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第 3 章 先行事例にみる環境用水の成立要因

3.3 環境用水の導入と展開-地域間の比較から-

3.3.6 金沢市鞍月用水

52 書が提出された (川崎ら,2001) 。

⑤関係機関の連携:川崎市と旧京浜工事事務所は検討会を設け、二ヶ領用水における環 境用水の水量などについて検討した。

⑥水路の整備:1988年、二ヶ領本川は「ふるさとの川整備事業」1)に指定され、1991 年から親水公園と親水緑道が整備され、さらに河道内には多自然型工法が採用されて景観 と動植物の生息に配慮した河川整備が行われた。

⑦市による維持管理の実施:非かんがい期の導水は、水路を準用河川とすることで、1995 年に河川維持用水として実現した。準用河川のため、維持管理は市が行っている。

⑧維持管理費:市の管理河川であり、維持管理にかかる費用は市が負担している。

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図 3-8 金沢市の用水位置図

0 2km

(金沢市,2010a)

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香林坊付近の用水 武家屋敷付近の用水 写真 3-7 金沢の用水の状況

(2)用水保全条例の概要

用水保全条例では、その目的を次のように規定している。「この条例は、藩政時代から 金沢のまちを網の目のように流れ、四季折々の風景を映し出し、市民生活に様々な恵をも たらしてきた用水を市民とともに保全することにより、潤いと安らぎあふれる本市固有の 用水環境を育み、貴重な財産として、後世代に継承することを目的とする。」

条例は、特に保全を必要とする用水を保全用水として指定することができ、現在21の 用水が保全用水に指定されている。条例の基本方針は、①用水景観:歴史的なまちなみや 繁華街のにぎわい、閑静な住宅街、緑豊かな自然環境との調和を図る、②開渠化の促進:

必要以上に幅の広い私有橋の撤去や狭小化を図り、通行以外の目的には使用しないように する、③清流の確保:年間通水を確保し、定期的な清掃を行い、水生生物の生息に配慮し た用水環境の形成に努める、④用水の利用:消雪用水や防火用水源としての利用を促進す る(金沢市,2010b)。

保全用水内では、橋梁その他工作物の設置、大規模な修繕・模様替え、堤防・護岸およ び河床に係る工事はあらかじめ行為の届け出が必要である。さらに保全用水に接する土地 内においても建築物の新設、増築のほか、外観の変更等についても届け出が必要となって いる。こうした内容を持つ条例の施行により、鞍月用水では暗渠化した用水路を開渠化す ることに成功した。大野庄用水では長町武家屋敷の土塀が保全され、金沢を代表する景観 として観光名所となっている。

用水路景観を含めた金沢市の景観に対する取り組みは、1964年に制定された「武家屋 敷群の土塀・門等の修復制度」の新設に始まる。次いで、1968年に「金沢市伝統環境保存 条例」が制定された。地方自治体によるこの環境条例は全国で最初である。その後、「金沢 市伝統環境保存条例」は、1982年に、より用水路景観を重視する形で改正され、新たな専

55 門部会として用水部会が設けられた(山下,2007)。

これと前後して1979年には金沢経済同友会が、「金沢の用水」と題する提言をまとめ、

その中で用水は貴重な文化財と位置づけ、用水の復元・修景の必要性を主張している (金 沢経済同友会,1979) 。

その後、1989年には「金沢市伝統環境保存条例」は発展的に廃止され、「金沢市におけ る伝統環境の保存及び美しい景観の形成に関する条例」として発展、継承された。また、

1994年には「金沢市こまちなみ保存条例」を制定し、1996年に「金沢市用水保全条例」、

翌1997年には「金沢市斜面緑地保全条例」が相次いで制定された (山下,2007) 。 これらにより、都市の骨格となる用水環境を大きな景観財産と位置づけ、その保全に取 り組むこととなった。

(3)維持管理体制

市街地の水路は、取水口のゲート操作を含め、市が管理している。農村地域の水路は、

鞍月土地改良区が管理している。維持管理にかかる経費については、市街地部分は市、農 村部分は土地改良区と分けている。

(4)環境用水導入の成立要因

現地調査を通じて、金沢市において広義の環境用水が成立した要因として以下の項目が 考えられる。

①歴史ある用水路:金沢の用水路網は1600年代に整備され、城下町の物資の輸送、防 火、防御、融雪、庭園の曲水など、金沢のまちの形成に深い関わりを持っている。さらに、

鞍月用水の一部は、金沢城の外堀(西総構堀)となっている。

②用水に対する市民の意識:1979年に金沢経済同友会がまとめた提言「金沢の用水」

で「金沢の都市景観の生命は水景」、用水保全条例においては「藩政時代から金沢のまちを 網の目のように流れ、四季折々の風景を映し出し、市民生活に様々な恵みをもたらしてき た用水を市民とともに保全することにより、潤いと安らぎあふれる本市固有の用水環境を 育み、貴重な財産として、後世代に継承」と謳っており、金沢市の用水が歴史的、伝統的、

文化的な財産であるとの意識が市民の中に根づいている。

③用水の景観保全等:景観保全、防火、庭園の曲水、消雪、親水など用水の多面的機能 が活用されている。

④経済界からの提言:上記の「金沢の用水」では、用水は貴重な文化財と位置づけ、用 水の復元・修景の必要性を主張した (金沢経済同友会,1979) 。

⑤伝統的な都市景観の保全:用水は、金沢の景観構成の重要な要素であるとして、市内

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観光の観点からも用水のある伝統的な都市景観の保全を図っている。

⑥市と土地改良区の連携:暗渠を開渠にする際、市と土地改良区が連携して事業に取り 組んだ。

⑦金沢市総合計画、環境基本計画における位置づけ:金沢市の総合計画である「金沢都 市構想第2次基本計画」において、伝統的都市景観の保全に関する1つの事業計画として

「用水・みち筋の保全・再生」が挙げられている。

⑧金沢市用水保全条例の制定:条例の基本方針は、a.用水景観の保全・復活、b.暗渠化 された水路の開渠化の促進、c.定期的な清掃や水生生物の生息への配慮など清流の確保、

d.消雪用水や防火用水源としての用水利用の促進である。

⑨水路の開渠化・周辺整備:香林坊地区では、市街地再開発事業に伴い、暗渠であった 用水路を開渠化し、石積み護岸が整備された。

⑩市による用水の管理:鞍月用水は農業用水路であるが、市街地部分はゲートの操作、

塵芥の処理など市が管理している。

⑪維持管理費:市街地部分の管理費は市が負担している。