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第5節 総 合 考 察
1)奇形呆の発生要田
イチゴ果実は偽果であり,可食部は花床が肥大した部分であるこの花床の肥大には,受粉受精した雌ずいか らの刺激が必要であり,その作用はオーキシンによってある程度代替されることが知られている(6,9,26,27,
44,46,47,48,51,53,58,85,94,95,133,134,135,136−,137).ただし,Thompson(133)ほり不受精の雌ずい中に 果実発育を抑制する物質が含まれ,受精によってこの物質が消失するために果実が肥大発育すると述べており,
CreasylSommer(12)およびBajaj・Collins(9)は,この抑制物質ほアンチ・ジベレリン様物質であろう と述べている小 しかし,ジベレリンはオーキシンと併用した場合果実の肥大を促進するが,単独で施与した場合 には肥大促進効果が認められない(136,137) Kanol・Asahira(46)も果実発育に対するジベレリンの効果ほ 小さいと述べており,受精した雌ずい中に含まれるオーキシンが果実肥大に重要な役割をはたしていることは間 違いないと考えられる.本章第1節で示したように,果実先端部で不稔種子が多い場合にほ,果実先端部の花床 の肥大が認められなかったすなわち,果実先端部に存在する不稔種子がいわゆる 先つまり果 を形成する原 因であるといえる.
さらに,第4節での走査型電子顕微鏡による観察によって,開花当日の 愛ペリーノ1番花の花床頂部の雌ず いほ小さく,形態的にも明らかに未成熟であることが確認された.また,基部の子房が旺盛な肥大を開始する開 花8〜10日後であっても,頂部の雌ずいは柱頭が杯状に広がらず,花粉粒も付着していない場合が認められ,不 稔種子の発生結果とよく一激したまた,森・庄下(79)は花床基部の雌ずいは開花10日後に・ほ受精能力が完全 に失われるが,頂部の雌ずいは開花7日後に受精能力が最も高く,19日後でも受精能力を保持していることを認 めているい イチゴの花器はがく片が最初に形成され,雌ずいほ外側,すなわち,花床の基部から順次形成される ため,基部と頂部の雌ずいの間には当然分化発育の時間差が存在する.花芽発育時の条件によって異なるであろ
うが,雌ずいの発育段階を受精能力という点で比較した場合,花床基部と頂部の雌ずいの間に10日以上の差があ るものと考えられる.
−方,いわゆる 先青果 でほ,着色不良部分の種子は着色した部分の種子とほぼ同様に肥大していた」
Kano・Asahira(48)は,イチゴ果実の着色はA】∋A(abscisicacid)によって促進され,果実内ABAレベル の上昇ほ種子の成熟にともなうサイトカイニンレベルの低下によって引き起こされると述べている イチゴ果実
中の赤色色素は,アン1、シアニンが主成分であり,その内でもcalistephin(pelargonidin−3−glucoside)が最も多い とされている(97,116).アントシアニンの発現によるブドウの着色はABAによって促進されることが明らか
にされており(49,123),イチゴにおいてもABAが着色を促進すると考えて良いであろう これらのことから,
発育の遅れた花床頂部の雌ずいが遅れて受精した場合,受精後の発育も遅くなる その結果,種子からのABA の供給が不足するため,果実先端部が着色せず, 先青果 が発生すると考えられる
以上のように,いわゆる 先つまり果 と 先青果, では発生経過がやや異なる‖ しかし,その基本的な原因
は,花床基部と頂部の雌ずいの間に受精能力,すなわち発育段階の差が存在することにあると結論することがで きる,
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2)不稔種子の発生要因
トマトにおいては,同一果房内で,上位果と下位果の間に光合成産物の競合があり,上位果ほど肥大がすく小れ ることが知られている(108).実際に, ファい−・・・スト 等でほ着果数が多いと下位の果実は肥大不良となる1イ
チゴでも花房内の上位の果実を摘果すると,無摘果の場合より,下位の果実は大きくなり(43)∴果実間には明ら かな競合が認められる、また,イチゴでほ花房内の下位の花は開花はするが,肥大せず未発育に終わることがよ
く見受けられる‖ このような果実では,花床だけではなくすべての種子が明らかに発育不良である場合と,ごく 一部の種子のみが順調に発育している場合とがあるが,多数の種子が正常に発育していることほぼとんどない これらの果実では,花房内の光合成産物の競合のた軌受精後の雌ずいの発育が不良となるのであろうと推察さ
れる一.
イチゴの花と果実は商いシンク活性を持ち,根や菓などの栄養生長器官と比較すると光合成産物の分配率は非 常に高い(13,24,71,93,111)… しかし,同一花房内の果実間には競合があることが知られている(25,43)従 来,イチゴ花床上の雌ずい間の発育差ほ考慮されず,斉−に受粉受精が起こると考えられていたため,雌ずい間 の競合は問題とされなかったい
荻原・栗原(98)は,tクモロコ・ン雌穂の先端不稔が追加受粉等によって受粉期間を延長することによって軽 減され,受粉時期を遅らせると雌穂先端部の子実粒だけが稔実すると述べており, 愛べり− の不稔種子とト
ウモロコシの先端不稔の発生が類似した原因によって発生していると推察されるトウモロコシでほ,栽植密度 の増加や,光量不足に.よる光合成産物の不足が原因となって先端不稔が増加するとされている(14,16,17,50,
99,145,147)∴荻原ら(100)はtウモロコシ雌穂先端部の発育不良粒の発生原因は不受精と受精後の登熟不良と の二つがあり,登熱不良粒の発生と栽植密度との間に密接な関連を認めているこのことは,同一雌穂内の光合
成産物の競合が†ウモロコシ雌穂先端部での発育不良粒の発生要因となっていることを示唆している 愛ペ
リー,の花床頂部の雌ずいにおいても同様の現象がおきていることが考えられ,不稔種子の発生に関してほ,開 花時における雌ずいの受精能力だけでほなく,光合成産物の分配も関与していると推察される
Darnell・Martin(13)の結果によると,イチづ果実は受粉2日後から乾物塞が増加し始め,6日後にほ強いシ ンク能を示しており,イチゴの雌ずいは受精後,急速に発育し始めるものと考えられる実際に,開花8日後に は基部の雌ずいの子房は旺盛な生長を示していたのに対して,頂部の雌ずいにほ花粉の付着も認められず,子房 の大きさという点でほその発育段階の差は開花時よりも大きくなっていたこれらのことから,発育の遅れた頂 部の雌ずいは強いシンク活性を持つ基部の受精した雌ずいとの競合の結果,開花後の発育が抑制されると考えら れる.たとえ受精能力を持つ段階まで発育が進み受粉受精が起こったとしても,競合のために発育不良に終わる のであろう‖ しかし,花床基部と頂部の雌ずいの発育段階の差が,結果的に個々の雌ずいのシ∵/ク活性の差とし て現われると考えられることから, 愛ペソ、ノ の果実先端部の種子の稔性を高め,奇形果発生を防止するため には,雌ずい間の発育差を小さくし,一斉に受精させることが最も重要であろう」
第6節 摘 要
愛ペソ・ノ に多発する奇形果の形態と奇形果の発生経過を明らかにし,奇形果発生に及ぼす窒素施肥盈なら
びに苗質の影響について調べた.また,雌ずいの形態的な変化と受精能力の変化との関係から奇形果発生要因を 明らかにした‖
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1… 愛ペリー・ の奇形果発生ほ,上位の花ほど著しく,6香花以降の下位の花はほとんど正常な果実を形成し
た.果実先端部の不稔種子が多くなるほど著しい奇形果となったまた,開花時に花床頂部の雌ずいが小さく 未発育であると考えられる花は著しい奇形果を形成した
2‖多窒素施肥(10kg/10a)によって頂花房の開花期は早くなり,花数が増加した しかし,小異(10g未 満)の割合が増加し,正常な大栗(30g以上)収塵と総収量は低下した。ポット苗と無仮植育苗の大筒(7月 下旬発根)では頂花房花数が多く,小果の割合が高かった.無仮構育苗の小筒(8月下旬発根)では正常な大 果収盈が多く,窒素施肥の影響も小さかった.頂花房の花数と大果収盈,正常な大果収盈との間に強い負の相 関が認められ,頂花房花数を少なぐする条件,すなわち,生育初期の低窒素栄養,小苗定植,によって正常な 大黒収盈が増加した
3小 愛ペリー の上位花では,開花時には花床頂部の雌ずいは小さく,呼吸活性が低かった開花8日後にほ 花床頂部の雌ずいの呼吸活性は高まったが,基部の雌ずいとの発育差ほ開花時より大きかった開花から袋掛 けまでの日数が短いほど著しい奇形果が多発し,開花後8日間人工受粉を続けると奇形果発生は軽減された 4い 愛ペリ1− の1香花では開花時に.おいて花床頂部の雌ずいは小さく未成熟であり,受精能力を持たなかっ
た.また,開花10日後においても受精能力を持たない場合があった.−L方, 愛ペリー,の5番花や 女峰,
では花床基部と頂部の雌ずいの発育差は小さく,頂部の雌ずいは開花直後から受精可能であった花床基部の 雌ずいの受精能力は開花4日後には低下し始め′ 愛ペリー 1香花の花床基部と頂部の雌ずいの発育段階は 10日以上異なる場合があった
5日 以上の結果から, 愛ペリー・ は花床基部と頂部の雌ずいの発育差が大きく,開花時に花床頂部に未発育な 膵ずいが存在するため,果実先端部の雌ずいが不稔となる・その結果′奇形臭が多発すると結論づけることが できるい追加的な人工受粉によって奇形果の発生を軽減することができるしかし,同仙花床内の雌ずい間の 発育差が大きい場合ほ光合成産物の競合が強く現われ,奇形果発生を完全に防止することは難しいことから,
雌ずいの発育差を小さくすることが奇形果発生を防止する上で最も重要であると考え、られる