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遺伝子の発現制御

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遺伝子はいつどこで発現するか?

6-1.

ここはどこになる?体の場所を決める遺伝子

「ホメオティック遺伝子」

動物の体は、受精卵から卵割・細胞分裂を経て作られていきます(発生)が、

この過程における体つくりで中心的な役割を果たしているのが、ホメオティッ ク(ホメオボックス)遺伝子です。この遺伝子はハエからヒト※ 1に至るまで、

進化の過程で受け継がれてきたことが明らかになっています。

ホメオティック遺伝子は、発生の過程で、時間的・空間的に一定のパター ンで発現します。ホメオティック遺伝子には、ホメオドメインという、60 個 のアミノ酸からなる DNA に結合するドメイン(参照:5-2.「タンパク質の 相互作用」p.56)がコードされています。ホメオティック遺伝子がコードす るタンパク質は、器官形成の過程で階層的に発現する遺伝子の DNA に、ホメ オドメインで結合し、転写調節因子として働きます。つまり、その領域にホ メオボックス転写因子が結合した細胞がどんな器官になるか(頭になるか、

手足になるかなど)の運命を、最初に決定する重要な役割を果たします。

また、ホメオティック遺伝子は 3' 側に位置する遺伝子ほど、発生の早い時 期に、体の前方(頭部側)で発現するという特徴があります。

6-2.

DNA の塩基配列によらない遺伝子発現の制御

「エピジェネティクス」

一人の人間の肝臓の細胞と皮膚の細胞は、同じ DNA 配列を持っています。

しかし、肝臓の実質細胞は細胞分裂して増殖すると同じ実質細胞※ 2になり、

皮膚の細胞も皮膚の細胞として増殖していきます。一個体の全ての細胞が同

※ 1  ヒトのホメオティック遺伝子に相当する 遺伝子は Hox 遺伝子と称されます。

※ 2  実質細胞とは肝臓を構成する主要な細胞 で、肝細胞とも呼ばれ、肝臓で行われる 代謝のほとんどを引き受けています。

Me

AC Lys

Lys

Me MeMe Me

じ DNA の塩基配列を持つにも関わらず、別々の機能や形態を持つ細胞になる ことが出来るのは、発生・分化の過程で DNA やヒストンに付けられた修飾に より、細胞ごとに、異なる遺伝子の発現を促進したり抑制したりするためで す。その仕組みをエピジェネティクスといいます。

6-3.

つかう遺伝子とつかわない遺伝子についた目印

「修飾核酸」

ヒストンの修飾

ヒストンタンパク質のコア領域からはみだした N 末端側のヒストンテイル と呼ばれる領域がアセチル化、メチル化、リン酸化、モノユビキチン化など様々 な修飾を受けていることが報告されています。

ヒストンアセチル化

一般に、ヒストンのアセチル化は、遺伝子の発現を促進する方向に働きます。

ヒストンアセチル基転移酵素によって、アセチル基がヒストンテイルに付加 されると、ヒストンの正電荷が減少し、ヒストンと DNA の間の電気的な相互 作用が減少するために凝集したヌクレオソーム構造が緩み、RNA ポリメラー ゼがプロモーター領域に結合しやすくなるためです。

逆に発現を抑制する場合は、ヒストン脱アセチル化酵素によってアセチル 基が除去され、その結果、ヒストンと DNA の結合が強固になり、遺伝子の発 現は抑制されます(図.ヒストンアセチル化によるクロマチン構造の変化)。

がんでは、ヒストンの脱アセチル化によってがん抑制遺伝子の発現が負に プロモーター

RNA ポリメラーゼがプロモーターに結合する Ac Ac

Ac

Ac

Ac

Ac

Ac

Ac Ac Ac Ac

Ac

ヒストンアセチル基転移酵素

アセチル化されたヒストンテイル

ヒストンアセチル化によるクロマチン構造の変化

Pick Up from MBL 抗修飾ヒストン抗体

株式会社モノクローナル抗体研究所 では修飾ヒストン ( アセチル化・メ チル化・リン酸化)を認識する抗体 を多数取り揃えております。

ウェスタンブロッティング、免疫染 色、そしてクロマチン免疫沈降で反 応することが確認されております。

Pick Up from MBL

ヒストンアセチル化測定キット アセチル化ヒストンを認識する抗体 を用いて、細胞内のヒストンのアセ チル化レベルを Cell ELISA 法によ り測定するキットです。細胞内のヒ ストンアセチル化への薬理作用効果 をモニターすることが可能です。

株式会社サイクレックスは、アセチ ル化部位特異的抗体を用いたアセチ ル化関連酵素活性およびアセチル化 レベルの測定原理について、米国特 許を取得しています。

制御されている例が報告されており、ヒストン脱アセチル化酵素は抗がん剤 の標的として注目されています。ヒストンアセチル基転移酵素、ヒストン脱 アセチル化酵素ともに多くの種類が知られています。

ヒストンメチル化

ヒストンのメチル化は、ヒストン分子のアルギニンやリジン残基に生じ、

遺伝子発現の促進、抑制、どちらにも働きます。

例えば、Set1 というヒストンメチル化酵素がヒストン H3 の 4 番目のリジ ンをメチル化すると、遺伝子の発現が促進されます。一方、Suv39h1 などの ヒストンメチル化酵素によって 9 番目のリジンがメチル化されると、HP1 と 呼ばれるタンパク質が結合し、ヌクレオソームが凝縮し、ヘテロクロマチン の形成が促進されるため、転写が抑制されます。※ 1ヒストンメチル化酵素も 多くの種類があります。

DNA メチル化(シトシンのメチル化)

DNA メチル化は、ほとんどがシトシン(C)で生じ、遺伝子発現を抑制し ます。特に、CG という配列が集中して存在する領域(CpG アイランド)の 70% − 80% 程度のシトシンがメチル化されています。遺伝子プロモーター 領域の CpG アイランドは、最初はメチル化されていないことが多いですが、

発生や分化に伴ってメチル化を受け、遺伝子発現が抑制されます。がん細胞 では、がん抑制遺伝子の発現が CpG アイランドの異常なメチル化によって抑 制されています。※ 2

ヒストンメチル化によるクロマチン構造の変化

Me

Me Me Me Me Me Me Me Me Me Me Me Me Me Me

ヒストンメチル化酵素

HP1 がメチル基に 結合

Me

HP1 どうしが結合

ヌクレオソームも凝縮

※ 1  クロマチン線維がしっかりと凝縮し、RNA ポリメラーゼや転写因子が近づけないため、

転写は起こりません。電子顕微鏡などで核 をみると黒い塊として観察できます。

※ 2  がん治療薬の中にはがん細胞の異常なメチ ル化を抑制することで、治療効果をあげて いるものもあります。次ページで紹介する MBD タンパク質の阻害剤が代表的です。

Pick Up from MBL 抗修飾核酸抗体

MBL では多数の、DNA/RNA の修 飾塩基・ヌクレオシドの検出に役立 つ抗体を取り揃えております。

パ ラ フ ィ ン 包 埋 組 織 切 片・ 培 養 細 胞 の 免 疫 染 色、RNA-IP、Dot blotting、hMeDIP などの各用途に 使用可能です。

抗ヒドロキシメチルシトシン抗体の 使用例

その他の修飾核酸に対する抗体の 使用例

抗原添加による阻害

5hmC mAb (Code No. M218-3)

0.02 μg/mL

5hmC pAb (Code No. PM077)

0.4 μg/mL

m5C mAb*

(Code No. D346-3) 0.25 μg/mL

*DNA中の5mC、RNA中の m5C両方を認識します。

組織:マウス脳(海馬領域よりやや前方) 13-14週齢 オス 賦活化:熱処理(95℃、40分)

Pick Up from MBL MethylHunter

MBD1-basedMethylatedDNA EnrichmentKit

His-tagged MBD1 を用いてメチル 化 DNA 断片を回収するキットです。

ヒストン脱アセチル化酵素 (HDAC・SIRT)活性測定キット ヒストン脱アセチル化酵素の活性を 高感度かつ簡便に測定できます。

阻害剤や活性化剤のスクリーニング にも有用です。

METTL13(FEAT)抗体 M e t h y l t r a n s f e r a s e l i k e 1 3 (METTL13) は、 FEAT や KIAA0859 とも呼ばれ、メチルトランスフェラー ゼスーパーファミリーに属する 699 アミノ酸タンパク質です。

MBD タンパク質による転写抑制

DNA のメチル化によって転写因子の結合が阻害されますが、さらに、メチ ル化 DNA を特異的に認識するタンパク質によって、転写不活性なクロマチン 状態が形成されることにより、より安定的に遺伝子発現が抑制されます。

このようなタンパク質のメチル化 DNA 結合ドメインとして、最初に同定 されたドメインが、MBD(Methyl-CpG-binding domain)です。MBD をも つタンパク質(MBD タンパク質)は、ヒストン脱アセチル化酵素 (HDAC や SIRT など ) や、ヒストン H3 の 9 番目のリジンをメチル化する酵素などと相 互作用し、クロマチン凝集を引き起こすことで、転写を抑制します(図.メ チル化 DNA・MBD タンパク質・HDAC によるクロマチン構造の変化)。

哺乳類では、MeCP2、MBD1、MBD2、MBD4 の、4 種類の MBD タンパ ク質があります。

核酸修飾が次世代の細胞に受け継がれるメカニズム

DNA やヒストンの修飾は、核酸修飾酵素などの働きによって、細胞が分裂 しても引き継がれていきます。

DNA 複製直後、鋳型となった元の DNA 鎖のはメチル化されていますが、

新生された DNA 鎖ではまだメチル化されていません(ヘミメチル化)。この ヘミメチル化二本鎖 DNA に、UHRF1 や DNMT1 などのタンパク質が結合し て、新生鎖を鋳型鎖と同様にメチル化します。 このようなメチル化パターン の継承を DNA の維持メチル化といいます(図.複製後の DNA メチル化パター ンの継承)。さらに、DNA に結合するヒストン量も 2 倍に増え、ヒストン修 飾も受け継がれます。

メチル化 DNA・MBD タンパク質・HDAC による クロマチン構造の変化

Ac Ac

Me Me

Ac

Ac Ac Ac Me Me

シトシンのメチル化

メチル化 DNA

結合タンパク質 (MBD タンパク質 ) 脱アセチル化酵素(HDAC)

ヌクレオソーム凝縮 Me Me

ヒストンのアセチル化

A C G G G A A C G C A C G T

Me Me Me

T G C C C T T G C G T G C A

Me Me Me

T G C C C T T G C G T G C A AC GG G A AC GC AC GT

Me Me Me

Me Me Me

TG CC C T TG CG TG CA

Me Me Me

Me Me Me

A C G G G A A C G C A C G T

複製

T G C C C T T G C G T G C A

Me Me Me

A C G G G A A C G C A C G T A C G G G A A C G C A C G T

Me Me Me

T G C C C T T G C G T G C A

複製された DNA の CpG 配列 のシトシンのメチル化

複製後の DNA メチル化パターンの継承 新生 DNA 鎖

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