第Ⅲ章 理科教育とアブダクション 理科教育とアブダクション
第3節 野外観察における推論 野外観察における推論
第3節 野外観察における推論 第3節 野外観察における推論 第3節 野外観察における推論
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-1 1 1 1 野外観察の計画と実施例 野外観察の計画と実施例 野外観察の計画と実施例 野外観察の計画と実施例
7)ここでは,Y中学校における3年生を対象に行った地学実習について検討する.
この実習は,地質分野の内容を学習後に行った.また,実習前には郷土の地質史を 学習し,移動のバスの中でも地質について地形と関連付けながら学習した.
(1) 単元内における本事例の位置づけ
自然の学習において,野外観察は非常に重要であり,学習指導要領においても行 うこととされている.本事例は,「大地の変化」に関係する野外観察であり,生徒 一人一人が自然に対して,それぞれの興味,関心に応じて学習し,壮大な自然の見 方を学習することができるようにしたものである.
事前学習においては,特色ある郷土の地質や地形に関係する予備知識や教科書で 十分に学習していない内容について補充する.
指導計画例(全7時間)
・郷土の地質・地形とその歴史について(事前学習)……… 1時間
・不整合,化石,地形図の見方などについて(事前学習)… 1時間
・地学実習(バス内での学習を含む.) ……… 4 時間(本事例)
・実習のまとめ(事後学習)……… 1時間 (2) 本事例のねらい
単元のねらいは,「大地の活動の様子や身近な地形,地層,岩石などの観察を通 して,地表に見られる様々な事物・現象を大地の変化と関連付けてみる見方や考え 方を養う.」ことである.
本事例では,「野外観察を行うことにより,学習意欲を喚起し,実際に野外の事 物を探究する活動を通じて課題を解決する方法を習得させるとともに,地学的な事 物・現象は長大な時間と広大な空間の中で互いに関連を保ちながら変化してきたも のであることに気付かせ,大地は変化するという考え方を育成する.」ことが主な ねらいである.そのためには,個々の観察を大切にし,個に応じた指導や援助を行 うとともに自然を観察する視点(目的意識)を明確にし,野外の事物を探究する活 動を通じて課題を解決する方法を習得させることが効果的である.
(3) 評価規準(地層と過去の様子,国立教育政策研究所作成の評価規準より)
自然事象への関心・ 科学的な思考 観察・実験の技能・表現 自 然 事 象 に
意欲・態度 つ い て の 知
識・理解
・意欲的に野外観察を ・地層の野外観察を行い,その観 ・ 野 外 観 察 に お い て , 地 ・ 地 層 の 重 計画して実施しようと 察結果から,地層の重なり方の規 形 や 地 層 の 観 察 の 仕 方 , な り 方 の する. 則性を見いだし,地層の広がりを 露 頭 の 観 察 の 仕 方 を 習 得 規 則 性 ,
・野外で,地層及びこ 考察する. している. 地 層 の 堆
れを構成する堆積岩な ・野外観察を行う中で,地層の成 ・ 地 層 の 重 な り 方 や そ の 積 環 境 , どの観察に取組み,課 因,地層の堆積環境を考え,観察 地 層 を 作 っ て い る 岩 石 の 地 層 の 生 題を発見したり,自ら した地層の生成年代などを推定す 特 徴 を 自 分 な り に 整 理 し 成 年 代 に 仮説を立てて追求し, る. て 記 録 し , 露 頭 の 特 徴 を つ い て 理 規則性を見つけようと ・堆積岩の構成物質の違いや含ま と ら え て ス ケ ッ チ し た り 解 し , 知 するとともに,自然環 れる示相化石,示準化石から,堆 観 察 結 果 を ま と め て 発 表 識 を 身 に 境を保全しようとする. 積環境や大まかな生成年代を推定 したりする. 付 け て い
する. る.
(4) 野外観察の実施にあたって配慮すること
地層の観察に適した場所が周辺にない学校も多い.このような場合,バスでの送 迎も含めた計画を立てることは有効な方法の一つである.場所の設定については,
崖崩れや落石などのない安全な場所であることが大切である.また,斜面での転倒 や転落,虫刺されや草木によるかぶれ,交通事故などにも留意するとともに天候に も注意する必要がある.下見を行うのはもちろん,緊急連絡先,避難場所,病院の 確認を行うとともに,引率に必要な教員を確保することも重要である.野外観察に 関する服装,持ち物にも注意する必要がある.
[服装,持ち物例]
○野外観察に適した服装(ズボン,運動靴など)
○リュックサック(両手を開けるため)
○地形図(位置の確認のため)
○岩石の採集のための古新聞紙(採集については,環境への配慮に注意する.)
○ハンマー(安全のため,使用法について注意する.)
その他,筆記用具,定規,軍手,タオル,雨具,応急薬品など (5) 野外観察の実習地について
貝塚市は大阪府の南部の大阪湾に面し,背後は和泉山脈の分水領をもって和歌山 県と接している.地質的には西南日本内帯の領家帯に属し,南側から和泉層群,泉 南流紋岩類(泉南酸性火砕岩類),領家変成岩類,大阪層群,沖積層が比較的順序 正しく見られる(図 1).貝塚市蕎原の地学実習コースは,アンモナイトなどの化 石や凝灰岩層などをはじめとして,教科書で学習するほとんどの地層や岩石,断層 や不整合などを短時間に観察することができるコースである(図2).
図1 大阪府南部の地質
(貝塚市木積より)
図2 貝塚市蕎原周辺の実習コース
(大阪府地域計画図1:2500より作成)
学習活動の展開 (1) 指導計画
学習の展開は,バス内での学習と現地での野外観察とに分けることができる.
バス内における指導計画(約 30 分)(バス内から地形の観察や意見交換を行う.)
学習内容・学習活動 指導上の留意点 評価の視点
○岩石や土と生活とのかかわりについて ○土,石,コンクリート,瓦,鉄, (関心・意欲・態度)
考える. ガラス,道,石垣,墓石…身近 ○積極的に発言しよう
なものがほとんど関係している こ とする.
とを認識させる.
○人が住むのはどのような地形の所かを ○授業で学習した事を想起させる. (知識・理解)
考える.その理由も考える. ○地質と地形との関係
○断層の上に道が多いのはなぜか. ○竹藪や池が断層や地質に関係し を理解している.
○竹藪が多いのはなぜか. ていることをに気付かせる.
○池が多いのはなぜか.
○バスから地形を観察する. ○地質の変化が地形の変化と密接 (科学的な思考)
○地質がどこから変化しているかを予想 に関係があることを認識させる. ○地質の変化している する.(大阪層群~領家変成岩,領家変 ○バスを一時停止させて確認させ 所を予想し,その根
成岩~泉南流紋岩) る. 拠を言うことができ
る.
現地における指導計画(3時間半)
学習内容・学習活動 指導上の留意点 評価の視点
[地点①] 現在地確認 ○現在地を確認して,地図と合わ (知識・理解)
○北はどちらかを考える. せさせる. ○現在地を地図上で確
認することができる.
[地点a]断層による滝 ○安全に気を付ける. (科学的な思考)
○なぜここに滝があるのかを考える. ○断層によるものと地質の違いに ○滝の成因,仮説の検
○滝とはどういう地形なのか(段差は よるものがあることに気付かせ 証方法を考える.
なぜできたのか)を考える. る.(図で説明する.) ○断層の出現地を予想
○では,どちらによるものかを考える. ○予想させて,よく観察させる. する.
○断層の方向を地図に記入して,次に ○断層のあることを確認させる.
出てくる所を予想する. ○理解に応じて個別指導を行う.
[地点b]川の流れ方と岩石 ○川の流れも自然の法則に従うこ (科学的な思考)
○川はどうしてまっすぐに流れないの とを理解させる. ○川がまっすぐ流れな かを考える. ○節理,地質の違いなどについて い原因を考える.
説明する.
[地点c]郷土の岩石・風化した露頭 ○一人一人に触れさせる. (知識・理解)
○この石碑と周辺の石は何種類の岩石 ○泉南流紋岩と花崗岩の違いを理 ○岩石の種類について でできているか考える.その分類の 解させる. 理解している.
手がかりについて考える. ○郷土の岩石を確認させる. ○岩石を見分け方を理
○風化した花崗岩を手で割り,風化を 解している.
実感する. (技能・表現)
○風化の原因は何かを考える. ○露頭の観察の仕方を
○泉南流紋岩の露頭をたたき,風化の ○ハンマーの使い方に注意させる. 習得している.
程度を調べる.
[地点d]川の侵食 ○位置を確認させる (知識・理解)
○流水の3作用について学習する. ○三日月湖にも触れる. ○流水の 3 作用につい て理解している.
[地点e]断層 ○地点aの断層とつながっている (科学的な思考)
○この露頭を見て気付くことは? ことを確認させる. ○断層のつながりを考
○断層粘土や鏡肌に触れる. ○断層について説明する. える.
○次に地質が変化するのはどこかを予 ○位置を確認させる. ○地質が変化する場所
想する. ○地形が開けてきたことと礫が出 を予想し,見つける
てきたことに注目させる. ことができる.
[地点f]不整合(スケッチ) ○不整合のできた理由と当時の時 (知識・理解)