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第 4 章 JICA 支援、他ドナーによる支援を踏まえた横断的分析

4.1. 仮説の検証結果

ウ.CCPL の一般財政支援が、パートナー国の財務/開発計画担当省庁の参画意欲を 高め、当該省庁の積極的参画が気候変動対策の開発への統合を促進する。

①インドネシアCCPL、②ベトナムSP-RCC

エ.CCPL は、パートナー国政府による気候変動対策への支出増加に間接的に貢献す

る。 中

①インドネシアCCPL、②ベトナムSP-RCC

オ.CCPL と技術協力、プロジェクト型借款等の他スキーム支援の組み合わせが、相 乗効果を発揮する。

①インドネシアCCPL、②ベトナムSP-RCC、③世界銀行メキシコCCDPL及びトルコ DPL、④IDBによるCCPL評価結果、⑤AFDへのヒアリング結果

カ.CCPL を通じて中央政府と地方政府の連携・調整が促進されるとともに、地方政 府の気候変動に関する政策が実施促進される。

①インドネシアCCPL(ベトナムSP-RCCについては異なるアセスメント結果がでて いることからカウントせず)

キ.CCPLを通じて研究機関、NGO、民間企業等の多様なステークホルダーが気候変 動にかかる政策対話に参加する場が増加する。

①インドネシアCCPL(ベトナムSP-RCCについては異なるアセスメント結果がでて いることからカウントせず)

出所:調査団作成

上記の判断の根拠となったステートメントは以下のとおりである。それぞれのステートメントのサポ ート・エビデンス/関連した記述は、第2章及び第3章に記載しており、各ステートメントの最 後にカッコ書きで参照項目を示した。

<ア.CCPLを通じた政策対話と政策アクションの実施は、パートナー国の開発計画への気 候変動対策の統合、気候変動対策に関する政府内関係省庁の連携・調整を促進する。>

インドネシアの場合、BAPPENAS に元々関係省庁間の調整機能は存在したが、気候変動 対策という切り口で大口ドナーである日本(大使館、JICA)、世界銀行や AFD も参加して

政策アクションの実施状況と気候変動対策上の重要課題を協議する場として Steering

Committee Meeting は気候変動対策に関する政府内関係省庁の連携・調整を促進した。

BAPPENASとしてはCCPLを他省庁と連携して気候変動政策を進めるためのツールと考え

ていたようでありBAPPENASの役割と CCPLの目的が一致していた142。(「2.2.(3)4) CCPL により期待される効果(仮説)の検証」の「仮説ア.」参照)

ベトナムの場合、これまで政府内関係省庁の連携・調整のしくみがなかったところに新 たな調整機能が設置されたことは大きな前進だった。気候変動対策に関する政府内関係省 庁の連携・調整の促進が図られたが、ライン省庁に関しては、コーディネーションの壁が あり、参加インセンティブが課題として指摘されていた。これに対してJICAでは2015年 にライン省に対して有償勘定技術支援を行っている。また、2016年以降の SP-RCC では、

資金の裏付け(ドナー支援、予算)のあるものだけを政策アクションとすることになって いる。さらに、世界銀行やAFDも2016年以降の枠組みにおいて、SP-RCCの政策アクショ ン実施のための技術支援の可能性について言及している。また、これまでは上位政策のコ ーディネーションに改善の余地があることが指摘されていたが、目下、次フェーズ(2016

~2020年)の実施に向けた準備の過程で、コーディネーションの強化やSP-RCC の戦略性 強化に向けた集中的な議論が関係者間で進展している。(「2.3.(3)4) SP-RCCにより期待され る効果(仮説)の検証」の「仮説ア.」参照)

IDBによるこれまでのCCPL評価結果から、受入国政府側(特にMOF)は、CCPL及び 政策対話が気候変動対策の後押しになったと評価しており、(政権の変更後も)改革プロセ スを継続したことが確認されている。他方、ある CCPL では、複雑で、数多くの政策アク ションから構成される政策マトリックスが作成されたが、そのうち半数は改革実施のコミ ットメントが弱く、政策改革に影響を及ぼさなかった、としている。(「3.2.(3) CCPLの付加 価値、課題、改善の可能性に関する示唆」参照)

<イ.複数ドナーの参加・協調が、政策対話におけるドナーグループの発信力を高め、よ り良い政策アクションの設定につながる。また財政支援の資金規模が大きくなるため、パ ートナー国政府の協力インセンティブが高まる。>

インドネシアの場合、世界銀行、AFD の参加と政策アクションに関する協議は政策アク ションの質の改善につながった(CCPLフェーズ2における主流化の重視など)。但し、気 候変動対策はローンではなく、グラントであるべき、とのG77グループのスタンスもあり、

CCPLは継続に至らなかった。(「2.2.(3)4) CCPLにより期待される効果(仮説)の検証」の

「仮説イ.」参照)

142 JICAインドネシア事務所気候変動担当者 からのヒアリングより。

ベトナムの場合、政策対話において、各ドナーのプライオリティ、経験、ナレッジ等を 踏まえて異なる観点から多面的な議論ができ、より良い政策アクションが設定されている というプラスの側面がみられるが、政策対話の深化に伴いドナー間の意見の違いが顕在化 しており、調整コストが増大しているという側面も見られる。(「2.3.(3)4) SP-RCCにより期 待される効果(仮説)の検証」の「仮説イ.」参照)

AFDとの現地ヒアリングにおいて、ベトナムSP-RCCに関して、複数ドナーが参加して、

互いが比較優位を持つ分野に特化することにより、より良い政策アクションの選定に繋が っていると評価する声があった。また、ドナー側の影響力として、基本的には、供与金額 が増えればベトナム側のインセンティブも増加すると考えるが、支援の額だけでなく、ド ナーの数も重要であると考えるとの発言があった。(「3.3.(3) CCPLの付加価値、課題、改善 の可能性に関する示唆」参照)

<ウ.CCPLの一般財政支援が、パートナー国の財務/開発計画担当省庁の参画意欲を高め、

当該省庁の積極的参画が気候変動対策の開発への統合を促進する。>

インドネシアの場合、ライン省庁への予算配分・支出を行うBAPPENAS・MOFはCCPL への参画意欲は強く、彼らの参加はライン省庁における気候変動対策の開発への統合を促 進することにつながったと言える。(「2.2.(3)4) CCPLにより期待される効果(仮説)の検証」

の「仮説ウ.」の脚注参照)

ベトナムの場合、MOF及びMPI の参加意欲を高める方向に作用しているが、「気候変動 対策の開発への統合の促進」の観点からは改善の余地がある。中長期的な目標を見据えた 計画策定力が弱い、政策の重複がある、といった課題に対処するため次フェーズ(2016~ 2020年)に向けたSP-RCCの改善策について現地関係者間で協議が行われており、今後改 善が図られる見込みである。(「2.3.(3)4) SP-RCCにより期待される効果(仮説)の検証」の

「仮説ウ.」参照)

<エ.CCPLは、パートナー国政府による気候変動対策への支出増加に間接的に貢献する。>

インドネシアの場合、モニタリング・プロセスでの対話や、Technical/Steering Committee

Meetingでの気候変動対策に関する協議は、インドネシア政府の気候変動対策への支出増加

に貢献したと思われる。但し、気候変動という名目で正式に取りまとめられた予算は存在 しないので、検証は困難である。一般財政支援である以上、仮に CCPL がなかったとした ら、インドネシア政府が気候変動対策に充当できる予算は全体の予算規模が小さくなる分 だけ相対的に少なかった筈、という意味では CCPL は気候変動対策への支出増加に間接的

に貢献した、と言えよう。なお、ユドヨノ大統領自身の気候変動対策重視の強いコミット メントがあったことも大きな要因である。(「2.2.(3)4) CCPL により期待される効果(仮説)

の検証」の「仮説エ.」参照)

ベトナムの場合、CPEIR 調査結果からは(外部要因の影響があり)明確な予算のシェア 増は確認できないものの、一部の機関(MONRE、MOC、MOIT)については、気候変動対 策予算の増加率が各機関の全体予算の増加率を上回っており、SP-RCCによる一定程度の間 接的な貢献があると推察される。(「2.3.(3)4) SP-RCCにより期待される効果(仮説)の検証」

の「仮説エ.」参照)

<オ.CCPLと技術協力、プロジェクト型借款等の他スキーム支援の組み合わせが、相乗効 果を発揮する。>

インドネシアの場合、気候変動対策能力強化プロジェクトなどを始めとする技術協力が 気候変動対策の推進に大きな貢献となった。地熱発電、水資源開発などの分野での円借款 プロジェクトの実施も相乗効果につながるものであった。(「2.2.(3)1) 効果発現プロセスの 時間軸による整理」の「表2-4 主流化、緩和、適応での政策アクションの実施状況」の「現 在の状況」欄及び「2.2. (3)2) 関連して実施された他の支援の内容と発現した成果の時間軸 による整理」参照)

ベトナムの場合、政策アクションの選定と関連する技術協力プロジェクト実施が意識的 に行われているものもあり、SP-RCCと技術協力の組み合わせが相乗効果を発揮したグッド プラクティス事例がある。また、関係各ライン省庁のJICA専門家がSP-RCCの政策対話に 参加することにより、現場での個別案件のテクニカルな議論を、SP-RCCの政策制度上流で の議論にうまく橋渡しすることが可能になったことも特筆すべき点として挙げられる。

(「2.3.(3)4) SP-RCCにより期待される効果(仮説)の検証」の「仮説オ.」参照)

世界銀行のCCDPLの教訓から、ドナー側のざまざまな支援ツール(資金協力、技術協力、

各種知的貢献、政策対話、各種調査分析等)を動員して、CCPLを成功へと導くことが重要 であることが指摘されている。その際、ドナー側は支援の一貫性と戦略性を確保すること が必要、としている。(「3.1.(2)1) メキシコCCDPL」及び「3.1.(2)3) トルコDPL」参照)

IDBによるこれまでのCCPL評価結果から、CCPLに関連した技術協力が政策対話の継続 性を高めたと評価している。(「3.2.(3) CCPLの付加価値、課題、改善の可能性に関する示唆」

参照)

AFDとの現地ヒアリングにおいて、ベトナムSP-RCCに関してJICAは政策アクションと 関連性のある技術協力を実施することで、現場での具体的な改革推進や能力構築と共に、