は認められなかった(第52図)
40 20 0 0 2
︵㌔︒︶謡hヱ雲J
<U O
3 2 0 0
︵切︶義明血じ芦扇巴h ︵∈U︶5明仁空望○膏d 5 <U
1 11 21 31 10 20
Oct Nov
Date
Fig51Effectsofnitrogenapplicationrateontop Fig52Effects of nitrogen application rate onleaf
area(width xlength ofmiddleleaflet)andpetiolelengthofthe3rd newlyexpandedleaf
in AトBerry strawberry
SymboIsareasshowninFig49
and rootfresh weightin Ai−Berry straw−
berry
SymboIsareasshowninFig49
窒素施与開始時期の違いが新生第3薬の菓身中の全窒素浪鼠葉柄中の硝酸態窒素濃度と植物体の生長に及ぼ す影響について第53〜56図に示した‖
菓身中全窒素濃度は窒素施与開始時期の早晩にかかわらず,施与開始10日後に・ほ27(y30%と急速に上昇し・
その後約3.5%で推移した(第53図).葉柄中硝酸態窒素濃度もほぼ同様の傾向を示し,020〜025%で推移した
(第54図).
11月20日の地上部および地下部の生体重ほ,窒素施与開始時期が遅いほど小さく,窒素施与開始後の増加速度 も劣った(第55図).菓面研と葉柄長の推移についても,同様の傾向が認められた(第56図)1
作物の生育と窒素栄養との関連については多くの報告があり,一腰に′施肥盈が多いほど生育ほ優れるが′あ る限界を越すと過剰障害が現れ,生長が低下することが知られている大沢(103)ほイチゴは耐塩性が低く,肥 料の濃度障害が現れやすい作物であるとしており,Ballinger・Mason(10)は集中窒素濃度が3‖7%では生長が 劣り,標準濃度のHoagland養液を施与し最も生育の優れた処理区∴では2‖1%であったと述べている一しかし,田 中・水田(130)は 宝交早生,の促成栽培において,集中の全窒素濃度が2・−27〜3・45%の間では大きな差はみら
れず, 宝交早生,の窒素許容限界はかなり広いと述べている
53
︵︸鳥叫む巨h︼P訳︶写⊥召責 3 2 1
000
︵岩野む声ヒpま︶Z−COZ
1 11 21 31 10 20
0ct Nov
Date
1 11 21 31 10 20
0ct Nov
Date
Fig53 Effect ofstarting date of nitrogenapplication Fig54 Effect o董starting dateof nitrogen appliL On tOtalnitrogencontentintheleafletsof the
3rd newly expandedlea董in AiTBerry StraWberry
●:Octl,△:Oct11,▲:Oct21,□:Oct31,
■:Nov10,○:Nov.20,84mg−N/plant・Week WaS applied for each da.te as ammonium nitrate
Cation on NO3−N contentin the petioles of the3rd newly expandedlea董in Ai−rBerry StraWberry
SymboIs are as shownin Fig53
40 20
︵㌔︒︶霞ヱ謡J
0 0
2 3 0 2
0 0
︵叫︶一島堰き宏巴h ︵EU︶5ぎじ芯−○篭d 5 ︵U
l l
1 11 21 31 10 20
0ct Nov
Date
Fig155Effects of starting date of nitrogen appli− Fig56 Effectsofstartingdateofnitrogenapplication Cationon topand root freshweightin Ai−
Berry strawberry
SymboIs areas shownin Fig53
Onleaf area(width Xlength of middle leaflet)and petiolelength of the3rd newly expandedleafin Ai−Berry strawberry SymboIs are as shownin Fig53
ー54−
しかし,本実験において, 愛ペリー・,の栄養生長は2N区ぶ最も優れ,10月21日以降菓身中全窒素濃度が 3%以上で推移した1N区でもやや劣った‖ 2N区でほ定格値後から全窒素上薬柄中硝酸態窒素ともに速やかに 上昇したのに対して,1N区では上月が遅れた.特に硝酸腰窒素濃度の上月は遅く,そのため,初期の生育に差 が現れ,その差が拡大したのであろうまた,窒素施与開始時期が遅いはど栄養生長ほ劣り,施与開始後の生長 も劣ったことから,低窒素栄養で育萌したイチゴでほ,定植後早くから窒素栄養状態を高めることによって栄養 生長が促進されると考えられるhただし,10月21日以降は1N,2N,3N区の間で硝酸態窒素濃度にほ差が認 められたが,全室素濃度の差は認められず,2N,3N区では窒素過剰の状態となり,施与窒素は多くが吸収さ れなかったのであろう
これらのことから,窒素飢餓状態のイチゴの窒素レベルを帯極的に高めて栄養生長を促進するためには,本実 験の2N区(84mg/株・週)程度の窒素を供給する必要があると考えられる
Treatment
ON l/2N IN 2N
囲 0 0 団
匝
Ⅷ Ⅶ Ⅵ Ⅴ Ⅳ Ⅲ Ⅱ Ⅰ
む切望S−d︸忘∈dO↓ぎじ凸
11213110 2011213110 2011213110 2011213110 2011213110 20
0ct Nov Oct Nov Oct Nov Oct Nov Oct Nov
Date
Fig」57Effecto董nitrogenapplicationrateon董lowerbuddevelopmentin Ai−Berry strawberry
ON:Omg,1/2N:21mg,1N:42mg,2N:84mg,3N:126mg−N/plantいWeekasammonium
nitrate
DevelopmentalstagesaredescribedinTablel 2)花芽の発育と開花
第57図に花芽発育に対する窒素施与盈の影響を示し た
10月1日の処理開始時に.は,花芽は未分化であっ たいすべての処理区で10月11日から生長点の肥大が認 められ,10月16日には花房分化期からがく片形成期に 達しており,処理区間に大きな差ほ認められなかっ た
雌ずい分化初期以後の花芽の発育はON区が他の処 理区と比較して極端に遅かったい しかし,その他の処
理区周には差が認められず,10月26日にははとんどの Fig58 Primaryflowerbudsatearlystageofpistil
differentiationin Ai−Berry strawberry 個体が雌ずい分化初期(第58図),11月10日では雌ず
い分化中期であったい第59図に示したように,頂花房 1香花原基の大きさにはON区以外には処理区間に差
(sampled onOct26)
Left:Omg,right:42mg−N/plant・Weekas ammonium nitrate
Barsindicate200pm