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第 6 章 結論

6.2 総括議論

6.2.1 第 3 章 先行事例にみる環境用水の成立要因

3章においては、環境用水水利権を取得した5事例のうち4事例「六郷堀・七郷堀(仙 台市)」、「亀田郷(新潟市)」、「堀板地区(秋田県大仙市)」、「戸ノ口堰(福島県会津若松市)」 および、広義の環境用水を成立させていたといえる「二ヶ領用水(神奈川県川崎市)」、「鞍 月用水(石川県金沢市)」、「寺井湯井堰(滋賀県彦根市)」、「新堂の樋(滋賀県近江八幡市)」を

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対象に、先進的な取り組み事例とみなして、現地調査を実施し、環境用水が成立した要因 を分析した。その結果、成立要因として考えられる事項は、環境用水導入の過程に沿って、

(A)地域の歴史・伝統、(B)環境用水を必要とした原因・動機、(C)導入に至る取り組み、(D)

水路などの施設整備、(E)維持管理、の5つの段階で整理でき、次の14の項目にまとめる ことができた。①歴史・実績,②水と人とのかかわり,③直接的な要因,④地域住民・市 民の声,⑤政策目的,⑥関係機関の連携,⑦試験通水,⑧事業による支援,⑨環境計画,

⑩条例,⑪水路整備,⑫管理主体,⑬管理費,⑭利活用である。

調査対象地域のすべてで該当した項目は、直接的な要因、関係機関の連携、管理主体、

管理費であり、これらが、環境用水の導入と定着過程において重要な要素であることが示 唆された。また、環境用水が持続する地域では、水路の周辺に居住する住民だけでなく、

広い層の市民によって支えられていることがこうした事例から明らかになった。

6.2.2 第 4 章 水資源量から見た環境用水

4章においては、関係河川の流況等が公表されている「六郷堀・七郷堀(仙台市)」、「亀 田郷(新潟市)」、「二ヶ領用水(神奈川県川崎市)」、「小牧川(山形県酒田市)」について、

流域における水資源量に対する環境用水量の割合について考察した。

調査事例地域の環境用水は、目的が異なり、水量は0.3~2.15 m3/sとかなりの幅があっ た。また、低水流量から河川維持流量と下流側の既得利水量を引いた水量に対する環境用 水量の割合は、0.4~58.3%の値であった。

低水流量から河川維持流量や既得利水を差し引いた水量に対する環境用水量の割合は 河川によっては高い値を示しており、こうした河川では環境用水量の確保が容易ではない。

しかし、河川の特性や環境用水の利用形態によって異なるが、環境用水は既得利水との水 利の再配分の検討によって見出すことができる可能性がある。さらに、河川の流況によっ ては豊水水利の積極的な利用も検討すべきであろう。

6.2.3 第 5 章 環境用水導入の可能性とその地域的条件 -野洲川土地改良区における冬 期用水の導水を事例として

3章で示した環境用水の導入に成功した先行事例8地域のうち、二ヶ領用水と新堂の樋 を除く6地域はいずれも農業水路であり、そうした水路の管理は、従来から土地改良区が 行ってきた。それゆえ、環境用水の成立において土地改良区の果たす役割は大きい。しか

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しながら、非かんがい期の新たな用水の通水について、導入の経緯や水路管理者である土 地改良区の機能に関する研究は見当たらない。そこで、5章では非かんがい期(冬期)に 地域用水の配水計画を策定し、試験通水を行った滋賀県野洲川土地改良区の地域用水機能 増進事業を対象とし、機能としての環境用水を成立させた過程とその要因を明らかにした。

これまでに利用されてきた環境用水を機能の面からみると、大きく①水質保全、②アメ ニティの保全と再生、③生物多様性保全、という3類型に分けられる。こうした環境用水 の導入に対する潜在的なニーズは高いが、それを成立させるためには一定の条件を満たす 必要がある。都市化が進行している地域では、市街地に居住する住民による環境用水導入 のニーズが高い一方、従来、農業用水を管理してきた土地改良区は、都市化に対応し得る 水管理体制の再編を迫られている。したがってこうした地域では、関係者・関係機関の合 意を図りつつ、環境用水を成立させるための条件をいかに備えていくかという点を解明し ていくことが課題となっている。本研究では、守山市を対象とし、市街地に居住する非農 家や自治会、環境NPO、農家、土地改良区、市行政それぞれの位置と役割を確認しつつ、

環境用水の導入を成立させた条件を解明した。

6.3 今後の課題

本研究の成果は以上のとおりである。本研究と関連する事項であるが、今回の研究では 扱うことができなかった課題を以下に整理しておきたい。

第1に、環境用水の導入を試みたが実現できなかったという事例が存在している。今回 の研究では触れていないが、なぜ実現できなかったのかを実態分析することによって、環 境用水を導入する際の条件が立体的に明らかとなり得る。こうした事例分析を進めていく ことは、今後の課題とする。

第2に、既往の環境用水は、①水質保全や②アメニティの保全と再生、を目的にしたも のが多く、③生物多様性保全を目的としたものは少数であった。河川において環境流量が 問題となっているのと同じく、河川から水を引く水路においてもこのテーマに関わる環境 用水へのニーズは潜在的には高いものを感じさせられる。したがって、今後、このテーマ に関わる環境用水の事例が発生した場合には、その分析を進めて実態を明らかにしていく 必要がある。

第3に、今回の研究は環境用水の導入過程に焦点を当てたが、その後の維持管理段階で 発生するさまざまな問題についてはあまり分析できていない。ひとたび成立した環境用水 が持続していくための条件を明らかにすることは、本研究に続く次の段階の課題となるこ とを確認しておきたい。

118 謝辞

本研究は、2006年に環境用水に関する研究を行おうと有志が立ち上げた環境用水研究 会で調査・研究を行ってきたうちの一部を整理したものである。環境用水研究会の代表で あり、指導教官でもある滋賀県立大学環境科学部秋山道雄教授には、研究を進めるにあた り、終始丁寧な指導を賜り深く感謝申し上げます。また。審査の労をおとり頂きました井 手慎司先生、香川雄一先生には丁寧なご指導をいただき、感謝申し上げます。

研究の発端となった環境用水研究会では、三野徹先生、澤井健二先生、足立考之氏、上 野裕士氏、土井和之氏、長瀬督哉氏をはじめ、多くの皆様にお世話になり感謝申し上げま す。

先行事例調査等では、仙台市建設局百年の杜推進部河川課広瀬川創生室、宮城県土木部 河川課、仙台東土地改良区、亀田郷土地改良区、新潟市農林水産部農村整備課、新潟大学 農学部三沢眞一先生、会津若松市建設部道路維持課、戸ノ口堰土地改良区、秋田県仙北地 域振興局農林部農村整備第二課、大仙市農林商工部農林振興課、横堀土地改良区、川崎市 建設局土木建設部河川課、金沢市都市政策局歴史遺産保存部歴史建造物整備課、同市都市 整備局土木部内水整備課、鞍月用水土地改良区、彦根市金沢町、酒田市建設部土木課、山 形県庄内支庁河川砂防課、大町溝土地改良区の皆様には大変お世話になり、貴重な資料や 情報を提供いただき、深く感謝申し上げます。

野洲川流域の調査では、野洲川土地改良区の田中利治氏には、再際にわたり事業への取 り組みに関するさまざまな情報提供をいただくとともに、地元自治会の紹介やヒアリング の日程調整まで行っていただき、深く感謝申し上げます。ヒアリング調査にご協力いただ いたNPO法人びわこ豊穣の郷、守山市二町町、同市吉身町、同市勝部町、栗東市伊勢落、

甲賀市水口町北脇、守山市の皆様には、大変お世話になり、貴重な資料や情報を提供いた だき深く感謝申し上げます。

先行事例調査や野洲川流域の調査では、秋山道雄先生、足立考之氏、柏尾珠紀先生、本 田恭子先生、宮崎淳先生、山下亜紀郎先生、錦澤滋雄先生、長瀬督哉氏、中野光議氏など とともに現地の水辺を歩き、ヒアリングを行い、楽しく調査をさせていただきました。大 変お世話になり感謝申し上げます。

内外エンジニアリング株式会社の皆様には、社会人大学院生として研究することに対し て温かく見守り頂き、多大な支援を頂いたことに深く感謝申し上げます。

以上に加えて、社会人大学院生として研究することを理解し支えてくれた家族に感謝し ます。

2015年3月 松 優男