第 4 章 水資源量から見た環境用水
4.2 先行事例地域の環境用水量および対象河川の水資源量
4.2.1 仙台市六郷堀・七郷堀
(1)流域特性
水源である広瀬川は、名取川の支川である。広瀬川は幹線流路延長45.2km、流域面積
311km2の一級河川である。流域の年間降水量は、1,300~1,800mmである。河川水の利
用については、かんがい用水として最大9.57m3/s、水道用水は最大1.927m3/s、発電用水
は最大14.35m3/s、工業用水は最大1.208m3/s利用されている(宮城県,2010)。河川の管
理基準点である広瀬橋は、愛宕堰の約1km下流に位置する。広瀬橋地点の河川の流況は、
表 4-1のとおりである。平均低水流量は 3.6m3/s、平均渇水流量は 0.9m3/sであり、夏期 (5月~7月)が渇水の時期である。なお、広瀬橋から下流における既得水利はない(国土交 通省河川局,2006b)。
表 4-1 広瀬川の流況 地点名
流況 統計期間と年数
平均低水流量 平均渇水流量
期間 年数
広瀬橋 1960年~2004年
(1961年欠測) 44 3.6m3/s 0.9m3/s
(2)環境用水水利権の概要
仙台市の環境用水水利権の概要は、表 4-2のとおりである(仙台市,2006)。
72
表 4-2 仙台市の環境用水水利権の概要 申請者 仙台市
河川管理者 宮城県
河川名 名取川水系広瀬川 目的 浄化および修景のため
取水量等 期間:10月15日~ 4月24日まで 取水量:0.3m3/s
取水の方法 愛宕堰から自然流入により取水する。広瀬川観測所において、10月に あっては維持流量2.5 m3/s、それ以外の取水期間にあっては 2.0 m3/s 以上の場合に取水する。
水利使用の期間 3年
使用水量の算定については、水利使用の目的が環境用水であることから、「景観」の観 点に着目し、流速0.2~0.4m/sを確保することとしている。この流速を得るための流量(上 限値・下限値)を水路毎に断面と勾配から設定している。次に各水路の流量比を求め(図 4-1)、愛宕堰地点での取水量に対する各水路の流量を算出し、その算出流量が、すべての 水路において景観上必要な水量となる場合の取水量を求め、愛宕堰の取水量を算出してい る(表 4-3)。
図 4-1 対象地域の位置図 (仙台市,2006)
73
表 4-3 愛宕堰取水量と各水路の流量計算表
注:上限は流速0.4m3/sとなる流量、下限は流速0.2m3/sとなる流量を示す。
4.2.2 新潟市亀田郷
(1)流域特性
水源である信濃川は、日本一の幹線流路延長367km、流域面積11,900km2の一級河川 である。流域の土地利用は、森林・荒地等が約70%、水田・畑地等の農地が約19%、市街
地が約9%、湖沼等その他が2%となっている。流域の年間降水量は、上流部の長野市で約
900mm、中流部の長岡市で2,300mm、下流部の新潟市で1,800mmである。河川水の利
用については、農業用水として約104,000haの農地にかんがい用水として利用されている。
水道用水は、長野市、長岡市、新潟市等に供給され、工業用水としては新潟工業地域で利
(仙台市,2006)
74
用されている。発電用水は、120箇所を越す発電所で、600万kWの発電が行われている。
流域の新潟県部分(信濃川中・下流部)における主要な河川管理基準点は、新潟県のほぼ 中央に位置する小千谷地点である。小千谷地点の河川の流況は表 4-4のとおりである。平 均低水流量は300m3/s、平均渇水流量は213.1m3/sであり、冬期(1月~2月)が渇水の時期 である。長野県境から、下流までの本川区間の既得利水は161.8m3/sであり、その内訳は、
かんがい用水137.9m3/s、水道用水6.2m3/s、工業用水17.7m3/sとなっている(国土交通 省河川局,2008)。
表 4-4 信濃川の流況 地点名
流況 統計期間と年数
平均低水流量 平均渇水流量
期間 年数
小千谷 1986年~2005年 20 300m3/s 213.1m3/s
(2)環境用水水利権の概要
新潟市の環境用水水利権の概要は、表 4-5とおりである(国土交通省北陸地方整備局,
2007)。
表 4-5 新潟市の環境用水水利権の概要 申請者 新潟市
河川管理者 国 河川名 信濃川
目的 環境用水(水質保全,景観保全および生態系保全)
取水量等 期間 9月11日~
10月31日まで
11月1日~
1月31日まで
2月 1日~
3月31日まで
4月1日~
4月23日まで 取水量 2.02m3/s 0.95m3/s 2.15m3/s 2.09m3/s 取水の方法 舞潟揚水機場吐出樋門から自然流入により取水する。
小千谷地点において、正常流量145m3/s、新酒屋 58.07m3/s以上の場合に取水 する。
水利使用の期間 3年
環境用水の目的は、水質保全、景観保全および生態系保全とされている。環境用水は、
舞潟揚水機場から取水され清五郎排水路、鍋潟排水路、新堀排水路、大堀排水路を経由し て、鳥屋野潟へ導水されている。取水量は、時期によって異なり、9月11日~10月31日:
2.02m3/s、11月1日~1月31日:0.95 m3/s、2月1日~3月31日:2.15m3/s、4月1日
~4月23日:2.09m3/sである。これらの水量は、環境用水が農業用排水路から最終的に 鳥屋野潟に流入することを考慮して、鳥屋野潟の環境基準である「湖沼類型B」(COD
5mg/l以下)となるための必要水量として算定された。
環境用水量の算定は、非かんがい期の通水試験による排水路の水質データから、各排水 路の比流量とCOD濃度との包絡線近似式(関係式)を求め(図 4-2)、COD濃度が5mg/l
75
となるための必要比流量および必要流量を推定し、さらに、非かんがい期の過去5年間の 月別平均水収支(日降水量と日蒸発散量との差を月毎に整理)より、排水路ごとの基底流量 を求めて、必要水量との差を環境用水量としている。11~1月は日降水量が多く、基底流 量が多いことから環境用水量が少なくなっている。
図 4-2 排水路比流量とCODの関係
4.2.3 川崎市二ヶ領用水
(1)流域特性
水源である多摩川は、幹線流路延長138km、流域面積1,240km2の一級河川である。流 域は、首都圏南西部に位置し、山梨県、東京都および神奈川県にまたがっている。流域面 積の約3分の1を占める中・下流の平野部は都市化の進展が著しい地域で、流域内人口の ほとんどが集中している。多摩川の河川水の利用については、農業用水として約440haを かんがいしている。水道用水としては、東京都の水道用水の全取水量の約2割が多摩川か ら供給されている。工業用水としては、川崎市等で利用されている。発電用水は、5箇所
で46,100kWの発電に利用されている。河川の管理基準点である石原地点は、上河原堰の
約1km上流に位置している。石原地点の河川の流況は、表 4-6のとおりである。なお、
石原から下流における既得水利としては、農業用水として1.3m3/s、工業用水として4.2 m3/s、水道用水として3.81m3/s、雑用水として0.32m3/s、合計9.7m3/sの許可水利がある。
(国土交通省河川局,2000)
(三沢,2004)
76
表 4-6 多摩川の流況 地点名
流況 統計期間と年数
平均低水流量 平均渇水流量
期間 年数
石原 1989年~1988年 10 12.1m3/s 5.9m3/s
(2)環境用水水利権の概要
二ヶ領用水の現在の水利使用水量は、かんがい用水0.859+0.129m3/s(3月15日~9月 30日)、0.663m3/s(10月1日~3月14日)、工業用水2.35m3/s、河川維持用水(河川管理 行為)1.40m3/s(上河原0.5m3/s、宿河原0.9m3/s)である。このうち、河川維持用水は、
事実上の環境用水となっている。
河川維持用水の概要は、表 4-7のとおりである。河川維持用水の算定根拠は、筆者らが 実施した調査では不明であった。取水量は、川崎市と京浜河川事務所との協議の結果決定 されたものである。
表 4-7 二ヶ領用水の河川維持用水の概要 申請者 川崎市
河川管理者 国 河川名 多摩川
目的 河川維持用水(河川管理行為)
取水量等 期間 通年
取水量 1.40m3/s(上河原堰0.50m3/s、宿河原堰0.90m3/s)
取水の方法 上河原堰、宿河原堰から自然流入により取水する。(豊水)
水利使用の期間 6年(現地調査時点の最新の申請書(2002年1月18日申請)の場合)
4.2.4 山形県酒田市小牧川
小牧川の環境用水は、最上川から農業用水の排出先を変更し、最上川から小牧川への浄 化用水(機能としての環境用水)を導水することにより水質の改善を図るものであり、環 境用水水利権の取得はない。農業用水の排出先の変更方法は、小牧川の上流に位置する農 業用排水路と草薙頭首工からの農業用用水路が隣接する地点において、農業用用水路を改 造し、農業用排水路へ用水を流下できる構造に変更した。
取水先の最上川の河川整備基本方針が公表されており、流域特性が把握できることから、
環境用水の水利権はないが、環境用水として機能している水量が明らかになっていること から、検討対象地域として取り上げるものとした。
77
図 4-3 酒田市小牧川位置図
(1)流域特性
酒田市は、山形県の北西に位置する庄内地域北部の都市であり、最上川の河口に開けた 山形県唯一の重要港湾酒田港がある。小牧川は、酒田市の東部で最上川右岸の雨水排水、
農地排水を集水し、酒田港に注ぐ一級河川であり、流域面積7.52km2、流路延長7.09km である。
水源である最上川は流路延長229km、流域面積7,040km2の一級河川である。流域の土 地利用は、宅地が3%、農地が14%、森林・原野が72%、道路が2%、その他が9%とな っている。流域の年間降水量は、鳥海山、月山では2,500mmを超え、酒田市は約1,900mm、
山形市は約1,200mmである。河川水の利用については、農業用水として約124,100haの 農地にかんがいされ、そのうち許可水利権として最大210m3/sの取水があり、慣行水利権 は約3900件、かんがい面積約62,000haにのぼる。水道用水は、山形市をはじめ11市15
町で5.095m3/s、工業用水は1.353m3/sが利用されている。発電用水は、350,872m3/s、最
大出力202,700kWの発電が行われている。
草薙頭首工のやや上流に、河川管理基準点である高屋地点がある。高屋地点の平均低水
流量は160.6m3/s、平均渇水流量は82.9m3/s(観測期間1958~1997年)であり、夏季(7
~8月)が渇水の時期である。高屋地点下流における既得水利権は、かんがい用水
山形県
酒田市
0 4km
(酒田市資料より)