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教材開発にかかわるアブダクション 教材開発にかかわるアブダクション

第Ⅳ章 教材開発とアブダクション 教材開発とアブダクション

第3節 教材開発にかかわるアブダクション 教材開発にかかわるアブダクション

第3節 教材開発にかかわるアブダクション 第3節 教材開発にかかわるアブダクション 第3節 教材開発にかかわるアブダクション

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1 1 1 1 水撃ポンプ 水撃ポンプ 水撃ポンプ 水撃ポンプ 3

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1 1 1 1 水撃ポンプの開発 水撃ポンプの開発 水撃ポンプの開発 水撃ポンプの開発

アブダクション教材は,探究の第一段階にかかわる.ただし,アブダクションは,

ディダクションやインダクションに影響を与える.そのため,学習の成否はアブダ クションにかかっているともいえる.

アブダクション教材の開発においては,このことを十分に認識した上で,開発に 取り組まなければならない.ここでは,水撃ポンプを例として取り上げる11)

水撃ポンプ(hydraulic ram pump)は,水撃現象(water hammer) を利用したポン プであり,水の位置エネルギーを利用することにより,水源より高い所へ揚水する ものである.水撃ポンプの製作は,もともと大阪府教育センターの教員研修に使用 することを目的として開発を始めた.というのは,このポンプはガスや電気などの 外部エネルギーが一切ないにもかかわらず,水源より高所に水を揚げるという驚く べき事実を示すからである.研修で用いた水撃ポンプは,構造を簡素化し,実験,

観察を行いやすいように努めた.図1はポンプの内部構造,図2はポンプの特性を 調べるための装置を示したものである.入力管は塩ビ管,揚水管はアクリルパイプ

(内径18 mm,揚程660 mm)を用いた.排水弁における流出速度は,排水弁を開

き,排水量から求めることができる.また,1 分間あたりの揚水量と排水量は,作 動時の水量をそれぞれ測定することにより求めることができる.

図2 ポンプの性質を調べるための装置 図1 水撃ポンプの内部構造

開発にあたっては,当初,いろいろと試行錯誤しながらポンプの自作を試みた.

特に,弁の製作が難しく,水漏れが発生するなど,上手く作動しなかった.水撃ポ ンプの製作に関する書籍12)により様々な水撃ポンプを知ることができたものの,そ れらはものづくり教材として取り扱うには難しく,簡単に自作できないかを模索し た.最終的には,灯油用給油ポンプを利用することになったが,それは整理すると 次のようになる.

水撃ポンプを自作できる

灯油用給油ポンプを利用する → 水撃ポンプを自作できる

∴ 灯油用給油ポンプを利用する

形式化すれば,以上のようになるが,実際の思考は様々な紆余曲折を経る.そこ に至る主要な思考の流れを追うと次のようになる.

水撃ポンプの自作では,漏れない弁の製作が難しい

もし,漏れない弁がどこかにあれば,水撃ポンプを自作できる

漏れない弁がどこかにないかを考える

ここでは,漏れない弁がポイントとなっている.漏れない弁の製作が難しいとい う問題をどのように解決するかがポイントである.つまり,漏れない弁がある状態 にすれば問題は解決する.もし,すでにあるもの(他の目的のために作られたもの など)を利用することできれば,この問題は解決する.形式化すれば次のようにな る.

漏れない弁がある

灯油用給油ポンプを利用する → 漏れない弁がある

∴ 灯油用給油ポンプを利用する

ここでは,漏れない弁がキーワードとなり,漏れない弁とかかわりのあるものを 捜すことによって,灯油用給油ポンプが浮かび上がってきている.つまり,漏れな い弁から灯油用給油ポンプへと逆向きの推論がはたらいている.これは,アブダク ティブな推論である.

さらに,灯油用給油ポンプの弁が水撃ポンプに利用できるのではという発想から,

灯油用給油ポンプをよく観察した.すると,水撃ポンプとほとんど同じ構造をして いることに気付いた.そのため,わずかな加工で水撃ポンプとして使用することが できるのではないかという考えが浮かんだ.

灯油用給油ポンプの弁室は水撃ポンプの弁室と構造がよく似ている 灯油用給油ポンプの弁室は水撃ポンプの弁室と構造がよく似ている

→ 灯油用給油ポンプを水撃ポンプとして使用できる

∴ 灯油用給油ポンプを水撃ポンプとして使用する

これは,形式的にはアブダクティブなディダクションである.あるいは,類似性 に着目しているので,一種のアナロジーと考えることもできる.実際には,「似て いるものは同じようなはたらきをするだろう」という推論である.しかし,なかな かそのことに気付かないのが現実である.後は,排水弁を調整し,排水部を作り,

入力管,揚水管をつなぐと水撃ポンプの完成となる.さらに,灯油用給油ポンプは,

半透明なプラスチックでできており,赤い弁の動きがよく見える.教材としては最 適である.

漏れない弁というキーワードから,以上の発想に至ったのであるが,場合によっ ては,どちらもポンプという水の流れを変える装置であるという共通点からも到達 するかもしれない.ここでは,弁の構造だけに注目するのではなく,全体を見る視 点が大切である.弁のことだけを考えたとしたら,後半の発想はなかったかもしれ ない.このように,教材を作成する場合,一からすべてを作るよりは,身近にある ものを利用して作る方がコストや労力の点で優れていることが多い.教材における コストや労力は,非常に大きい要素となる.一人一人が観察,実験できることは,

教材として好ましいが,数をそろえるためには,コストと製作のための労力が軽微 なことが望ましい.特に,ものづくり教材では,そのことは重要であると思われる.

今回の装置のように水を使用する教材では,漏水が問題となることが多い.問題 の解決は漏水しないものを捜すことである.では,漏水しないものは何かを考えた とき,水道部品を利用すれば漏水を避けることができるのではないかという考えが 浮かぶ.

漏水しない

水道部品を使用する → 漏水しない

∴ 水道部品を使用する

試してみると,水道用の継ぎ手などはほとんどそのまま利用することができ,定 量実験のための条件(入力管の長さなど)を容易に変えることができた.

さらに,今回の水撃ポンプでは,機能と関わる点で,次のような工夫を行った.

○ 揚水の能率を上げるための空気室を省いた.

○ 弁の調整はバネではなく,おもりを付けることで行った.

○ 入力管を水平にした.

このように,原理を探究する教材では,できるだけ複雑な要素をなくし,簡潔に することが大切である.

また,観察や実験を行いやすいように次の点を工夫した.

○ 揚水官は,水の動きが見えるように透明なアクリルパイプを使用した.

○ 接続は,水道部品のねじや差し込みを使用し,接着剤などは使用しないよう にした.

その他,実験装置をできるだけ多く用意するために,取水箱も段ボール箱を利用 するなどの方法を考案した13)

以上のように,教材の開発や改良には,アブダクティブな推論の考え方が役立つ ように思われる.アブダクティブな推論は決して特殊なものではなく,日常的に誰 でも行っている推論である.大切なことは,それを意識的に行うことができるかど うかである.推論の構造を知り,意識的にそれを行うことによって,より効率的に 教材の開発を行うことが可能になると思われる.

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2 2 2 2 水撃ポンプの製作と特性に関する研究 水撃ポンプの製作と特性に関する研究 水撃ポンプの製作と特性に関する研究 水撃ポンプの製作と特性に関する研究

14)

Ⅰ.はじめに

水撃ポンプ(hydraulic ram pump)は,水撃現象(water hammer) を利用したポン プであり,水の位置エネルギーを利用することにより,水源より高い所へ揚水する ものである.

水撃ポンプの歴史は古く,1793年にフランスのモンゴルフィア兄弟(Montgolfier

brothers)により発明されたといわれている.図 3 は,その構造を示したものであ

15)

現在,ガスや電気を使わないポンプとして,東南アジアやアメリカなどで実用化 されている.また,教材としては,足利工業大学の機械工学科で,透明のアクリル 製の水撃ポンプが使用されている16)

しかし,これまで教材として水撃ポンプを使用することや製作されることは多く なかった.これは,水撃ポンプの原理である水撃現象が特殊な現象であると考えら れていることやポンプ自体の製作が難しいことに起因していると思われる.

そこで,教材としての水撃ポンプの可能性を調べるために,簡単かつ安価に製作 できる水撃ポンプの製作とその特性について考察した.

図3 Montgolfier brothersによる水撃ポンプ

(http://www.cat.org.uk/information/tipsheets/hydram.htmlより)