4 章 エントロピーの登場 — 熱力学第二法則 —
5.4 特性函数
この節では多くの式を提示しなければならない。すこし煩わしいが辛抱 して貰いたい。ギブス自由エネルギーGはその定義式(5.9)から、内部エ ネルギーU、圧力p、体積V、温度T、エントロピーSを変化させると 増減することが分かる。いま、それらの全てをそれぞれ少しだけ変化させ たときGが変動する量dGは
dGDdU CpdV CVdp TdS SdT (5.20) で与えられる。これをGの全微分という。内部エネルギー変化dU につ いての熱力学恒等式(4.41)をこの式に代入すると、dGは
dGDVdp SdT (5.21)
と簡単化できる。この式から、温度を一定にして圧力を変化させたときの
Gの変化は
@G
@p
T
DV (5.22)
となり、圧力を止めて温度を動かした時のGの増減は @G
@T
pD S (5.23)
となることが導かれる。Gの定義式GH T Sにこの式のSを代入す ると
HDG T @G
@T
p
D
@.G=T /
@.1=T /
p
(5.24) が得られる。この式をギブス-ヘルムホルツの関係という。この式はT と pの函数としてGが与えられるとHが計算できる事を示している。また、
5.4 特性函数 67
V
T
p S
A G U H
図5.3状態変数と特性函数
式(5.22)からV が、式(5.23)からSが求められる。さらに、Hの定義式
(2.21)からU も計算できる。これ以上は示さないが、函数G.T; p/が分
かっていると系の全ての状態量を計算することができる。このことから、
Gを状態変数の組.T; p/に対する特性函数あるいは母函数であるという。
同様に、ヘルムホルツ自由エネルギーAについては
dADdU TdS SdT D pdV SdT (5.25)
となる。この式は状態変数の組(T、V)に対してAが特性関数であるこ とを示唆している。この式から
@A
@V
T D p (5.26)
@A
@T
V
D S (5.27)
が得られる。
熱力学恒等式dU DTdS pdV は状態変数の組(S、V)についての特 性関数がU であることを示唆しており、
@U
@S
V DT (5.28)
@U
@V
V
D p (5.29)
を導くことができる。また、熱力学恒温等式より、温度を一定にして体積 を変化させたときの内部エネルギーの変化は
@U
@V
T D pCT @S
@V
T
(5.30) となる。式(5.26)と(5.27)から
@S
@V
T D @
@V @A
@T
V
T D @
@T @A
@V
T
V D @p
@T
V
(5.31) が得られる。この関係を式(5.30)に用いると
@U
@V
T D pCT @p
@T
V
(5.32) となる。この式は熱的状態方程式と呼ばれる。
これらと同様にして、エンタルピーHについても
dH DTdSCVdp (5.33)
が得られる。この関係は状態変数(S、p)についての特性函数がHであ ることを示唆する。この両辺を温度T 一定の下で圧力pで微分すると
@H
@p
T DT @S
@p
T CV (5.34)
となる。式(5.22)、(5.23)に対し、Gを用いて式(5.31)と同様の操作をす
ると
@S
@p
T D @V
@T
p
(5.35) が得られるから、式(5.34)は
@H
@p
T DV T
@V
@T
p
(5.36) と書き直せる。この式も熱的状態方程式と呼ばれる。式(5.31)、(5.35)は マックスウェルの関係式と呼ばれる。
理想気体の状態方程式pV DnRT をこの式に適用すると、第3章に述べた内部エネ ルギーpiD.@U=@V /T が0であることが導ける。したがって、第3章のように理想気体 に対する内部エネルギーの式U D.3=2/nRT のを用いなくてもマイヤーの関係式(3.17) を導くことができる。
マックスウェルの関係式は4つある。本文に示した式の他の2つは