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5 黄河沿岸地域における都市化及び問題点

5.3 各都市の発展段階の判定

5.3.3 都市発展指数による発展段階の判定

①データ・指標に関する説明と指数システムの構築

都市の発展状況をより豊富な面で把握するために、新しい指数システムの構築が必要で ある。表 5-3-6、表 5-3-7、表 5-3-8 に示すように、本研究は、各都市や都市群全体に対 し、今までの工業化の成果、都市化の到達点、そして社会全体の公平性と調和性をまとめ て評価する必要があると考え、都市発展指数を構築する。都市発展指数は、3 つの 2 級指 標、9 の 3 級指標、30 の基礎指標によって構成される。2 級指標はそれぞれ都市の総合経 済力、都市機能の完備度、社会の協調度を測る指標の集合である。以下は詳しく説明する。

1)経済発展指数

経済発展指数は、工業化発展の程度を計測する基本的指標であり、都市の発展を支え、

高度な都市機能を実現させ、そして社会の調和的発展を推進する前提条件になっている。

経済発展指数は二つの側面を含む。一つは経済規模の大きさであり、もう一つは経済発展 の構造である。経済規模はマクロ的視点で地域経済の量を測る指標であり、主に GDP の構 成要素を考察するのに対し(表 5-3-6 を参照)、経済発展の構造は細かい面から地域経済 の質を重視する。そこで、本研究では経済の開放度と経済効率から考察する。経済のグロ

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ーバル化や「新型工業化」戦略の提出を背景に、開放度と効率に対する考察は欠かせない からである。経済の開放度は、国際分業への関与度を意味し、ここでは、商品のフローを 測る輸出入、外国資本の流入を測る外資実際利用額、外国人観光客に対する魅力を測る海 外(香港・マカオ・台湾含み)観光客数を選択する。経済効率は個人、土地、政府、企業 などの細かい経済主体から考察する。

2 級指標 3 級指標 4 級指標 指標の意義

経済発 展指数

経済規模

GDP(億元) 経済発展の総合実力 +

固定資産投資(億元) 固定資本投入の絶対量 +

社会総消費(億元) 社会の消費能力 +

経済開放度

輸出(億ドル) 製品の輸出能力 +

輸入(億ドル) 海外製品の需要 +

外資実際利用額(億ドル) 外資への魅力 +

海外観光客数(人) 世界へ発信する能力 +

経済効率

単位面積 GDP(万元/㎞2) 土地の利用効率 +

一人当たり GDP(元) 一人当たりの生産性 +

財政予算対 GDP 比(%) 政府による経済目標の遂行能力 + 規模以上工業企業の平均生産高(億元) 中大型企業の総合実力 +

表 5-3-6 経済発展指数の構成 注:+は正の相関の指標、-は負の相関の指標。以下同。

2)都市機能指数

都市機能は、都市化の成果を計測する指標である。つまり、今までの都市発展と都市機 能の向上は、経済の更なる発展に、十分なインフラ施設と都市公共サービス、産業が求め る生産要素を提供し、人間の生活欲求を満足させる能力があるかどうかを考察するもので ある。そのため、まず集積の程度を測る都市全体の規模をシステムに入れる(表 5-3-7 を 参照)。次に、産業発展が求める物的要素を調達する能力を表すインフラの状況を測らな ければならないため、ここは産業発展の場を提供する不動産、生産要素を調達するための 道路、エネルギーを提供する電力の関連指標を選ぶ。都市規模の差の影響を排除するため に、これらの指標は相対量を選択する。最後に、情報・金融・人材などのソフトの生産要 素の役割の重要性が増えつつあるため、その供給能力を測る公共サービスの指標を入れる 必要がある。

2 級指標 3 級指標 4 級指標 指標の意義

都市機 能指数

都市規模

都市常住人口(万人) 人口規模 +

都市市街地面積(㎞2 都市部の建築規模 +

都市人口密度(万人/㎞2 単位面積の人口負荷能力 + インフラ施設

建築業対 GDP 比(%) 建築業の相対規模 +

一人当たり道路保有量(m) 交通施設の整備状況 +

一人当たり電気使用量(Kwh) 電力網の整備状況 +

公共サービス

一人当たり年末金融貸付額(万元) 金融業の発展水準 +

ブロードバンドユーザー数対総人口比(%) 情報施設の整備状況 +

大学生の人口割合(%) 高等教育の発展水準 +

表 5-3-7 都市機能指数の構成 3)社会調和指数

最後に、調和のとれた社会は、都市経済の発展と都市機能の向上がその最終目的である ため、政府による公共財政の管理能力や地域戦略の遂行能力を評価しなければならない。

ここの社会調和指数は、公共福祉、生活品質、生態環境という三つの指標で構成され、う

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ちに、住民が公共資源を獲得する可能性を表す一人当たり財政収入、社会保障・医療施設・

教育システムへのアクセス水準は測度する必要がある(表 5-3-8 を参照)。そして、住民 の潜在消費能力、総生産の中に政府と個人の間の分配の公平性、住民の居住条件は、生活 の物質的・心理的品質を反映すると思われるため、システムの中に入れる。最後に、人間 の発展欲求と自然の負荷能力のバランスを配慮し、生態環境を考察する。ここでは、都市 緑化率、電力の消費状況、汚染物の排出状況を測る三つの指標を選択する。上述と同じ理 由で、これらの指標も相対量にする。

2 級指標 3 級指標 4 級指標 指標の意義

社会調 和指数

公共福祉

一人当たり財政収入(万元) 公共資源の獲得可能性 +

高齢者年金参加率(%) 社会保障の水準 +

万人毎の医者保有数(人) 医療・健康事業の水準 +

万人毎の大学教師数(人) 高等教育を受ける利便性 +

生活品質

都市住民の一人当たり可処分所得(元) 住民の潜在消費能力 +

可処分所得対一人当たり GDP 比(%) 創造された価値の中に所得の割合 +

都市一人当たり居住面積(m2 居住条件 +

生態環境

都市緑化率(%) 都市環境の整備状況 +

万元 GDP 電力消耗量(kwh/万元) エネルギー消耗率 -

一人当たり SO2排出量 環境汚染程度 -

表 5-3-8 社会調和指数の構成

指数構築ためのほとんどのデータは内モンゴル、江蘇省、浙江省、上海市、広東省統計 年鑑(2013 年版)から入手し、整理・計算した。しかし、統一した統計基準を求めるため に、中国には数回の統計制度改革を行ってきたが、各省における統計指標の選定は微妙に 異なっているため、本研究で取り扱ういくつかの指標は別途に収集して整理した。うちに、

ブロードバンドユーザー数対総人口比、都市緑化率は『中国城市統計年鑑』に基づいて計 算した。都市一人当たり居住面積に関する一部のデータの出所は当年度における各市の国 民経済と社会統計公報である。

②研究方法とウェイトの確定

都市発展指数の構築は図 5-3-2 の流れで行っていく。各指標の無次元化は前述のチェ ネリー発展指数と同じであるため、ここでは省略する。

図 5-3-2 都市発展指数の構築方法

ウェイトは、研究対象の各側面(ここでは各指標)を評価する際に、各指標が総合得点 に与える影響の重要性を表す数値である。本研究では、都市の協調的発展を求めて、経済 発展、都市機能、社会の協調性の重要度を同じくし、2 級指標と 3 級指標に対し同じウェ イトを賦与することにする。これで、2 級指標と 1 級指標は簡単な加法で算出できる。一 方、3 級指標に含まれる 4 級指標に対して、変動係数法を用いてウェイトを計算する。し かし、各 4 級指標は、互いに関連性があるものの、都市の評価への影響は異なるため、ウ ェイト付けをする必要がある。そして、一つの 3 級指標に属する各 4 級指標のウェイトの 和は 1 とする。たとえば、3 級指標の経済規模に対し、GDP、固定資産投資総額、社会総 消費のウェイトの和は 1 に等しい。

ウェイトの確立方法は、変動係数法(Coefficient of variation method)を利用する。

専門家のアドバイスが必要となる階層分析法(前述)と違い、変動係数法は、指標システ デー

タの 整理

加法合成法 で 3 級指標 の値を整理 変動係数法で各

3 級指標内ウェ イトの計算 各 4 級指標

に対する無 次元化

足し算で 1,2 級指標

を算出

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ムの中に、格差が大きい指標(先進地域に対して後進地域が追いかけにくい指標)である ほど、対象の評価への影響は大きいと仮定する。そのため、ウェイトづけの客観性の確保 といった観点から、変動係数法の方が優れている。各 4 級指標の計算は以下のとおりであ る。

W

j

= CV

j

/∑ 𝑛 𝑗=1 CVj

(うち、CVj=σjj

中に、Wjは一つの 3 級指標を構成する各 4 級指標jのウェイト、CVjは指標jの変動係 数、σjは指標jの標準偏差、μjは指標jの平均値、nは各 3 級指標を構成する 4 級指標の 数である。

以上の要領で、指標システムのウェイト付けを下表でまとめた。

指標 平均 標準偏差 変動係数 ウェイト

経済規模

GDP 4679.33 4502.19 0.96 35.79%

固定資産投資 1715.85 1204.27 0.70 26.11%

社会総消費 1770.30 1813.78 1.02 38.11%

経済 開放度

輸出 390.24 630.47 1.62 25.84%

輸入 287.76 549.57 1.91 30.55%

外資実際利用額 25.53 30.20 1.18 18.92%

海外観光客数 1697466.91 2620450.46 1.54 24.69%

経済効率

単位面積 GDP 9190.83 12510.74 1.36 51.92%

一人当たり GDP 83596.63 34739.84 0.42 15.85%

財政予算対 gdp 比 0.09 0.02 0.28 10.62%

規模以上工業企業平均生産高 3.09 1.75 0.57 21.61%

都市規模

都市人口 416.09 417.85 1.00 38.07%

都市市街地面積 267.77 251.45 0.94 35.60%

都市人口密度 1.77 1.23 0.69 26.32%

インフラ 施設

建築対 GDP 比 0.05 0.02 0.40 11.52%

一人当たり道路保有量 3.33 6.09 1.83 52.57%

一人当たり電気使用量 5938.68 7403.78 1.25 35.91%

都市公共 サービス

一人当たり年末金融貸付額 10.39 6.37 0.61 29.10%

ブロードバンドユーザー数対総人口比 0.22 0.09 0.40 18.89%

大学生の人口割合 0.02 0.02 1.10 52.00%

公共福祉

一人当たり財政収入 7596.44 4085.12 0.54 22.48%

高齢者年金参加率 0.36 0.18 0.49 20.66%

万人毎の医者保有数 23.03 5.87 0.25 10.65%

万人毎の大学教師数 12.61 13.94 1.11 46.21%

生活品質

都市住民一人当たり可処分所得 32090.99 6137.90 0.19 27.78%

可処分所得対一人当たり GDP 比 0.43 0.13 0.31 45.51%

都市一人当たり居住面積 31.68 5.83 0.18 26.71%

生態環境

都市緑化率 0.41 0.05 0.11 4.03%

万元 GDP 電力消耗量 606.32 552.39 0.91 32.45%

一人当たり SO2 排出量 0.03 0.06 1.78 63.52%

表 5-3-9 指標システムのウェイト付け