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第 4 章 JICA 支援、他ドナーによる支援を踏まえた横断的分析

4.2. 重要課題に関する知見の抽出の分析・検討結果

前記のJICAによるインドネシア、ベトナムへのCCPL/SP-RCC支援、及び、世界銀行、

IDB、AFD によるCCDPL支援を踏まえて、以下、重要課題に関する知見の抽出を行った。

それぞれのステートメントをサポートするエビデンス/関連した記述は、第2章及び第3章 に記載しており、各ステートメントの最後にカッコ書きで参照項目を示した。

<ア.CCPL実施対象国としてどのような特性(例えば、ODA供与規模、財政支援ニーズ、

気候変動交渉上のスタンス等)を備えていることが実現の可能性を高めるか。>

• 以下の要件を備えていることが重要。(「3.1.(2)1) メキシコ CCDPL」及び「3.1.(2)3) トルコ DPL」参照)

・ 受入国側に政策制度改革に向けての政治的なコミットメントがあること。また、ドナー側は、

受入国側に政治的コミットメントがあり、チャンピオンが存在しやすい時宜(国際会議の前後、

とりわけCOP等を自国で開催する時期等)を選定し、CCPLを供与するタイミングを検討する こと、また、CCPL の前に技術協力等でチャンピオンとなる人物や機関が出てきやすい土壌 を受入国側とつくっておくことも必要。

・ 受入国政府関係者の思考に柔軟性があり、新たな知識や経験を学ぼう/取り入れようとす るマインドがあること。

・ 改革の計画や実施、モニタリングにおいて受入国政府自身のオーナーシップがあること。

・ 受入国政府内に改革マインドを持った「チャンピオン」(改革推進者あるいは推進機関といっ たリーダーシップ)が存在し、当該チャンピオンがCCPLをうまく活用して改革を進めていこう とする意思があること、及び、政府が一枚岩となって政策アクションを取り進めるため、現場 のオペレーション・レベルに至るまで「フォロワー」が存在していること。

• 資金面での財政支援ニーズが大きい国は、受入国政府が政策制度改革を進めるために十 分に魅力的な/その気にさせる規模の支援を行うことを検討。逆に政策制度面での支援 ニーズが大きい国は、ドナーの資金が目的ではなく、ドナーにシンクタンクの役割を果 たすことが期待され、付加価値の高い知見やアイディアの提供が重要。(「2.3(3)4) SP-RCC により期待される効果(仮説)の検証」の「仮説イ.」、「3.1.(2)1) メキシコ CCDPL」及び「3.1.(2)3)

トルコDPL」参照)

• 気候変動交渉上のG77のスタンスや国内世論による影響により、気候変動対策はグラン トでなければ受け入れられないというスタンスが無い国であること。「2.2.(3)4) CCPLに より期待される効果(仮説)の検証」の「仮説イ.」及び「2.3(3)4) SP-RCC により期待される効果

(仮説)の検証」の「仮説イ.」参照)

<イ.CCPLの実施にあたって、どのような組織体制、準備・実施プロセスが有効か。>

• 改革対象分野が多岐にわたり、分野横断的な課題を扱うCCPLの実施機関には、ライン 省庁と密接な関係(実質的な影響力)を有する中央経済官庁(財務省、計画省)もしく は首相府の下に各省参加の気候変動対策委員会のような組織を設け、ライン省庁よりも 一段上の立場で気候変動対策を協議できる機関が務めるのが望ましい。いずれの場合も、

国として気候変動対策にコミットしていることが不可欠の条件である。主流化・緩和・

適応のどれにとっても科学的知見・データの蓄積・活用が欠かせないため、この面での 対応、すなわち科学的知見・データの蓄積・活用を自ら実施できる能力構築支援も視野 に入れる必要がある。(CCPL自体でなくても技術協力、調査協力を活用)。(「2.2.(3)3) 改 革支援ツールとしての CCPL の有効性(後押し効果・シンボル効果・コーディネーション効果)」

の<CCPLの後押し効果>」、「2.3.(3)3) 改革支援ツールとしての SP-RCC の有効性(後押し 効果・シンボル効果・コーディネーション効果)」の<SP-RCC の後押し効果>、「3.1.(2)1) メ キシコCCDPL」及び「3.1.(2)3) トルコDPL」参照)

• 準備・実施プロセスについては、必ずしも年次のサイクルにこだわらず、改革の難易度 等に応じて期間設定をより柔軟に行うことにより、政策アクションと成果発現とのリン ケージを強化し、改革の実効性の確保を重視した枠組みとすることも一案として考えら

れる。(「2.3.(3)3) 改革支援ツールとしての SP-RCC の有効性(後押し効果・シンボル効果・コ

ーディネーション効果)」の<SP-RCCの後押し効果>参照)

<ウ.CCPL全体、及び各セクター・課題のアウトカムやインパクトとしてどのような目標、

指標を設定すべきか。>

• 財政支援は、(特定)ドナーの貢献(資金を含む)を特定することが困難であり、効果発 現に至る因果関係の連鎖が時間的・論理的に長いため、それを追うことは困難。

• また、「仮にCCPL支援がなかった場合どうなっていたか」という「反事実的」な状況を つくって効果を測定すること(counterfactual)も困難。

• 更に、仮に異なる時期に実施した同様の支援の効果を分析する場合でもそれぞれの時期 における経済社会状況や外部要因が異なることから分析は難しい。

• こうした制約を認識した上で、選定する政策アクションがプログラム目標及び受入国の 開発目標の達成や開発効果発現に向けて重要な役割を果たしていることが「論理的に」

説明できるようにすることが重要。すなわち財政支援のインプット-直接的効果-アウ トプット-アウトカム-インパクトのそれぞれの間で論理的なリンクがあることが重要。

各レベルにおいて外部要因が入ることは避けられないものの、このリザルツ・フレーム ワークの「デザインの質」が当初に確保されていることが肝要。(「3.1.(2)2) ブラジルDPL」 参照)その要件として以下の3つが考えられる。

表4-2 財政支援のリザルツ・フレームワークの質の確保に必要な要件145

1. インプット-直接的効果-アウトプット-アウトカム-インパクトのそれぞれのレベ ルの間で因果関係が論理的に示されていること(logically sequenced)

2. 現実的にモニタリングが可能な指標が選定されていること(そのためには適切なコス トで信頼性のあるデータが収集できることが重要)

3. 政策アクションや指標の数は絞られ、かつ、受入国の改革にとって決定的に重要な制 約要因にアドレスする内容であること(parsimony and criticality)

出所:調査団作成

• そのためには、「政策アクションの質」の向上が不可欠であるが、政策アクション選定に 際しての考え方は以下のとおり。

表4-3 政策アクション選定に際しての考え方146

・ 受入国政府の政策・計画に根ざすものであること

・ 政策制度改革の確実な実施に向けた、受入国政府の強いコミットメントが確認できる もの

・ 経済合理性のあるもの

・ 戦略的重要性を有するもの

・ 達成したかどうかがはっきり分かる(具体的に判定が可能でモニタリングが可能であ る)ような、具体的なアクションが含まれていること

・ 個別の単発的なアクションではなく、政策制度改革のロードマップの中にきちんと位 置づけられる、マイルストーン的なものであること

・ 細かすぎず、他のアクションとのレベル感が揃うもの

出所:調査団作成

145 調査団の過去のDPLの評価経験を踏まえて記述した。

146 調査団の過去のDPLの評価経験を踏まえて記述した。

• また、プロセスのレビューは重要である。個々の政策アクションが選定された背景の確 認や、政策アクションが変化している場合、その要因の洗い出しを行い、ドキュメント として残すことが肝要である。(「3.1.(2)2) ブラジルDPL」参照)

• なお、気候変動対策の主流化の促進は国のタイプを問わず重要である。どのセクターを 重視するかは当該国の状況による。温室効果ガスの排出量が大きい国では緩和が重要147、 インドネシアでは森林・泥炭地管理や地熱などの再生可能エネルギーの開発推進と水資 源、沿岸管理、農業などが重要である。また、島しょ国では海面上昇・海岸侵食対策、

水資源等が重要となる。(「2.2.(3)1) 効果発現プロセスの時間軸による整理」の「表2-4 主流 化、緩和、適応での政策アクションの実施状況」)

• BAPPENAS 次官が述べた『「温室効果ガス削減のみを目的としたプロジェクト」の実施

ではなく、持続可能な開発の実現に向けて、「低炭素社会推進」のためのプロジェクトを 立案し、コミュニティにおける雇用や賃金を創出し、貧困対策等に資するような、気候 変動と開発の両立を目的とするプロジェクトを推進する必要がある。』との点に関しては、

産業界の省エネ促進、地熱など再生可能エネルギーの推進につながる制度設計が有効で あろう。

<エ.CCPLを通じて多様なステークホルダーの参加を得て気候変動にかかる政策対話を効 果的に行うにはどうしたらよいか。>

• CCPL は裨益者側のメリットの認識に差があること、改革に伴い既得権益を失う者が発 生し、それが改革推進の抵抗勢力となりうること、ドナー側もそれぞれの援助哲学や支 援の優先分野等の違いがあり、異なる思惑でCCPL支援を行っていることに留意が必要。

したがって、多様なステークホルダーの参加は、さまざまな立場から知見やナレッジの 共有が可能になるというプラスの側面がある一方で、調整コストの増大をもたらし、意 見の合意に至らない、政策対話の質や政策マトリックスの中身にバラツキが出る、とい ったリスクがあることにも留意すべき。(「2.3(3)4) SP-RCCにより期待される効果(仮説)の 検証」の「仮説イ.」及び「2.3.(4)ドナー協調・役割分担」参照)

• 上記を認識した上で、多様なステークホルダーの参加を求める場合は、一般財政支援と は別に、かかる政策対話に係る費用を支援することも一案である。あるいは政策対話促 進に焦点を当てた技術協力もしくは調査を行うことも考えられる。

147 もちろん、中国のように温室効果ガス排出量が多い国でも、適応面のニーズも大きいことがあり得る。

緩和と適応のどちらを優先するのかは相手国との協議を通じて合意するしかないものと考えられる。