第 3 章 机型耐震シェルターの開発
3.1 開発における設計の方針
机型耐震シェルターに求められる性能は、以下であると考える。
(1) 対荷重性能
(2) 毎日、部屋におく事を意識した意匠性 (3) 地震時、シェルター内に留まるための工夫
対荷重性能に対する目標の設定のため、2階建て家屋の 1階部分にシェルターを設置し、
地震時、シェルターに作用する鉛直荷重の算出を行った。シェルターに作用する鉛直荷重 の範囲を図3.1.1に示す。具体的には、シェルター上部に60度で立ち上げた線の内側の範 囲にある、家屋部分とした。なお、算定には、家屋の1階非構造体(1階壁材と1階天井材)
のみが崩落する場合と家屋が全崩壊する場合の2つの状況を考え、それぞれ算出する。シ ェルターに作用する鉛直荷重は、シェルターを設置する家屋の材料に依存する。建築基準 法施行令第84条には、木造家屋の固定荷重として、各部分の材料ごとに荷重が与えられて いる。本研究では、設計における安全側評価をおこなうため、その中で最も大きな荷重の
材料(表3.1.1)を使用する家屋を前提条件として設定した。
種別 計(kN/m
2)屋根部分 瓦葺き(ふき土), もや,
1080床部分 座敷
340壁部分 小舞壁
830天井部分 モルタル塗
59060 60 壁
耐震シェルター
三 重 大 学 大 学 院
-66工 学 研 究 科
-表 3.1.2シェルターに作用する鉛直荷重
(家屋 1 階非構造体のみ崩落)
表 3.1.3シェルターに作用する鉛直荷重
(家屋全崩壊)
また、シェルターの形状としては、日常の使用性を考慮し一般的なダイニングテーブル のサイズである、高さ720 (mm), 幅1500 (mm), 奥行き900 (mm)を想定し、家屋につい
ては、1階及び2階高さを2800 (mm), 屋根勾配を 4/10、壁率を1.0として算出を行って
いる。以上をふまえて、家屋の 1 階非構造体のみが崩落する場合と家屋が全崩壊する場合 のシェルターに作用する鉛直荷重をそれぞれ算出した結果を表3.1.2, 3.1.3に示す。
表 3.1.3 より、家屋が全崩壊する場合、シェルターに作用する鉛直荷重は 211.3kN とな
り、非常に大きな荷重がシェルターにかかる。そのため家屋全崩壊の時に、シェルター内 部の安全性を確保する事は不可能であると判断し、シェルター開発においては、地震時に 家屋の 1 階非構造体のみが崩落する場合に、シェルター内部の安全性を確保する事を目標 に設定した。つまり、表3.1.2 より 18.72kN の鉛直荷重に対してシェルター内の安全性を 確保する程度の対荷重性能を有する事を目標に設定した。
なお、シェルター内の空間は狭く、大人 2 人が入れる程度の空間である。そのため、シ ェルター内の安全性は確保するためには、シェルターに作用する荷重に対してシェルター 構造体の部材が損傷するべきではない。よって、シェルターの各部材の決定は、許容応力 度設計に基づいて行う事にした。
崩落する家屋部分の荷重は、シェルター構造体に作用した後、シェルターの脚部から家 屋床に伝達される。その時、シェルターの脚部によって家屋床がパンチング破壊されると、
シェルター内の安全性が確保できなくなる。家屋床のパンチング破壊を防ぐためには、脚 部に脚つなぎ材を設け、シェルターに作用する荷重を線荷重として家屋床に伝達させる事 が考えられる。
机型耐震シェルターの既往製品(1.5.2節)では、F 社製シェルターのように、家屋基礎 に固定して設置するものがあるが、日常生活での使用性を考慮するとそのようにすべきで はないと考える。シェルター構造体を家屋基礎に固定しない場合、シェルター構造体が地 震力を負担しなくてもよい。しかし、シェルター脚部と家屋床との摩擦係数が大きいと地 震による水平力はシェルター構造体にある程度作用する。また、崩落する家屋部分がシェ ルターに作用する荷重は、鉛直荷重だけではなく傾斜荷重も考えられる。よって、水平荷 重に対しても、一定の安全性を確保できる事を目標に設定した。具体的には、鉛直荷重に
荷重 (kN)
1階壁部分の荷重
11.12 1階天井部分の荷重
7.60計
18.72荷重 (kN)
1,2階壁部分の荷重
94.43 1,2階天井部分の荷重
35.11 2階床部分の荷重
27.56屋根部分の荷重
54.24計
211.3三 重 大 学 大 学 院
-67工 学 研 究 科
- 上弦材(山形鋼 2)束材(丸鋼)
下弦材(ワイヤロープ)
図 3.1.2張弦梁の概略図(1)
図 3.1.3張弦梁の概略図(2)
上弦材上弦材
下弦材 下弦材
束材 束材
横補剛材
張弦梁
長辺方向梁
Xフレーム
図 3.1.4シェルター構造体の基本形状
0.1を乗じた水平荷重に対してシェルター内の安全性を確保する事とした。机型耐震シェルターは、日常生活では家具である机として使用されるため、顧客の目か ら見て魅力的なデザインである必要がある。また、地震時にも人々の命をまもるテーブル として、一般的なテーブルとは一線を画したデザインであるべきであると考える。そこで、
シェルター構造体の梁に張弦梁を採用する事を提案した。提案する張弦梁は、等辺山形鋼 を 2 つ組み合わせた上弦材、束材の丸鋼、下弦材のワイヤロープで構成されている。張弦 梁の概略図を図3.1.2, 3.1.3に示す。張弦梁採用のメリットとしては、地震時において、シ ェルター内で束材の丸鋼部分に掴まりやすい事や、デザインにおいて競合製品との差別化 が可能である事等が挙げられる。
以上をふまえて、シェルター構造体の基本的な形状を決定した。図3.1.4に示す。図中の X フレームは、傾斜した柱をX の字形に組み合わせたものと梁で構成され、柱脚部は、脚 つなぎ材でつながれている。