4 章 エントロピーの登場 — 熱力学第二法則 —
6.1 部分モル量
6.1 部分モル量 81 いま、モル当たりのギブス自由エネルギーGN を
N
G G
Pr iD1ni
(6.23) と定義すると、この式の右辺に式(6.22)のGを代入して
N GD
Xr
iD1
ixi (6.24)
を得ることができる。ただし、xiはxi ni=Pr
iD1で定義する成分iの モル分率である。時々間違えて、iD.@G=@xN i/T;p;xj¤i のようにiを計 算する人がいる。この関係は成立せず、
@GN
@xi
T;p;xj¤i ¤i (6.25)
であることに注意せねばならない。モル分率xiにはPr
iD1xi D1という すぐに分かる制限があるので、xiの全てが独立に変えうるという量では ない。したがって左辺の操作において、xi 以外のモル分率を全て一定に 保つという操作は不可能なのである。(これは2成分系を考えると直ちに 理解できるだろう。)
6.1.1 ギブス-デュエムの式
内部エネルギーUは式(6.2)から、T、S、p、V、iとni(iD1; 2; ; r) で与えられる。これらの全てを微小変化させたときの内部エネルギーの微 小変化dU は
dU DTdSCSdT pdV VdpC Xr
iD1
idniC Xr
iD1
nidi (6.26)
のU の全微分で表される。この式と式(6.1)とを等置すると SdT VdpC
Xr
iD1
nidiD0 (6.27)
物質量などの示量性状態量の変動は系の大きさを変動させることで自由に起こさせうる が、モル分率などの示強性状態量にはそのような自由度はない。一般に、示強性状態量の自 由度は示量性状態量のそれに比べて1だけ少ない。
でなければならないことが分かる。この式はギブス-デュエムの式と呼ば れる。この関係はT、p、i (i D1; 2; ; r)の変化の全てが独立ではな いことを示している。
式(6.27)と同じ結果はギブス自由エネルギーGについての同様の議論
からも求めることができる。定温定圧系ではこの式は Xr
iD1
ni.di/T;pD0 (6.28)
と書ける。化学ポテンシャルiの変化は .di/T;pD
Xr
jD1
@i
@nj
T;p
dnj (6.29)
と表せる。したがって、式(6.28)は Xr
iD1
Xr
jD1
ni
@i
@nj
T;p
dnj D Xr
jD1
Xr
iD1
@i
@nj
T;p
ni
dnj D0 (6.30)
となる。この式が正負を含めてあらゆるnj の変化dnj に対して成立する ためには、式中のŒ は0でなければならない。ここから、
Xr
iD1
ni
@i
@nj
T;p D0 (6.31)
が得られる。また、
@i
@nj
T;p
D
@2G
@nj@ni
T;p
D
@2G
@ni@nj
T;p
D @j
@ni
T;p
(6.32)
であるから、
Xr
iD1
ni
@j
@ni
T;pD0 (6.33)
も成立する。式(6.28)、(6.31)、(6.33)もギブス-デュエムの式と呼ばれる。
これらの関係式は相平衡の問題、各成分の化学ポテンシャルの間の関係を 求めるときなどによく活用される。
6.1 部分モル量 83
1
0 x2
P µ1
o
a
µ2 o
b
G−
図6.1化学ポテンシャル評価法
なお、モル分率を使った関係式 Xr
iD1
xi
@i
@xj
T;p
D0 (6.34)
Xr
iD1
xi
@j
@xi
T;p D0 (6.35)
も成り立つことは容易に示すことができる。
ギブス自由エネルギーに関して上に示したのと同様の関係が他の示量性 状態量についても成立する。
6.1.2 ある応用例
定温定圧条件下の2成分系について、モルギブス自由エネルギーGN が 図6.1の曲線で示すような結果になったとする。成分2のモル分立率x2
が0と1におけるこの曲線の値は、それぞれ成分1と2の純状態の化学ポ テンシャルı1、ı2 である。GN の曲線上の点Pで、この曲線の接線を引 く。その接線の、x2D0とx2D1における縦軸切片をそれぞれa、bと する。これらの点aとbがそれぞれ点Pの組成(モル分率)における成分
1と2の化学ポテンシャル1、2を与える。それは以下のようにして示 すことができる。
式(6.24)でrD2として両辺をx2で微分すると @GN
@x2
T;p D 1C2C.1 x2/ @1
@x2
T;pCx2
@2
@x2
T;p
(6.36) が得られる。ギブス-デュエムの式(6.34)から、この式の最後の2項は消
えるので
@GN
@x2
T;p
D 1C2 (6.37)
という結果になる。この式とr D2とした式(6.24)から、1、2は 1 D NG x2
@GN
@x2
T;p
(6.38)
2D NGC.1 x2/ @GN
@x2
T;p
(6.39) と求められる。これらの式の右辺は、図6.1の点aとbがそれぞれ点Pの 組成における1と2に等しい事を示している。