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酸素、ニトログリセリン、鎮痛・鎮静

1

) 酸素

CQ

:正常酸素飽和度を示す

ACS

患者に酸素は必要か?

P:ACS が疑われ正常酸素飽和度を示す成人(プレホスピタル、救急部門、入院中のいずれ かの状況)

I:酸素投与をしないこと C:ルーチンの酸素投与

O:死亡、梗塞サイズ、胸痛の改善、ECG の改善

推奨と提案

低酸素血症のない(注 1)ACS 患者(注 2)に対しては、ルーチンに酸素投与を行うよりも投与を 差し控えることを提案する(弱い推奨、非常に低いエビデンス)。

注 1:最近の 2 試験では SpO2>93%もしくは 93~96%。

注 2:AMI 患者のうち、MI の既往、高度の COPD、呼吸不全、心原性ショック、中心性チア ノーゼ、SpO2<85%、その他の原因による呼吸困難を除外したもの。

エビデンスの評価に関する科学的コンセンサス

重大なアウトカムとしての死亡率について、4 件の RCT があり、871 名において酸素をルー チン投与する群と比較して酸素を投与しない群に改善がみられなかったことを示している

(OR 0.91, 95%CI 0.25~3.34)(非常に低いエビデンス:非直接性、異質性、バイアスのリ スクによりグレードダウン)。

重要なアウトカムとしての梗塞サイズについては、3 件の RCT があり、713 名において酸素 をルーチン投与する群と比較して酸素を投与しない群で梗塞サイズはわずかに減少したこと を示している(非常に低いエビデンス:バイアスのリスク、非一貫性、非直接性、不精確さ によりグレードダウン)。4 件目の RCT における梗塞サイズの増大を示唆するデータは、不完 全な報告および確立していない方法のため公式には活用されない。

重要なアウトカムとしての胸痛の改善について、2 件の RCT があり、199 名において酸素を ルーチン投与する群と酸素を投与しない群で差がみられなかったことを示している(非常に 低いエビデンス:バイアスのリスク、非一貫性、非直接性、不精確さによりグレードダウン)。

重要なアウトカムとしての ECG の改善については、RCT の報告はなかった。

推奨と提案

低酸素血症のない(注 1)ACS 患者(注 2)に対しては、ルーチンに酸素投与を行うよりも投与を 差し控えることを提案する(弱い推奨、非常に低いエビデンス)。

注 1:最近の 2 試験では SpO2>93%もしくは 93~96%。

注 2:AMI の患者のうち、MI の既往、高度の COPD、呼吸不全、心原性ショック、中心性チ アノーゼ、SpO2<85%、その他の原因による呼吸困難を除外したもの。

患者にとっての価値と

ILCOR

の見解

この推奨の作成において、酸素のルーチン投与により死亡率の改善がなく有害である可能 性が示されたため、その有害性を避けることを重視した。このトピックに関する 3 件のうち 残 り 2 件 の 試 験 の 報 告 が 待 た れ る 。 最 初 の 試 験 で あ る AVOID 試 験 ( NCT01272713, clinicaltrials.gov)は成人の STEMI 患者においてプレホスピタルから PCI を実施し入院す るまでに酸素毎分 8 リットル・マスク投与と酸素投与なし(動脈血ヘモグロビン酸素飽和度

<94%を除く)を比較するもので、すでに研究は完了している。この試験ではルーチンの高 流量酸素投与は梗塞サイズ(急性期の peak CK、6 か月後の MRI)を増大すると報告した。

これまで検討した試験では酸素濃度(毎分 4~8 リットル・マスクまたは経鼻カヌラ)より も低濃度でルーチンに酸素投与したデータは確認されていない。

パルスオキシメーターによる酸素飽和度の判読には注意を要し、患者や機器における不正 確な結果を招く要素をできるだけ認識して修正する必要がある。

Knowledge Gaps

(今後の課題)

ACS 患者における酸素投与の利点と安全性に関する 3 件のうち残り 2 件の試験の結果が待 たれる。

図 4: 酸素のルーチン投与と比較した非投与での AMI 患者の死亡率

2

) ニトログリセリン

救急部門と病院前で、ACSが疑われる患者へのニトログリセリンの使用は、使用しないときに比較し て、臨床的転帰(胸痛の緩和、梗塞サイズ、ECGの改善、生存退院、1 か月後の生存率など)を改善す るかは、院内での研究から推測される。

再灌流療法時代の前に多数の研究がAMI患者にニトログリセリンの早期投与が有益であると示した にもかかわらず、救急部門や病院前に特化して評価された研究はない。集中治療室で治療を受けている 患者を対象とした研究では、発症から 3 時間以内に行われたニトログリセリン治療で梗塞サイズが大幅 に縮小された。しかし、ニトログリセリンが血栓溶解薬の効果を減弱させることを示唆する研究がある。

NSTEMI患者を対象とした研究では、ニトログリセリン静脈内投与と比較してジルチアゼムで梗塞サイズ の縮小が示された。病院前または救急部門でニトログリセリン治療を開始することが有益または有害で あるという十分なエビデンスはない。

禁忌(低血圧、頻脈・徐脈(拍)、勃起不全治療薬の服用など)がない患者には、ニトログリセリン の早期投与を考慮することは理にかなっているが、ACSが疑われる患者に病院前または救急部門でニト ログリセリンをルーチンに早期投与することを、支持あるいは否定するためのエビデンスは十分ではな い。胸痛の寛解にニトログリセリンが有益なことがあるかもしれない。

Knowledge Gap

(今後の課題)

ACSの病院前および救急部門におけるニトログリセリン静脈内投与の有益性および安全性に関する RCTが望まれる。

3

) 鎮痛・鎮静

病院前および救急部門でACSが疑われる患者への鎮痛薬および鎮静薬(NSAIDs、オピオイドやベンゾ ジアゼピンを含む)の使用は、使用しないときに比較して、胸痛の緩和、梗塞サイズ、ECGの改善、生 存退院、30 日後の生存率などの臨床的転帰を改善するかについては、十分なデータがない。

ある研究で、高リスクNSTEMI患者へのモルヒネの静脈内投与は、死亡率および心筋梗塞発症率の増 加に関連していることが示唆された。他の研究では、コカインに関連する胸痛の緩和にニトログリセリ ンとロラゼパムの早期投与がニトログリセリン単独より効果的で安全であったと報告している。また、

AMI患者でジアゼパムをプラセボと比較したとき、頻脈や不安感の自己評価や他の症状というエンドポ イントで何の効果も示さなかったという報告がある。NSAIDsが投与された患者の症例対照研究とコホー ト研究を合わせた解析と、Cox阻害薬とプラセボのRCTのメタアナリシスでは、NSAIDsの使用がAMIのリ スクを増大させていた。そのリスクはrofecoxibでもっとも高く、セレコキシブ、naprosyn、イブプロ フェン、ジクロフェナクではより低かった。ある研究では、ACSを疑う患者へのNSAIDs(アスピリンを 除く)の開始または継続が、有害事象を増大させることを示している。

モルヒネは、STEMI患者へ胸痛の緩和のために静脈内投与・点滴投与するべきである。モルヒネは、

NSTEMIを疑う患者の胸痛の緩和のために注意深く使用することを考慮したほうがよいかもしれない。胸 部違和感が持続している患者では、何らかの鎮痛を考慮したほうがよい。抗不安薬は、ACS患者へ不安 を和らげるために投与してもよいが、ECGの改善、梗塞サイズの縮小、または死亡の減少を促すという エビデンスはない。NSAIDs(アスピリンを除く)は、ACSを疑う患者には有害かもしれず、投与するべ きでない。NSAIDsを服用しているACSを疑う患者には、可能であれば服用を中断してもらうべきである。

STEMIに対するPCIの際に低用量セボフルラン吸入を用いて鎮静をすることでECGの改善や前壁梗塞 で梗塞サイズの縮小がみられ、大規模試験による検証が期待されている。

Knowledge Gaps

(今後の課題)

広範な梗塞に対するPCI時の吸入麻酔薬の心保護効果について検証が期待される。

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