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第 3 章 他ドナーによる気候変動対策プログラムローンの取り組み

3.3. フランス開発庁

(1) CCPLに関するAFDの支援戦略・方針

AFDの支援戦略は、①持続可能かつ雇用創出を伴う経済成長の促進、②貧困及び不平等 の削減、③環境及び天然資源の保護と気候変動対策の 3 本柱となっており135、Strategic Orientation Plan 2012-2016136においても気候変動対策(fight against climate change)が重要

134 2004-2013年の間に承諾された気候変動関連技術協力の3分の1CCPL関連のもので、その半分は

中央政府向け、24%が地方政府向け、残りは複数国間の地域協力関係であった。

135 AFD資料(AFD results)より。

http://www.afd.fr/lang/en/home/publications/Publications-institutionnelles/plaquettes-presentation

136 http://www.afd.fr/webdav/site/afd/shared/PUBLICATIONS/INSTITUTIONNEL/pos/POS3-va.pdf

支援分野として随所で言及されている。AFDは人類が直面する包括的な課題の1つとして、

経済成長や貧困削減と並んで気候変動対策、すなわち、グローバルな公共財の保護の重要 性を訴えている。そして、AFDは、フランスがコミットする気候変動対策の中心的な実施 部隊となること、欧州そしてグローバルレベルで気候変動対策関連の成熟したアクターと して資金やリソースの動員に貢献することを目指している137

AFDでは、開発途上国とのナレッジの共有化を図り、気候変動問題に関する共通理解を 促進すること、対象を絞った資金供与(targeted financing)を行い、支援のインパクトの最 大化を図ること、GHG排出削減に向けた共通のルールづくりに協力すること等を通じて、

気候変動対策に取り組んでいく、としている。2014年における開発途上国向けのAFD援 助資金の53%が気候変動対策関連事業に充当されている138

出所:AFD資料139

図3-2 AFDグループの気候変動関連事業のコミットメント(累計)の推移(2007年以降)

137 出所:AFD資料。http://www.env.go.jp/en/earth/ap-net/documents/seminar/22nd/09_AFD_Gravellini.pdf

138 出所:2014AFD年次報告書。

http://issuu.com/objectif-developpement/docs/afd-annual-report-2014/66?e=4503065/13580445

139 http://www.env.go.jp/en/earth/ap-net/documents/seminar/22nd/09_AFD_Gravellini.pdf

(2) CCPL支援実績と事例のレビュー

AFD はこれまでインドネシア、ベトナム、モーリシャス、メキシコの 4 ヶ国で CCPL の供与実績がある。

ベトナムにおいてAFDは、SP-RCC開始当初よりJICAと協調融資を行ってきており、

毎年20百万ユーロを供与している。これはAFDの対ベトナム支援額(対ベトナムソブリ ンローンの上限は毎年100百万ユーロ)の5分の1を占めている。ベトナムSP-RCCにお ける AFD の重点支援分野は、エネルギー、グリーン成長、省エネである。ベトナムでの 現地ヒアリングによると、AFDは一般財政支援のモダリティを必ずしも支持しているわけ ではないが、気候変動対策については、AFDが重視する気候変動分野における政策対話の プラットフォームへの参加が可能であるため、SP-RCC を実施しているとのことだった。

AFDのベトナムSP-RCCへの参加目的は以下のとおりである140

• 気候変動対策は、AFDの対ベトナム支援戦略の主たる柱の1つに位置づけられている こと。

• 在ベトナムフランス大使館がSP-RCCへの支援をサポートしていること。

• SP-RCCの枠組みを通じて、気候変動対策及びグリーン成長戦略に係る政策対話のプラ

ットフォームが構築されていること。

• ベトナム政府は SP-RCC に関する資金メカニズムの構築を図っており、かつ、気候変 動に関する公的支出のトラッキングのための準備を始めていること。

• AFD では、ベトナムにおいて、SP-RCC のような政策改善に係る複数年度のプログラ ム実施の支援ニーズがあること。

• AFDがベトナムでSP-RCCに参加するインセンティブは、「(他ドナーと比べて)供与 額は相対的に小さいが、SP-RCCのプロセスを通じて、ベトナム政府(ハイレベル)と の継続的な関係構築・深化が可能であり、AFD が重視する分野でベトナムの政策制度 に直接関与することが可能であるため」と考えられる。すなわち、SP-RCCを、少ない 資金投入で政府のハイレベルへのアクセス、政策への直接関与、包括的な情報の入手 等が可能な、rate of returnが高いメカニズと考えているものと推察される。(小額ドナ ーにとって財政支援のうまみは、“声が大きいドナー”がレバレッジや存在感を示すこ とができる点にある。)

(3) CCPLの付加価値、課題、改善の可能性に関する示唆

ベトナムSP-RCCについて、現地ヒアリング(AFDとの面談)を通じて以下の示唆が得

られている。

140 現地調査時におけるAFDへのヒアリングより。

• SP-RCCの枠組みを通じて、ベトナム政府とドナー間の対話のプラットフォームができ たことは評価できる。また、MONRE のライン省庁に対する発言力が強化された。

MONREの能力強化を継続する必要があるが、ベトナムでは首相や大臣もSP-RCCに関

与しており、ハイレベルでのコミットメントが確保されていることから、政策アクシ ョンの推進が期待できる。

• 複数ドナーが参加して、互いが比較優位を持つ分野に特化することにより、より良い 政策アクションの選定に繋がっていると考える(エネルギー分野(省エネ、グリーン 成長)については全てのドナーが関心を有している)。

• ドナー側の影響力として、基本的には、供与金額が増えればベトナム側のインセンテ ィブも増加すると考えるが、支援の額だけでなく、ドナーの数も重要であると考える。

• 政策アクションの数が多すぎることから、数を絞る必要がある。また関係者間での各 政策アクションに関する情報共有が十分ではないと思われる。その観点から、政策ア クションの質については改善の余地がある。2020 年までに達成すべき目標を明確にす る必要があるが、その目標達成をモニタリングするための指標の設定や政策の質の評 価が難しい。

• JICAは政策アクションと関連性のある技術協力を実施することで、改革の促進を図っ ていると理解している。JICAが実施した温室効果ガスインベントリ案件、NAMA案件、

エネルギー効率向上に関する研修等は特に成功していると認識しており、現場での具 体的な改革推進や能力構築と共に、政策アクションの質向上にも貢献していると考え ている。

• SP-RCCは意識向上に一定程度寄与していると考えるが、国際社会でのアピールへの貢

献はそれほどでもないように思われる。ベトナム国内では政策対話の実施を通じて、

SP-RCC関係者の意識向上に役立っているが、国全体への広がりという観点からは十分

ではない。地方政府(省)は気候変動関連の投資事業(個別プロジェクト)には関心 が高いが、SP-RCCの内容について詳しく把握していないとの印象がある。