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第4節  総 合 考 察

第Ⅰ章第4節と本章第1節でも述べたように, 愛ベリ一−ノ   の奇形果発生を誘起する不稔種子の発生ほ,花床   頂部の雌ずいの発育の遅れによる不受精だけでは,原因を説明しきれず,光合成産物の分配も関与していると考   えられる.しかし∴雌ずいの発育段階の差が,結果的に個々の雌ずいのシンク活性の差として現れると考えられ   ることから, 愛ベリー において奇形果が発生するか否かは,開花時に卜おける雌ずいの発育程度によって決定   されていると考えることができる小すなわち,花床上で分化する雌ずい列数の多少によって決定される花床基部   と頂部の雌ずいの分化時期の差異と分化した雌ずいの発育速度が奇形果発生に大きな影響を及ぼすと結論するこ   とができる 

本章第1節の結果から,花芽発育期の商窒素栄養ほ雌ずい列数を増加させ,花床基部と頂部の雌ずいの分化時   期の差を拡大する方向に作用し,奇形果発生を助長することが明らかになった 

わが国におけるイチゴの促成栽培は,最近まで 宝交早生 を中心として,藤本(28)の開発した窒素吸収制   限に.よる花芽分化促進並びにGA3処理,電照といった技術に基づいて行われてきた中でも窒素制限は現在も  

花芽分化促進の中心的な設術とされており(41,開,66,69,90,102,121,122),極端な低空索栄養状態の酉が定植   されることが多いひ このために,定植後の窒素の吸収を促進し,草勢を回復させて生長を促進するために比較的   高い施肥設計が用いられてきたのであろうい特に, 宝交早生 は低温短日期の燻化が問題となるそのため,  

花芽分化後の比較的温度の高い時期に生育を促進し,葉面積を確保することが,果実肥大を促進するために必要   であるい また,他の品種についても,定植直後から土壌中の窒素濃度を高く維持することほ,定植前の低窒素栄   養状態からの回復を早め,初期生育を促進する効果があろう   

しかし, 愛べり、−,については,花芽分化直後からの高窒素栄養によって果実先端部に不稔種子を伴う奇形   臭が多発するため,定植後花芽発育初期の窒素栄養状潜を低めに制御することが望ましい 

第2節において花芽発育期の低温も高窒素栄養と同様の作用をもち,花芽発育期の高温管理によって奇形果発   生が抑制し得ることが明らかになったまた,第3節において,花芽発育初期からの長日処理ほ雌ずい列数を減   少させることが明らかになり,長日処理も奇形果発生を抑制する効果が期待される 

本章の実験はすべてポッt植えの株を用いており,温度処理には人工気象室を用いた,そのため,実験結果を   

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そのまま実際栽培における窒素の肥培管理や温度管理基準に適用することには若干の危険がともなう.本来,こ   れらの結果を圃場レベルで検証することが望まれる.しかし,圃場レベルでほ窒素栄養や温度条件を厳密に制御   することほ難しい.また,本章第3節で述べたように,環境要因ほ相互に関連して雌ずいの分化発育に作用する  

と考えられ,本章の実験結果を実証するためには膨大なデータの蓄研が必要と考えられる さらに,気象条件や   土性は産地によって異なり,土壌の肥沃度は個々の農家でも大きく異なるため,実際栽培に当たっては多くの要   因を考慮した上で栽培管理を行なう必要がある.   

そこで,厳密な制御を行なった本章の実験結果から, 愛ペリーノ 栽培において奇形果発生を抑制するための   窒素栄養の診断基準並びに温度管理基準と長日処理開始適期の推定を試みると,以下のようになる  

1)窒素栄養   

野菜の窒素栄養診断に当たっては,葉柄中の硝酸態窒素の定量が推奨され(45,117),イチゴでほ,  

diphenylamineやα−naphthylamineによる某柄汁液中の硝酸態窒素の定盈法が広く用いられている(29,77).こ   れらの方法忙よる葉柄中硝酸態窒素の定盈によって,適切な窒素施肥を行なうための 愛ペリー の窒素栄養診   断基準の設定が必要セあろう小策1節でほ,葉柄中の硝酸態窒素ほ乾燥後定量したため,乾物当りの濃度で示し   たり しかし,葉柄の乾物率は約20%(処理区1採取時期によって異なるが18〜22%)であったことから汁液中の   濃度はその約1/5と考えてよいであろう.   

最も奇形果発生の少なかった1/2N区は栄養生長が劣り,果実肥大もやや劣・つた。1N区は果実肥大が最も優   れたが,奇形臭がやや多発した..すなわち,10月21日までは1/2N区がやや不足気味に推移したため初期生長が劣  

り,1N区はやや過剰で推移したため奇形果発生が多かったと推察される小 これら2つの処理区を比較した場   合,雄ずい分化期に当たる10月21日にほ,1N区∴では全窒素濃度が3り1%,硝酸憩窒素濃度が019%に達してい   た一.それに対して,1/2N区は10月21日の全窒素濃度が2い2%,硝酸態窒素濃度が0.05%であった・さらに,2   N,3N区のように硝酸態窒素濃度が0小2%を越えた場合にほ,明らかに奇形果が多発することから,窒素飢餓状   態から回復させるに当たっても,葉柄中硝酸態窒素濃度が乾物当りで0.2%(汁液中濃度として約400ppm)でほ   明らかに過剰であるといえる‖ また,1/2N区」は10月31日以後の硝酸態窒素濃度が0小07〜01%となり,全窒素濃   度が3%近くまで上昇したことから,花芽発育期の葉柄中硝酸態窒素濃度は乾物当りで01%(汁液申濃度とし  

て約200ppm)程度に維持すれば十分であり,高くとも015%(汁液中濃度として約300ppm)以下に制御するこ   とが望ましいと考えられる.  

2)温度管理   

森ら(80)は保温開始時期を遅くして開花期を遅らせると 愛ペリー の奇形果発生が軽減されるとしてい   る.雌ずい分化期以降は低温で全雌ずいの発育速度が遅くなり,花床上の雌ずいの発育差は相対的に小さくなる   といえよう。ただし,第2節で示したように,花芽発育初期からの低温によって花床上の雌ずい列数が増加する   ため,低温は奇形果発生を増加させる要因となる   

本研究では全期間を通じて一定の温度条件としたが,奇形果発生を抑制するための温度管理基準について論及   すれば,雌ずい分化終了期までは比較的高温で管理することによって雌ずい列数を少なく制御することが可儲と   なり,以後を低温で管理すれば花床上の雌ずいの発育差はさらに小さくなると考えられる 開花・収穫始めは遅   くなるが,このような温度管理は頂花房の奇形突発生防止の一手段としては有効であろう.   

森・西口(81)ほ 愛ベリー,の雌ずいの分化終了は出督期頃であるとしている今回出菅時期に関しては調   査していないが,花芽発育段階調査時に測定した花芽の長さ(花芽基部から1香花がく片の先端までの長さ)が   

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20mm以上の個体はすべて雌ずい分化終了期に達していた.このことから,出雷期にほほぼ雌ずいの分化は終了   していると考えることができ,出曹期以後を低温で管理すればよいことになるしかし,こ.の時期ほ第2花房の   花芽発育期である..この時期の低温条件は第2花房上位果の雌ずい列数を増加させ奇形果発生を助長すると考え  

られることから,実際栽培において根本的な奇形果発生防止対策としては問題が残る   

平均気温20℃では奇形果発生が軽減されたことから,奇形果発生を防止する上では,花芽分化期以後の日平均   気温を20℃近くに.管理することが有効であろう 第2花房の分化期は,通常の促成栽培であれば,頂花房分化の   25〜30日後車あり,頂花房1香花の雌ずい分化中期〜後期頃であると推定され,全生育期間を通じての高湿管理   が第2花房以下の奇形果発生を防止する上で望ましいと考えられる   

ただし,実際に昼温を30℃程度で管理したとしても,冬期にこの温度を維持できるのは快晴の日であっても   3〜4時間程度であろう.平均気温20℃を維持するためにほ夜間を15℃以上に加温することが必要になる。ま   た,第Ⅲ章で述べたように, 愛ペソ・−  の大果性は雌ずい列数の多さに依存しているが,25/15℃区では特に下   位花の雌ずい列数が少なく,果実畳も小さかった 愛ペリー   の栽培目標ほ大きな果実を収穫することである   こ.とからも,実際栽培上,平均気温20℃という備にほ問題があるしかし,平均気温15℃では奇形果発生を軽減   することは難しい,日中の最高気温27〜28℃を目標とし,夜間は最低8〜10℃程度に保・加温して平均気温16〜 

17℃を目標とすることが現実的な温度管理基準であろう.  

3)長日処理開始時期   

花芽分化後の長日条件は, 愛ペリ1−   の開花を促進する効果ほないが,花床上に形成される雌ずい列数を減   少させる、ただし,雌ずい分イヒ開始期以前からの長日処理ほ,窒素栄養や温度の影響と比較して奇形呆発生を抑   制する効果が小さい小 さらに,第2花房の分化を抑制するため,実際栽培上有益であるとは考えられない通常   の促成栽培においては,第2花房の分化を確認した上で10月下旬輿から電照を開始することが望ましいと考えら   れる.  

第5節 摘   要   

愛ペソ、−ノ の生長並びに雌ずいの分化発育と奇形果発生に.及ぼす窒素栄養,温度,日長の影響について明ら   かにし,奇形果発生を防止するための栽培管理基準に関して考察した  

1。窒素施与塵(0,21,42,84,126mg−N/株・週)と施与開始時期(10月1,11, 

日:84mg−N/株・遡)の影響について検討した, 

1)栄養生長は低窒素栄養で抑制され,地上部,地下部ともに高窒素栄養ほど生長が優れたが,126mgと84    mg−N/株・週の間にほ差が認められなかった,   

2)頂花房1香花原基の直径の増加速度は,花芽分化期以降の糞中全窒素濃度が1小5%以下の場合(Omg−N   

/株・週)きわめて遅かったが,2%以上の場合(≧21mg−N/株㊥週),その増加速度には処理区間に差   が認められなかった また,花芽発育段階の進行も窒素欠除区だけが遅かった   

3)雌ずい分化初期(10月31日)以前から多盈の窒素を施与すると,花床上で分化する雌ずい列数が増加し,   

基部と頂部の雌ずいの分化時期の差が大きくなった.また,開花時における花床頂部の子房幅∴頂部と基部    の子房幅の比(T/B比)ほ.小さくなった.その結果,花床頂部に不稔種子をともなう奇形果が多発した   

4)雌ずい分化初期以降(11月10,20日)であれば,多窒素施与の影響は小さく,雌ずい列数が少なく,T/   

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