4 章 エントロピーの登場 — 熱力学第二法則 —
6.2 混合気体と溶液
1と2の化学ポテンシャル1、2を与える。それは以下のようにして示 すことができる。
式(6.24)でrD2として両辺をx2で微分すると @GN
@x2
T;p D 1C2C.1 x2/ @1
@x2
T;pCx2
@2
@x2
T;p
(6.36) が得られる。ギブス-デュエムの式(6.34)から、この式の最後の2項は消
えるので
@GN
@x2
T;p
D 1C2 (6.37)
という結果になる。この式とr D2とした式(6.24)から、1、2は 1 D NG x2
@GN
@x2
T;p
(6.38)
2D NGC.1 x2/ @GN
@x2
T;p
(6.39) と求められる。これらの式の右辺は、図6.1の点aとbがそれぞれ点Pの 組成における1と2に等しい事を示している。
6.2 混合気体と溶液 85 @.i=T /
@.1=T /
p;fxg
DHi (6.42)
を得ることができる。
以上の3つの式でこれからの展開の準備は整えられた。
いま、r個の成分から成る気体混合物が温度T、圧力pの下で平衡状態 にあるとする。その中の成分iの物質量をniモル、モル分率をxiとして、
各成分の化学ポテンシャルが i.T; p;fxg/D⊖i .T /CRTln
pxi
p⊖
.i D1; 2; ; r/ (6.43) で表せるとき、その系は理想混合気体であるという。ただしこの式で、p⊖ は基準の圧力であり、⊖i .T /は成分iが純状態で温度T、圧力p⊖の下で 平衡状態にあるときに持つ化学ポテンシャルである。成分iが純状態であ るとき、xi D1であり、この純気体の圧力pにおける化学ポテンシャル ıi は式(6.43)より
ıi.T; p/D⊖i .T /CRTln p
p⊖
(6.44) と表される。当然のことながら、この式は前章で導いた、単一理想気体に 対するモルギブス自由エネルギーGN の式(5.51) と一致する。
式(6.43)を式(6.40)、(6.41)、(6.42)に代入すると、
ViD RT
p (6.45)
Si DSi⊖.T / Rln pxi
p⊖
(6.46)
HiDHi⊖.T / (6.47)
が得られる。ここで、Si⊖.T /とHi⊖.T /は純気体iが温度T、圧力p⊖のと きに持つモルエントロピーおよびモルエンタルピーである。V DPr
iD1niVi
に、式(6.45)のViを代入するとpV DnRT を得ることができる。した
がって、理想混合気体は単一(純気体)の理想気体と同一の状態方程式に したがうことが分かる。
平衡状態1
平衡状態2 T, p n1, V1
o
T, p n2, V2
o
T, p,V nl+ n2
p p
p p
図6.2気体の混合
可動壁で仕切った2つの部屋を用意し、一方にn1モルの理想気体1を 入れ、他方にn2モルの理想気体2を入れて、温度T と圧力pを一定に して放置する。このようにして到達した状態を平衡状態1とする。次に可 動壁の仕切りを取り除いて放置すると、2種の理想気体は混合して新たな 平衡状態2に至る。この状態でも温度T と圧力pは一定にする。(図6.2 参照)
平衡状態1と2における系の体積をそれぞれV.1/、V.2/と置くと V.1/Dn1V1ıCn2V2ı (6.48)
V.2/Dn1V1Cn2V2 (6.49) である。V.2/ V.1/が混合による系の体積変化である。これを混合の体 積と呼び、mV で表すと
mV Dn1.V1 V1ı/Cn2.V2 V2ı/ (6.50) となる。いま、混合の前後でT とp は変えないから、式 (6.45)から、
Vi DViı .i D1; 2/である。したがって、
mV D0 (6.51)
6.2 混合気体と溶液 87 であることが分かる。体積変化は起こらない。
混合によるエントロピー変化、すなわち混合のエントロピーmS は、
同様に
mS Dn1.S1 S1ı/Cn2.S2 S2ı/ (6.52) で与えられる。式(6.46)から、成分iの純状態におけるモルエントロピー Siıは、xi D1として
SiıDSi⊖.T / Rln p
p⊖
(6.53)
である。この式と式(6.46)を用いると、式(6.52)から
mSD Rln.n1lnx1Cn2lnx2/ (6.54) が導かれる。
式(6.47)から、混合によるエンタルピー変化、すなわち混合のエンタル
ピーmHが0であることは容易にわかる。
容易に分かるように、混合のギブス自由エネルギーmGはmG
mH TmSで与えられるから、上の結果を使うと
mGDRT .n1lnx1Cn2lnx2/ (6.55) を得ることができる。モル分率x1およびx2は1より小さいから、上の 式よりmG < 0である。したがって、ここでの平衡状態1から2への変 化は、熱力学第二法則を満たしており、不可逆過程として進行することに なる。
一般にr成分を含む多成分理想混合気体については、上の議論から
mSD R Xr
iD1
nilnxi (6.56)
mG DRT Xr
iD1
nilnxi (6.57)
となる。
次に理想溶液を取り扱う。定温定圧下で平衡状態にあるr成分溶液にお いて、成分iの化学ポテンシャルiが
i.T; p;fxg/Doli .T; p/CRTlnxi .i D1; 2; ; r/ (6.58) で与えられる場合、この溶液を理想溶液という。ここで、oli .T; p/は、温 度T、圧力pの下で成分iが純状態で液体として存在しているときの化 学ポテンシャルである。
上の理想混合気体の例と同様にして、混合のギブス自由エネルギーmG DPr
iD1ni.i oli /を求めると
mGDRT Xr
iD1
nilnxi (6.59)
となる。これは理想混合気体に対する式(6.57)と同じである。この式から
mV D0 (6.60)
mS D R Xr
iD1
nilnxi (6.61)
mH D0 (6.62)
と、理想混合気体に対するものと同一の式が得られる。